クラウドワークスに聞くフリーランス・副業市場のリアルと成長戦略

株式会社クラウドワークス
執行役員/IR・M&A担当
相場トーマス祐介 氏
あいば・とーます・ゆうすけ/メリルリンチ日本証券(現BofA証券)グローバルマーケッツ部門エクイティ本部で、国内外の機関投資家向けに日本株の営業業務に約13年従事。その後、みずほ証券金融戦略部で、企業向けにマーケット知見を活用した株式に関するソリューションビジネスの立上げに従事。大企業の株式持合い解消、成長企業のエクイティストーリー作りなど幅広い業務を経験。2021年クラウドワークスに参画。2023年1月、同社執行役員に就任。

昨今、副業解禁や働き方の多様化などの流れを受け、フリーランスや副業などの形で働く人が増えている。それに伴い、市場ではどんな変化が起きているのか。今回はクラウドソーシング事業を手がける株式会社クラウドワークスに取材をし、市場の変化と成長戦略について話を伺った。

大企業出身の副業人材が市場に流れ込んできている

日本には、フリーランス・副業人材が約1000万人いると言われている。そして副業を希望している人を含めると、フリーランス・副業市場は約1300万人と非常に大きな規模になりつつある。

その中で、クラウドワークスが提供しているサービスの累計登録ワーカー数は575.7万人(2023年6月時点)。また2023年6月時点での利用企業数は91.7万社と増加を続けており、企業側でもフリーランス・副業人材を登用するトレンドが窺える。

相場氏は「以前から需要が高いエンジニア人材に加えて、近年はバックオフィスやコーポレート業務を担うスタッフ、コンサルタントといった領域でフリーランス化が進んでいる」と語る。

「人手不足が継続する中で、中小企業を中心に『雇用したいけど採用できない』という会社が増えています。その中でバックオフィスやコーポレートなど、従来はなかなか外注されることがなかった領域でもフリーランス・副業人材の活用が進みました。またコンサルタントなど、大きなプロジェクトを推進できる人材をフリーランス・副業人材で賄う流れも広まっています」

特に大企業で働いた経験のあるハイスキル人材は、スタートアップを中心にニーズが高まっているという。

「CTOやCFOなどの重要なポジションに、大企業出身のハイスキルな副業人材を配置するケースが増えています。かつては、このようなハイスキル人材を正社員で探すのはかなり難度が高く、また副業の規制も厳しかったため、スポットでの活用も難しい状況でした。

しかし近年の規制緩和により、大企業にいる人が『自分のスキルや市場価値を試す場』として副業に挑戦する流れが生まれました。その結果、大企業での経験やノウハウを持つ副業人材を活用していくトレンドが、企業側に広がりつつあります」

フリーランス・副業市場の成長が人材市場に与える影響

フリーランス・副業市場は法整備やリモートワークの浸透などの追い風を受けて成長し、人材市場全体にも大きな影響を与えている。

「実際に、正社員雇用・派遣雇用からフリーランス・副業人材へ置き換える企業も増加中です。フリーランス人材の中には優秀なスキルを持っているにも関わらず、家族の転勤や親の介護など、何らかの事情で地方に住まざるを得なかった人もいます。そのような地方にいる優秀な人材を活用したいという企業を中心に、フリーランス人材へのリプレイスが起こっています」

また「業務委託」という契約形態にメリットを感じ、正社員雇用・派遣雇用からフリーランスに切り替える企業も増えているという。

「正社員や派遣社員とは異なり、フリーランス人材は雇用の保証がありません。だからこそ『きちんとパフォーマンスを発揮しよう』『自分のスキルを磨こう』という意欲の高い人材が多く、その点を魅力に感じるようです」

相場氏はこのような状況を踏まえて、「今後日本の人材マーケットはさらに流動化が進み、働き方の自由度も高まっていくだろう」と語る。

「今も昔も、企業は正社員雇用に軸足を置いています。『できることなら正社員で採用したい』という思いは今後も変わることはないと思います。一方で働き手側から見ると、『キャリアの最初から最後まで一貫して正社員であり続けたい』という人は徐々に減っていくのではないでしょうか」

正社員の人がフリーランスになることもあれば、正社員の人が副業を経由してフリーランスになり、フリーランスで働く中で出会った会社に転職することもある。「そのような働き方の多様化はどんどん進む。クラウドワークスとしてもそれらを推し進めたい」と相場氏は続ける。

「副業の普及によって正社員市場に進出したり、リモートのフリーランスアシスタントが派遣市場のニーズと重なったりと、私たちは働き手のニーズの多様化に対応することで、正社員市場や派遣市場にタッチポイントを作ってきました。クラウドワークスとして『この働き方が最善』と思っているわけではなく、数ある働き方の選択肢の一つとして、フリーランス・副業という働き方を当たり前にものにできたらと考えています」

同社が運営するフリーランス・副業マッチングサービス「クラウドワークス」では、働きたい人材が匿名でワーカー登録ができる。登録者のスキルは、システム開発・デザイン・ライティング・経理・動画編集など多種多様だ。クライアント企業にとって同サービスの魅力は「様々な仕事を任せられる人たちに、すぐアクセスできるワーカーデータベース」という点にあるという。

またワーカー側が「クラウドワークス」を使うメリットとして、「スキルアップの場として気軽に活用できる」点を挙げている。

「自分のスキルセットが市場でどれくらい通用するか分からない人に、『クラウドワークス』は気軽に働けるチャンスを提供しています。またワーカーがスキルアップできるように『みんなのカレッジ』というオンラインコミュニティも提供しています。このサービスの中で自分のスキルを磨き、市場価値を上げるチャンスが得られる点が、ワーカーの人にとっての価値になればと思っています」

クラウドワークスの今後の成長戦略

同社では中期経営目標として「YOSHIDA300」を掲げている。「YOSHIDA300」とはどのような目標なのだろうか。

「クラウドワークスのミッションは『個のためのインフラになる』で、すべての人が多様な働き方を実現できる場を作りたいという思いを込めています。そのような社会基盤を実現するには、会社として一定の規模の大きさが必要です。そこで目標として、売上300億円、利益目標でEBITDA25億円、10年連続20%成長を目指しています」

またYOSHIDA300を目指す中で、特に「単価の向上に力を入れたい」と続ける。

「私たちは『クラウドワークス』の他に、ITフリーランスのマッチングサービス『クラウドテック』や、オンライン事務アシスタントのマッチングサービス『ビズアシ』など、フリーランス人材のエージェントサービスを提供しています。そこではワーカーさんのスキルや強みをしっかりと把握し、単価にきちんと反映させた上で企業に紹介したりしています。

ワーカーはスキルに見合った報酬を得られ、企業は自社に合った人材を見つけられる。それが結果的に当社の成長に繋がる、『三方よし』のマッチングができれば理想ですね」

最後に、人材業界の読者へ向けて「日本の人材市場を変えたいと考えている企業や人は、ぜひ声をかけてほしい」と語った。

「『クラウドワークス』というサービスは、フリーランス・副業市場の中でNo.1のシェアがあると自負しています。ワーカー・クライアント企業のデータベースを保有している私たちと共に日本の人材市場を成長させていきたいと考えている方は、ぜひお声がけください。日本の人材流動化や働き方の変化をさらに推し進めていくために、一緒に頑張りましょう!」

(鈴木智華)