【HRog10周年特集】「寝てても採用できる世界」を目指して 次の10年で起こしたいイノベーション

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
SEEDS COMPANY COMPANY長
陳 シェン 氏
ちぇん・しぇん/大学卒業後、パーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)に入社。出向先のUSENのインターネット回線個人向けセールスで個人全国一位を獲得。約半年後、パーソルキャリア株式会社に帰社。求人広告領域にてリテールと大手向けセールスの個人・チーム全国一位を獲得し、サービス企画部門の経験を経て最年少ゼネラルマネジャーへ昇格。2015年10月、社内ベンチャーSEEDS COMPANYを立ち上げ、COMPANY長となる。現在パーソルプロセス&テクノロジーに在籍中。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業や人材業界の有識者にインタビュー。この10年間が業界や自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回はパーソルプロセス&テクノロジー株式会社の陳氏に、アルバイト市場の過去10年間とこれから目指す世界について話を伺いました。

ATSの浸透と激動のコロナ禍がアルバイト市場に与えた影響

10年前の2013年4月、同社の前身である「株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ」の所属するインテリジェンスグループが、テンプグループの一員となりました。その後、2017年に「パーソルプロセス&テクノロジー株式会社」に社名変更し、現在に至ります。屋号の変化とともに、同社の主力サービスであるATS「HITO-Manager(ヒトマネ)」を取り巻く環境は大きく変わったと、陳氏は振り返ります。

「2013年頃からATSがアルバイト領域に浸透し始めました。HITO-Managerがリリースされたのは2010年の10月ですが、その当時はまだまだATSの概念が知られておらず、2013年の時点で導入社数は数十社程度。それが2014年にかけて一気に増えたと記憶しています。

それまではアルバイト採用の手法と言えば求人媒体への出稿かリファラル採用、チラシの掲示あたりがメインの手段でした。当時は多くの企業HPにおいて採用ページはごく簡素で、場合によっては連絡先が載っているだけなど、求人の内容がとても分かりづらい状態でした。しかしATSの台頭により、大手企業を筆頭に企業のHPの中に採用HP(オウンドメディア)をつくる文化が生まれ、採用効率が格段に向上しました。採用ホームページに訪れる求職者は、その企業のファンであることもしばしばありますからね。

一方で、今でも多くの中小企業ではATSの活用が広まっていません。最近では当社の『x:eee(エクシー)』やリクルート社の『Airワーク』など、中小企業向けのサービス展開も進んできましたが、まずは中小企業の方に採用ホームページの概念を知ってもらう段階から取り組む必要があると感じます」

大手企業を中心に採用ホームページや分析・歩留まり改善の重要性が広まってきたとはいえ、アルバイト採用の主軸は現在も求人媒体のままです。「ここまでの約10年、アルバイト領域ではむしろATSくらいしか画期的な進歩がなかったとも言える」と陳氏は語ります。

「加えて、2020年からはコロナ禍に突入しました。それまで各社が作り上げてきた採用の考え方や手法が、このタイミングで一回途切れた感覚はありましたね。営業自粛や時短営業の影響もあり、求人の取下げや雇い止めも起こりましたし、大手企業では採用施策をストップせざるを得ない企業も多かったのではないでしょうか。

それから数年経った現在、コロナ前にやろうとしていた施策を再開させる動きが活発になっています。求職者の志向が変わったり、コロナ禍で離れた人が戻ってこなかったりという変化もある中で、各企業が新たな打ち手の意思決定に迫られていると感じます」

自動化を進めて「寝てても採用できる世界」を目指す

こうした現状を受けて、陳氏は「これからの10年はもっと抜本的なイノベーションを起こしていきたい」といいます。

「我々はSEEDS COMPANYとして、究極的には『寝てても採用できる世界』を実現したいと考えています。アルバイトの採用は店長さんが行っているケースがほとんどですが、本業である店舗経営が忙しく、採用活動は片手間になりがちです。その上、求職者の集客方法・手段にもそこまで詳しくないため、媒体営業担当に頼らざるを得ません。しかしビジネスの構造上、どうしても媒体営業はより予算の高いお客様を支援する傾向があります。

だからこそ、自立した採用活動ができるようになることが重要です。仮に、不足しているアルバイトの人員数の把握から媒体の選定、原稿制作、出稿、面接までをまるっとテクノロジーで自動化できれば、大幅に採用担当者の負担が軽減できるはずです。

そこで、例えばPOSデータや勤怠データなどの情報を集約し、シフトの穴を見つけて必要なタイミングで自動的に集客手段を選定、原稿制作して求人を出す仕組みを作れないかと考えています。面接もAIなどを用いて自動化し、採用活動の一連の流れを網羅したサービスが実現できればと構想しております。

また、求人原稿制作の自動化にも挑戦したいですね。効果の出る求人原稿を、どれだけ人の手を介さずに自動生成できるかが鍵だと思っています。最近ではChatGPTなどの高性能な生成AIも出てきているので、人とAIの力を組み合わせてなんとか実現できないか模索しているところです」

最後に、「この先の10年ではこうしたイノベーションが起こることを踏まえて、人材業界で働く人には自分の価値を見つめ直してほしい」と陳氏は語りました。

「HR業界はとても楽しい業界です。イノベーションがあまり起きておらず、まだまだチャレンジできることがたくさんあります。その上、無形商材であり、自分次第でやれることや提案の幅をどこまでも広げられます。

HR業界の営業の皆さんには、自分はHR業界や目の前のお客様に対してどんな価値提供ができているのか、そしてそれはこれからの10年後にも通用するのかをぜひ一度細分化して考えてみてほしいです。今後も営業という仕事はなくならないと思いますが、顧客が営業に求めるものは変わっていきます。『物売り営業』ではなく、『ソリューション営業』へのニーズや期待値がどんどん高まっていきます。自分自身の行動を見つめなおして、ぜひお客様の期待を超え続けてください。営業という仕事を、わくわくドキドキしながら最高に楽しんでほしいです」

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