相談をもっと身近に!かかりつけのキャリアコンサルタントが活躍する時代

(写真右)株式会社noFRAME schools 代表取締役CEO  渋川 駿伍 氏
しぶかわ・しゅんご/高校時代に地元長野県で地方創生を志し、高校生カフェを創設。卒業後は1年間のギャップイヤーを取得後、2018年の1月にスタートしたMITのMicroMastersプログラムのオンラインコースに進学。同年、人生の主人公を増やすために相談のインフラを築くべく、株式会社noFRAME schoolsを創業。オンラインキャリア相談室『Kakedas』を開発運営。2度の資金調達を終え現在に至る。

(写真左)株式会社noFRAME schools COO 宮原 優哉 氏
みやはら・ゆうや/早稲田大学政治経済学部卒業。在学中に起業し、高校生向けの塾のFC経営を行う。卒業後、NTT東日本にて自治体・大規模法人向け営業を担当。その後、塾の事業を譲渡し、人材事業を立ち上げ。同業界の歪みを感じていたところ、日本にフラットな相談を増やすという事業内容に共感し、Kakedasにジョイン。CEO渋川の高校時代からのメンターでもある。

(※インタビュー時は十分な距離をとり、マスク着用のうえ、新型コロナウイルス感染防止に留意しながら取材・撮影をおこなった。)

国家資格であるキャリアコンサルタント。日々、人のキャリア相談に乗る立場の方であるが、キャリアコンサルタント自身も自分のキャリアに不安を覚える人が多いようだ。今回はそのキャリアコンサルタントのキャリアについて、オンラインキャリア相談室『Kakedas』を運営される株式会社noFRAME schoolsのお二方にインタビューを行った。

本題に入る前に改めて「キャリアコンサルタント」について触れておこう。

キャリアコンサルタントは職業能力開発促進法において2016年に定められた国家資格である。同法においてのキャリアコンサルティングの定義は、「『キャリアコンサルティング』とは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいう」とあり、相談者との対峙により相談者自身の内省・自己概念の成長を促し、気付きや考え方の変容をもたらすものとされている。また、厚生労働省から発表されたキャリアコンサルタント養成計画では、2024年度末までにキャリアコンサルタントを10万人にすることを予定している。

“登る山が明確”だった過去から、 “登る山を決める”現代へ

「厚生労働省がキャリアコンサルタントを増やすことを推し進めている背景には、現代人の価値観が時代背景と共に大きく変化してきたことが起因している」と宮原氏が語ってくれた。

宮原氏:現代は、急速なテクノロジーの進歩によりVUCAの時代と言われており、経済社会環境が急激に変化し続けています。長きに渡り日本経済を支えてきた終身雇用も崩壊しつつあり、予測のつかない不透明な時代となっています。選択の幅が広がったからこそ、キャリアに悩む方も増えてきている。それを受けて国がキャリア相談にのるプロフェッショナルを準備しようと考えたのが、キャリアコンサルタントの国家資格化と10万人計画の背景です。

VUCA(ブーカ)の時代とは

「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉。あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、将来の予測が困難な状態

宮原氏:相談は古くから様々なところで行われてきましたが、まだ社会のインフラにはなっていないのです。相談はもっと身近にあっていいものなのです。欧米では、特に心の悩みがなくてもカウンセリングなどは日常的に利用されており、文化的に根付いています。しかし、日本ではまだまだ相談環境が整備されていません。

「大手に入って終身雇用で守られる」ある種の勝ちパターンだったキャリア選択は今の日本で通用しなくなってきており、キャリア選択の自由度が高まったからこそ不自由が生まれているのだ。

宮原氏:キャリアに対する考え方は、生きてきた時代に関係しています。日本経済の移り変わりを俯瞰して見てみると、経済が成長していた時代から経済成長が難しくなった時代へ移行してきました。経済の変化に合わせて、キャリアも登る山が明確でそこにどれだけ全力で登れるかという戦いから、自分の登る山を決めるところから始まる戦いに変化してきました。

宮原氏:また、物がある時代に生まれた若者は恵まれていたからこそ、物に価値を感じなくなっています。SNSの発達が示すように人と人とのつながりや自分らしさを、急に考えなくてはならなくなったからこそ、悩みが生じているのです。そういった背景を受けて、人々の価値観は「物質を求めること」から「幸福感を感じること」へと変化してきました。仕事に対して求めることも単に収入や立場などから、自己実現へと比重が変わっていったのです。

この大きなトレンドに加え、2020年5月現在、新型コロナウィルスの蔓延で人々の今後のキャリアおける不安は大きくなる。noFRAME schoolsの調査によると40.6%が今後のキャリアについて悩んでおり、66.5%がそれらの悩みを相談したいと回答している。自己実現や自身の不安の払拭には人との相談や対話がある。こうした時代背景を受けてキャリアコンサルタントの需要が高まってきているのだ。

キャリアコンサルタントが活躍するフィールドの広がり

渋川氏:これまではキャリアコンサルタントの資格を取得しても、活躍する機会が欠けていました。キャリアコンサルタントとして仕事を継続していくためには報酬を得ることが必須となり、例えば、人材紹介業のキャリアアドバイザーや、企業の人事などとして資格を生かしているキャリアコンサルタントがいます。しかし、キャリアコンサルタントの資格を取得したものの生かす場所がないという方はまだまだいらっしゃいます。

渋川氏:そして、現在すでに稼働している相談環境の大きな問題は、相談において重要なことの1つは相談相手との相性が合うかということであるにも関わらず、相談相手が限定的で選ぶ幅が小さいことです。相談相手によって強みや特徴は異なるにも関わらず、実際に相談してみるまで相談相手との相性が合うかどうかが分からないことがほとんどです。

渋川氏:加えて、相談相手の立場があり、人材紹介業では転職が決まってはじめて報酬を得ることができるため、転職前提のキャリアコンサルティングとなりがちです。人事に関しても、立場的に従業員にとっては社内評価につながる不安を抱えてしまうため、ストレートに相談しづらく、また成果の測定も難しい役割でもあります。このように、自分に一番合ったフラットな相談相手を見つけるということは現状では非常に難しいものとなっています。

「だが、時代に合わせ、キャリアコンサルタントが活躍するフィールドが広がりつつあるのが今だ」と渋川氏は続ける。

渋川氏:ミートキャリアクラウドキャリアコーチなど個人から報酬を得るサービスの登場が挙げられます。これらのサービスは転職を前提とするわけではなく、悩みに対して本音でアドバイスをするサービスです。利用することで、対話を通して 新たな気づきや視点、可能性が得られます。

渋川氏と宮原氏のnoFRAME schoolsで運営する『Kakedas』は報酬を得る相手は違えど、転職を前提とはしない点においては同様のスタンスだ。

『Kakedas』とは国家資格キャリアコンサルタントと企業内で相談したい人を繋げるマッチングプラットホームである。

渋川氏:Kakedasを利用しているコンサルタントからは「久しぶりにポジティブな相談にのりました」という声をいただきました。その言葉に現れるように、相談者はモヤモヤを積み重ねてネガティブになってから相談するのが現状です。

「辞めます」という相談(相談というより決意表明)をした/受けた方も多いのではないだろうか。相談を受けた時にはすでに相談者の中で結論が出ているパターンが多く、相談を受ける相手としてはどうしようもできない。

渋川氏:これは一部の人たちだけの話でなく、普段働いていてモヤモヤすることは誰にでもあると思うんですよね。もしその段階で会社に伝えられていれば、もしかしたらその会社に残ってやっていく道もあったのかもしれません。

渋川氏:人事や上司がモヤモヤしている社員の声を拾おうとして、1on1や面談などに取り組まれているケースもありますが、社内の人間が相談相手だと人事評価につながるかもしれない不安が残るので、組織の構造的に相談しにくさが生まれてしまいます。

渋川氏:そこで第三者のキャリアコンサルタントを挟むことで、双方が伝えやすくなる、双方の心理的負担を減らすことができるのです。決して、社内の1on1や面談が不要というつもりはなく、あまりにも外部の方と話す機会がなさすぎるのだと思っています。会社のことを知らない第三者だから言えることもあるのです。

昔の歯医者は虫歯になったら治療にいくところであった。今は虫歯予防のために歯医者に行く。キャリアにおいても同じで、つまり、何かあってから相談するのではなく、普段から定期的に自分のことを第三者に話して言語化しながら、より自分が自分らしくあれる生き方を模索していくことこそが新しいライフスタイルになっていく。相談のインフラはキャリアコンサルタントとともに徐々に拡充されていくのではないだろうか。

『Kakedas』は登録コンサルタントも700名を超え、勢いに乗る。相談相手を選ぶ選択肢も豊富だ。キャリアコンサルタントの自己研鑽の場やコンサルタント同士の情報交換を目的としたコミュニティなど、キャリアコンサルタントの価値が上がるように取り組み、また相談者がより満足できるサービスを目指しており、これからも目が離せない。

お問い合わせを希望する企業はこちらから
キャリアコンサルタントとしてご活躍されたい方はこちら