近年、1日単位でアルバイトができるスポットワークが新しい働き方として注目を集めています。しかし、スポットワーカーが実際にどのようにアプリを使って勤務しているのか知らない方も多いのではないでしょうか? 今回は、HRog編集部がスキマバイトアプリ「タイミー」を使って実際に働いてみた際のレポートをお届けします!
タイミーってどんなサービス?
「タイミー」は株式会社タイミーが提供するスポットワークサービスです。2018年8月にサービスを開始し、2024年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2024年12月時点で、累計登録ワーカー数は1000万人を突破。また2024年の累計アクティブアカウント数(月に最低1つの求人を掲載した事業所)は64万9千拠点にも上っています。
スポットワーク業界をけん引し続けるタイミー最大の特徴は、働いた経験に応じて「バッジ」が付与されスキルが可視化されることです。これによりワーカーはスキルや時給アップを図ることができ、クライアント側もニーズに合った人材とのマッチング精度を高めることができます。
またタイミーは「タイミー教育協力店舗」として、はじめての人でも働きやすいことを追求した居酒屋「THE 赤提灯」を株式会社ミナデインと協業してオープンしています。赤提灯はアルバイトが全員スポットワーカーで構成されており、飲食業界未経験でも安心して働きながらスキルアップを目指すことができる居酒屋です。
【スポットワーク特集#02】アルバイト全員スポットワーカーの居酒屋「THE 赤提灯」飲食店の人手不足を救う新・採用/育成モデルとは以前編集部が取材した際は、「タイミーワーカーさんと社員だけで飲食店が運営できるんだ、と世の中の方にもっと知っていただきたい」という想いを店長の上野さんから伺いました。
今回は筆者が実際に赤提灯で働き、未経験でも安心して働ける環境づくりや、スポットワーカーと社員だけで店舗を運営できる秘訣に迫っていきたいと思います!
「THE 赤提灯」へのインタビュー記事はコチラ
今回は営業開始前に行う、オープン準備の求人に申し込みます。求人原稿には「獲得できる可能性があるバッジ」欄があり、このスキマバイトを通してどのようなスキルアップが可能か一目で把握することができます。
また「働くための条件」が詳しく記載されているのもワーカー目線では有難いポイントです。今回申し込んだ求人(画像左)では「グッド率95%以上」が条件ですが、「ドリンク作成経験者」を募集する求人(画像右)ではより細かい条件が記載されていました。
そのおかげで「居酒屋でちょっと働いたことあるけど、どの程度から経験者って言っていいんだろう……?」といった不安をクリアにしてから、応募するかの判断を行うことができます!
申し込み画面は、持ち物や働くための条件にすべて「OK」を押してチェックしなければ次へ進めない仕様になっていました。ワーカー目線では確認漏れを無くすことができ、採用店舗目線ではミスマッチを減らすことができるため双方にとって安心できる工夫だと感じました。
また赤提灯独自の取り組みとして「ものすごく分かりやすいマニュアル」が求人原稿内に用意されており、実際に勤務する前から業務内容について詳しく確認することができます。
メニューや食器の並べ方、各テーブルの座席番号などは店舗ごとに違うため、居酒屋経験者であっても慣れるまでは戸惑うもの。飲食業界や居酒屋が未経験の方であればなおさら不安になるポイントについて、タイトル通りの「ものすごく分かりやすい」マニュアルを事前に確認できるのは嬉しいですね!
また求人原稿には「スキルチェックシート」も用意されています。レベル3の基準は「他店においても即戦力になれる可能性が高い」であるため、赤提灯で働くことでどこでも通用する人材へとスキルアップを図ることができます!
勤務当日になり、開店前でまだ明かりのついていない赤提灯へと向かいます。
お洒落な店内のカウンターには、タイミーのシールも貼られていました!
勤怠登録はQRコードの読み取りで簡単に行うことができます。
着替えも完了し、店内のカウンターに居たタイミーのマスコットキャラクターである「タイミン」とツーショットを撮りました!
「タイミー教育協力店舗」としてのコンセプトを至る所から感じられますね。
タイミーで働いてみた!
いよいよ働いてみた本番開始です!
開店準備の作業がメインになるため、まずは床掃除から行っていきます。
飲食店なのでお店の清潔感はとても重要です。掃き残しがないよう、隅々まで掃除を行いました。
続けて、アルコール類の品出し・補充作業を行います。
店長の上野さんに教えていただきながら、冷蔵庫にアルコール類を並べていきます。種類ごとに整理整頓されているためスムーズに補充でき、オーダーを受けて提供するときも「どこに何があるか」見失わずに済みます!
最後に、シルバー類の拭きあげとカトラリーのセットを行います。
カトラリーのセットについては、業務開始前にマニュアルを確認できたため大きく迷うことなく行うことができました!
もちろん、勤務中に改めて教えていただけるため、飲食業界や居酒屋勤務がはじめての人にとっても本当に働きやすいフローが作られています。
最後に、上野店長、タイミンと3ショットを撮らせていただきました。
赤提灯のGood率は驚異の99%。レビューを見ても「都度丁寧に説明してくださった」「初めてだったけど楽しく働くことができた」という声が多数あり、実際に働いてみて筆者もまったく同じ感想を抱くことができました。
お忙しい中丁寧に教えていただきありがとうございました!
はじめての人でも働きやすい環境づくり
「タイミー教育協力店舗」である赤提灯に実際に申し込み、働いてみることで、はじめての人でも安心して働ける仕組み作りを実感できました。
- 未経験者や経験者の定義がはっきりしている
- 実際に業務を開始する前からマニュアルを確認できる
- 業務当日も丁寧に教えてもらえる
しかし、アルバイトが全員スポットワーカーでは現場が回らなくなってしまうこともありそうです。赤提灯では、どのようなことを意識して研修制度を整え、店舗づくりを行っているのでしょうか。
より詳しく知るため、赤提灯店長の上野さんと、タイミー広報の松本さんにお話を伺いました。
赤提灯は、タイミーの小川代表とミナデインの大久保代表の「慢性的な人手不足に陥っている飲食業界を変えたい」という想いから生まれました。
上野さん「社員とスポットワーカーの方だけで店舗の運営ができれば、飲食業界における人手不足を解消でき、シフトの組み方や働き方自体も大きく変えることが出来るのではないかと考えていました。
もちろん、そもそもスポットワーカーが集まるのかといった不安もありました。しかし港区の新橋という採用が難しいこの地域でも、タイミー経由であれば一瞬で募集が埋まります。そのため、タイミーを使えば使うほど『人が集まらないのではないか』という当初の不安は払しょくされていきました」
筆者が赤提灯の求人に申し込もうとしたときも、公開されている2~3週間後までのほとんどの求人がすでに「締め切り済み」となっていました。スポットワークが浸透していることはもちろん、分かりやすい求人原稿や未経験の方でも働きながらスキルアップを目指せる「タイミー教育協力店舗」であることが、申し込みが集まる要因になっているのだと感じました。
そして、赤提灯の求人には「どなたでもOK」だけでなく「経験者限定」のものもありました。赤提灯では、どのように求人を出し、シフトを組んでいるのでしょうか。
上野さん「例えば3人のワーカーさんが欲しいとなった時、基本的には赤提灯で何度も働いてくれているリピーターさん用の求人を1つ、赤提灯が初めての方でもOKの求人を2つ出しています。後者のうち1つが、今回働いていただいたような『完全に飲食業界未経験でもOK』の求人で、もう1つが『ドリンク作成経験者』といった条件付きの求人です。
こうすることで未経験者のみ、あるいは飲食業界の経験者は居るけど赤提灯での勤務に慣れているワーカーさんが居ない、といった状況が生まれなくなるため、円滑に現場を回すことが可能になります」
未経験でも安心して働けるのは、それを支えてくれる社員やリピーターの方々が丁寧に研修してサポートしてくれるからこそなのです。
上野さん「また当店では、飲食未経験、経験者用の求人いずれにも2回までの勤務回数制限を設けています。そうすることでより多くの方に教育機会を提供することができ、『飲食業界って楽しい!』と感じる人が増えるという好循環が生まれるからです。それによって飲食業界で働く人が増え、業界そのものが盛り上がってほしいと思っています」
未経験の方でも働きやすいよう、徹底した仕組み作りが行われている赤提灯。タイミーはどのようなサポートを行ってきたのでしょうか。
松本さん「求人原稿やマニュアル、スキルアップシートの作成において、タイミーからは『飲食業界未経験者にも分かりやすい内容になっているか』という視点からアドバイスさせていただきました。スポットワークという働き方はまだ新しいものであり、ワーカーさんへの業務の切り分け方法に関するノウハウは十分に共有されていない部分もあります。
そのため、『業務内容をもう少し細かく分けることで、初めて働くワーカーにも理解しやすくなる』といった具体的な提案を行いました」
筆者がこれまでスポットワーカーとして働くなかで感じてきた不安は、働くことそのものよりも「自分がこの求人に応募していいのか?」という疑問から生まれているものでした。その点、赤提灯の求人は初心者や経験者の定義がはっきりしており、また業務内容も細かく書かれているため非常に魅力的に映ります。
松本さん「とはいえ、サポートをしている多くの飲食店の中でも、赤提灯さんのようにワーカーさんに寄り添った求人や環境づくりが出来ている店舗は本当に稀です。そのため現在では赤提灯を弊社がサポートするというよりも、赤提灯での取り組みや事例を社内に持ち帰って共有し、他の店舗に還元することの方が多いくらいです」
タイミー教育協力店舗としてオープンし、そのノウハウを飲食業界に広めつつある赤提灯。その取り組みはスポットワークの「スキマ時間で働く」というコンセプトからはみ出し、さらに広がりつつあるといいます。
上野さん「週1~月1回ほど、定期的に赤提灯で働いてくださるリピーターさんの中には『もっと成長したい、もっと赤提灯を盛り上げていきたい』といった想いを強く持ってくださる方がいらっしゃいます。
現在新たな取り組みとして、そうした方をトークグループに招待し、私たち社員側が日々の業務での気づきや、季節のおすすめメニューなどを共有しています。それを手の空いた時間にチェックしてもらうことで、スムーズに次の勤務に臨んでもらえるようになればと思って始めました」
リピーターの方々は社員ではなくスポットワーカーであるため、そのグループで日報や週報などの発信を求めることは一切ありません。しかし、リピーターの中には自主的な学びを発信し始めている人もいるといいます。
上野さん「初めは店舗側からの情報共有を目的としたグループでしたが、リピーターさん同士が雑談を楽しんでいることも多いです。
またワーカーさんの中には副業としてタイミーを使って自己研鑽している学生さんが居ます。その方は『赤提灯でも活かせるのではないか』と読んだ本の内容を自主的にまとめ、発信してくださることもあるんです」
松本さん「スポットワークはお金を稼ぐ手段であるだけはなく、新しい楽しさや出会いが生まれる場所でもあります。
社員とスポットワーカーだけで店舗が回ることはもちろん、そうした素敵な取り組みが赤提灯で生まれていることも多くの方に知ってほしいと考えています」
上野さん「赤提灯での取り組みは、ワーカーの皆様にとってだけでなく、弊社の社員のスキルアップにもつながっています。はじめての方に業務内容を教えるためには、業務への深い理解や言語化能力が必要になりますし、熱意あるワーカーと一緒に働くことでとてもいい刺激をもらえます。
今後もこうした取り組みを続けて、スポットワークを活用した新しい採用の仕方や働き方を広めていきたいです」
まとめ
筆者はこれまで、スポットワークはあくまで短期的な収入を得る手段であり、ワーカーと店舗だけでなく、ワーカー同士の関係も薄いものとばかり考えていました。
しかし赤提灯には、スキルアップしたい、飲食業界を盛り上げたいという熱意を持った人が集まり、「スキマ時間」の枠を超えてつながりを広げていたのです。そして、それが可能になっているのも、未経験の方が安心して働ける環境づくりによって、「この取り組みをもっと広げたい!」と働いた方々が感じられているからこそだと思います。
アルバイトが全員スポットワーカーの「THE 赤提灯」。その取り組みは今後飲食業界の枠組みも超えて、スポットワークの新たな未来を作っていくものになるかもしれません。