いまさら聞けない「スポットワーク」をまるごと解説!特徴や課題、大手5サービスを知ろう

近年急速に認知度が高まり普及してきた、新しい働き方「スポットワーク」。単発で短い時間から働けるため、忙しい学生や主婦層から人気なだけでなく、副業として活用する社会人の方も増えてきています。

そんなスポットワークですが、改めて何かと聞かれると詳しく説明できない…なんて方も多いのではないでしょうか。今回は特徴や業務委託との違い、代表的なスポットワークサービスなどを詳しく紹介します。

スポットワークとは?

スポットワークとは、ワーカーが自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事をする、継続した雇用関係のない働き方を指します。

ワーカー目線では自分の都合やスケジュールによって働ける一方、企業側にとっても

  • 急な欠員や繁忙期の際に柔軟な採用ができる
  • 必要な時期だけ人材を雇用することで、福利厚生や人件費のコストを抑えられる

などのメリットが注目される働き方です。

広義のスポットワークには、フードデリバリーサービスの配達員など、雇用契約を結ばずに単発の業務委託契約を結んで業務を行う「ギグワーク」と、企業と短期雇用契約を結ぶ「単発バイト」の2種類があります。

本記事では単発バイト(=狭義のスポットワーク)について、人気の理由や市場規模を紹介します。

スポットワークが人気な理由

スポットワークサービス大手「タイミー」の調査によると、スポットワーク利用者の54.0%は「正社員」で最も多く、「パート・アルバイト」が11.8%と続きます。一方で「スポットワークのみで生計を立てている」という人は0.6%でした。

この結果から、本業としてスポットワークを活用している人は少なく、もうすでに本業を持っており、さらなる副収入を得たい人がスポットワークを活用していることが分かります。

出典:タイミー

またデジタルメディア事業を行う株式会社キュービックの調査によると、スポットワーカーとして働く理由の第一位は「生活費のプラスに」でした。近年の物価高騰による生活コスト上昇の影響を受け、副収入を得るための手段としてスキマバイトが注目されているようです。

また理由の2位、3位には「スキマ時間を有効活用したい」「単発なのでしがらみがなくラク」がランクインしており、気軽に働きやすいという点もワーカーから評価されていることがうかがえます。

スポットワークと業務委託の違い

スポットワークと業務委託の最大の違いは契約形態にあります。

スポットワークではワーカーと企業は短期雇用契約(短期・単発のアルバイトやパート)を結びます。ワーカーは企業と雇用関係にあるため、企業は勤務時間や業務内容を指示し、ワーカーはそれに従うことになります。

一方で業務委託契約の場合、ワーカーと企業はあくまで対等な関係です。そのため仕事の進め方やスケジュールはワーカーに一任されています。

そのほか、スポットワークと業務委託には下記の違いがあります。

スポットワーク業務委託
報酬形態(一般的に)時給や日給など、時間に基づいて支払われる作業の成果物やプロジェクトの完了など、結果に対して支払われる
労働時間の管理企業は勤務時間を把握・管理する必要がある企業は勤務時間を把握・管理する必要がない
社会保険条件を満たす場合、企業は社会保険を負担する義務を負うワーカーが自分で社会保険を支払う

スポットワークの市場規模

矢野経済研究所が行った調査によると、2022年度のスポットワーク仲介サービス市場(以下、スポットワーク市場)は648億円でした。

同年度の求人情報提供サービス市場規模である7,417億円(全国求人情報協会調べ)と比較すると10%以下の規模ですが、前年度比で成長率は130.6%となっており、今後も拡大が見込まれる市場となっています。

出典:矢野経済研究所

スポットワーク協会の調査によると、24年5月末時点での日本国内スポットワーク登録者数は約2,200万人(出典:メルカリ発表資料)で、23年3月末時点(約990万人)と比較して約2.2倍となっています。

フリマサイト大手「メルカリ」や国内で最も利用者数の多いSNS「LINE」の運営企業が市場に参入し、ワーカーの数も大きく増えているようです。

また2024年9月時点で、主要なスポットワークサービス3社の利用企業数・店舗(事業所)数は下記になります。

利用企業数店舗(事業所)数
タイミー(24年9月時点)約136,000企業約297,000拠点
シェアフル(24年8月時点)約55,000企業
メルカリハロ(24年4月時点)約50,000拠点

大手アルバイト求人メディア「バイトル」を運営するディップ株式会社の取引実績は15万社以上と言われており、それに匹敵する規模への成長している様子がうかがえます。

スポットワークの課題

ワーカーや企業にとって利便性の高い働き方として注目されるスポットワーク。しかし、新しい働き方ゆえに法的な曖昧さや就業環境の課題があります。ここではスポットワークの課題を以下の3つの視点から紹介します。

  • スポットワークの定義が曖昧で法整備が進んでいない
  • 本人認証が必須でないためのトラブル
  • 複数のサービスを併用していると労働時間の管理が難しい

スポットワークの定義が曖昧で法整備が進んでいない

スポットワークは柔軟な働き方として広まりつつありますが、その法的な位置づけはまだあいまいな部分があります。

例えば、応募課金・採用課金型のスポットワークサービスは「有料職業紹介事業」に該当する可能性があり、紹介免許を取得していない企業は違法な取引と見なされるリスクがあります。

またスポットワークサービスを介して報酬を支払う「立替払い」は、「賃金は企業から労働者へ、現金で直接支払うこと」を定める労働基準法第24条に違反する可能性も指摘されています。プラットフォーム経由での給与支払いは、中抜きなど報酬が適切に支払われないリスクが伴い、労働者の権利を侵害する危険があるためです。

このようにスポットワークは様々な法律上の課題がありますが、その議論は十分になされていないのが現状です。

本人認証が必須でないためのトラブル

スポットワークは通常の雇用契約とは異なり、企業による事前の本人確認が行えないケースがあり、これがトラブルの原因となることがあります。

例えば、本人確認が不十分なワーカーが業務不履行やトラブル、最悪の場合犯罪行為や不正行為を起こし、企業が被害を被るケースもあります。こうしたトラブルが増えると、スポットワークという働き方や仲介事業者に対する信頼が損なわれてしまいます。

また最近では、「立替払い」を悪用した詐欺行為も発生しています。架空の求人を掲載して嘘の勤怠記録をつけ、「立替払い」で報酬を獲得したまま、雇用主側が支払いを無視するという手口が問題になっています。

現在大手プラットフォームを中心に、身分証明書や銀行口座などによる本人確認機能を強化する動きが見られます。しかし上記でも触れた通り、法律上のルールが整っているわけではないため、その対応は各プラットフォーマーの方針に依存した状態となっています。

複数のサービスを併用していると労働時間の管理が難しい

スポットワークでは、複数のプラットフォームを併用するワーカーが多くいます。しかし現在の労働基準法では「1日8時間、週40時間を超える労働には残業代が発生する」と定められており、複数のプラットフォームで働いている場合、ワーカーの総労働時間の把握が難しくなるという課題があります。

例えば、A社で21時間、B社で21時間働いた場合、合計42時間の労働時間となり、2時間分の残業代が発生します。しかし、どちらの企業が残業代を負担するかは現状の法律ではあいまいです。

その結果ワーカーに残業代が支払われず、違法労働が横行するリスクが高まります。また、同様の問題は社会保険に関しても起こり得ます。

その解決策として、複数のサービス間での勤怠・給与情報の共有ができるプラットフォームの整備が求められており、今後の法整備次第でスポットワークのあり方も大きく変わる可能性があります。

スポットワーク大手5社のサービスの特徴

そんな発展途上のスポットワーク市場を牽引する大手5社について、各サービスの特徴を見ていきましょう。

タイミー

タイミー」はスポットワークサービスの最大手で、2018年のサービス開始以来、スポットワーク市場における先駆者として存在感を発揮するサービスです。

ワーカーの勤怠管理の観点から他社サービスとの併用が難しいという特性上、競合他社へのリプレイスが起こりにくく、先行者利益を保持したままシェアを拡大しています。

2024年7月に上場を果たし、2024年9月時点でその時価総額は人材業界大手のエン・ジャパンを上回るなど、企業としても急成長を遂げています。

シェアフル

シェアフル」は2019年1月にサービスを開始し、パーソルホールディングス株式会社とランサーズ株式会社の合弁会社であるシェアフル株式会社が運営するスポットワークサービスです。

パーソルグループという人材業界大手の傘下にあるため、採用ノウハウの深い理解と顧客基盤を活かした営業力が強みです。

また同社が開発するシフト管理サービス「シェアフルシフト(旧SyncUp)」との連携が可能で、シフト管理業務から人材募集までをワンストップで実現する仕組みを構築しています。

LINEスキマニ

LINEスキマニ」は、国内利用ユーザー数9,700万人以上の巨大な顧客基盤を持つ「LINE」を運営するLINEヤフー株式会社が運営するスポットワークサービスです。

ユーザー数にあたる「LINEスキマニ」公式アカウントの友達数は約2,200万人と、他のサービスと比較しても多くの求職者に対してリーチできるほか、「LINE」という慣れ親しんだアプリ内で募集情報を提供できる点が利点です。

2024年2月からは、人材業界大手のマイナビと営業および商品開発分野での連携を開始しており、マイナビの企業データベースと営業ネットワークを活かして求人獲得・商品開発を行っているようです。

メルカリハロ

メルカリハロ」は、フリマアプリ大手「メルカリ」のユーザー基盤を活用したスポットワークサービスです。メルカリの取引評価システムをそのまま「メルカリハロ」に反映させており、働くワーカーの評価が閲覧できます。

この仕組みによりトラブルの防止や働く環境の透明性が確保されている点が、他社サービスにはない独自性と言えます。

また「メルカリ」内のシームレスな操作性も特徴で、「ほしい商品があるが手持ちのお金では買えない」というユーザーに対して、『メルカリハロ』で働いてほしいものを手に入れるという体験をデザインしているようです。

ショットワークス

ショットワークス」は採用・人事コンサルティング事業を行うツナググループHDが運営するスポットワークサービスです。

一般的なスポットワークサービスが成果報酬型の課金モデルを取っているのに対し、「ショットワークス」では応募してくれた求職者の詳細プロフィール情報の閲覧に対して、1人当たり2,500円の金額が発生するという閲覧課金方式を採用しています。

閲覧するかしないかを選べるほか、長期的に同じ人材を雇用することができれば、採用コストを抑えながらスポットワーカーに働いてもらうことが可能です。

またコンビニ特化のスポットワークサービス「ショットワークスコンビニ」、ワーカーのスカウトも可能な「ショットワークスコノヒニ」など、姉妹サービスが豊富なことも特徴です。

その他のサービスも続々登場中!

さらに、2024年10月1日にディップがボーナス付きスポットワーク「スポットバイトル」をリリースしました。リクルートも2024年秋に「タウンワークスキマ(仮称)」のリリースを予定しています。人材大手企業が続々と参入し、スポットワーク市場はますます加速していきそうです。

まとめ

この記事では、スポットワークの特徴や課題、大手5サービスの詳細を紹介しました。スポットワークは、柔軟な働き方を求めるワーカーや、人件費を抑えつつ短期的な労働力を必要とする企業にとって、有力な手段となっています。

一方、法整備の遅れや労働時間の管理といった課題への対応が求められる中、今後市場はさらに変化を増していくことが予想されます。HRog編集部では今後もスポットワーク市場の動向を追っていきます。

(鈴木 智華)