「人と人のつながり」が帰属意識を生む!ユーザーの8割が参加するコミュニティ運営のコツ3選

株式会社カオナビ
カスタマーエンゲージメント本部 戦略推進部 カスタマーマーケティンググループ
坪井 友里 氏
つぼい・ゆり/新卒でIT業界専門の人材会社へ入社し、スキルアップやキャリア支援のためのイベント企画・運営を担当。2021年1月カオナビに入社。ユーザーコミュニティ「カオナビキャンパス」の立ち上げ〜運営、オン・オフラインのユーザー会の企画・運営に携わる。

採用の難易度が上がる中、複雑化した業務に追われる人事担当者を支援するHRTechサービスが増加している。株式会社カオナビが運営するタレントマネジメントシステム「カオナビ」は、ユーザーコミュニティ「カオナビキャンパス」を運営。その利用登録率は全ユーザーの8割を超えている。多くのユーザーに参加してもらい、継続的に利用してもらうためにはどうすればよいのか。今回は「カオナビキャンパス」の企画運営を担う坪井氏に、ユーザーコミュニティ運営のコツを伺った。

ユーザーコミュニティ「カオナビキャンパス」で差別化を図る

タレントマネジメントシステム「カオナビ」のユーザーコミュニティ「カオナビキャンパス」では、カオナビ導入企業の人事担当者等を対象に、タレントマネジメントを学び合える場を提供している。既存ユーザーの約8割が参加するユーザーコミュニティ「カオナビキャンパス」について、 企画・運営を務める坪井氏からサービスの概要を伺った。

「現在は、大きく分けて『コンテンツのポータルサイト』と『コミュニティとしてのユーザー交流』の2軸で運営しています。カオナビの機能を有効にご活用いただくため、さまざまなノウハウの詰まったコンテンツを集約したポータルサイトとしての役割が1つ。ユーザー交流においては、ユーザーさま同士でノウハウを共有いただいたり、困った時に質問を投稿できたりするオンライン掲示板があります。また、聴講型と交流型のユーザー会をそれぞれ月2~3回程度、うちオフラインでのイベントを月1回全国各地で開催しています」

カオナビキャンパスの開設に至った背景と抱えていた課題について、「『ユーザーさま向けコンテンツの一元化』と『活きた事例と他社との交流の提供』を実現したかった」と坪井氏は続ける。

「これまでにお客さまから質問や相談を受ける中で作成した資料など、積み重ねてきた取り組みを1つのサービスとしてしっかりと提供すべきと考えたのがコミュニティ発足に至った背景です。『ここへアクセスすればユーザーさまが欲しいものがすべて詰まっている』という場を作りたかったんですね。

また以前は、数ヶ月に一度のユーザー会でしか最新事例を提供できていませんでした。特にタレントマネジメント領域は『正解がない』と言われており、人事の皆さんは本当に悩まれています。一人で担当されている方など、社内に相談相手がおらず正解がわからないまま頑張っている方が本当に多いんですね。だからこそ、カオナビという共通点を介してユーザーさま同士をつなげることによって『活きた事例と他社との交流の場』を提供したいと感じ、カオナビキャンパスの開設に至りました」

よりよいサービスを提供すべく開校されたカオナビキャンパス。その運営を通じてユーザー同士の交流が深まり、他社との差別化につながっていると言う。

「競合環境が激しくなる中で、ユーザーコミュニティが他社サービスとの差別化にもなるだろうと考えています。今まで弊社が培ってきた知見や、ユーザーさまたちが持っているノウハウは、弊社のコミュニティでしか提供できない『財産』です。それらを現場で活躍されている人事の皆さまと共有できることが、コミュニティの価値となっています」

オンラインコミュニティやユーザー会では、これまでカスタマーサクセス担当者からしか得られなかった事例をコミュニティを通じて発見できるなど、運営側にとっても有益な場となっていると言う。

「ユーザーコミュニティの存在によって、ユーザーさまのリアルな事例を収集し、展開しやすくなりました。特に、新機能リリース後の『利用者のリアルな声』を拾いやすくなった点はとても大きいですね。

また、サービス開発者がユーザーさまから直接フィードバックいただけるようにもなりました。開発担当者がユーザー会に登壇し、開発の背景から今後の機能の展望などを話してもらう場や、実際に機能を体験できるワークショップを設けています。今後の開発に活かせるのはもちろん、参加者からは『カオナビと一緒にツールを作っている気がする』との声をいただくことも多いですね。ユーザーさまに『共創している実感』を持ってもらう機会にもなっているのではないでしょうか」

企業とユーザーの双方にとってプラスになるユーザーコミュニティを運営ができれば、結果として解約率の低下やLTV(顧客生涯価値)の向上につながっていくはずだと坪井氏は話してくれた。

「人と人のつながり」を創出する、コミュニティ運営のコツ3選

さまざまな効果が見込めるコミュニティ運営だが、その運営に苦戦する企業も多いのではないだろうか。カオナビキャンパスが取り組んでいるコミュニティ運営のコツについて伺った。

コミュニティの登録・利用を促進

コミュニティ立ち上げ当初によくある「利用者が集まらない」という課題に対して、カオナビではコミュニティの認知や価値の周知など、登録・利用促進の取り組みを行ってきた。

「弊社では、コミュニティに『コンテンツを提供するポータルサイト』的役割を持たせ、コミュニティへの導線を張ることでユーザーさまに登録・利用を促しています。コミュニティ開設以前からの既存ユーザーさまに対しては、とにかくコミュニティの存在と価値の周知を徹底しました。毎月2回配信するメルマガにも登録を促す一文を添えたり、お客さまとの日頃のミーティング時にコミュニティサイトのURLを案内したりと、網目を広く設けて知っていただくための取り組みを行っています。

新規ユーザーさまに対しては、カオナビ利用開始の際に申し込みフォームを設けて登録を促しています。カオナビを活用するためには、ユーザーコミュニティの参加は『当たり前』という位置づけにして案内したことが今の土台となっています。その結果、カオナビキャンパスオンラインの登録率はオープンから2年目の現在で8割を超えました」

セミナー・ユーザー会で交流機会を創出

登録を促した後にもユーザーに参加し続けてもらうためには、さまざまな工夫が求められる。そのためのコンテンツの1つとして、セミナーやユーザー会など交流機会の創出が不可欠だと坪井氏は続ける。

「弊社では、コミュニティの価値を継続的に感じてもらうために、年間100回を超えるセミナー・ユーザー会を開催しています。全国のユーザーさまに等しくコミュニティの価値を感じてほしく、昨年からは北海道から沖縄まで全国8箇所でオフラインのユーザー会を開催しました。

ユーザー会では、実際のユーザーさまにご登壇いただいて交流する機会を作っています。特に『他社との交流が学びになった』という声が多く、ユーザー会に来てもらうことがコミュニティの価値を感じてもらえる一番のきっかけなので、足を運んでもらうための機会を多く作っています」

多様なコンテンツで飽きさせない

継続的に利用してもらうためには、多様なコンテンツを提供して飽きさせないことが重要だ。カオナビでは、ユーザー会のほかにもコンテンツを月2回更新し、ユーザーがコミュニティにアクセスするきっかけづくりに注力していると言う。

「コンテンツの内容は主に『機能の活用方法をまとめた資料』と『ユーザー会のアーカイブコンテンツ』の2つです。

各地で開催したユーザー会のアーカイブをコミュニティ限定で配信しているんです。発信してもらった内容をその場限りで終わらせるのはもったいないので、アーカイブ動画はすべてのユーザーさまが視聴できるよう、プラットフォーム上に置いて事例の展開を強化しています」

1つの企画を副次利用することで工数を削減するなど、運営側の負担を減らす工夫も長期的なコミュニティ運営に必要なポイントと言える。

加えてカオナビキャンパスでは、従来のユーザー会のほかにユーザー自身が企画したイベントもほぼ毎月開催していると坪井氏は教えてくれた。

「ユーザー会に参加された方々から『すごく良かった!こういう場をもっと作りたい!』と話が挙がったのが始まりです。一方的に受け取るだけのセミナーと大きく違い、ユーザーさま同士が自発的に取り組むため、メリハリがあって魅力的に感じてくださっている方も多い印象ですね」

このように長期的かつ継続的にコミュニティに参加し続けてもらうためには、ユーザーに自社のファンになってもらうことが不可欠と言える。運営側とユーザーが一心同体となりコミュニティを活性化していくために、カオナビが大切にしていることについて伺った。

「弊社のコミュニティには何千名も参加していただいていますが、その中でも『一対一のコミュニケーションの場』であることを常に意識しています。例えばユーザー会の参加者には、私たち運営側も積極的にコミュニケーションを取るのはもちろん、ユーザーさま同士も知り合いになってもらえるよう取り計らっています。サービスを提供・利用する『企業と企業』としてのつながりを超え、コミュニティを通じて『人と人のつながり』ができることで、コミュニティへの帰属意識やサービスへの愛着につながるのではと思っています」

個人と個人をつなぎ、「カオナビ」の枠を飛び越えた交流の場にしていきたい

最後に、今後の展望について坪井氏に伺った。

「今後も、継続して『人と人のつながり』の創出に注力していきたいです。これまでコミュニティの認知拡大に努めてきましたが、これからは『ユーザー会の価値を知っていただいて共創していく』という次のステージに進んでいきます。ファンや共創する仲間になってくれるユーザーさまを増やしていくことで、より幅広い方に興味を持ってもらえるコンテンツの提供につながると考え取り組んでいます」

更に、カオナビキャンパスでは、カオナビの枠を越えた交流機会の創出にも新たに取り組んでいるという。

「カオナビを導入検討中の方にもコミュニティの輪を広げようと現在取り組んでいます。今後、『タレントマネジメント実践者の学び場・コミュニティ』という認知をユーザーさま以外の方にも発信していき、ゆくゆくはコミュニティをきっかけにカオナビを知っていただくことも目指しています。単なるカオナビユーザーのコミュニティというだけでなく、導入検討者の方にも魅力的に映るようなコミュニティとなることを目指しています。

もともとは、カスタマーサクセスとして顧客満足度の向上を目的にカオナビキャンパスを開校しました。しかし今では、プロダクト開発や新規営業、企業ブランディングなど、多様な矢印でつながって影響力を持ちはじめるまでに成長してきています。今後はさらにユーザーコミュニティをハブとして、社内のさまざまな機能を動かしていきたいです」