【HRog10周年】「人材業界の価値を表現したい」 ウィルグループ新社長の見据える未来

株式会社ウィルグループ
代表取締役社長
角 裕一 氏
すみ・ゆういち/1980年千葉県生まれ。大学卒業後、2003年4月セントメディア(現ウィルオブ・ワーク)入社。2018年7月ウィルグループ執行役員に就任。2021年4月ウィルオブ・コンストラクション代表取締役社長就任。2022年6月ウィルグループ取締役を経て、2023年6月代表取締役社長に就任。趣味はトレイルランニング。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業様にインタビューし、この10年間が自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回は株式会社ウィルグループの角氏に、直近10年のハイライトと今後10年で目指す世界について話を伺いました。

海外と介護、新領域に挑戦し続けた10年

角氏は、ウィルグループの直近10年を振り返り「企業を成長させるために新領域に挑戦し続けた10年だった」といいます。

「業績的なハイライトは2つあります。一つは海外Working事業をゼロから立ち上げ、M&A(合併買収)を通じて500億円を超える規模まで成長させたこと。もう一つは、国内において『介護領域』と『建設技術者領域』の新規事業にチャレンジしたことです。

海外Working事業では、まずシンガポールで日系企業を中心に人材紹介を行っている会社を1社買収しました。そこで現地の社員と関係構築する上での課題や、M&Aによるリターン、市場の状況などを学習し、シンガポールでのM&Aを一気に広げていったんです。これがいわば、海外Working事業の第一章ですね。

その後第二章として、シンガポールでの経験を土台にオーストラリアへ進出し、大規模なM&Aを行いました。海外Working事業の売上500億円の内、400億円ほどがオーストラリアでの売上なので、ここで行ったM&Aが事業成長に与えた影響は大きいと言えます」

他方、国内では2012年9月頃に看護領域の人材紹介会社を買収しました。しかし、当時のPMI担当者は「看護では戦えない、介護業界に進出すべきだ」と判断します。当時の社長からは「買収した意味がなくなる」と反対されるも強く進言し続け、ついには介護領域への一歩を踏み出すこととなりました。これが功を奏し、介護事業は10年で国内事業の売上をけん引する事業へと成長します。

「我々が介護事業に勝機を見いだせた理由は2つあります。1つは、当時市場における大手競合他社があまり存在しなかった点。もう1つは、介護派遣のポイントを早期に理解し、事務派遣などのノウハウを転用できた点です。

例えばコールセンターや製造工場は一拠点の規模が大きく、そこで一度に数百人が勤務するため、派遣会社は『その数百人のうち何%を受注できるか』を考えて戦略を練ることが多いです。一方で介護施設は一拠点あたりの派遣人数が少ないため、『いかに多くの拠点で受注できるか』を考えることになります。一部署に1人が基本の事務派遣と似ているんですよね。他領域で培った土壌があったため、戦いやすかったと言えます」

市場を見極める力と自社の強みを掛け合わせ、挑戦を結実させた10年だったと振り返りました。

みんなが「自分の可能性」を信じられる世界を目指して

2023年6月にウィルグループの代表取締役社長に就任した角氏。今後の10年間では「人材業界の価値を表現したい」と意気込みを述べます。

「具体的には、派遣や委託で働く弊社スタッフがどれだけエキスパートになれるか、というテーマに挑戦したいと考えています。というのも、スタッフが定着しない現状があるため、キャリアの幅を広げ給与を上げる仕組みや、やってみたい仕事への挑戦ができる環境をつくりたいんです。

私自身、子会社で建設業の人材派遣・紹介に携わっている時期がありました。そこで目の当たりにしたのが、職種によって市場から見たキャリア価値が全然違うという現実です。同じ未経験の人材でも、就いた職種によって得られる給与や就労機会にこれほど大きな差があるのか…と驚きました。

ハイキャリアな道を歩むことが必ずしも正解ではないですし、自分にマッチするキャリアを選ぶことが最も大切です。しかし、自分が何をしたいのか、各職種がどんな仕事なのかが分からず、自分に合うキャリアが見つけられない方は多くいます。ウィルグループはそんな方たちが自分のキャリアを探す場所として、伴走し背中を押せる存在になることで、人材サービスの価値をもっと表現したいと思っています」

人材不足が深刻化しあらゆる企業が人材を欲しているにも関わらず、派遣スタッフは低い立場や限られたキャリアパスに甘んじなければならない。こうした不均衡な状況を危惧し、角氏は現状を変えたいと語ります。

「そのための手段として、無期雇用への転換を進めていきたいです。ウィルグループでは現在、約2万人の有期雇用スタッフを抱えています。仮にその10%が無期雇用に転換しキャリアパスの選択肢が増えれば、2,000人の収入や待遇が上がることになります。また我々にとっても、数十億円の採用費削減効果があるんです。

施策を進める上では、弊社の事業内容の幅広さを活かしたいと考えています。『幅広すぎて何をやっている会社なのか分からない』と言われることもあるのですが(笑)、何でもやっているということは、未経験から参入できる入り口を沢山持っていることでもあるわけですから。こんな事ができる会社は他にありません。だからこそ、我々が取り組むことで『人材業界の価値』を表現できるのではないかと思っています」

最後に、人材業界で働く人に向けてメッセージを伺うと、「みんなが『自分の可能性』を信じられる世界を一緒に目指したい」という答えが返ってきました。

「人は誰しも可能性を秘めています。私自身、これまでの半生を振り返ってみると、自分の可能性を信じられたことで踏み出せた機会がいくつもあります。

そして、人材ビジネスは『働く』というフィールドに携わる産業であり、働く人が自身の可能性を信じられるよう、寄与していくことに存在意義があると感じています。したがって人材業界で働く皆さんには、自分の仕事に対してポジティブに懐疑的な視点を持ってほしいと思います。本当に人の可能性を広げられているのか、できていないなら原因は何なのか。突き詰めることで、もっとエネルギーに満ちた業界になると信じています」

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