【HRog10周年】「私たちの認識ひとつで社会は変わる」i-plug CEO中野氏が語る採用の進化

株式会社i-plug
代表取締役 CEO
中野 智哉 氏
なかの・ともや/1978年兵庫県生まれ。 2001年中京大学経営学部経営学科卒業。2012年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。株式会社インテリジェンス(現パーソルグループ)で10年間求人広告市場で法人営業を経験。 2012年4月18日に株式会社i-plugを設立し、代表取締役CEOに就任。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業や人材業界の有識者にインタビュー。この10年間が業界や自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回は株式会社i-plugの中野氏に、同社の歩みと新卒採用市場の変化、これからの10年で取り組みたいことを伺いました。

日本の採用活動はこの10年で劇的に「進化」した

新卒採用向けのダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」は2012年10月にリリースされました。中野氏は「この10年間の新卒採用市場は、怒涛の変化の連続だった」と語ります。

「2010年代に新卒採用市場に起こった大きな変化の一つに『就活スケジュールの変更』があります。『12月に広報、4月に面接解禁』から『3月に広報、8月に面接解禁』へと、就活スケジュールが後ろ倒しになったのです。

しかし、当時は経済が上向きになり採用市場も活性化していたため、就職活動前に学生からの認知を獲得したいという企業が増えていました。学生側も、『就職活動が本格化する前に社会のことをもっと知りたい』という人が増えていた時期だったんですね。その結果、選考前に企業について知ることができるインターンシップが生まれ、就職活動の長期化が進みました。

企業は採用活動が長期化する中で『従来の採用手法だけでは成功できない』と考え、小規模イベント、リクルーター採用など採用手法も多様化していきました。OfferBoxのようなダイレクトリクルーティングサービスが市場に広まったのもこの頃ですね」

さらに「スマートフォンが普及したことで、学生の情報収集のあり方も大きく変わった」と言います。

「今までは就活情報にアクセスするためには、パソコンを立ち上げてログインする必要がありました。しかしスマートフォンの登場によって、学生が就活情報に触れる頻度は劇的に増えました。

自分のプロフィール写真を撮影してアップしたり、企業からの連絡に返信したりするのがここまで簡単にできるようになったからこそ、OfferBoxというサービスが学生からも受け入れやすくなったのではないかと思います」

また2016年ごろからAIのビジネス活用が本格化。「AIによって日本産業のあり方は大きく変わるのではないか」と囁かれ始めました。その中で採用企業側のニーズも「今まで出会えていなかった学生とどのように出会うか」にシフトしました。

「OfferBoxでもその変化に対応するため、機械学習を活用した検索結果の最適化や、ピープルアナリティクスに基づいたマッチング精度向上に取り組んできました。またその頃から、就活ナビサイトのあり方を疑問視する声が増えたんですね。ナビ以外にも多様な就活スタイルが増加し、新卒採用ツールは戦国時代に突入します」

そして中野氏は、この10年の新卒採用市場の大きな分岐点として2020年コロナ禍を挙げました。

「今までの日本社会では『直接会わないと学生を判断できない』『失礼にあたる』など、文化的な問題でオンライン面接がなかなか浸透しませんでした。しかしそれがコロナによってガラリと変わりました。OfferBoxでも、コロナ禍は登録学生数・企業数の伸び率が非常に高く、採用の文化が変化したことを実感する時期でしたね」

中野氏は、この10年の変化を一言で表すと「変化であり進化」だといいます。

「企業側・学生側ともに、テクノロジーに対するリテラシーが向上し、またエリアにとらわれず出会いの幅を広げられるオンライン採用のメリットを享受できるようになりました。今まで無理と思われていたものが出来たという点で、これは大きな良い『変化』であり、日本の採用のあり方が『進化』したと言えるのではないでしょうか」

共に社会を良い方向へ進化させよう

今後10年間で実現したいことを尋ねると、「入社後の定着や活躍を含めた支援に挑戦したい」と回答がありました。

「入社後の定着や活躍のために、就職活動のあり方や、大学生活の送り方はどうあるべきかという、本質的な価値をもっと突き詰めたいと思っています。『入社後活躍を実現する採用活動』とは何か、正解のない世界ではありますが、このプランニングに10年かけてチャレンジしていきたいです」

また読者に対して「未来をつくる若者たちにとって良い社会をつくるために、一緒にチャレンジしていきましょう」とメッセージを送りました。

「コロナ禍での採用の変化は、私たちの認識や固定観念を少し変えるだけで、社会はより良いものにできるということを証明してくれました。10年後に振り返ってみたとき、『あそこで挑戦したからこそ、社会が良い方向に進化した』と思えるように、共に想いを持って行動していきましょう」

(ライター:鈴木智華)

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