【HRog10周年】労働市場に“社員クチコミ”が浸透した10年 マッチングのさらなる強化を目指して

オープンワーク株式会社
執行役員 セールス・マーケティング部門責任者
堀本 修平 氏
ほりもと・しゅうへい/明治大学卒業後、広告代理店に入社。2009年より博報堂で大手通信会社やコンビニチェーンの営業を担当。その後ユニクロにて、グローバルマーケティングを担当し、再度、博報堂に戻り、自動車会社の国内事業のマーケティング戦略やコミュニケーション施策を担当。2021年4月にオープンワークへ入社し、2022年7月に執行役員に就任。2022年12月東証グロース市場に上場。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業や人材業界の有識者にインタビュー。この10年間が業界や自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回はオープンワーク株式会社の堀本氏に、これまでのオープンワークの歩みとこれからの10年で取り組みたいことについてお話を伺いました。

働く一人ひとりの声に、企業が向き合うようになった

2007年の創業以来一貫して、企業と求職者の情報の非対称性を解消することに取り組んできた同社。社員による企業評価とクチコミを掲載するサイト「Vorkers」(現OpenWork)の運営からスタートし、2014年には働きがいに関する調査レポートを発表する「働きがい研究所」プロジェクトを立ち上げます。2016年には企業向け採用支援事業(現OpenWorkリクルーティング)を開始するなど、着実に活動の幅を広げてきました。

堀本氏は、オープンワークにとって大きな転換点は「企業クチコミサイトに加えてリクルーティング事業を開始し、情報プラットフォームに変化したこと」だったと語ります。

「『OpenWorkリクルーティング』を開始した当初は、自社の評価が赤裸々に書かれたサイトで本当に応募が集まるのかと疑念の声を多くいただきました。『うちに低いスコアをつけているサイトでしょ』と門前払いされることもしばしばで、営業に苦戦する時期が続きましたね」

しかし、2020年ごろから「OpenWorkリクルーティング」は徐々に市場に受け入れられるようになりました。堀本氏はその要因として、OpenWork自体の成長に加えて「自社の良いところだけを見せる採用から、自社の課題や改善点も含めて伝える採用へ、企業の価値観が変わり始めた」ことを挙げています。

「以前は、自社の組織課題をあまり伝えず、とにかく採用数を追いかけるスタイルの企業が大多数を占めていました。しかし、せっかく採用した人が入社後に実態を知ってギャップを感じ、結果的に早期離職してしまう、採用のマッチポンプ状態に陥ることも多くありました。

そんな中『OpenWorkリクルーティング』を使っていただいている企業様からは、『自社のクチコミをしっかり見ている人が多く、自社の組織課題に対して質問を受けることが増えた』とのお声を頂いています。質問に真摯に回答することで、候補者たちは改善点や今後の方針に納得した上で入社してくれます。結果的に入社後ギャップが減り、採用コストの効率化を実感する企業様が多いようです」

そんな変化を踏まえて、堀本氏はこの10年の最大の変化は「働く人一人ひとりの声に、企業が向き合うようになった」点にあると語ります。

「私たちが事業を始めた当時、インターネット上のクチコミは『無責任で信頼性が低いもの』というイメージがありました。しかしAmazonや食べログなどを皮切りに徐々にクチコミが生活に浸透し、あらゆる領域でクチコミが重要な情報源となりました。そして、労働市場においては『OpenWork』がその役割を担っています。近年、売上や利益だけではなく人材育成・組織づくりに注力する企業が増えたのも、クチコミを通して働く人たちの声が企業に届くようになったことの表れだと思います」

「クチコミデータ」を通して企業と求職者の架け橋に

今後10年間でオープンワークが実現したいことを尋ねると、「求職者と企業のマッチングをさらに活性化させ、一人でも多くの人が働きがいを感じられるようにしたい」と回答しました。

「日本の労働人口のうち、60〜70%が転職に興味を持っているとされています。しかし実際に転職に至るのはそのうちの10%未満。転職に興味を持つ人は増えていても、実行に移す人は増えていないのが実態です。

一方、今後労働人口が減っていく中で、企業の採用コストはどんどん膨らむことが予想されます。クチコミデータを活用すれば、求職者の方たちの転職に対する不安を払拭するとともに、企業の採用工数削減にもつながるマッチングを増やせるはずです。またそれらを推し進めることが、オープンワークのコーポレートスローガンにもある『働きがいをすべての人へ』の実現にもつながると考えています」

オープンワークが保有するクチコミデータからは、「単なる職歴や経験だけではなく、個人のキャリアに対する価値観やインサイトも読み解くことができる」といいます。 堀本氏は今度の展望について、「『企業のクチコミ』と『求人情報』をワンプラットフォーム上で発信できる強みを活かしつつ、個人の定性データも活用することで、求職者と企業のマッチング効率をさらに高めていきたい」と意欲を語りました。

「人事・採用をご担当されている方の中には、『自社の組織課題を公開する』ことに抵抗感がある方も多いと思います。情報の信頼性は我々の事業における生命線なので、企業様のご要望・ご依頼でクチコミや評価スコアの操作することは一切出来ませんが、前向きに組織課題に向き合おうとしている企業様であれば、クチコミを活用した採用コンサルティングも含めて付加価値の高いサービスを提供できると思っています。累計で89万人以上の求職希望の候補者が登録しているデータベースとなっていますので、ご興味をお持ちの方は、ぜひ私たちにお声がけいただけると嬉しいです」

(ライター:鈴木智華)

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