労働者派遣法の3年ルールとは?抵触日や例外、雇い止めトラブルなどをわかりやすく解説

労働派遣法の3年ルールとは、派遣労働者の受け入れ期間に関する決まりです。2015年に派遣法が改正され、全ての業種において派遣期間が原則として上限3年に一本化されました。人材派遣営業をする際には、適切な対応をとるためにも、その内容をしっかり理解しておくことが重要です。今回は3年ルールの概要やメリット・デメリット、抵触日、適用されないケースなどについて解説します。

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目次

派遣法の3年ルールとは?

労働者派遣法における派遣可能期間の制限、いわゆる「3年ルール」とは「派遣元となる派遣会社は、同一の業務について、3年を越える期間継続して労働者派遣の役務を提供してはいけない」という決まりです。これにより、派遣労働者が同一の職場の同じ部署で働ける期間は、原則3年までとなります。

法改正の施行日である2015年10月1日以後に締結・更新される労働者派遣契約から、全ての業務が対象となり、この3年ルールが適用されることとなりました。ここからは、3年ルールについてさらに詳しくみていきましょう。

3年ルールの期間制限

労働者派遣法第40条では派遣可能期間の制限が定められており、「事業所単位」と「個人単位」の2つの制限が設けられてます。

事業所単位:企業は派遣労働者を3年以上受け入れられない

派遣先である企業は、派遣労働者を同じ事業所において3年以上受け入れることはできません。派遣開始以降、3年までの間に派遣労働者が交替した場合でも、派遣先可能期間の起算日は変わりません。

<具体例>

派遣労働者のAさんが1年間働いて退職した後、次にBさんが同じ職場の同じ部署に派遣されてきた場合、BさんはAさんが働いた1年間を除く、残りの2年間しか働くことができない

ただし、派遣労働者を3年を越えて受け入れたい意向が派遣先にある場合、一定の手続きを踏むことで派遣期間の延長が可能となります。

派遣先事業所の過半数労働者組合(このような組合がない場合は、労働者の過半数を代表するもの)に対し、派遣可能期間の延長について意見を聴取することで、派遣期間の延長が可能となるのです。これは、派遣労働者の受け入れを一律に制限するのではなく、現場の実状をよく把握している労使の判断に委ねるという考え方に基づいた決まりです。

意見聴取の手続きは、「事業所の期間制限に抵触する日の1か月前の日」までに行います。仮に異議があった場合は、なぜ延長を行う必要があるのか理由を説明するほか、異議への対応に関する説明を速やかに行い、過半数労働組合等の意見を十分に尊重した対応をとることが派遣先企業に求められます。

個人単位:派遣労働者は同じ派遣先・部署で3年以上働けない

派遣可能期間が延長された場合でも、同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位(担当課や担当グループなど)に派遣できる期間は、3年が限度となります。ただし、同じ派遣労働者であっても所属課などを替えて就業できるのであれば、引き続き同じ会社で最長3年間働くことができます。

また、これまで3年間働いた派遣労働者とは別の労働者であれば、これまでと同じ課への派遣が認められています。

なお、ここでの説明で用いた「事業所」や「組織単位」の定義は次の通りです。具体的な判断は実態に即して行われるため、不明な点は労働局に相談する必要があります。

事業所
(雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的に同じ)
・ 工場、事務所、店舗など場所として独立していること
・ 経営単位として、人事・経理・指導監督・働き方などがある程度独立していること
・ 施設として一定期間継続するものであること
組織単位(いわゆる課やグループなど)
・ 業務としての類似性、関連性があるもの
・ 組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有するもの

(参考:厚生労働省・都道府県労働局「派遣先の皆様へ」)

3年ルールで注意すべき「抵触日」

3年ルールのなかで知っておきたい言葉に「抵触日」があります。抵触日とは、派遣の期間制限を過ぎた次の日のことで、「3年と1日後」がこれにあたります。抵触日を迎えた派遣労働者はそれまで働いていた派遣先で働くことができなくなり、派遣先も受け入れができなくなります。

派遣会社および派遣先企業、どちらにとっても重要な抵触日は、事業所単位の期間制限と個人単位の期間制限で変わるケースがあるため注意が必要です。

事業所単位の抵触日

事業所単位の抵触日は、派遣先の企業が派遣労働者を受け入れてから3年経過した翌日です。仮に派遣労働者Aさんが途中で退職し、その後、別の方が派遣されてきたとしても事業所単位の通算期間はリセットされません。

個人単位の抵触日

事業所単位の期間制限と違い、個人単位の期間制限における抵触日はシンプルに、派遣労働者として働きはじめて3年経過したあとの最初の1日目と考えます。しかし、個人単位よりも事業所単位の期間制限が優先されるため、3年に満たない期間であっても派遣先で働けなくなることがあります。

3年ルールは派遣会社を変える場合も適用される

「3年後に派遣会社を変えれば、通算期間はリセットされて、同一の派遣先で働けるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、派遣法の3年ルールでは、「同一の派遣労働者」で考えるため、派遣会社を変えても上限は3年で変わらない点に注意しましょう。

派遣法3年ルールはいつから?なぜ導入された?

2015年の派遣法改正により全業種が3年ルールの対象に

最初にも述べたように、2015年の法改正により、全ての業務において派遣期間の上限が原則3年に統一されました。

派遣法改正前は、ソフトウェア開発、機械設計、通訳、アナウンサー など「専門26業務」と呼ばれる専門的知識や技術を必要とする業務は、3年ルールの対象外でした。しかし、業種によって雇用期間が異なる点がわかりにくいことや、専門26業務が今までよりも専門性が高いと言えなくなったことなどから、法改正により全ての業種が3年ルールの対象となったのです。

このような法改正が行われた導入の背景には、労働者派遣事業があくまでも「常用雇用の代替え」であり、臨時的な労働力を調整するためのものである、という考えがあります。

派遣先企業は、雇用期間の制限がないと、半永久的に派遣労働者として雇用し続けることができてしまいます。このような状況を避け、雇用主に対して派遣労働者の待遇改善を促すことが法改正の大きな理由のひとつと言えるでしょう。

3年ルールにより懸念された「雇い止め」トラブルとは

3年ルールが制定されたことで、新たな課題となったのが「雇い止め」トラブルです。2012年に改正された労働契約法と2015年に改正された労働者派遣法による影響で発生した雇用問題のことであり、「2018年問題」とも言われています。

労働契約法では、一定条件を満たした有期雇用契約者が希望すれば無期雇用という働き方ができるようになり、労働者派遣法では派遣労働者の期間制限を定めた3年ルールが適用されました。

これにより多くの企業が2018年に雇用形態や契約期間を見直すことになりましたが、人件費などのコストが増加することを懸念した企業が、大量の「雇い止め」(期間満了時に有期雇用契約を更新しないこと)を行う可能性があるとして問題となったのです。

派遣会社は労働者に対し「雇用安定措置」の実施が必要

このような状況を鑑みて、2015年の法改正では、3年ルールと同時に派遣会社に対して「雇用安定措置」を講ずることが義務づけられました。派遣労働者は同じ職場に継続して3年派遣される見込みとなった場合、派遣会社から次のような雇用安定措置を受けることが可能です。

①派遣先企業への直接雇用の依頼
②新規派遣先の紹介(ただし、派遣労働者の住所や経験、スキルなどを含めて妥当な派遣先であること)
③派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用
④紹介予定派遣や職業紹介など、その他教育訓練を含む雇用の安定を図るための措置

派遣企業は雇用安定措置として「①直接雇用の依頼」を行い、合意に至らなかった場合に、②〜④の措置を講じる必要があります。

ただし、派遣期間が1年以上3年未満見込みの派遣労働者については、努力義務となっています。また、「派遣元で無期雇用されている派遣労働者」や「60歳以上の派遣労働者」などは、雇用安定措置の対象外です。

(参考:厚生労働省「派遣元事業主の皆さまへ」)

2019年に行われた厚生労働省の調査によると、3年ルールの期限を迎え雇用安定措置が必要となる派遣労働者の約22%は派遣先企業で直接雇用(有期・無期)に、約20%が派遣会社で無期雇用へ転換したということです。一方で、派遣会社からの提案と希望が合わずに離職したり、雇い止めされたりした人もいるのが現状のようです。

(参考:厚生労働省「雇用安定措置について」)

派遣法3年ルールのメリット・デメリット

ここまで派遣法の3年ルールの要点をご紹介しましたが、3年ルールのメリット・デメリットについても確認しておきましょう。

3年ルールのメリットは「待遇改善」が期待できること

派遣法における3年ルールの最大のメリットは、3年経過後に正社員などの雇用形態の切り替えにより待遇改善が期待できる点です。

先程も述べましたが、派遣労働者が同じ会社・部署で働ける上限は3年までとされています。しかし、新たに新入社員を受け入れて教育するよりも、すでに業務に慣れている派遣労働者を受け入れた方が企業としてもメリットがあり、直接雇用へつながるケースがあります。

3年ルールのデメリットは、同一の職場で3年以上働けないこと

3年ルールのデメリットは、派遣労働者が同一の職場で3年以上働けないことです。派遣先で正社員として採用されない限り、3年ごとに職場を変えなければいけません。事業所単位の期間制限が適用されるケースでは、3年未満でも派遣期間が終了する可能性もあることも知っておきたいポイントです。

派遣法3年ルールの例外。適用されないケース

派遣法3年ルールは、条件を満たすことで期間制限を受けないケースがあります。ここでは適用されない場合について解説します。

派遣会社で無期雇用している場合

派遣元の会社と無期雇用派遣契約を結んでいる場合は、3年ルールが適用されないため3年以上働くことができます。無期雇用派遣契約は有期雇用派遣契約とは異なり雇用期間が定められておらず、数年間に渡り働くことが可能になります。

派遣労働者が60歳以上の場合

派遣労働者が60歳以上の場合も、3年ルールの対象外となります。有期雇用派遣労働者として3年目を迎えるときに年齢が59歳以下であれば適用されます。

有期プロジェクト業務に派遣する場合

3年ルールの対象外になるケースには、期限が決まっている有期プロジェクト業務に派遣する場合も含まれています。たとえば5年と期限が決められたプロジェクトの場合、3年を超えてしまってもそのプロジェクト終了までは継続して働くことができます。

日数限定業務に派遣する場合

1か月で働く日数が通常の労働者の半分以下であり、月10日以下の日数限定業務に派遣する場合も3年ルールは適用されません。

産休・育休・介護休業等を取得する人の代わりの派遣となる場合

産休・育休・介護休業などを取得する人の代替業務の場合も、3年ルール対象外です。

派遣法3年ルールの抵触日後、派遣労働者の選択肢は?

派遣法3年ルールの抵触日後、派遣労働者にはどのような選択肢があるのでしょうか。ここでは、3年後の対処法や多様な働き方などについて説明します。

同一の職場で部署移動をする

3年経過した後の働き方の一つに、「同一の職場で部署移動をする」という選択肢があります。先に述べたとおり、派遣法の3年ルールは同じ職場の同じ部署に対する期間制限を定めた決まりなので、同一の職場でも部署が変われば通算期間がリセットされます。

派遣労働者が同じ職場で働き続けたいという意思を持っている場合は、部署異動ができるのか派遣先に確認してみるとよいでしょう。

直接雇用に切り替えてもらう

派遣先の職場に直接雇用してもらえれば、3年ルールの対象外となります。そのため、派遣労働者という立場から直接雇用に切り替えてもらうことで、同一の職場で働き続けることができるようになります。

派遣会社(派遣元)の無期雇用社員になる

派遣会社(派遣元)との契約を期間の定めのない無期労働契約に切り替えることでも、3年ルールの定める期間制限の対象外になり、派遣労働者は同一の職場で働き続けることができます。

派遣先を変える

派遣法の3年ルールは同一の職場の同じ部署に適用されます。そのため、派遣労働者はシンプルに派遣先を変えることで新たに3年間働くことができるようになります。

その他|クーリング期間とは

派遣期間の上限とされる3年が経過したあと、その事業所への派遣が一切できなくなるわけではありません。派遣終了後から次の派遣開始までに一定期間をあけることで、再び派遣できるようになる仕組みがあり、その一定期間のことを「クーリング期間」と呼びます。

クーリング期間は事業所単位・個人単位ともに設定されており、必要な長さは派遣の抵触日を数え始めとし「3か月と1日以上」です。仮に、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3か月を超えない場合、派遣は継続しているものとみなされるため注意しましょう。

また、クーリング期間はそもそも「派遣社員のキャリアアップや直接雇用を促す目的のためにつくられた」という点も理解しておきたいポイント。派遣可能期間の延長手続を回避する目的で「クーリング期間」を利用する行為は、法の趣旨に反するものとして指導の対象となってしまいます。人材派遣営業を行う上で、クーリング期間について正しく理解しておきましょう。

派遣法の3年ルールや例外について把握し正しい判断を

今回は、労働者派遣法の3年ルールについて詳しく説明しました。3年ルールは派遣労働者の雇用安定を目的に定められた制度です。3年ルールには例外やメリット・デメリットがあるので、派遣労働者が安心して働けるよう、3年ルールの仕組みをしっかりと把握・理解し業務推進に役立ててください。

参考:厚生労働省・都道府県労働局『平成27年労働者派遣法改正法の概要
参考:厚生労働省・都道府県労働局『派遣元事業主の皆さまへ