【新卒MVP×リーダー対談】強いチームは、学び続けることから生まれる【株式会社ワンキャリア 後編】

株式会社ワンキャリア
技術開発部 シニアエンジニアリングマネージャー
江副 廉人(画像左)
えぞえ・れんと/株式会社データX(旧: フロムスクラッチ)、ZETA株式会社にてソフトウェアエンジニアとして、SaaS開発や新規事業開発に従事。2021年より株式会社ワンキャリアにて、ソフトウェアエンジニア/エンジニアリングマネージャーとしてプロダクト開発、研究開発に従事。

株式会社ワンキャリア
技術開発部 エンジニアリングマネージャー / コンサルティングセールス事業部 カスタマーサクセス
中川 智貴 氏(画像右)
なかがわ・ともき/2020年よりインターンとしてワンキャリアに参画。2021年よりワンキャリアクラウド採用管理(ATS)の開発及びチームマネジメントに従事。2022年に新卒として同社に入社後、EMを務める。2024年にはtoCサービスの共通IDであるワンキャリアIDの導入を主導し、下期MVPを獲得。現在はtoBプロダクト開発チームを横断的にマネージメントしつつ、CSとしてプロダクトのオンボーディングも務める。

ワンキャリアでの挑戦やマネジメント力

前編では、2024年下期MVP受賞までの軌跡や、江副さんと中川さんの先輩・後輩としての関係性に迫りました。

後編では、中川さんがMVPを受賞した当時の心境や、「ワンキャリアID」という大きなプロジェクトを進行していた際に感じていた課題や手応えについて、さらに深く伺っていきます。さらに、江副さんと中川さんそれぞれが、これからワンキャリアでどのような挑戦を描いているのか、そしてマネジメントにおいてどんな視点を大切にしているのかも語っていただきました。

現場での実践を通じて見えてきたリアルな学びと、そこから生まれる新たな展望に迫っていきます。

ワンキャリアIDとは

ワンキャリアの就活生・求職者向けの複数サービスを1つのIDで利用できる共通会員IDのこと

中川さん『ワンキャリアID』は、ワンキャリアの共通ID基盤になるため、社内の全サービスの関係者が関わるようなプロジェクトでした。その分ステークホルダーが非常に多く、それが開発を進めるうえで難しかったポイントのひとつでした。弊社のこれまでの開発案件の中でも、ここまで多くのステークホルダーと関わりながら進めたものはほとんどなかったんじゃないかなと思います。

チームとしても十分なケイパビリティ(対応力)があるとは言えなかったので、その点も難しさのひとつでしたし、乗り越えるべき課題だったと感じています。

また僕がマネジメントしていたのが業務委託の方々だったこともあって、社内で起きていることをどこまで共有し、どのように協力をお願いするかの部分にも苦戦しましたね。“どこまで任せるのか”とか、“どの粒度までブレイクダウンして渡すのか”というのは常に悩みました。

たとえば、プロジェクトを進めている上で自分だけが見えていなかった課題に業務委託のメンバーが気付くことがあります。そういったとき、細かくブレイクダウンしすぎていると『自分に任された範囲ではないので言わない』とメンバーが判断するケースもあるので、情報の行き違いが起きやすい構造だったと思います。そのあたりのメンバーへの任せ方や関わり方にかなり試行錯誤しましたし、特に難しさを感じたポイントでした」

中川さんは、難しいと感じたプロジェクトやチームメンバーとのコミュニケーションに対して、どのような心持ちで乗り越えてきたのでしょうか。

中川さん「僕は新卒1年目の頃から、自分のキャリアの方向性として、CTOを目指してキャリアを築いていこうと考えていました。だから、複数のチームをマネジメントしながら、大規模な開発を安定して進めしっかり着地させることは、自分が目指すキャリアに直結する業務だと理解できていました。今回担当したプロジェクトでは困難に直面する場面も多かったんですけど、そこを意識しながらモチベーションを保って進めていました」

スモールチームへのこだわり

江副さんはマネージャーの役割についてこのように語ってくれました。

江副さん「マネージャーって、チームのことに関しては意思決定する立場じゃないですか。だから、自分の能力がチームの上限になることもあると思っていて。自分が成長しなくなったら、そこでチームの成長も止まってしまうんですよね。だからこそ、そういう構造に対してちゃんと自覚的でいることが重要だと考えています。学び続ける姿勢は、マネージャーになる前よりもずっと強く持たないといけないと思っていました」

こうした感覚を強く持つようになったのは、ワンキャリアでマネージャーという立場を経験してからのことだったそうです。

江副さんがもうひとつ大事にしていることが、「スモールチーム」の考え方。メンバーが増えても、大人数を1つのチームにまとめるのではなく、その中でチームの規模を小さく保つようにしているといいます。

江副さん「僕が入社したとき、エンジニアの社員は5名程度の規模感だったのですが、今は30人近くに増えました。もし当時のままのチーム構造だったら、1チームは10名になっていたかもしれません。世の中にはそういう大人数のチームもありますが、僕たちはそういう形をよしとはしておらず、きちんとチームを分けて、それぞれのチーム内で意思決定ができるようにしています」

その背景にあるのは、「意思決定の経験が人を成長させる」という考えだそうです。

江副さん「人が成長するタイミングって、自分で意思決定して、その結果が返ってきたときだと思うんですよね。うまくいったか、失敗したか。その経験があって初めて、判断力や価値観が磨かれていく。だからこそそれを、構造としてつくることが大事なんです。

チャンスを自分から取りに行ける人もいれば、そうじゃない人もいる。組織が大きくなると小規模の時よりも様々なタイプの人で構成されるようになりますが、小さなチームなら自然と意思決定の機会が増える。そういう仕組みにしておくことが大切だと思ってます」

江副さんが大切にしている空気づくり「チームに必要なのは、部活みたいな“勢い”」

さらに江副さんがチームづくりで心がけていることのひとつが、チームの空気をどうつくるか。なかでも意識しているのが「部活っぽさ」だといいます。

江副さん「僕が直接見ているチームで意識してるのは、一言で言うと『部活感』ですね。学生っぽさというよりも、部活で練り上げられるあの“勢い”を意識しています。勢いがあるチームなら、多少無理があってもなんとか乗り越えられると思っています。実際、過去に僕が担当していたプロジェクトで明らかにリソースが足りないことがありました。だけど、チームにちゃんと勢いがあってみんなで盛り上がっていたからこそ、なんとか乗り切ることができました」

チームの雰囲気を感じ取ってあるべき状態に調整できるのは、やはりマネージャー自身。だからこそ、自分のふるまいひとつで空気が変わることを強く意識しているといいます。

そんな空気をつくるために、江副さんが意識しているのはとてもシンプルなことでした。

江副さん「まずは自分が明るくいること。あとは、メンバーに対して声をかける回数を増やし、コミュニケーションの量を増やすことですね。そして自分が誰よりも働くっていうのも、結構効くんですよ。でも結局、何より大事なのはマネージャーが平常心でいることだと思ってます。

大きなプロジェクトになればなるほど予期せぬ事態はつきもので、自分自身も内心『本当にうまくいくのだろうか…』と不安になることもあります。でも、メンバーにとってはそんなの知ったこっちゃないんですよね(笑)

だから、自分の中で不安があっても、チームの前では『なんとかなるよ!』っていうスタンスでいたほうがいい。士気を下げずに高いモチベーションを維持してさらに向上させていくことができると、結果的に目標を達成できて、プロジェクトをなんとかやり遂げることができます。本当に雰囲気次第ですよね。

とはいえ、勢いだけでは乗り切れないこともあります。そんなときにこそ意識するのが、メンバーの頑張りをちゃんと“承認”することです。ハードなプロジェクトになればなるほどハードルも高くなるので、『このままだとダメかも…』と思う瞬間もあるんですよ。でも、それをそのまま伝えてしまうと、メンバーからしたらただキツいだけです。それこそ『そんなの知ったこっちゃないよ!』って話じゃないですか。

だから、メンバーには『ちゃんとできてるよ』と伝えてあげて、士気を高めていく。タイプにもよりますが、そういう小さな承認がモチベーションにつながると思います。やっぱりチーム全体で、楽しく働きたいですよね」

ここまでのお話から、中川さんと江副さんがそれぞれ大切にしている「マネジメント力」が、周囲やチームに良い影響を与え、大きなプロジェクトをやり切る原動力になっていることが伝わってきました。そんな歩みを経て、今お二人が見据えているこれからの展望についても伺いました。

中川さん「強く考えているのは『サービスをいかに成長させていくのか』です。現状、我々が理想としている『ワンキャリアのサービスを利用すれば採用成功に繋がる』といった状態からはまだ遠いかなと思っています。理想に近づくには、『どういうことができればお客様の採用が成功するのか』という解像度をもっと上げる必要があり、そのためにまずはプロダクトを成長させていかないといけないと思っています。

そして自分個人としては、プロダクトを伸ばしていくと同時に、それが売上や経営に対してどんなインパクトを与えているのかを意識し、きちんと可視化していきたいと考えています。

このような考えに至ったのは、『ワンキャリアID』の開発経験が大きいです。このプロダクトは、会社にとって大きな資産になったと感じている一方で、直接的に売上を生むものではありません。営業のように成果が数字として表れやすい役割と比べると、エンジニアの貢献を経営とどう結びつけるかを説明するのは、なかなか難しいんですよね。

一方でBtoBのプロダクトは、経営へのインパクトを比較的わかりやすく示しやすい領域だとも思っています。だからこそ、『中川がいたからこそ出せた数字だよね』と言ってもらえるような貢献をしていきたい。このプロダクトがあったから、こういう売上が実現したと、エンジニアの立場からも経営陣にしっかりアプローチしていきたいと思っています」

江副さん組織としてはこれからも『筋肉質な組織』を引き続き目指していきたいです。筋肉質な組織にするポイントは2つあると思っています。

1つ目は、メンバーのスキル・技術力を信じられないレベルまで上げることです。『技術力さえあればなんでもできる』とCTOの岩本さんがよく言っているのですが、僕はこれは真実だなと思っています。組織としては僕が入社した頃から一貫して、メンバーのスキルアップに対して重点的に投資しています。

昨今はAIの発展も影響し、よりこの部分に投資する意味はすごく大きくなっています。技術力を高めるために業務時間を使ってでも勉強や投資することが、最終的にはリターンに繋がっていくというのが会社としての共通認識です。

2つ目のは、ビジネスパーソンとしての戦闘力を上げることです。たとえば当たり前のことですが、財務三表を読めたり、他社の決算情報を理解できたりといったビジネスリテラシーがあると、プロダクトの価値を数字で語りやすくなりますよね。『この機能を改善したい』といった提案をする際に、エンジニア自身が『開発には●ヶ月かかります。その工数に見合うリターンはこうです』と経営陣に対して伝わる言葉で説明できる。そうしたリテラシーや交渉力を、組織の一人ひとりが持てるようになると、本当に強いチームになります。
トップだけでなく一人ひとりのメンバーが『ミニ経営者』であり、『卓越した執行者』でもある組織。それこそが、僕たちの目指す『筋肉質な組織』だと考えています」

さらに江副さんは「筋肉質な組織」についてこう語ります。

江副さん「やはり、うまくいっている組織って、一人ひとりの個人がすごく強いんです。ビジネス上のKPIに向き合うだけでなく、お客様やユーザーの方向をちゃんと見ているし、技術にも真摯に向き合っている。それが結果として、強いエンジニア組織をつくっているんだと思います。これは他社や海外の事例を見ても明らかです。こうした組織を目指すことはワンキャリアのエンジニア組織として、これからビジネスをさらに成長させていく上での必須条件だと感じています。何よりそういう組織で働くのって、純粋に楽しいんですよね。
そして、ワンキャリアのミッション『人の数だけ、キャリアをつくる。』の“人”には、当然社員も含まれます。これだけ転職が当たり前の時代に、ワンキャリアで一生働く人は僕も含めていないかもしれない。でも、ワンキャリアに入ったからこそ実績ができて、次のキャリアにつながっていく。そういう機会って『筋肉質な組織』で働いていれば、自然と生まれてくるものなんですよね。
そういった環境を提供するというとおこがましいかもしれませんが、みんなで一緒につくっていけたらいいなと思っています」

この1年を一言で振り返る

最後に中川さんと江副さんに、この1年を一言で振り返ってもらいました。

不確実性

中川さん「やはり去年の『ワンキャリアID』のプロジェクトを通じて、不確実性に対する向き合い方を学んだ1年間だったなと思っています。

ありきたりですけれども、学生時代やっていたことはゴールが明確で先が見えてるものばかりでした。一方で、社会に出てからの仕事は正解もゴールも見えづらく、不確実なことの連続なんですよね。

だからこそ、プロジェクトを通じて、不確実なことが起きてもチームとして対応できるだけのケイパビリティ(対応力)をあらかじめ身につけておくことの重要性を学びました。『これは起こりうることだよね』というメンタリティーで対応していく姿勢もすごく大事です。不確実な出来事に対して、自分個人としてもチームとしてもどう向き合っていくのか、この1年間でしっかり学ぶことができたかなと思っています」

無知の知

江副さん「僕自身、成長したなという実感はあまり感じないタイプなんです。むしろ知れば知るほど、自分のまだ足りていないことに気付くというか、解像度が上がることで、見えていなかった課題が見えてくるんですよね。『ここはまだできていないんだな』とか、『あれが身についていないんだ』とか。

ワンキャリアに入社した当初の僕は、IC(インディビジュアルコントリビュータ)としてのソフトウェアエンジニアでした。チームの中で動く1人の開発者として入社し、そこからマネージャーになって、シニアエンジニアリングマネージャーになり、今は必ずしもエンジニアリングの範疇にない仕事をすることもしばしばあります。徐々に役割が変わっていく中で、自分がいかに色々なことを知らないかという気付きの連続でした。それが自分にとってはすごく心地よく、『まだまだ頑張らないと』と1年思ってきました。きっとこれからも、そんな風に思い続けていくんだろうなと予感しています」

まとめ

入社3年目にして、ワンキャリアの歴史の中でも最も難易度の高いプロジェクトを完遂した中川さん。中川さんは新卒1年目からワンキャリアの「CTO」を目指しエンジニアとしての技術力を磨くだけでなく、チームマネジメントにも積極的に取り組みながら、着実に信頼を築いてきました。

そして、難易度の高いプロジェクトやチームマネジメントの現場において中川さんと江副さんは、それぞれの立場から試行錯誤を重ねて確かな手応えをつかんできました。

その過程で見えてきたのは、エンジニアとしての技術力だけでなく、「人」に向き合うマネジメントの奥深さでした。

これからさらに広がっていくワンキャリアの挑戦。

ワンキャリアのミッションである「人の数だけ、キャリアをつくる。」を体現するその中心には、現場の熱量とチーム全体で歩む力強いマネジメントがあることを、改めて実感するインタビューとなりました。