採用マーケティング、どこから取り組む?優秀な人を採用するために必要な考え方とは

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
プロダクト統括部 HITO-Link部 CRMグループ
田中 浩一氏
たなか・こういち/パーソル プロセス&テクノロジー株式会社 2007年 株式会社ミリオン(現パーソル プロセス&テクノロジー)入社。以後主にアルバイト情報サイトanや転職エージェントサービスdodaのコンシューマ向けサイトや業務系システムの開発案件でjavaプログラマ、PL、PMとして参画。18年7月社内異動を希望し、HITO-Linkサービス開発に携わり、現在に至る。

今回は、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社が運営する業界初のTalent CRM「HITO-Link CRM」にて、開発マネジメントとプロダクト企画を担当している田中氏にインタビューを行った。「今後、自社の強みや魅力を自分たちの言葉で発信し、採用競合と差別化したアプローチが必要になる」と語る田中氏に、採用マーケティングが必要とされる背景について話を聞いた。

自社の魅力を自分たちで発信する必要が出てきた

数年前から採用トレンドとして聞かれるようになった「採用マーケティング」というキーワード。「マーケティングの考え方や手法を採用活動に適用したもの」として説明されることが多いが、いざ企業が採用マーケティングに取り組もうとすると「何から取り組めばいいのか分からない」という事態になりがちだ田中氏は語る。

「採用マーケティングについて検索すると、その概念や仕組み、やり方について様々な記事がヒットします。しかし『マーケティング』という言葉が幅広い定義や要素を含むように、『採用マーケティング』もまた幅広い要素が含まれます。そのため、採用マーケティングに取り組もうと思っても、具体的にどのような施策から始める必要があるのかというポイントで迷ってしまう企業は多いようです」

そこで田中氏は、採用マーケティングの第一歩を「自社の魅力を自分たちで発信していくこと」と説明しているという。求人サイトやエージェントなど外部サービスを活用することに加えて、自社起点の情報発信が必要な理由とは何なのだろうか。

転職潜在層との中長期的なコミュニケーションが必要になっている

「求人サイトやエージェントに登録してアクティブに転職活動をしているのは、『今転職したい』と考えている転職顕在層です。しかし労働人口が減少し採用競争が激化する中、優秀な人材は現職でもうすでに重宝されているため、転職市場に現れにくく、また転職市場に現れてもすぐに採用が決まってしまいます。そのため『今すぐ転職は考えていないけれど、情報収集はしておきたい』という転職潜在層に対しても、転職を検討する前から関係を構築し、転職意向が高まったベストなタイミングでアプローチすることが必要です」

求職者の転職の軸が多様化し、外部サービスだけでは魅力を表現しづらくなっている

「以前から言われているように、給与・福利厚生だけではなく、社風や働き方など、求職者の転職の軸はどんどん多様化してきています。そして転職の軸の中でも、給与や福利厚生などの条件面は従来のサービスでも十分表現できますが、一緒に働くメンバーの雰囲気やカルチャーなどの情報は、外部のサービスを挟んでしまうことで『風通しのよい』『チャレンジができる』などといったぼんやりした表現に落ち着いてしまいがちです。

多様化した求職者の志向に対して、説得力をもった情報をきちんと届けるためにも、今後は外部サービスの活用と並行して、自分たちで魅力を発信していくことが必要になってくるでしょう」

従来の中途採用は、候補者が求人サイトやエージェントを活用して企業に応募し、数回面接したのちに内定を出すという流れが一般的だ。

「しかし数回の面接だけでは、個人・企業ともに入社後ミスマッチが起こりやすいです。本来は丁寧に要件をすり合わせた上で、お互いにニーズの合致するタイミングで一緒に働くことを検討するのが正しいあり方だとだと考えています。それは人によっては1週間かもしれないし、何年もかかるかもしれない。中長期的に関係を築きながら、個人と企業がお互いに良いタイミングでのマッチングできるようにするための取り組みが、採用マーケティングです」

候補者とつながりを深めてタイミングを逃さない

次に、採用マーケティングに取り組んでいる企業の具体的な事例について話を聞いた。

「先ほど自社経由の発信が重要という話をしましたが、誰に向けて情報を届けるかという視点も同様に重要です。そこで多くの企業が取り組んでいるのが、自社で独自に作る採用候補者のデータベース、すなわちタレントプールの構築です」

タレントプールとは

将来自社の採用候補者となりそうな人材のデータベースのこと。今は転職を考えていない人材だとしても、自社に合う人材とつながりを構築し、定期的にコミュニケーションを取っていくことで、適切なタイミングで自社応募を促すことができる

「タレントプールの構築方法としてよくあるのが、エンジニアやマーケターなどのキャリアやノウハウに関するイベントを開催して、イベント参加者の情報をタレントプールに取り込むというもの。また自社メンバーのつながり(リファラル)経由での人材や、自社の退職者などもタレントプール化している事例があります。

さらに飲食店を運営している企業など、アルバイト採用が活発な企業の場合は、過去にアルバイトとして働いてくれたメンバーをプールしておき、SNSやメール、イベントなどを使ってゆるく情報発信しながらつながるパターンもあります」

またタレントプールの人材とコミュニケーションをとる上では、自社への転職意欲に合わせて適切な情報を発信することが重要だ。

「例えば『HITO-Link CRM』では、メールの開封やwebページの閲覧状況をもとに人材の転職意向の度合いを測る機能があります。普段は自社のイベントや企業文化の情報を発信し、自社への理解を深めてもらいつつ、転職意向が高まっているタイミングでその人に合った求人を伝えることができます。このように、候補者が転職したくなったタイミングで自社に応募してくれるようコミュニケーションを設計することが、タレントプールを活用した採用マーケティングの全体像になります」

リアルで新鮮な発信が採用への近道

とはいえ、自社の魅力をどう定義するかという点で頭を悩ます企業も多そうだ。そこで、実際にパーソルプロセス&テクノロジーが行っている採用マーケティングの取り組みについて聞いた。

「今、社内のHITO-Link CRMチームで取り組んでいるのが、1週間ごとに一人ひとりがブログ(note)を書くという取り組みです。ブログの内容はメンバーに委ねていますが、エンジニアは使用している技術についてのトラブルシューティングやプロセスについて、ビジネスサイドのメンバーはチームで使用しているツールの紹介や採用についてのTipsなど、各々が何を考えてどのように仕事をしているか発信しています。自分たちがどのような仕事をしているのか、何を意識しているのかなど、個人個人がブログ発信を通じて考え、それを魅力として伝えます。

これに加えて、メンバーたちと自社の特徴についてディスカッションをし、お互いにどういう価値観で仕事をしているのかを話しています」

自分の所属している部署やチームでの強みが何かをフォーカスして考えることで、実際に一緒に働いたらどういう雰囲気なのかを発信できるという。

「採用マーケティングはまだまだ日本では定着していませんが、これから広げていかなくてはいけない考え方だと思っています。その考え方はシンプルで、自分たちの会社がどういう会社なのかを発信し、それを採用につなげていく取り組みです。

効果計測や支援してくれるサービスがあれば、取り組みにくいものでも複雑なものでもありません。マーケティングという言葉に苦手意識を持つ人事の方もいらっしゃいますが、この記事をきっかけにぜひ採用マーケティングに取り組んでみてほしいと思います」

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