株式会社リブセンス
『batonn』事業開発
伊藤 豪 氏
いとう・ごう/2018年東北大学経済学部卒業後、株式会社リブセンスへ入社。転職メディア事業にて法人営業、アルバイト事業部にてプロダクトマネジャーを経験後、2020年6月同社の新規事業部へ異動。ToC、ToB含め複数の事業の立ち上げに携わり、現在のbatonnプロジェクトへジョイン。主にマーケティングとセールスを中心に事業開発を推進している。
面接は、採用に欠かせないプロセスの一つだ。今や企業が候補者に選ばれる時代であり、面接でいかに候補者を深く理解し、自社の魅力を伝えられるかが入社意欲を大きく左右するといっても過言ではない。質の高い面接を実施するにはどうすればいいのか。株式会社リブセンスは2021年、オンライン面接プラットフォーム『batonn(バトン)』をリリースした。そこで今回は、企業の採用活動や面接を分析してきた『batonn』の伊藤氏に、面接を改善することの重要性について話を伺った。
重要なのに不透明な面接
面接は、ミスマッチのない採用をするために、また候補者から選ばれるために欠かせないものだ。ミスマッチを防ぐためには候補者の経験や能力を面接でしっかりと引き出さなければならないし、選ばれるためには面接においても会社の魅力を訴求し、入社意欲を高めてもらわなければならない。
一方で、現場で実際行われている面接の様子を実はよく把握できていない、という採用担当者も多い。その背景には、専門性が必要なプロダクト開発を行う企業を中心に、現場の社員を巻き込んで面接をする企業が増えた、という昨今の採用の傾向があると伊藤氏は語る。
「例えば、人事の一次面接が終わった時点では候補者の入社意欲は非常に高かったはずなのに、現場の二次面接を受けた後に辞退されてしまったとしたら『二次面接で何があったんだろう』と疑問をもちますよね。しかし、現場の面接内容に疑問があったとしても、『忙しい現場の時間をさらに奪ってしまう』と遠慮し、詳細を明らかにできないこともあるのではないでしょうか。その結果、面接担当者頼みの面接を続けるしかなくなり、面接は改善されることもなくますますブラックボックスとなっていくのです」
面接のブラックボックス化の問題点は、通化判断の結果以外が分からなくなってしまうことにある。
面接ではよく「ジャッジ」という言葉を使う。ジャッジは英語で「裁判官」や「審判」といった職業を表し、採用面接においては合否判定を下すときに使われる言葉だ。合否を一方的に判断するようなニュアンスを伴うこの言葉を挙げて、伊藤氏は「面接はジャッジの場ではない」と主張する。
「候補者の魅力があまり伝わらなかったとして、それは候補者のプレゼンテーション能力が足りなかったからだと言い切れるでしょうか。もしかしたら、候補者はAという魅力を持っていたのに、面接担当者がBについてしか質問をしなかったかもしれません。面接担当者のほうが魅力を引き出しきれなかったケースも考えられます」
面接では「事実」と「解釈」を明確にする必要がある
では、一方的に「ジャッジ」しない面接とは一体どのようなものだろうか?
「面接担当者が候補者をジャッジするとき、『継続力に課題があるように感じた』など、主観に基づいて判断していることが往々にしてあります。そして、次の面接を引き継いだ人は『継続力に課題がある』というコメントをもとに次の面接に臨むわけです。
ここに落とし穴があります。『事実』と『解釈』がごちゃ混ぜになっているのです。前の例に戻ると、継続力に課題があるように感じたのは面接担当者の『解釈』であり、その前にはそう感じるに至った『事実』があるはずです。『継続力に課題があるように感じた』というエピソードをもとに『責任感が乏しい』と評価するならば、その背景や状況をヒアリングして、『前職を2年で離職した』という事実とともに共有したほうがよいのです。
なぜなら、人によって解釈は違うものだから。同じ『前職を2年で離職した』という事実でも、その背景や状況次第では、人によっては『変化を厭わない人』と解釈するかもしれません。事実を明確にすることで、面接に客観性が生まれます。ある事実に対してどう解釈するか、どう評価するか、基準を統一しなければならないことに気づくからです」
客観的な事実から「この経験からこんな能力・スキルを持っている人だ」と見立てをすることを「アセスメント」という。アセスメントをするには、事実をしっかりと捉えること、その人を表現する言葉を数多く持ち合わせていることが重要だという。
アセスメント型の面接ができるようになると、面接の再現性が増す。見極めたいポイントを確実に引き出し、チームでアトラクトを設計することができるため、結果的に採りたい候補者を見極め確実に採用する面接が実現できるのだ。
再現性の高い採用を設計するために、まずは何から始めればよいだろうか。その答えは、面接を構造的に設計し記録する、構造化面接と呼ばれる手法を実践することだ。
「それに際し重要なのは、まず評価基準を明確化すること。その基準を満たしているかを確認する手段として、質問を事前に設計します。面接をある意味マニュアル化することで、誰が面接担当者になっても評価がぶれることがないというメリットがあります」
- その質問は、何を見極めるためのものなのか
- どんな質問をしたのか
- 候補者はどのように答えたのか
- その答えをどのように評価するのか
構造化面接を取り入れるためには、上記のように、状況を可視化する必要がある。状況を知って差分を知り、候補者の評価をすり合わせることで、二つのメリットがうまれる。
「一つは、面接の効率が上がることです。面接一回あたり、30〜60分ほどの時間がかかりますが、共通の評価基準を持つことで不必要な面接を削減することができます。最終面接に近づくにつれ面接担当者の役職も上がっていきます。主観ではなく客観を面接に取り入れることで、『前の担当から引き継がれた候補者と会ってみたら、採用要件とマッチしていなかった』というような基準のズレを未然に防ぐことができます。
もう一つは、入社後のミスマッチを防止できること。候補者が無事入社に至っても、配属した後で現場との不一致が問題になることは少なくありません。面接の時点で、現場の求めるスキルセットとそれに基づく評価基準や質問を設計することで、入社後のトラブルを防ぐことができます」
かんたんに構造化面接を始められる『batonn』
以上のようなメリットがある構造化面接だが、いざ導入しようとしても「どうしたら良いかわからない」「事前の準備に大きな負担があるので手軽に始められない」という課題にぶつかることも多いのが実態だ。ただでさえ忙しい現場に詳細な議事録を頼んだり、すり合わせの時間をたっぷりとってもらったりするのは難しい。
そんな課題を解決するために、リブセンスでは面接を自動録画・文字起こしするツール『batonn』を開発した。構造化面接という手法を手軽にスタートしたい企業をサポートするサービスだと伊藤氏は語る。
「『batonn』では自動で録画と文字起こしによって面接での実際のやりとりを確認することができます。面接担当者がどんな質問をしたのか、候補者はどんな回答をしたのか、結果的にどの部分を評価したのかを事後的に確認することができるので、事前の準備の負担をかけることなく構造化面接的なメリットを得ることができます」
- 聞くべき観点をもれなく質問できる
事前に評価基準を登録することで、面接中にその基準と聞くべき項目がガイドとして表示される。質問に対する候補者の回答について、良かった点・より深ぼりたい点をリアルタイムでマーキングしておくことも可能。
- 面接中のメモが不要
面接の内容は自動で録画、文字起こしがされるので、手間がかかりがちなメモ・議事録作成が不要。面接内容が「事実」として残るので、連携もスムーズになる。
- 評価をかんたんに入力
面接中にマーキングした具体的なエピソードをもとに、事実に基づいた評価を入力。面接の内容を思い出し、テキストを一から作成する手間を削減する。
詳細はこちら
「面接を構造化し、事実に基づいて評価するという手法は、従来のやり方をガラリと変えなければならないかもしれません。けれど、面接の質を高めることは候補者をより深く理解することにつながり、採りたい人を逃さない採用を実現する足がかりとなります。
個人戦になりがちだった面接をチーム戦へと変え、いい人を逃さない採用を実現していきましょう」