ディップ発・ボーナス付きスポットワーク「スポットバイトル」事業発表会レポート

2024年10月1日、ディップ株式会社は新サービス「スポットバイトル」のリリースを発表した。タイミーを皮切りに今注目が集まるスポットワーク領域。今回は、同社が開催した事業説明会のレポートをお届けする。(以下、発言は要約)

働き方の多様さでユーザーファーストを実現したい

まず初めに、代表取締役社長 兼 CEOの冨田氏がサービスリリースの経緯を説明した。

冨田氏「当社は非常にフィロソフィーを大切にしている会社です。今回の新事業は、「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念に基づいた、社会を改善できるポテンシャルを持った新サービスだと自信を持っております。

我々のフィロソフィーの中心にはユーザーファーストの考えがあります。これまでもアベノミクス発動やコロナ禍など、様々なタイミングで求職者の時給を上げる取り組みを実施してきました。

現在、物価の上昇に比べて時給が追いついてこないと感じている方々が多くいます。 例えば学生の47%の方が金銭的な不安を抱えているという調査結果があったり、サラリーマンの方でも、 働き方改革によって残業がしづらくなり収入が減っていたりという現実があります。こうした状況下で、空いた時間を使って少しでも稼ぎたいという思いからスポットワーク市場が急激に伸びているのが現状です。

スポットワーク市場の問題点は、ほとんどが最低時給での募集であるという点だと考えています。ワーカーの経験値が分からない状態で働きに来てもらうことになるため、その仕事の経験がある・精通してる方でも、一律に最低時給での募集になっているんです」

そこでディップが考えたのが、良い働きをした人にはボーナスが支払われる「Good Job ボーナス」の仕組みだ。

冨田氏「スポットワークでは、ワーカーの総時給に対して30%の手数料をいただくのが一般的な収益構造となっています。例えばワーカーの時給が7000円であれば、2100円が手数料として仲介会社に入る計算です。我々はフィロソフィーに基づき、この30%の手数料をなんとかしてワーカーの時給に振り分けられないかと考えました。

我々は手数料のうち20%をいただき、10%を時給に還元します。『Good Jobボタン』という機能で店舗側にワーカーの働きを評価していただき、『Good』評価を受けた方に対して当社からボーナスを支給する仕組みです。

一方で、無断欠勤する方や真面目に働かないワーカーに対しては、その10%分を企業側の手数料割引に充てることで対応します。ワーカーが良い働きをした場合はその方の時給が10%上がり、満足いただけなかった場合には他社サービスに比べて10%安くなる我々独自のサービスを考案いたします。 ※1

このサービスを通して多くの働く人の生活、ひいては社会を改善していきたいです」

※1:2024年10月7日、同社は「Good」評価でなかった場合の手数料割引を廃止すると発表した。割引を目的に「Good」評価がされないことで、待遇向上が果たされないケースを懸念しての対応となる。

働き方の多様さでユーザーファーストを実現したい

次に、AI・DX事業本部長の藤原氏よりサービスの説明があった。

藤原氏「スポットバイトルの独自機能『Good Jobボーナス』は現在、特許を出願しております。仕事を『Good』評価された場合、当社が給与にボーナスを上乗せして支給いたします。 1回でもインパクトのあるボーナスですが、例えばユーザーが月5回勤務した場合、4000~5000円の収入の差になります。サービス開始時は『Good Jobボーナス』を給与の10%で開始していますが、需給のバランスや業界充足率を鑑みて、フレキシブルに変更することも検討しております。

『Good Jobボーナス』を設けることによる掲載企業のメリットは大きく2つあります。1つ目に、追加料金なしで質の高いワーカーを確保できること。2つ目に、ワーカーのリピート率が向上することです。

スポットバイトルでは企業がワーカーに『Good』評価を行った割合を、『Good率』として求人票上で見られるようにしております。ワーカーは『Good率』の高い企業に積極的に応募しますので、『Good率』が高い企業ほど応募が集まりやすくなる仕組みとなっています。こちらを軸に他社との差別化を図っていきたいと考えています。

また、スポットワーカーの多くはシフトバイトも兼務しており、実際にバイトルの応募全体の約3割が短期カテゴリーの応募となっています。今後は短期カテゴリーにスポットバイトルの求人も掲載されるようになり、さらに利便性が上がっていく想定です。

ユーザーが仕事探しをするときの思考や環境は様々です。バイトルに加えてスポットバイトルを始めることで、さらに多くのユーザーの思考に寄り添って選択肢を提供できることになりました。この2つのサービスでユーザーのニーズに応えていきます」

続いて、2つの利用シーンを想定したデモンストレーションが行われた。バイトル上の求人ページには、「お試し」としてスポットバイトルに応募できる動線が用意されている。大学生が長期バイト探しの判断材料として活用する様子が実演された。シフトバイトとスポットワークの両方のサービスを提供している、ディップならではのユーザー体験になると藤原氏は語った。

藤原氏「スポットバイトルのリリースによってバイトル自体の提案も増やせると考えています。複数店舗を展開してるチェーン店の場合、人事側で各店舗の求人需要の把握に時間がかかり、一部バイトルを提案できていない店舗がありました。スポットバイトルをご導入いただくことで、人事経由ではなく店舗ごとの需要をキャッチできるようになり、提案の余地を広げることができます。

また1店舗を経営する事業主様については、年3回程度の頻度でバイトルをご利用いただくケースが多いです。スポットバイトルも併せてご利用いただくことで、日々クライアント様と繋がり続け、結果的にスポットバイトルとバイトル両方を伸ばしていけると考えています。

従来は人手不足になると急いで採用活動を行い、その焦りがミスマッチを生んでいました。 これからは、足元の人員不足はスポットバイトルで補いながら、長期的に働いていただける方をじっくり採用していただき、定着率向上に繋げていただければと思います」

会場ではバイトル利用企業からのメッセージ動画も上映され、最後に藤原氏は今後の展望について語った。

藤原氏「オンラインサービスの進化によって世の中のユーザー体験は変わってきています。eコマースの発展、各種予約のオンライン化が進み、直前まで予約をしないことも普通になってきました。人材業界においても、1か月前にシフトを提出する従来の仕組みは今後変わっていくでしょう。

スポットバイトルのリリースを皮切りに、ディップではスポット領域のみならず、従来の採用活動や働き方をどんどんアップデートしていきたいと思っておりますので、続報をお待ちください。

また今回のリリースについては、東京23区限定になっております。年内には全国展開を予定しており、目標として1年以内に月間の就業者数を100万人を目指しております。 スポットワーク市場の早期No.1を目指していきますので、ぜひご期待ください」

質疑応答

最後に、質疑応答より一部を抜粋して紹介する。

Q.「Good」評価は普通に仕事をしていればもらえるものなのか?企業ごとの基準があるのか?

冨田氏「『Good』評価は普通に仕事をしていればがつくもの、デフォルトでつくものと思っていただければと思います。あくまで無断欠勤などのトラブル対策となります」

Q.「Good」評価を受けられなかった方に対して同勤務先への次回応募を制限可能との記載があるが、どういう仕組みなのか?

藤原氏「応募制限は当社による恣意的なものではなく、企業側の『Good』評価という基準に基づいて行われます。がんばって働くスポットワーカーの待遇向上を目的とし、サービス品質を維持するためのものです」

冨田氏「我々はワーカーの働く権利を守りたいと非常に強く思っております。そのため『Good Job』も基本は出していただき、出さなかった場合にはきちんと理由も伺います。働く人に多くのチャンスを与えられるよう、雇用側が強くワーカー側が排除されてしまうようなサービスには絶対してはいけないと思っておりますので、ご心配なきようお願いします」

Q.タイミーやシェアフルなど競合が既に高い知名度を得ているが、どのように訴求をしていくのか?

藤原氏「求職者側に対しては、まずは既にバイトル上で短期系の求人に応募しているユーザーに使っていただくのが最重要だと考えています。企業側につきましては、競合他社との被り率を調査してみたところ、大手企業を除けば非常に低いという結果になりました。当社の強みである2000名の営業が全国に散らばって、各エリアの求人を網羅的に獲得して参ります」

Q.ディップの他のサービスとの連携予定はあるか?

藤原氏「まずはバイトルからスタートし、ゆくゆくはAIエージェントからもスポットバイトルの求人を見つけられるようにサービス拡大していこうとを検討しています。またAI DX事業本部では、応募のみならず定着とDXにも重きを置いております。シフトワーカーとスポットワーカー、2つの管理のDXを実現を目指していきたいと思っておりますので、続報をお待ちください」

Q.早期にNo.1を目指していくという話だが、どんな指標やスケジュール感での達成を考えているのか?

藤原氏「まず『1年以内に月間100万人』の目標については、のべ就業者数を計測していきます。会員登録数は各社でロジックが異なりますので、有料職業紹介事業として公開していくデータを指標にするのが一番分かりやすいと考えての判断です。

またNo.1については、3年以内に就業者数で1番になることを目標として定めたいと考えています」

まとめ

今回の事業発表会は、単にスポットワーク市場の波に乗ったのではなく、バイトルとのシナジーや「ユーザーファースト」を追求した結果であることを何度も強調していたのが印象的だった。

現在市場トップのタイミーは、先日上場も果たし勢いに乗っている。アルバイト大手ディップの参入により、競争はさらに加速していきそうだ。