地域金融機関と連携しプロ人材を全国へ!みらいワークスの地方戦略を紐解く

株式会社みらいワークス
執行役員
高橋 寛 氏
たかはし・かん/新卒でNTTデータに入社し、IT戦略コンサルティングに従事。その後リクルートへ入社しHRサービスのシステム企画・商品企画・事業企画などを担当、2018年より日本人材機構へ。首都圏のハイクラス人材向け地方転職・地方副業サービス「Glocal Mission Jobs(GMJ)」を立ち上げ、地方HRマーケットを創出。2020年7月、日本人材機構からみらいワークスへの事業譲渡に伴いみらいワークスに転籍。2021年10月にGMJ部長、2022年4月に執行役員に就任。

全国的な人口減少に加えて都市部への人口流出が続き、地方企業は深刻な人手不足に直面している。そのような背景から、昨今では人材サービス会社が地域金融機関との連携や地方自治体からの案件受託を強化する動きも見られる。今回は100社以上の地方銀行・信用金庫(以下、地域金融機関)と連携する株式会社みらいワークスに、その経緯や戦略について話を伺った。

地域金融機関との連携でプロ人材と企業をマッチング

株式会社みらいワークスは、「日本のみらいの為に挑戦する人を増やす」をミッションに掲げ、プロフェッショナル人材(以下、プロ人材)に特化した人材サービスを提供している。このミッションを実現するために地域金融機関との連携をおこなっているという同社に、取り組みの経緯や概要を伺った。

「これまで当社は、都市部在住のフリーランス人材を都市部の企業に紹介するサービスを提供してきました。しかし人材の東京一極集中という社会課題を是正するためには、プロ人材が地方に関わっていく必要があります。私自身、仕事で地方をまわる中で『いい商材があるのに売り方がわからない』『生産性を上げたいが優秀な人材がいない』などの経営課題を抱える地方企業が多いことを実感しました。地方貢献したいプロ人材と地方企業を結びつけることでその土地の産業を活気づけ、地方の未来を明るくしていこうと考えて、地域金融機関との連携を開始しました」

引用元:株式会社みらいワークス

現在みらいワークスは、全国100社を超える地域金融機関と連携している。地域金融機関が企業の人材ニーズを汲み取ってみらいワークスに接続し、みらいワークスが7万2000人のプロ人材のデータベースから最適な人材を紹介する形だ。地域金融機関との連携にはどんなメリットがあるのだろうか。

「地域金融機関は地域に根ざしているため、企業から信頼されているのはもちろん、地方企業の経営者と直接会話する機会が多いのが大きな特徴です。経営者と経営課題や中長期的な目標などについて話す中で、お金だけでなく人材についての課題も見えてきます。地方企業の隠れた人材ニーズをすくい上げて解決に繋げられる点が、連携のメリットですね。

地域金融機関側としても、そのエリアだけでニーズに合った人材を探すのは難しいですから、地方志向のプロ人材を抱えているみらいワークスと手を組むメリットは大きいと捉えていただいています。

連携しているサービスは、正社員採用の「Glocal Mission Jobs(GMJ)」と副業マッチングの「Skill Shift」の2種類です。『Glocal Mission Jobs(GMJ)』では、経営幹部や事業承継者候補、マネジメント人材などハイクラス人材を正社員として紹介しています。もう一つの『Skill Shift』では、地方に貢献したいと考えているプロ人材を副業という形でマッチングして地方企業を支援しています。いずれも、経営課題を解決できるような人材を求める地方企業に活用していただいていますね」

人材紹介伴走サポートで金融機関の人材事業立ち上げを支援

みらいワークスでは2021年2月から、金融機関の人材事業立ち上げ支援として「人材紹介伴走サポート」の提供も開始した。その背景には、国が経営資源のうち「カネ」だけではなく「ヒト」も重要だとして、金融機関による人材支援を推進している流れがある。2018年3月に金融機関等による人材紹介事業が解禁され、本業の付帯サービスとして人材事業を立ち上げる金融機関が増えているのだという。

「『人材紹介伴走サポート』では当社のスタッフが地方の金融機関に赴き、一定期間常駐しながら人材紹介業の立ち上げを支援しています。金融機関の方にとっては全てが初めての試みとなるので、スタッフが半常駐して手取り足取りサポートする伴走支援は需要がありますね」

高橋氏は、「金融機関の方々に人材紹介業を『難易度が高いものだ』と思われないようにしたい」と語る。

「金融業も人材業も、課題をヒアリングし解決策を考えてご提案するという点で、やっていることは近いんですよね。解決策として融資や投資を提供するのか、もしくは人材を提供するのかの違いだけなんです。人材紹介は彼らが日々バンカーとして行ってきたことの延長線上にある、非常に親和性が高い事業であるとお伝えしながら支援しています。

例えば、取引先企業の事業拡大に伴う融資の商談の際に、『責任者が必要』『工場長がいない』などの悩みが出てくることもあります。人材紹介を行っていれば、そこで『では責任者を採りましょうか』と、お金の支援だけではない解決策を提示できる。その結果、企業が成長していけば融資も増えますから、本業収益にも繋がってくるわけですね。以前からこうした企業の包括的な成長支援が金融機関には求められていて、紹介事業の解禁によってそれがビジネスに紐づき始めたという印象です」

しかし、求人ニーズを引き出すことはできても、地域金融機関が人材を一から探し出すのは難しい。そこで、みらいワークスが持つ人材プールが強みになると高橋氏は言う。

「せっかく求人を取ってきても、地域金融機関が支援しているエリアにプロ人材がいない、いてもそのエリアで働きたいと考えている人材が少ないケースも多いです。また地域金融機関特有の問題として、エリア内で人を探して紹介しようとすると『取引先Aの人材を辞めさせて取引先Bに紹介している』状態になってしまうこともあり、問題に発展しかねません。そのため、当社の『地域貢献に興味がある都市部在住のプロ人材』を多数抱えている点が強みとなり、当社が選ばれる理由になっています」

実際にみらいワークスの人材紹介サービスを利用した地方企業からは、「今までまったく出会えなかったようなプロ人材を活用できる画期的なサービスだ」と大きな反響があったという。地方企業の社長は一人で会社を背負ってさまざまな悩みを抱えているケースが多く、他にも「みらいワークスさんのおかげで、右腕となる人材に出会うことができた」「マネジメント体制が強化されて、業務の拡大ができている」などの声も寄せられている。

プロ人材の活躍の場をもっと広げて地方を元気にしたい

高橋氏は、みらいワークスのこれからの展望について、「地方企業とプロ人材の両者への働きかけを行っていきたい」と語る。

「より多くのプロ人材と地方企業をつなげるために、人材側と企業側、両者へのアプローチに取り組んでいます。企業側の問題として、都市部の人材に抵抗がある企業が多いことが挙げられます。『地元の人がいい』『ここに住んでほしい』などの、地方企業側のバイアスを取り除く働きかけに注力していきたいです。

目の前の経営課題と向き合った時に『やっぱりプロ人材が必要だ』と気付いて耳を傾けてくれる企業さんを増やしていくことが非常に大事だと考えています。そのきっかけとして、まずは副業で試してプロ人材の良さを実感していただき、次は『中核人材を採用しよう』という流れを作っていきたい。地域金融機関との連携によって、今まさにこの流れづくりに取り組んでいるところです。

プロ人材側としては、地方に貢献・活躍できる場があることを知らない方が多いのが課題点です。そのため我々が啓蒙していって、プロ人材が地方で働くことや地域貢献することをもっと身近にしていきたいです。地方との関わりがライフワークややりがいになり、自身のスキル・経験が地方創生につながっていく。そんな世界観を発信し、ポジティブな理由で積極的に地方で働く人を増やすことを目指していきます」