ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティングの最前線 これからの人事に求められることとは?

株式会社WHOM
代表取締役CEO
早瀬 恭 氏
はやせ・きょう/株式会社ジェイエイシーリクルートメントに新卒入社。 関西・東京本社勤務を経て、2014年に同社インド法人立ち上げのため代表取締役社長に就任。 その後2017年シンガポール法人の代表、インドネシア法人取締役兼務を経て、2019年リンクトイン・ジャパンへ事業部長として参画。 2020年10月株式会社WHOMを創業。JETRO高度外国人人材スペシャリスト。

近年新たな採用手法として注目を集め、日本でも急速に普及してきているダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティング。マッチング精度が高く、転職潜在層までアプローチする手段としても、有効性が高まっている。今回は、その市場の最新動向と、実施する際の注意点や今後の展望について、WHOM代表の早瀬恭氏に話を伺った。

ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティングの最新動向

求人に対する応募を「待つ」採用ではなく、企業側が求める人材を採用するために、能動的に実行する「攻め」の採用がダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングだ。労働人口の減少や雇用形態の変化による「売り手市場」が続く中、この採用手法を取り入れる企業が増えているという。

「ダイレクトリクルーティングの興隆は、7〜8年ほど前から急速に始まっています。先駆けとしてビズリーチやWantedlyが登場し、これをきっかけにダイレクトリクルーティングが徐々に浸透してきました。現在は、企業がダイレクトに候補者へアプローチする手法はすでに特別なものではなく、一般化しつつある印象です。

こうしてダイレクトリクルーティングが流行したのには、主に2つの理由が考えられます。1つ目は、新卒で入社して定年まで働く終身雇用の時代が終わったこと。中途採用やキャリア採用が当たり前になり、企業の雇用に対する目の向け方が大きく変化しました。2つ目は、キャリア採用においても、既存の採用手法が通用しなくなってきたことが挙げられます」

転職は力学。 ダイレクトリクルーティングを行う上での注意点

こうした流れにより、ダイレクトリクルーティングを任される採用担当者も増えたはずだ。しかし、従来の方法とは違う能動的な採用活動につまづく担当者も多いという。実施する際、どのような点に気をつければよいのだろうか。

「押す力」と「引く力」を理解する

「ダイレクトリクルーティング、ソーシャルリクルーティングを行う上で気をつけなければいけないポイントに、候補者の転職温度があります。転職温度とは、候補者の転職意欲の度合いのこと。今すぐにでも転職したいという方は転職温度の高い人だと言えます。

転職媒体や採用エージェントを通して自ら応募する候補者は、既に転職を検討している候補者になるため、ある程度の転職温度が担保されています。しかし、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングの場合は企業からお声がけをするので、どうしても転職温度が担保されません。つまり、転職温度を上げるために、自社の魅力を訴求する必要がでてきます。この点が、『待つ』が基本の従来の採用とは大きく異なりますね」

転職を決定づけるためには、「押す力」と「引く力」が必要だと早瀬氏はいう。

「私は転職を力学のようなものと考えています。転職意欲は『今いる会社を辞めたい』という現職から押し出す力と、『この会社に入りたい』という引く力で構成されています。押す力と引く力の両方がないと転職は成り立たちません。

現職を辞めたくて仕方ない人は押す力がかなり強い状態ですので、引く力が小さくても獲得できる可能性があります。しかし、今の会社に特に不満を感じていない転職温度の低い候補者を引き抜こうと思えば、引く力が必要になります。つまり、自社の魅力をきちんと訴求する必要があるのです」

自社の魅力を把握し、引く力を高める

「引く力」を強めるために、まずは自社の魅力を把握することが重要だ。

「但しく把握をするためには、主観性と客観性が必要になります。自社社員に、自社を選んだ理由、継続して働いてくれている理由や魅力について質問をすること。一方で、自社を選ばなかった候補者や、知人・友人など、大衆の意見を聞き、外部からの自社へのイメージを確認すること。この主観性と客観性と事実の3つを見比べて、ギャップを埋めていく作業が必要となります。

魅力を把握したら、それを候補者に向けて正しい形で訴求していく必要がある。訴求する上で重要になるのが「拡散」と「伝達」だ。

「自社の魅力がきちんと言語化できていたとしても、それを多くの人に伝えていかなければ意味がありません。あらゆる手段を使って自社の魅力を『拡散』する必要があります。そうして興味を持ってくれた人に、もっとも分かりやすい形で自社の魅力を伝え、採用における期待値を伝えていくことが上手な採用につながるポイントです」

人事リソースの不足が課題

こうした能動的なリクルーティングを行っていると、どうしても人事のリソースが不足しやすい。複数いる候補者に応じて訴求すべきポイントを考え、メール文面をカスタマイズして1対1でやり取りしていくのは手間がかかるからだ。一括送信で工数を減らすことも可能だが、マスメールは候補者に「自分のレジュメをちゃんと読んでくれていない」と感じさせるおそれもあり、企業ブランディングとして逆効果になる可能性を含む。業務効率化が難しい領域だと早瀬氏は語る。

こうした課題が浮き彫りになる中で、ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティングを行うために外部リソースを活用する企業が増えているという。非生産部門であり数か月単位で状況が変わるため人員を補充しづらい人事部門を、外部サービスを利用することで一気に加速させようという考えだ。その領域について詳しくない人に採用を任せるとミスマッチが発生したり、現場のメンバーに面談を依頼するなどの手間が発生したりしやすい。「誰に委託するか」も、ダイレクトリクルーティングを成功させる上で重要な観点と言えそうだ。

今、人事に求められることとは

今はまだ追加施策の一つとして取り組む企業が多いダイレクトリクルーティングだが、今後はメイン施策へと変わるだろうと早瀬氏は話す。

「人材の流動性が高まったことで、『絶対転職するぞ』という層と『転職なんて全く考えてません』という層の間に、『転職してもいいかな』と考えている人たちの層ができました。この層に対してアプローチできる施策が、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングなんですね。

これから先、少子化や労働人口が減少していく中で、顕在層だけをリクルーティング対象にしていては優秀な人材をますます確保できなくなります。この中間層を取りに行かざるを得ない状況になるでしょう。そうしたときに、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングは必ずトレンドとなり、注目度もさらに上がってくるだろうと考えています」

ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティングがメイン施策の1つとなった場合、採用担当者に求められることは、どのように変化してくるのだろうか。

「採用担当者は、ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティングを含め、複数の採用手法を同時並行で進めることが求められるでしょう。媒体や施策ごとに行うべきことが異なるので、回さないといけないPDCAも違います。そう考えると、それぞれのデータを見て紐解く分析力と、プロジェクトを個別に管理する能力、この2つは必要になると思います。

また、今までと同じ人事の立ち位置で、指示されたジョブディスクリプションのまま人材を探す、という方法では採用は難しくなるでしょう。現場はスーパーマンを求めますから、そんな人を実際に採用しようとしても上手くいきません。これからは、『こういう事業課題ならこういう人の方がよいと思います』など、現場レベルの目線を持って自ら提案していく力が採用担当者にも必要になってくると思います」

あわせて、タレントプールの長期運用の必要性も高まっていると話す早瀬氏。ダイレクトリクルーティングでは、『転職したい』という押し出す力が高まったタイミングで候補者に声をかけることで採用が成功する。つまり企業は、候補者と関係性を構築し、その波がくるまで継続しておく必要があるのだ。

「しかし、タレントプールを適切に長期運用できている企業は、日本にはまだ一部しかない印象です。単に『タレントプールを作り、ポジションが空いた時にリストを見に行く』という使い方では、データベースにしかなりません」

ではタレントプールをどう長期運用していくべきか。解決策の一つがSNSだ。

「継続的に投稿をしてタイムラインに流したり、候補者の投稿に反応したり、簡単なことでいいんです。とにかく、常に何かしらの接点を持ち、コミュニケーションをとり続けることが今後とても重要な意味を持つと考えています。そうすることで、転機が訪れた時に『ここが募集していたから受けてみよう』と一番に想起してもらうことができます」

採用手法が多様化していく中で、人事・採用担当に求められることも変化してきている。しかしその変化についていくことは容易ではなく、時には外部の力を頼ることも重要だ。

「人事のリソース不足が課題となっている中で、私たちはリソースの提供だけに留まらず、人事におけるナレッジの共有をさせて頂いています。さまざまな企業を見てきている経験者だからこそ、客観的な市況観やアドバイスをお伝えできる。私たちはこの強みを活かして全力でサポートしていきますので、ダイレクトリクルーティング・ソーシャルリクルーティングに限らず、採用の壁に当たったときには頼りにして頂ければと思います」

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