株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント
執行役員
早川 徳二 氏
はやかわ・とくじ/2006年にジェイ エイ シー ジャパン(現JAC Recruitment)に入社後、コンサルタントとして自動車・機械を中心に製造業界を担当。2013年に横浜支店長に就任。その後、外資系製造業部門、バックオフィス人材の紹介部門の責任者、エグゼクティブ部門の立ち上げを経て、2019年より執行役員として、エグゼクティブ、ヘルスケア、バックオフィス等を中心に幅広い領域を統括。
2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業様にインタビューし、この10年間が自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。
今回は株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(以下、JACリクルートメント)の早川氏に、同社の歩みとこれからの10年で取り組みたいことについてお話を伺いました。
「強みの確立」と「新たな価値創造」に取り組んだ10年
早川氏は同社の10年を表すキーワードとして、両面スタイルの人材紹介という「強みの確立」と、エグゼクティブ採用の開始による「新たな価値創造」を挙げました。
「2011年から、JACリクルートメントは企業と求職者で担当者を分ける『分業型』から、企業と求職者の双方の支援を1人のコンサルタントが行う『両面型』にシフトしました。当時リーマンショックを受けて、多くの会社が採用を停止・縮小しました。また採用を続けている企業でも、求める人材の水準が高まった時期でした。『お客様のニーズを的確に理解しない限り、絶対に良い紹介ができない』という状況を受けて、両面型スタイルへの移行を決めたんです。
JACリクルートメントのコンサルタントのスキルが底上げされた要因の一つとして、『100+Club』という社内コミュニティの存在があります。『100+Club』とは、100名以上の紹介を決定した実績のあるコンサルタントが中心となって運営している組織です。そこでナレッジ共有や意見交換を行う中で、各人のコンサルテーションスキルが磨かれていきました」
その後同社は、両面型スタイルによって蓄積した業界知識や採用のナレッジを活かし、エグゼクティブ領域の紹介ビジネスという「新たな価値の提供」に乗り出します。
「両面スタイルによってコンサルタント一人ひとりの専門性が高まったとともに、さまざまな業界に深く入り込み、社内の部門が細分化されていったのが2013年頃です。例えば『製造業』という分類を『自動車』『電機』『機械』などに分け、それぞれに精通した専門チームを設立しました。これによって、専門性があり市場価値の高いハイクラス人材の紹介が強化されたんです。そして、その実績がエグゼクティブ採用への足がかりともなりました」
当初は7~8名ほどの小さい組織だったエグゼクティブ部門を、2017年から本格的に拡大。現在では約10倍の売上規模にまで成長しているといいます。
「とはいえ立ち上げ当時は、エグゼクティブ領域での知名度や実績がないので営業に苦労しましたね。エグゼクティブ層の採用はヘッドハンティングに任せている企業様が多かったので、『JACでもエグゼクティブ層を採用できるんだ』と知ってもらえるよう苦心しました。
エグゼクティブ層の採用には社長や役員の方が関わることが多いので、まずはそうした方たちとの接点を作ることから始めました。ハイクラス向けのオウンドメディアを立ち上げたり、経営者が集まるイベントに参加したり。他にもラジオ番組のスポンサーになって経営者の方をお呼びするなど、部門全体で接点創出に取り組み、地道にネットワークを広げていったんです」
両面型スタイルを確立し、コンサルタントがそれぞれのマーケットに対して高い専門性を持つようになった結果、幅広い領域をカバーできるようになったと早川氏は語ります。これは10年間でJACリクルートメントが作り上げてきた、大きな強みであると言えるでしょう。
2030年に、世界No.1のエージェントへ
同社はこの強みを活かし、「2030年に世界No.1の人材紹介のプロフェッショナル集団になる」ことを目標に掲げています。
「売上という『量』の観点からも、お客様がサービスを利用し続けてくれるという『質』の観点からも、No.1のエージェントを目指したいと思っています。そのために現在注力しているのが、企業・求職者との関係性構築です。
企業に対しては、アカウントマネジメント(顧客と長期的に良好な組織的関係を築くためのコミュニケーション)の強化を目標に掲げています。1企業に対して複数名の担当者がつき、JACグループが持つさまざまなサービスを活用しながらお客様の総合的な人材ニーズを満たしていく取り組みを進めています。
求職者に対しては、エンゲージメント向上を目指して転職後も情報提供やコミュニケーションを行っています。これらを進めることで、一度限りの転職サポートでは終わらない継続的な関係を築きたいと考えています」
ダイレクトリクルーティングやAIを使ったマッチングなど、人材業界のサービスが大きく変化する昨今、「そもそも仲介業者はいらないのでは?」という声も上がり始めました。だからこそ早川氏は、「JACリクルートメントだからできる気づき・提案」を行い、介在価値を提供したいと言います。
「『世界No.1』と言うとありきたりに聞こえるかもしれません。しかしJACリクルートメントでは、この目標を本気で目指しているからこそ、個人としても組織としても成長できる機会がたくさんあります。私自身、そんな環境で働けていることがとても楽しいと感じています。人材業界全体でも、コンサルタントが機械やAIに置き換えられないように、介在価値を発揮することが大切になるはずです。JACリクルートメントは、人材コンサルタントならではの価値提供を追求し、より良い人材マーケット構築に貢献していきたいと考えています」
(ライター:鈴木智華)
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