広告に捉われない採用支援を。「クリエイティブ起点」で成長する求人広告代理店の戦略

株式会社リソースクリエイション
代表取締役
髙田 桂太郎 氏
たかだ・けいたろう/1985年東京都生まれ。2015年4月1日に株式会社リソースクリエイションを設立し代表取締役に就任。これまでに1,000社以上の採用コンサルティングを担当。長年築き上げた採用に関するノウハウを生かして、採用に特化したSNSの運用代行「エアリク」を展開。自社のSNS総フォロワー数は55万人超え、総再生回数は8億回を突破。

株式会社リソースクリエイション代表の髙田氏は、求人広告代理店で1000社以上との取引にかかわり、業界大手の代理店で取締役も経験した採用に関するプロフェッショナル。2015年に同社を設立し、求人広告代理店からSNSの運用代行やマーケティング支援など幅広い事業を行っている。今回は髙田氏に、同社設立の背景や求人広告代理店としての生存戦略について伺う。

求人広告に捉われず、より良い採用支援サービスを提供したい

2015年、求人広告代理店業をメイン事業に設立されたリソースクリエイション。髙田氏は起業当初から「求人広告だけに捉われない、より良い採用支援サービスを作りたい」という想いを持っていたという。

「人手不足が深刻な現在の日本では、費用をかけて求人広告を掲載したにもかかわらず、人を採用できないという事態が続出しています。もともと大手求人広告代理店で営業マネージャーをしていたこともあり、たびたび『求人広告』という商品のアンバランスさを目の当たりにしてきました。

求人企業にとって、求人広告の掲載は目的ではなくあくまでも手段。そして求人広告の販売のみにこだわっていては、今の時代に即した採用支援はできないと思いました。だからこそ『採用の課題を根本から解決するものを』という想いを持って、起業をしたんですね」

また髙田氏は起業当初から、「他の求人広告代理店との差別化」にこだわってきた。そのことを象徴する取り組みの一つに、クリエイティブを活用したインナーブランディングがある。

「採用ホームページやSNSはもちろんのこと、オフィスに掲示するポスターや、社員同士のやり取りで思わず使いたくなるようなLINEスタンプを制作することもあります。『採用を成功させるには、まずは会社の中から変えていかなければいけない』という考えのもと、このような幅広い取り組みを行っています」

クリエイティブ制作チームによるクオリティの高いアウトプットを武器に、人材業界で躍進を続ける同社。しかし「はじめから順風満帆なわけではなかった」と髙田氏は当時を振り返る。

「今は自分たちの強みにもなっているSNS運用ですが、始めた当初は全く再生数が伸びず苦労しました。投稿内容も『何が当たるか分からないから』と手当たり次第に試し、迷走し続けていましたね(笑)。

そしてやっと世の中から注目されたと思えば、炎上してしまうこともありました。しかし運用を続けてきた結果、今では企業アカウントの中でトップクラスのフォロワーを持つことができました。失敗しても諦めずに試行錯誤を続けてきたからこそ、今があると思っています」

「変わりたい」と思っている企業に変わるきっかけを

現在リソースクリエイションでは「人材ソリューション事業」「SNS事業」「マーケティング事業」「クリエイティブ事業」という4つの事業を展開している。それぞれの概要についても伺った。

人材ソリューション事業

「新卒・中途・アルバイト領域の求人広告を扱う代理店販売事業です。採用支援のご提案のほか、面接代行やスカウト代行といったRPOサービスも行っています」

SNS事業

「採用特化型のSNS運用代行サービス『エアリク』を提供しています。TikTokやInstagram・YouTubeなどの幅広いSNSに対応可能ですね。今流行りのショート動画の台本作りも含め、撮影や編集、運用、コメントの返信までをトータルサポートしています」

マーケティング事業

「採用関連事業で培った認知・応募者獲得ノウハウを活かし、売上を拡大するための広告やコンテンツマーケティングの支援も行っています。また販促目的のSNS運用代行も承っています」

クリエイティブ事業

「各専任のスタッフの知見を活かし、パンフレットやポスターといった紙媒体の制作物から、コーポレートサイト・LP・動画などのweb制作まで、幅広いクリエイティブを制作しています」

「ブランディング」を切り口に幅広い事業を展開する同社だが、その根幹には「変わりたいと思っている企業に変わるきっかけを与えたい」という想いがある。

「心の中では『自社を変えなければならない』と思っているのに、社長と社員との関係が硬直してしまっているせいで、変わるのが難しい状況に陥っている会社は多くあります。今エアリクを導入いただいているクライアント様の中にも、代表の方が『うちのメンバーはダメだ』『どうしようもない』と社員を卑下している企業がありました。

その代表の方に対して、弊社の取締役が『そういうことを言っているから採用が上手くいかないのでは』と一喝したんです。最終的にエアリクを導入いただけたのですが、ご発注をいただけたのはその代表自身に『自社を変えたい』という気持ちがあったからだと思うのです」

「変わりたいのに変われない」というジレンマを抱える企業に手を差し伸べ、会社が変わるきっかけを作る。「そのようなきっかけを作れる企業が、本当に価値の高い企業」と髙田氏は語る。

リソースクリエイションのクリエイティブに対するこだわりも、「質の高いクリエイティブは、会社のブランドを変革する大きな後押しになる」という髙田氏の考えから来ている。

「SNSやインターネットの発展によって、世の中のクリエイティブを見る目はどんどん厳しくなっています。みんなホームページが古臭い会社よりも、ホームページを見た時に『いい感じだな』と思える企業に入社したいと思うんです。

そこで私たちがこだわっているのは、『どこを見てもかっこいい』と思えるかどうか。他の会社とは違うなと思ってもらえるクリエイティブを作る、そしてクライアントに価値提供をする。この点にプライドを持って取り組んでいます」

今の時代に合った採用支援の形を模索しよう

髙田氏に求人広告の今後について聞くと、「もはや過去のように求人広告だけで採用が上手くいく時代ではない。今の時代に合った採用支援の形を模索するべき」と回答が返ってきた。

「私たちが今力を入れているのはSNSですが、それだけやっていれば十分というわけではありません。インナーブランディング・アウターブランディングを問わず、社員や候補者の目に触れるものを総合的にアップデートすることが、企業の採用力向上につながると思います。リソースクリエイションとしても、今後もクライアント企業の採用パートナーとして、様々なことに取り組んでいきたいです」

同社は今後、エアリクの拡大とto Cサービスの展開に力を注ぐ予定だという。エアリクは現在採用目的での依頼が多いが、今後は販促目的の運用ニーズにも対応できるよう営業を強化していくとのことだ。

「現在弊社はto Bビジネスしか行っていませんが、今後はto C領域のビジネスにも進出したいと思っています。今考えているのが、クリエイティブ部門が持っているノウハウをベースにしたスクール事業です。to Bよりもさらに裾野が広がるto C領域で、新たなチャレンジを仕掛けたいですね」

最後に髙田氏は「社会のインフラとなるサービスを生むとともに、若手に多くのチャンスを与える企業を目指したい」と同社の今後の展望を語ってくれた。

「『Googleや各SNS上でどう戦うか?』ではなく、プラットフォームを作る側に回ることが大切だと考えています。FacebookにせよTikTokにせよ、システム自体はシンプルで、私たちの規模でも決して作れないものではありません。重要なのはユーザーのニーズをとらえた発想とデザインです。そのようなプラットフォームを作るチャレンジをこれからしていきます。

また、もう一つの目標は『若手に多くのチャンスを与える企業に成長する』こと。多くの優秀な人材が集まり、卒業生たちが『ここで働けてよかった』と誇りを持って独立や転職できる会社にしたいです。そのためにも、もっと魅力的で大きなサービスを手がける会社にしてきたいですね」

(鈴木 智華)