【HRog10周年特集】キャリアデータの活用が変える、これからの採用のあり方

株式会社ワンキャリア
執行役員
小川 勇輔 氏
おがわ・ゆうすけ/福岡県出身。早稲田大学を経て、2015年に新卒で株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)に入社。広告・店舗向け決済サービスなどの営業経験を経て、2017年2月に学生時代にも働いていた株式会社ワンキャリアへ参画。現在はコンサルティングセールス事業部管掌の執行役員を務める。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業様にインタビューし、この10年間が自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回は、株式会社ワンキャリアの小川氏に、過去8年間の歩みとこれからの採用のあるべき姿について伺いました。

キャリアデータをもとにHRマーケットの課題に立ち向かった8年間

2015年に創業した株式会社ワンキャリア。同社が運営する「ONE CAREER」は圧倒的な口コミ数が支持を集め、学生利用率2位を誇るメディアへと成長しました。小川氏は急成長を経験したこの8年間を振り返り、「キャリアデータを基にHRマーケットの課題に立ち向かった8年間」であったと語ります。

「サービス立ち上げ時に私たちが着目したのは、HRマーケットに求職者の参考になるデータが少ないことです。当時、新卒ナビサイトといえば、顧客企業の出したい採用情報を発信する企業視点のメディアが主流でした。こうしたビジネスモデルではどうしても企業が発信したい情報しか開示されないため、学生にとって透明性がないのが問題だったんです。学生が本当に知りたいのは、具体的にどんな選考ステップがあるのか、どんな人がこれまで選考を通過してきたのか、などの情報です。このような学生が知りたい情報を集約し、これまで見えなかったデータを可視化したメディアとしてスタートしたのが『ONE CAREER』でした。

創業から5年間は、事業を軌道に乗せるために時間もお金も投資していた時期です。良いサービスにするには口コミの数・質が重要だったため、はじめはとにかく、学生さんに向けた発信に集中していましたね。

単なるプロモーションではない、社会課題への問題提起も多数行ってきました。例えば2019年に行ったのが『#ES公開中』のキャンペーンです。『就活に透明性を』をテーマに、渋谷駅前で『人気企業20社の選考を通過した実際のES』を配布したんです。ESを大量に書くのに膨大な時間を取られ、本来一番大切である働き方やキャリアについて考える時間が十分に取れていない就活のあり方に一石を投じるキャンペーンでした。前例のない取り組みが注目を集めてメディアにも多く取り上げられ、結果的に認知が広まるきっかけにもなりました」

ユーザー数が右肩上がりで増え、学生に広く利用されるメディアへと成長した同社は、蓄積したデータを活かし企業向けの採用支援に事業を拡大します。2020年には、就活生の動きや競合企業の採用活動をデータで可視化できる「ONE CAREER CLOUD」をリリースしました。

「それまで、内定者が辞退をして競合他社に流れていってしまっても、どうして自社が選ばれなかったのか理由を突き止めるのは不可能でした。そこで、私たちの保有しているデータが活かせないかと考えました。ONE CAREERでは、説明会やインターンシップ・選考における口コミや体験記が50万件以上(2023年8月末時点)蓄積されています。この50万件のデータから、学生の動きや他社事例をクラウド上で収集・分析できるサービスとして『ONE CAREER CLOUD』を開発しました。各選考ステップにおいて、採用競合他社との違いが何なのかが、定量だけではなく定性的なコメントベースでも分析できるようになったのは、採用活動を革新する大きな一歩だったのではないかと思います」

これからの採用には根拠のある戦略が必要に

今後10年は、『人の数だけ、キャリアをつくる。』というミッションの実現に向け、キャリアデータの存在を日本全国に浸透させていきたいと小川氏は言います。

「採用活動におけるデータの価値は今後どんどん高まっていきます。新卒採用では、早期化の流れが継続しています。またコロナ禍を経てほとんどの会社がオンラインで説明会やインターンシップを行うようにもなり、採用活動の時期や手法だけでは差別化がしづらい時代となってしまいました。

差別化が難しい市場では、人材の採用難易度も飛躍的に上がっていくでしょう。そんな中で採用を成功させるためには、勘や経験だけに頼るのではなく、競合他社や学生の動向などのデータをもとに根拠のある採用戦略を立てる必要性が出てきます。

今後も私たちは、データの重要性を発信し続けていきます。個人の方に向けては口コミや体験記を通してキャリアを考えていくきっかけを作っていければと思っていますし、法人の方に向けては自社と合う人材の選定や採用の最適化を支援していきたいと考えています」

最後に小川氏は、採用担当者の方に向け「データを通じ、本質的な課題解決のお手伝いをしたい」とメッセージを送りました。

「私たちは採用課題を解決して採用成功に導いていくのはもちろん、『そもそも新卒採用をするべきなのか』といった前提の問いに対しても、解決に向けた根拠のあるご提案をいたします。データに少しでも関心を持っていただけた方がいれば、一度お話させていただければと思います」

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