
2026年8月25日(火)、東京・京橋のTODA HALL & CONFERENCE TOKYOにて、人材ビジネス向けプラットフォームを提供するポーターズ株式会社主催の大型オフラインイベント「PORTERS DAY 2026」が開催されました。
テーマは「テクノロジーで描く、人材紹介・人材派遣の成長戦略」。基調講演、パネルディスカッション、複数の成功事例セッション、パートナー企業によるブース展示と、朝11時から夜19時まで終日にわたってプログラムが続きました。
事前申込者数は678名と大盛況だったこちらのイベントについて、本レポートでは一部セッションの内容を抜粋してご紹介します。(以下、発言は要約)
オープニング|テクノロジーで拓く 人材紹介・人材派遣の成長戦略

【登壇者】
ポーターズ株式会社 代表取締役
西森 康二氏
本イベントは、ポーターズの代表取締役 西森氏のオープニングトークによって幕を開けました。会場である京橋が、東海道で日本橋から京都に向かう際に最初に出てくる橋であったことと絡め、「皆様が目的地に向かう第一の重要な地点として、有益なイベントになることを願います」とアイスブレイク。続けて、この1年間の成果を報告しました。
西森氏「PORTERSプラットフォーム上でご利用企業様が生み出すマッチングの総数が、昨年の1億2900万件から今年は1億6100万件へと増加しました。3100万件の増加、成長率124%です。これはもちろん皆様が生み出された成果です」
導入企業数も累計2911社に達し、人材紹介・人材派遣を主事業とする上場企業の42%、業界売上トップ70社の54%にPORTERSが採用されているといいます。
その背景には開発体制の強化があります。この1年でエンジニアの総数を2倍に増員し、今年上半期の機能リリース数は前年比1.5倍、下半期は4.25倍を計画しています。また「Engineering Unit」という組織を立ち上げ、納品を支援する人員を倍増させた結果、納品の生産性が前年比4.2倍に向上したと報告されました。
そのうえで西森氏は、PORTERSが目指す方向性を明確に語りました。
西森氏「このAIの時代においては、考えて試す『試行』と『思考』、この2つを高速で回すことが非常に重要になってきます。データの分析はAIがスピーディにやってくれる時代においては、正しい目的地を指し示す、つまり正しい戦略を打ち出し組織をその方向に導いていくことが我々の重要な役割になると考えています。PORTERSは、皆様の試行と思考のサイクルを高速で回し、より最適化されたビジネスのデザインを実現するためのプラットフォームです」
さらに、今後提供する新機能として以下の4つが発表されました。
- ATS連携:顧客企業が利用するさまざまなATSとPORTERSが接続し、求人情報が自動的に反映される仕組みを構築
- 「HITO-Linkエージェント」との連携:パーソルイノベーションが提供する求人データベース「HITO-Linkエージェント」とのマッチング連携
- 業務の自動化:データ入力や更新をトリガーに、社内ルールに基づいた業務プロセスを自動実行
- MCP(AIアシスタント接続):ChatGPTやClaudeなどのAIツールとPORTERSのデータを接続し、自然言語での問い合わせで取引状況や売上予測などを即座に取得
最後にセッションの紹介が行われ、PORTERS DAY 2026が開会となりました。
基調講演|個の可能性に、どこまで寄り添えるか テクノロジーと拓く人材ビジネスの新たな価値

【登壇者】
株式会社インディードリクルートパートナーズ 執行役員 / 株式会社リクルートエグゼクティブエージェント 代表取締役社長
近藤 裕氏
基調講演では、22年間にわたって人材紹介事業に携わってきた株式会社インディードリクルートパートナーズ 執行役員 / 株式会社リクルートエグゼクティブエージェント 代表取締役社長の近藤氏が登壇。リクルートエージェントの事業責任者として、AIをいち早くサービスに組み込んできた知見を惜しみなく語りました。
近藤氏はまず、日本の労働市場の現状を整理しました。
近藤氏「一番大きな変化は、生涯1社に勤めるという日本的な雇用構造から、40代・50代の転職も当たり前に変わりつつあることです。2014年から2024年の10年間で、ミドル世代の転職は他の年代と比較しても圧倒的に増加しています。このトレンドは今後も続いていくはずなので、それを前提に私たちは事業を進化させる必要があると考えています」
転職が当たり前になってきた一方で、転職を希望する約800〜1000万人のうち、実際に転職するにまで至る方はごく一部にとどまってるといいます。その背景として近藤氏は「自己理解の不足」「行動への障壁」「転職活動の煩わしさ」の3点を挙げました。
近藤氏「転職していない方にインタビューすると、『やり方が分からない』『時間がかかる』『心が折れる』というコメントが多い。この煩わしさをテクノロジーによっていかに減らすかが、業界として頑張らないといけないテーマです」
ここで近藤氏は、日本特有の課題としてキャリア自律の低さとAIへの不安の深い関係性にも言及しました。国際比較データによれば、「キャリア自律ができている」と感じる人の割合は日本が他国と比べて圧倒的に少なく、同時に「AIの進化が望ましい」と答える割合も日本が最下位水準にあります。その背景にあるのは、「離職後に希望する仕事に就けないかもしれない」という不安指数の高さです。
近藤氏「キャリアの自立が十分に育まれていない状況に、AIによって仕事そのものが変わるかもしれないという不安が重なることで、日本の働く人々はAIをポジティブに受け止めにくい状態に置かれています。この不安は今後10年でさらに蓄積されていく感情だと思っています」
だからこそ、人材紹介企業の存在意義はより大きくなると近藤氏は強調します。人材紹介事業は国から認可を受けた需給調整機能であり、正しい情報を正しく流通させることで、本来出会えなかった人と企業を結びつける根源的な役割を持ちます。AIによって仕事の定義が変わり続ける時代において、個人の不安と向き合いながら可能性を広げる第三者の存在は、むしろ不可欠になっていくと言えます。
近藤氏「課題解決のためにAIを使っていくことを意図してやらない限り、いい事業にはならないし、日本にとっていい労働市場は作れない。そう思っています」
リクルートエージェントでは、現在年間8〜9万人の入社をサポートしています。近藤氏はそのプロセスにおけるAI活用の実態を、数字とともに語りました。
近藤氏「AIによるマッチングが、今では全体の半数弱を占めるようになってきています。ただし、人間のマッチングも2〜3割残っています。どちらかがいいということではなく、組み合わせが重要だという発見が、私たちの最も大きなファインディングです」
AIの特長は、キャリアアドバイザーが無自覚に持つバイアスを排除できる点です。例えば「この会社はこうだ」「この人はこうだ」といった思い込みが、求職者の可能性を知らず知らずのうちに狭めてしまうことがあります。
近藤氏「AIレコメンドによって転職された方の割合を見ると、20代の方が41.0%に対して、50代は49.1%と50代の方が多いという結果が出ています。つまり、私たちが無自覚なバイアスで難しいと思っていた部分を、AIがデータで切り開いてくれており、ミドルシニアの方の転職においても、少し過去とは違うサービス体験を提供できています」
一方で、事業の全てをAIに任せているわけではありません。
近藤氏「AIマッチングの精度が上がったので一度AI側に大きく振ったのですが、もう一回人間に戻ってきたというのが今の現在地です。人間の本当に困っていることや言葉で表せないものが、キャリアアドバイザーとの対話で見つかったりするんですよね。やはりロジックに落とせないマッチングが必ずあって、そこはまだ人間のほうが勝ります」
実際のデータでも、年収が1割以上上がった転職者の割合はキャリアアドバイザー経由のほうが高かったといいます。
近藤氏「年収が200万円上がる、ロジックでは説明できないようなマッチングは、いまだに人間同士のコミュニケーションを通じてのみ成立します。これがAIでできるようになる可能性はゼロではありませんが、個人的にはここは最後まで人間が担っていくものだと思っています」
近藤氏が5〜6年の経験から導き出した最大の学びは、人材育成の問題でした。
近藤氏「AIの学習速度のほうが短期的には早いですが、人間も同じように成長していかないといけません。人は易きに流れるので、AIだけ賢くなって人間が楽になることを目的にしてしまうと、サービスとしての価値が上がりません。AIを活用していくということは、イコール、人の育て方を根本的に変えないといけないということです」

そして講演の最後に、人材紹介事業の本質的な価値について語りました。
近藤氏「この人が本当にイエスと言っているのか、ノンバーバルコミュニケーションを通じて読み取る力は、まだまだAIにはできません。AIは合理的な提案が得意ですが、非合理を応援できるのは人間の強みです。人をサービス上のどこに活用し、メンバーのやりがいを引き出しながら、より多くの人に届くサービスをAIとともに作るか。これが今後の人材業界に突きつけられる課題だと思っています」
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