医療福祉業界にダイレクトリクルーティングの選択肢を トライトメディア説明会レポート

少子高齢化が進み医療や介護の需要が急速に高まる中、医療福祉業界の人材不足もまた深刻となっている。こうした状況下で、医療福祉業界を中心とした人材サービスを提供する株式会社トライトは、ダイレクトリクルーティングサービスの新たな展開を発表した。今回は2023年12月5日に行われたメディア説明会のレポートをお届けする。

医療福祉業界の人手不足に向けた取り組み

スピーカー
株式会社トライト
代表取締役社長/トライトグループCEO
笹井 英孝 氏
ささい・ひでたか/1991年東京大学法学部卒業。2000年コロンビア大学経営大学院修士課程(MBA)修了。国内大手銀行、外資系コンサルティングファーム等を経て、2005年、37歳で医療機器メーカーであるオムロンコーリン(現フクダコーリン)の社長に就任。その後、セント・ジュード・メディカルやライフドリンク カンパニー等、数社の経営トップを歴任。2019年10月トライト代表取締役社長 兼 トライトグループCEOに就任。

医療福祉業界の人材不足は年々深刻化している

日本は超高齢社会に向かっています。少ない労働人口で多くの高齢者を支える必要があり、その深刻度は増していくと言われています。

出典:株式会社トライト

その中で医療福祉業界に目を向けると、介護人材は2019年の段階で約211万人の就業者がいるものの、約11万人の人材が不足している状況です。施設によって不足の程度は異なりますが、80%の人手で運営している施設も少なくありません。

この先、高齢化が進みながらも就業者数が変わらない場合、2040年には約69万人の人材不足が予想されています。この状況下では、人手が足りない施設では50%~60%の人手で運営せざるを得ない状況に陥る可能性もあります。

人材不足は有効求人倍率にも顕著に現れています。近年は、医療福祉職種の有効求人倍率は全職種と比べて約3倍となっており、非常に深刻な状況です。この状況は変わらないどころか、むしろ悪化する可能性に危機感を抱いています。

国もこの状況に対し、介護業界の人材確保や育成という観点から学生への融資を行ったり、生産性の向上・人材定着を促進するため施設の運営をサポートしたりと様々な対策を講じています。また、介護職における他業種との給与格差も人手不足の大きな要因と考え、2024年2月から通常の賃上げとは別に、月6000円の賃上げを実施することが決定しました。

しかしながら、医療福祉業界のD.I.(ディフュージョン・インデックス)を見ると、依然として業界の人材不足感は解消されず、他産業と比較して最も深刻な状況であることが分かります。

出典:株式会社トライト

トライトのこれまでの取り組み

トライトは医療福祉業界の人手不足に対する課題解決に向けて、「働く人を増やす」「施設運営の効率化」の2つの課題に着目し、支援を行っています。

「働く人を増やす」取り組み

「働く人を増やす」取り組みでは、従来の人材紹介や人材派遣サービス事業による人材確保に加え、新たに医療福祉業界で働いてもらう人を増やすべく、無資格者・シニア層の就労支援や、潜在資格保有者の復職支援、リスキリングにも注力しています。

1.人材サービス

営業担当(以下、キャリアアドバイザー)が、求職者様と人材を採用したい法人様をマッチングする人材サービスです。一人のキャリアアドバイザーが双方を担当し密にコミュニケーションをとることで、最適なマッチング機会を提供しミスマッチが起こりにくい体制を整備しています。

2.無資格者、シニア層の就労支援

介護業界に関心を持つ無資格・未経験者や、60歳以上の方の就労支援を行っています。また無資格者に対しては、介護職の入門資格とされる介護職員初任者研修の資格取得を支援し、一定の条件を満たした方には受講費を免除するサポートを行っております。

3.潜在資格保有者の就労支援

看護師、介護士、保育士といった資格を持ちながらも、ライフステージの変化等により就労していない「潜在資格保有者」に対する復職支援にも取り組んでいます。キャリアアドバイザーとの面談を通して、希望条件に沿った職場への人材紹介・人材派遣を行っております。

4.リスキリング

介護士や看護師の有資格者に対して、医療現場におけるICT化のサポートを提供するためのITに関するリスキリングを実施しています。社会全体でデジタル化が進む中で、施設の業務効率化を支援する介護ソフトなどを導入した後、運用のサポートの一環として使い方を教えられる人材が求められております。リスキリングによって、現場で培ったスキルや経験を活かしながら活躍できます。

施設運営の効率化

トライトが注力する2つ目が、少ない人数で組織運営を行えるようにするための「施設運営の効率化」に向けた支援です。最も効果的な施策の一つはICTによるソリューションだと考えていますが、医療福祉業界は一般企業に比べてICTの浸透が遅いと言われています。

業界が抱える課題解決のために、トライトは大きく分けて2つのICTソリューションを提供し、働きやすい職場環境作りに貢献します。

1.介護ICTの開発・提供

トライトは、2023年に介護施設向けにICTソリューションを展開する株式会社bright vie(ブライト・ヴィー)をグループ化し、介護ICTの開発・提供を開始しました。介護領域に特化したバックオフィスシステムやデータ連携プラットフォームを提供し、業務効率化や生産性向上、人材の定着に貢献しています。

2.ITスキルをもった医療従事者・資格者の育成

「働く人を増やす」取り組みでも述べた通り、トライトでは、ITベンダーと提携した研修により、介護ソフトなどのITスキルを修得した看護師、介護士の育成をしており、その方々がオンサイト或いはサポートセンターからのリモート等で現場のICT化をサポートしています。医療福祉現場での勤務経験と知識があるので、より具体的な支援・アドバイスの提供が可能で、施設様からは非常に高い評価を頂いています。

新たな人材採用プラットフォームについて

スピーカー
常務執行役員 営業統括
野澤 卓司 氏
のざわ・たくじ/人材派遣会社、工務店等を経て、2012年トライトグループ参画。大阪本社責任者、東京本部責任者を経て、2018年営業本部長就任。2019年執行役員、2020年4月常務執行役員就任。

介護現場では人材不足が最大かつ喫緊の問題に

出典:株式会社トライト

2023年11月、トライトが介護施設の管理者やマネジメント層の方500名に対して実施した「介護職の現場課題に関する実態調査2023」によると、約60%の方が「人材不足」を最も課題に感じており、さらに95%の方は改善が必要だと回答しています。

慢性的な人材不足の主な理由は、採用後の早期離職にあると考えています。介護現場では「採用した職員の1年間の定着率」が100%の施設はわずか10%程度と極めて少ない数字となっています。

職員が早期離職してしまう最も大きな理由は、「採用活動や定着促進にリソースを割けない」ためです。当社の調査データによれば、人事部や採用の専任者がいる介護施設は全体のわずか2割程度となっています。

具体的には、約8割の施設が、本業である施設利用者のケアと兼務しながら採用・定着の活動を行っています。この兼務が大きな負担となり、採用活動や定着に向けた取り組みに対応しきれていないことが課題です。その結果、早期離職を招いてしまっていると考えています。

また、医療福祉業界ならではの課題として「求職者側と法人側のマッチング要素の煩雑さ」もあります。

勤務時間や給与などの条件面だけでなく、運営方針や施設長との相性など様々なマッチング要素が存在します。そのため、他の産業以上に法人様と求職者様のニーズが合っていることが重要です。つまり、人材定着の課題を解決するには、採用時のマッチング精度の向上が不可欠と言えます。

医療福祉業界になぜ「ダイレクトリクルーティング」なのか

医療福祉業界の人材不足という課題解決に向けて、ダイレクトリクルーティングの活用が必要だと考えています。ここでは、ダイレクトリクルーティングのサービス内容や、医療福祉業界に必要だと考える理由を説明します。

従来の採用は、人材紹介会社や求人広告等を介して応募者が来るのを待つ「待ちの採用手法」です。一方、ダイレクトリクルーティングは、人材の選定からアプローチなど、採用に関わる業務を法人が自発的に行う「攻めの採用手法」です。

ダイレクトリクルーティングサービスでは、データベースの中から自社に適した候補者を自分で選定できます。選考も自ら行うため、コミュニケーション齟齬の発生を防ぐことが可能です。結果として、マッチング精度の高い採用が実現できるでしょう。

実際にダイレクトリクルーティングサービスは、採用市場において年平均成長率30%以上と市場規模も大きく伸び、近年注目を集めています。しかし、トライトが全国の介護施設に向けて実施した調査結果では、介護業界のダイレクトリクルーティングサービスの導入率は全体の2割程度でした。

採用活動や定着促進活動にリソースを割きにくい状況であることから、興味はあっても実施できない施設が圧倒的に多い印象です。

また、実際にダイレクトリクルーティングサービスを利用している法人様についても、自力でスカウトすることや求人票を作成することの大変さ、工数に対しての課題感は確実に存在しています。

このような背景から、ダイレクトリクルーティングサービスの展開においては、マッチング精度が高い採用チャネルという価値だけではなく、可能な限り工数やリソースをかけずに採用できるサービスを実現する必要があると考えます。

トライトの新展開「TRYTワーカー」

出典:株式会社トライト

トライトでは採用における課題解決を目指し、ダイレクトリクルーティングサービスについて新たな展開を図ります。

従来のダイレクトリクルーティングサービスにとどまることなく、「もっと楽に使えて、もっと楽に採用できるサービスを」をテーマに、医療福祉業界にフィットしたダイレクトリクルーティングサービスを提供します。

ダイレクトリクルーティングサービスの準備にあたっては、約20年に渡り人材サービスで培ったトライトの知見やノウハウ及びデータベースを総動員しました。

2021年にHRテックをベースとしたサービスの開発・運営を行う株式会社HAB&Co.を買収し、プラットフォームの基盤を整え、2022年に保育領域でダイレクトリクルーティング事業を手掛けていた株式会社ウェルクス(※2022年7月に株式会社トライトキャリアに吸収合併)をグループ化。オペレーションの知見を取り入れ、このタイミングで保育士のダイレクトリクルーティングサービスを開始しました。

2023年の2月には、ダイレクトリクルーティング事業の専門部署を立ち上げ、医療福祉業界の求職者向け総合サービスサイト「TRYTワーカー」内で看護職・介護職向けのサービスも開始し、職種を拡大しています。12月にはこれまで2つに分かれていたデータベースの統合が完了しました。

ここからさらに、トライトだからこそできるダイレクトリクルーティングサービスの提供を本格的に進めていく考えです。現時点では発展途上ではありますが、約3カ月ごとを目安として新たな機能の拡充も予定しています。

今後は面接設定の自動化やAIマッチングを予定

今後実装を予定している新機能は次の通りです。

●自動化機能

メールの自動返信やスカウト対象者の自動選定、対象者に応じたスカウトメールの自動配信などのフローを自動化し、「工数」に対する課題を解消します。

●対応職種の拡大

24年3月を目処に職種の拡大を計画しています。従来の看護師、介護士、保育士、栄養士に加え、新たにリハビリ職にも対応予定です。デンタル(歯科)領域など、慢性的な人材不足が続いているすべての産業の職種において展開していく予定です。

●マッチング機能のAI搭載

25年度中にはAIによるマッチング機能の実装を予定しています。これまでキャリアアドバイザーが行ってきたマッチングや採用ノウハウを蓄積してきたトライトの知見を活かし、精度の高いマッチングをAIで実践していきます。

このように、様々な機能を組み込むことで、医療福祉業界の課題解決に向けて、より簡単に、より良い人材を採用できる世界を追求していきます。

紹介も、ダイレクトも。両輪でのサポートがトライトの魅力

一方で、ダイレクトリクルーティングサービスを実施するには、採用する施設側も一定の知識やスキルが求められます。採用の専門部署を持たない施設が全体の約8割にも及ぶ医療福祉業界においては、運用に向けた支援が必要であると認識しています。

そのためトライトでは、ダイレクトリクルーティングサービスの導入に際して、法人様に伴走し丁寧にサポートいたします。そのため、採用に不慣れな方でも安心してご利用いただけます。また将来的には、このプロセスもAIに紐づけることを想定しています。

医療福祉現場では、人が足りないといった課題に対して、早く採用したい、じっくり選びたい、任せたい、攻めの採用をしたい等、ニーズは様々です。

トライトでは、ダイレクトリクルーティングと人材紹介・派遣の両サービスを提供することで、採用活動における多様な選択肢を提供し、引き続き、人手不足に向けた課題解決に取り組んでいきます。