(右)Globalization Partners社
パートナーマネージャー
Albert Barbe 氏
(中央)アジア太平洋地域(APAC)担当
ゼネラルマネージャー
Charles Ferguson 氏
(左)セールス・エグゼクティブ
Jeffrey Swartz 氏
少子高齢化により労働人口が減少し、企業の多くは人手不足を課題に抱えている。人手不足の解決には、海外人材の活用をはじめとする海外市場の開拓が必要である。しかし日本企業の99.7%は中小企業であり、海外事業の立ち上げに伴う現地法人の設立などは難しい。そこで、EORと呼ばれる法的な雇用主として給与支払いなどを代行するサービスを提供するGlobalization Partners社のファーガソン氏に、海外人材の活用や海外進出の有用性について伺った。
海外進出における日本企業の現状とは
日本企業の海外進出や海外企業の日本進出について、現在どちらも注目すべき動向を見せていると語るファーガソン氏。特に、日本から国外への海外直接投資(FDI)は大きなビジネスチャンスを生んでいるという。
「海外直接投資においてスタートアップ企業の成長を促す土壌が重要となりますが、日本ではその土壌が整いつつあります。現在日本政府は東京、大阪、仙台、札幌など8か所の『スタートアップシティ』を設定しており、地方自治体や大学、地元の企業と連携する枠組みを作ろうとしているのです。この取り組みは、海外から日本を目指す企業にとっても有意義です。
現在、多くのベンチャーキャピタル(未上場企業への出資)やプライベートエクイティファンド(未上場株式への投資)などが日本に進出しています。当社の顧客でも、アジア太平洋地域のうちスタートアップ企業が7割を占めています。また全体のうち65%がIT系企業であり、89%がベンチャーキャピタルやプライベートエクイティからの資金提供を受けているのです」
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といった大規模な通商協定に日本が参加していることなどを受け、日本を重視してきたファーガソン氏に日本企業が進出すべき地域を伺った。
「これまで、日本のFDI進出先は北米とヨーロッパが一番多かったのですが、現在それらの国々の経済状態はあまり良くありません。一方で経済成長を続ける東南アジアには、ビジネスチャンスが数多く存在します。東南アジア諸国では平均年齢が若く、中間層が育っているため分厚い消費者層が生まれつつあるのです」
EORサービスで海外進出の時間と労力を軽減
日本企業が海外進出を目指す際、「従来の方法では様々な課題が発生する」とファーガソン氏は主張する。
「日本企業が海外でビジネスを展開したいと考えた際、これまでの方法では採用が可能になるまで1年~1年半もの時間がかかってしまいます。なぜなら現地で弁護士を探して法人登記をしてもらい、税務や労働者使用に関する手続きを役所で済ませ、拠点が定まったら銀行口座を開設するなどの段階を踏む必要があるからです。また、この準備には時間だけではなく膨大な資金を要します。
さらに採用においても、適切な人材を雇用する人事システムを確立しなければいけません。採用についてはただ人を雇えばいいというものではなく、現地の労働法制に詳しい弁護士のもとでコンプライアンスを遵守することが重要です。また現地でビジネスが上手くいかなかった場合、撤退には進出よりも長い時間と多くの資金を要します」
上記のような煩わしい手続きや準備を避けるために、EORサービスが存在する。ファーガソン氏はこのような外部リソースを活用すべきだと語る。
EORサービスの提供者が進出先における法的な雇用主となり、給与の支払いや税金の支払い、保険の提供などを代行すること。現地法人を持たずに海外進出が可能となるサービスである。
「EORサービスとは、顧客企業に代わって現地の採用や労働契約の締結、給与管理、福利厚生の提供、人事に関する支援をするものです。こうしたサービスを利用すべき理由は2つあると考えます。1つ目は海外人材を獲得してビジネスを拡大できる点。2つ目はある国で人材を得られなかった場合、すぐに別の場所で得ることができる点です。
例えばソフトウェア企業がAI専門エンジニアの確保に苦労している場合、以前はウクライナで現地採用できましたが、今は隣国のポーランドでしなければならないという場合があります。EORサービスを活用すると、ポーランドのエンジニアをギグワーカーやフルタイムの正社員として雇うことが可能です。フルタイムで雇いたい場合にも、現地人材と代わりに雇用契約を結んで正社員として人材を採用できたり、知的財産を契約により保護しやすくなったりします」
雇用契約などを代わりに行ってくれるEORサービスは、スタートアップ企業だけではなく中小企業にとっても有用だ。
「中小企業から生まれる多くのイノベーションは世界に通用するものです。そういう企業が海外進出を目指す場合は、ビジネスの『選別』が必要となります。ある事業は日本で、別の事業は別の国で行うほうがいい場合がありますね。海外での可能性があるビジネスをお持ちの場合や海外人材をお試しで雇ってみたい場合にもEORサービスが有用です」
強固なパートナーシップで日本企業を支援するGlobalization Partners
日本はアジア太平洋地域でのビジネス拡大においてキーとなる市場だと語るファーガソン氏に、ビジネスを展開する際に重視することを伺った。
「我々はこれまで米国企業による日本進出の支援を主に行ってきましたが、2021年から日本企業の海外進出やアジア太平洋地域の企業の日本進出を手助けするようになりました。日本におけるビジネスを展開するために非常に重要視しているのが、パートナーシップ、いわば『人脈』の拡大です。
私はアジア地域で36年間仕事をして日本でも長い時間を過ごしましたが、この地域においてビジネスを成功させる上で最も重要なのは『強固なパートナー戦略』だと気づきました。
我々が考えるパートナーシップとは、相手とお互いに助け合うことです。単に私たちがより多く稼ぐためのものではなく、私たちがどれだけ相手の手助けをできるかということです。カギは『相互的』であるということで、顧客がどれだけビジネスに成功できるかにあります」
EORサービスのフロントランナー企業として歩んできた同社だが、人材採用においての支援も行っている。
「国外で人材を探そうとしてもなかなか見つからないという場合、独自に構築した人脈から最適な人材を探すことができます。当社の支援はコンプライアンスや労働者・使用者の利益最大化を原則とし、人材採用の成功や顧客の成長を目的としています。
また人材採用だけではなく、新規事業に伴う人材の移動やビジネスが上手くいかなかった場合の撤退も代行します。厳格な解雇要件などにより柔軟な人材活用が難しい中、EORが有用となるでしょう。私たちは顧客企業の社員に対するコンプライアンスや給与、税金、福利厚生を管理します。
さらに海外進出におけるコンサルティングについても、最適なパートナーの紹介が可能です。私たちは新たなビジネスチャンスを求める中小企業を支援するため、各国の政府との間に築いた関係も使ってサポートしていきます」
人手不足が深刻となる中、海外人材の活用は今後も重要となってくる。EORサービスのような外部リソースの提供が、海外進出を考える企業の手助けとなるだろう。