【HRog10周年特集】グループ再編×テクノロジーで多様な雇用を生み出す次の10年へ

パーソルテンプスタッフ株式会社
CIO テクノロジー本部 本部長
原田 耕太郎 氏
はらだ・こうたろう/2000年IoTベンダーに新卒入社。SEとして通信会社の基幹システムに従事。2006年コンサルティングファームに入社。ITコンサルとしてIT機器メーカーの基幹システムに従事。2012年インテリジェンス(現:パーソルキャリア)に入社。「an」を運営する事業のBITA部・部長に着任。その後、事業管理部門の統括部長職を経て、2016年より現職。また、CIOとしてテクノロジー組織強化の陣頭指揮を執る。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業様にインタビューし、この10年間が自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回は、大手人材派遣会社パーソルテンプスタッフ株式会社の原田氏に、人材業界の直近10年についてお話しいただきました。

派遣業界の再編成と寡占化が進んだ10年間

原田氏は、直近の10年間を一言で表すと「派遣事業の再編」になると言います。

「この10年間、派遣業界全体で大手数社への集約・統合が進み、より大きなシナジーを生みだそうとする動きが活発化しました。当社においても、この流れの中で組織編成やサービスのあり方について協議し実行していくことが、この10年の重要なテーマでしたね。私が着任した2016年当時に33社あったグループ企業は、10社へと再編されました。再編によって、経営について迅速な意思決定が可能になったほか、事業の規模や幅広さを活かした情報提供が非常にしやすくなったと感じています」

一方で、再編には苦労も伴いました。特に「テンプスタッフのシステム整備・システム統合は印象深い」と原田氏は語ります。

「再編の手順として、まずテンプスタッフのシステムや組織を整備し、その後グループ企業を統合することでテンプスタッフの仕組みをそのまま流用できるようにしました。一番苦労したのがテンプスタッフのシステム整備ですね。20年前に作られたシステムをつぎはぎしながら運用している状態からスタートし、5年がかりで新しいシステムにリプレースしました」

その後、他企業の統合を進めていきましたが、ある8社についてどの順番で再編するべきか議論が紛糾したといいます。答えのない問いに悩む中、当時の社長の「このままでは埒が明かないから、1回で統合しよう」という鶴の一声で方針が決定しました。

「初めは一度に複数の企業を統合することに不安を感じていましたが、決定した方針を聞いた瞬間にストンと納得でき、気持ちが軽くなったんです。複数の企業を1社ずつ統合していくと、その間大きなシステム改善ができません。とくに、当時強化したいと考えていたシステムの追加投資が行えなくなってしまう。一度に複数の企業を統合することはリスクもありますが、企業価値をより高めるための投資活動再開を早めることができます。この決断は結果的に正解でしたし、こうした判断をしっかり下せるのがテンプスタッフの強さなんだろうなと感じたことは、今でも記憶に残っています」

多様な価値観に合わせた雇用の創出へ

再編の10年間を経て、原田氏は「次の10年はテクノロジーを活用し、多様な価値観に合わせた情報提供を行いたい」と述べます。

「私が今、一番大切にしたいテーマは多様性です。これまでに集積した求職者・就業先双方の情報を活用し、多様な価値観に合わせた選択肢を増やしたいんです。テクノロジーの進歩が著しい現代では、人が仲介しなくても自動で最適化した情報を提供できます。だからこそ情報の集積度を高めることが重要であり、規模の大きさに強みがある弊社はそこを追求すべきだと考えています。

私はテクノロジーの力によって、これまで『条件が厳しくていい仕事が見つからない』と感じていた人がより簡単に仕事を見つけられる世界を実現できると思っています。例えばフルタイムに限らず、週2日や短時間の就業を希望している方に対しても、もっとスピーディーに最適な情報提供が可能になるはずです。就業先や就業形態の選択肢を増やし、それをテクノロジーによって素早く安価に提供できれば、就業先企業・求職者・当社にとって三方良しと言えるのではないでしょうか」

パーソルテンプスタッフでは現在、テクノロジー活用に向けた取り組みとして、社内で少人数のアジャイル開発型「スクラムチーム」を結成し、ツール開発などに挑戦しているといいます。

「『スクラムチーム』では、IT未経験でもポテンシャルのある若手を積極的に集め、実際に営業ツールの発案から開発までを行っています。ITに詳しくない社員でもツール開発ができることを実感してもらい、そこからツール開発に興味を持つ社員が増えればと期待しています。昔はツール開発といえばシステム部門が長い時間をかけて行うものでしたが、今やインターネット上で情報収集し試行錯誤すれば、誰でもツールを作れる時代です。システム部門と営業部門が交ざりあって、みんなで取り組んでいく機運を高めていきたいですね」

実際にスクラムチームに参加する社員からは、「アイデアがすぐに形になって楽しい」と好評だと言います。こうした社内の変化を踏まえ、原田氏は派遣業界で働く人に対して「やりたいことを見つけ、まずはやってみよう」とエールを送りました。

「面白そうだと感じたことに、ぜひ挑戦してみてください。結果を気にせず試しにやってみること、その繰り返しが毎日の仕事をより楽しくしてくれますよ」

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