
2026年8月25日(火)、東京・京橋のTODA HALL & CONFERENCE TOKYOにて、人材ビジネス向けプラットフォームを提供するポーターズ株式会社主催の大型オフラインイベント「PORTERS DAY 2026」が開催されました。
テーマは「テクノロジーで描く、人材紹介・人材派遣の成長戦略」。基調講演、パネルディスカッション、複数の成功事例セッション、パートナー企業によるブース展示と、朝11時から夜19時まで終日にわたってプログラムが続きました。
レポート後編では、パーソルイノベーション株式会社 大浦氏と株式会社PeopleX 荻田氏によるパネルディスカッションの様子をお届けします。(以下、発言は要約)
前編はコチラ
パネルディスカッション|AI時代、人材会社の『介在価値』はどこに残るのか

【登壇者】
パーソルイノベーション株式会社 代表取締役社長
大浦 征也氏
株式会社PeopleX 執行役員CSO
荻田 泰夫氏
ポーターズ株式会社
取締役副社長 / ポーターズマガジン 編集長
渡邊 智美氏
この日最後のセッションには、パーソルイノベーション株式会社 代表取締役社長の大浦氏と株式会社PeopleX 執行役員CSOの荻田氏が登壇しました。ポーターズ株式会社 渡邊氏の進行のもと、4つのテーマに対するパネルディスカッションが展開されました。
1つ目のトピックは「転職活動や就職活動はAIによってどう変わっていくか、求職者が期待すること」。大浦氏はまず、業界への自戒ともとれる問いかけを行いました。
大浦氏「あえて言うと、本当に人材会社は求職者から期待されているのか、ずっとこの業界にいる人間として冷静に考えたいと思っています。どこに登録したか覚えていない、求人だけもらって後は自分でやるという方も多い。AIとは関係なく、私たちはずっとこれを考え続けないといけない」
そのうえで大浦氏は、求職者が人材会社に求めるものとして「意味づけ」と「後押し」という2つのキーワードを提示しました。
大浦氏「求職者は自分がぼんやりと目指している方向性や、実践するか分からないけどやりたいことに対して、叶うのか叶わないのか、そのキャリア選択がなぜ自分にとって良いのかを意味づけしてほしいんだと思います。後押しには2種類あって、『いいですね』という応援と、『無理ですよ』という否定の両方が含まれます。100%の応援だけじゃなくて、プロとして『それは難しいと思います』とか『そういうことをしたいならこっちじゃないですか』と言ってくれることも含めて後押しです」
AIはこの「意味づけ」の表面的な部分は得意ですが、「後押し」についてはまだ人間に軍配が上がるといいます。
荻田氏「求職者にとっては答えよりも、その答えに辿り着くまでのプロセスの方が重要なんじゃないかと思っています。皆さんもご経験がおありかと思いますが、合理的に考えればAの方がいい選択なのになぜかBを選ぶみたいなことは沢山あるんですよね。それはつまり、ご自身での意味付けができているということです。『こういう理由でこういう会社に行くんだよね』と自分の言葉で語れるようになると、自己肯定感に繋がるんじゃないかと思います」
2つ目のトピックは「AI普及時の人材紹介ビジネスの変化」についてです。冒頭では、AIによるレコメンド精度の向上と、仲介者ビジネスの構造的変化についての議論が展開されました。
荻田氏「RAもCAも、今は個人の感覚でコメントや情報を入力しているケースが多いですよね。でも今後AIが進化し、RA・CAがお客様や候補者と話した内容がそのままシステムにインプットされるようになれば、レコメンドの精度も大きく変わっていくと思います。そのため、『本質は変わらない』とか言いたいところではあるものの、実際変わると思いますね。
昔は求職者と我々の間で情報の非対称性があったため、求職者が知らない求人情報をお渡しするだけで仲介者ビジネスとしての価値がありました。ですがもう、『この会社にしかない求人』というのは無くなっていきます。
そうすると、仲介者の価値は誰経由で転職したかということに変わっていく。同じものでも、ここを経由すると求職者自身のスキルが棚卸しされる、チャレンジできる——そういう色がない会社は淘汰されていくと思いますね」
荻田氏はPeopleXでのAI面談の実践経験から、現場のリアルを語りました。
荻田氏「最初は登録時のカウンセリングにAIを活用しようとしたのですが、なかなか受け入れられませんでした。候補者にとって転職活動の最初の一歩は非常に不安が大きい。AIを導入すべきはそこじゃないんだと気づきました」
大浦氏「我々はカウンセリングの前に事前情報をヒアリングしてもらうAIプレカウンセリングを実施しています。利用率は3割程度。ただし利用した方の半分は、10分以上AIと話してくれる感覚がありますね」
カウンセリングでの活用の難しさが語られた一方で、AI面接が役立っている別の事例も紹介されました。
荻田氏「現場のCAから『面接対策のところで使いたい』という声が上がってきました。企業ごとに質問をカスタマイズして面接練習をAIで行うことで、CAが候補者に割いていた時間を大幅に短縮できています」
3つ目のお題は「テクノロジーの進化は人材会社にどう追い風になるか?AIを競争力に変えるために今から取り組むべきことは何か?」でした。大浦氏はこの問いに対し、「スクリーニング」と「アトラクト」を明確に切り分けました。
大浦氏「まず前提として、徹底的に使えるAIは使うべきだと思います。その上で、スクリーニング的な要素はAIの得意分野で競争力にはなりません。問題は、候補者に前向きな気持ちになってもらうアトラクト力をどう持つかです。冒頭でも話した通り、『この会社に行きたい』という自分なりの意味づけに繋がるデータというのは、求人票に載らない情報 ――誰と働くのか、どんな失敗事例があるのかといった一次情報――だと考えています。それをどれだけ持っているかが、最終的な競争力の源泉になると思います」
ここで荻田氏は、アトラクト力を高める具体的な打ち手として「推薦状×AI面接」の組み合わせを提示しました。
荻田氏「RAの方々はチャレンジングな推薦をなんとか通過してもらおうと、結構な時間を使っていると思います。でも推薦状を書いて採用企業に渡しても、あまり読まれないまま、年齢・転職回数といった数字で判断されてしまうケースが多いんですよね。そこで『この動画を見てください』と言える、そこまでしてくる人材紹介会社は今のところほとんどいません。推薦状にAI面接の結果を組み合わせることは、差別化に間違いなくつながると思います」
大浦氏はこの議論に「人間力パラメーター」という概念を重ね合わせました。
大浦氏「なぜかある会社経由のほうが書類通過率が高い、という現象は、年齢や転職回数という従来の物差し以外の何かを、その会社が抽出できているということかもしれません。スペック的には転職難易度の高い方でも、実はこういう人間力パラメーターがある、という新しい物差しです。年齢や経歴でスクリーニングするのはAIが得意なので、AIに任せてしまえばいい。逆に人間はこうした物差しをいくつ持てているかが、最終的な競争力の差になるのではないでしょうか」

最後のトピック「これから3〜5年で人材会社が最も投資すべき領域」について、2人は同じ方向を向きました。
荻田氏「人材紹介は(野球で言う)1回から9回まで全部人がやっている労働集約産業です。AIで自動化できる部分は確実に増えていますが、ツールを使えば全部解決というわけでもありません。結局は使い手側がどのような世界観を持ちたいか、どう意思を持って使っていくかだと思います」
大浦氏「AIがいろいろ補ってくれる時代に、求職者に選ばれる個人になれるかどうかに尽きると思います。この人経由で転職したいと思ってもらえるかどうか。それができて初めて、人材紹介会社があってよかったと言われるスタートラインに立てると思うので、とにかく人への投資でしかないと思っています」
業界歴20年超のベテランが、それぞれの言葉で辿り着いた同じ答え――AIが何を代替しようとも最後は人だという確信に、多くの来場者が頷いていました。
まとめ
PORTERS DAY 2026は、人材紹介・人材派遣に関わる全員が自分事として問いを持ち帰ることができる一日でした。
AIによるマッチングが過半数を占め始めた現場のリアル。それでも「後押し」と「アトラクト」において人間が果たすべき役割の大きさ。そして、AIを活かすほど問われる人材育成と倫理観の重要性。
テクノロジーと人間の力をどうかけ合わせていくかは、我々にとってこの先ずっと考え続けなければいけないテーマとなりそうです。
