【2024年問題特集】建設業界、どのくらい対策できてる?ヒューマンリソシアの見解と支援策

(左)ヒューマンリソシア株式会社
コンストラクション事業部 事業部長
増子 洋行 氏
ましこ・ひろゆき/2002年4月ヒューマンリソシア入社。
人材派遣事業部門での営業を経験後、2013年に新設された建設・不動産業界に特化した人材派遣部門であるコンストラクション営業統括本部・営業部長に就任。2017年4月よりコンストラクション事業部長、現職。人材派遣、専門職人材の育成型派遣、自動化・省力化支援など、多方面から建設業界における人材課題の解決を支援している。

(右)ヒューマンリソシア株式会社
コンストラクション事業部 コンストラクション営業本部長
福田 岳人 氏
ふくだ・たけと/2003年4月ヒューマンリソシア入社。人材派遣を中心とした人材サービスの営業職を経験後、立川支社長、千葉支社長などを経て、2018年4月よりコンストラクション事業部の営業部長に就任、2022年4月より現職。同・人材派遣の営業部門のマネジメントに携わるほか、DXツール提案による自動化支援にも注力。

「働き方改革関連法」の適用猶予期間が終了する2024年4月が目前に迫り、「2024年問題」という言葉を目にする機会が増えた。この「2024年問題」を受け、建設業における人材獲得競争が激化し、労働環境の改善が急務になっている。そこで今回は、総合人材サービス会社で、建設業への人材派遣・DXツールなどのサービス提供に強みを持つヒューマンリソシア株式会社に、建設業の人材動向や取り組むべき対応と支援策について話を伺った。

猶予期限間近もなかなか対策は進んでいない

2024年問題解決のための取り組みとして、長時間労働の是正や労働環境の改善が求められ、そのためには人員の確保やDXツール導入などによる効率化を進めることが不可欠と言われている。

実際の対策状況について「猶予期間が間近なので、各社温度感をあげて取り組んでいる」と増子氏は述べる。

増子氏「顧客企業を訪問すると必ず『2024年問題』が話題に上がりますね。2019年に時間外労働の上限規制が定められましたが、建設業界は5年間の適用猶予期間を与えられてきました。2024年4月から上限規制が適用されるため、建設業界は働き方を大きく変えなければなりません。労働時間の削減には、業務プロセスの見直しや分業化による業務効率化、または人材採用による増員などの方法で対応する必要があります。

昨今の人材採用の市況感としては、有効求人倍率は高止まりしており、超売り手市場と言われています。もちろん建設業界でも人材の獲得競争が激化しているため、採用は簡単ではありません。そのため、大手企業を中心に業務の効率化を進めています。業務の棚卸を行い、『2024年問題』対策やDXの専任部署を設置し取り組んでいるという話も聞きます」

一方で、増子氏は「取り組みの成果はまだまだ足りていない」との見解を示した。

「実態としては、ほとんどの企業が、対策を講じてはいるもののまだ上手くいっていない状態と見受けられます。中には、猶予期間終了の目前である今から対応するという企業もあるようです」

ヒューマンリソシアの強みを活かした取り組み

そんな中、ヒューマンリソシアは「2024年問題」の解決に向け、育成型の人材サービス事業を強化している。その特徴や具体的な取り組みについて伺った。

人材不足に対する人員確保への取り組み

増子氏「弊社は、『人材派遣』『海外ITエンジニア派遣』『人材紹介』などの人材サービスを展開しています。昨今では、社会が大きく変化し、新たに必要とされるスキルやポジション、人材ニーズが次々とうまれています。こうした中で弊社は、グループの中核事業である教育を活かした『育成型人材派遣』サービスを強化し、企業の人材不足解決に貢献したいと考えています。『育成型人材派遣』では、登録スタッフを対象に建設の基礎知識やスキルトレーニングを行いBIM/CIMオペレーターとして育成し、派遣スタッフとして就業いただきます。育成トレーニングを経て派遣就業したスタッフは、約500人ほどとなりました」

BIM/CIMオペレーターとは

BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling,Management)ソフトウェアを使用して、設計情報や二次元図面を三次元化したモデルを作成する業務のこと。

日本の建設業界で長く使われているCADは今も主流ではあるが、これからはBIM/CIMの普及拡大が見込まれているという。国土交通省が『BIM/CIM活用ガイドライン』を制定し、2023年からBIM/CIMの適用を原則義務化したためだ。

増子氏「BIM/CIMは、CADの作図経験があったとしてもすぐ習得できる技術ではありません。2次元の平面図を作成するCADに対し、BIM/CIMは建築物の3次元の立体モデルを作成するという根本的な違いがあります。そのため、BIM/CIM技術を有し実務実績のある人材が不足しており、需要に対し人材供給が追いついていないのが現状です。

こうした顧客ニーズや要望にお応えするため、BIM/CIMオペレーターの人材育成を今後も強化していく方針です」

しかし近年では少子高齢化や労働人口減少の影響もあり、教育を行おうにも働き手の母数自体が足りなくなってきている。そこで福田氏は「海外エンジニア派遣」にも力を入れていきたいと話す。

福田氏「海外のエンジニアを弊社の正社員として雇用し育成したうえで、派遣・紹介する動きを活発に進めています。グループ会社に国内最大級の日本語学校があり、こうしたノウハウを活かした日本語教育やBIM/CIMなどのスキルも育成し、建設エンジニアとして顧客企業に派遣しているのです。海外の大学等でBIM/CIMを含む専門知識を学んだ就労意欲が高い方を採用していますので、勤勉な方が多いと顧客から好評です」

業務改善・効率・生産性向上に対する取り組み

残業時間を削減するためには、人材採用の他にもDXによる業務効率の改善が急務だ。ヒューマンリソシアは企業のDX推進のため、DXソリューションの提供も行っているという。

福田氏「弊社では業務改善や効率化に向けITツールをご提案し、生産性向上のサポートをさせていただいています。ご提案するITツールは、RPAやSaaS、最近ではChatGPTなどの生成AI活用ツールなどが多いですね。例えば、伝票をデジタルツールで読み取ってデータ化し、RPA(Robotic Process Automation、事務作業を自動化する技術のこと)で自動処理をする仕組みを作るなど、複数のITツールを組み合わせ、手作業とPC作業を同時に自動化するご提案も行っています。他にもAIツールでの議事録作成や、建設資材の管理の効率化などもご提案しています。

建設業界はアナログ文化が根強く残っている企業も多く、『何かしなければいけないけど、何をやればいいかわからない…』という企業や、ITツール自体に苦手意識を持つ企業も多いです。一方で競合の取り組みを意識する風潮も強いため、先行している他社の動きにも敏感です。そのため、「自社でも取り組まなければ」という考えも強く、他社の取り組みや弊社が提案するITツールにも高い関心を持っていただいていると感じています。建設業全体の活性化に向け、DX推進に向けた啓蒙活動も積極的に行うとともに、DX効果を最大化させるためのサポートをしていきたいです」

2024年問題に対してどのような事業展開、顧客支援を続けるのか

最後に、ヒューマンリソシアとして「2024年問題」に対して取り組みたいことについて話を聞いた。

福田氏「働き手となる労働人口が減少するという社会問題に加えて、日本の建設業界で働く人材は団塊の世代が多く、30代~40代の層が少ないという問題があります。つまりこの先、団塊世代の退職によって一気に人材不足が加速する未来を見据えなければならないということです。したがって我々は、海外エンジニア派遣を始め、業務効率化による生産性向上サービスなど、多様な解決策を提案することで、この先も建設会社及び業界全体に対して支援をし続けたいと考えています」

増子氏「新たな取り組みや切り口も増やし、顧客支援ができる体制を増やしていきたいと考えています。最近はお客様から業務請負のご要望を頂くことが増えました。例えば、弊社が得意とするBIM関連の業務を引き受けることができれば、お客様は本来のコア業務に注力できるようになります。そのため、今後は業務請負も強化していくポイントの1つと考えています。

また建設現場では、施工管理職など現場のリーダー的なポジションの方が業務過多になる傾向があります。こうした現場運営スタッフの育成などにも取り組んでいきたいですね。長年建設業界に携わってきた弊社だからこそ、単に不足する人材をご提案するのみではなく、付加価値のある人材サービスを提供できるはずです」

また増子氏は、人材採用に対する建設業界側の意識も変化してきていると見解を示した。

増子氏「人材不足が加速する今、業界外の未経験人材も受け入れていかなければいけないよねという声が挙がっています。実際に未経験者が弊社のグループ会社である教育機関でCADを学び、建設業界で活躍している事例もあります。このような機会をどんどん提供していきたいと思っています。

特に女性の方は建設現場にマイナスなイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、今では職場環境は大きく改善され良い方向へ変わってきました。建設現場の事務所は通常のオフィスのように綺麗で快適になり、食堂がある現場事務所もあるなど、働きやすい環境になっています。実際に見てみたらイメージがかなり変わると思いますよ。

女性が働きやすい環境や制度も整備されてきており、建設現場では女性の所長も増えました。弊社としても、人材サービス事業を通じて、このような建設業の良い変化をPRすることで、業界自体に興味を持つ人材が増え、業界の活性化や人員の確保に繋げられると嬉しいですね。ヒューマンリソシアは2024年問題も含め、建設業界全体がより良くなるよう、これからも支援してまいります」