転職潜在層へのアプローチがカギ!選考体験で差別化する新時代の採用

株式会社XAION DATA
代表取締役
佐藤 泰秀 氏
さとう・やすひで/日立製作所に新卒入社後、公共システム部門において 大規模基幹系システムの導入・構築プロジェクトにおけるマネジメントに従事。その後、アメリカ・シリコンバレーのAIスタートアップ企業にジョインし、アメリカにて市場開拓やファイナンス関連の業務に従事。アメリカ・日本市場開拓責任者を担い、本社COOを経て日本子会社設立及び、同社CEOに就任。2020年1月、XAION DATAを共同創業。

近年、さまざまな業界で労働人口の減少による人手不足が課題となっており、採用の難易度が高まっている。その中で注目を集めているのが、積極的な採用を行うダイレクトリクルーティングや、SNSを活用したソーシャルリクルーティングだ。今回は、AIタレント検索エンジン「AUTOHUNT」を運営する株式会社XAION DATAの佐藤氏に、転職潜在層へのアプローチの重要性やXAION DATAの支援内容について伺う。

従来の採用手法だけでは激化する採用競争に勝てない

少子高齢化によって労働人口が減少し、様々な業界において人手不足が深刻化している。特にIT領域における人材の需要は年々増加しており、経済産業省が公開しているデータでは将来的に40~80万人のIT人材不足が懸念されるとの試算も出ている。採用競争がいっそう難化している中で、その渦中にいる企業の人事担当者はどのような課題を抱えているのだろうか。

「人事担当者が感じる課題は大きく分けて2つあります。1つは、転職サイトの活用だけでは母集団の形成が難しいことです。優秀な人材はリファラル採用で転職先が決まってしまったり、転職に前向きでない状況でも他社から引き抜きの話があったりするなど、転職サイトを利用しない人が増えています。

もう1つは、採用手法の多様化による人事業務の煩雑化が挙げられます。最近では、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティング、副業からの受け入れなど、採用手法が多様化しています。採用が難しい状況から、様々な手法を試そうとして人事担当者の負担が増加してしまうこともありますね」

採用が企業にとって大きな課題となっている状況で、よい人材を確保するためには「転職潜在層へのアプローチ」が非常に重要だと佐藤氏は続ける。

転職潜在層とは

「転職を意識しているが転職活動はしていない層」と定義されることが多いが、本記事では「転職サイトに登録をしていない人」または「今すぐ転職はしないけれど、より自分に合う企業があれば転職しようと思っている人」と定義する。

「転職潜在層へのアプローチは、『採用まで1〜2年ほどかかるのではないか』と思う方も多いのではないでしょうか。しかし、よりよい条件の企業があれば転職したいと考えている人は意外と多いんです。現在の就業先よりも候補者に合う条件を提示できれば、その場ですぐに転職意欲が顕在化する可能性も大いにあります。

また、近年は転職サイトの数も増え、類似する人材サービスも多くなっています。従来の採用手法だけでは、候補者が企業に魅力を感じられるような体験を得にくくなっているんです。一方で転職潜在層へのアプローチでは、他の企業には知られていない人材にアプローチできます。採用競合となる企業よりも先に候補者と繋がることによって、選考体験に差をつけられますね。

これまでは採用競争において、大手などのネームバリューがある企業や年収の高い外資系企業に、中小企業が勝てない状況も多くありました。特にそういった企業にとって、転職潜在層へのアプローチが有効になると考えています」

転職潜在層の優秀な人材を見つけ出す「AUTOHUNT」

XAION DATAは2023年1月、次世代型AIタレント検索エンジン「AUTOHUNT(オートハント)」をリリースした。同サービスでは、LinkedInやTwitter、FacebookといったSNSを含むWebサイトより収集したデータから、自社に合った人材を検索できる。開発の背景には、佐藤氏がアメリカで感じた日本との採用市場の違いが活かされているという。

「世界的にみると、個人が発信しているオープンデータを活用した採用活動が一般的です。WEB上に公開されている職歴などのさまざまな情報をもとに、採用担当者が候補者情報を集めてアプローチしています。

まだ日本においては、個人が職歴などを公開する動きはあまり一般的ではありません。しかし、ビジネスSNSのLinkedInも日本だけで300万人以上の会員がいるんです。今までの経験上、アメリカの採用トレンドが数年後に日本でもトレンドとなっています。日本でもジョブ型採用の導入などが注目される中で、今後はオープンデータを活用した採用手法が広まると感じています」

オープンデータとは

二次利用が可能なルールで公開されたデータのこと。誰でも許可されたルールの範囲内で自由に複製・加工や頒布などができるため、事業戦略やマーケティングなどに活用されている。

オープンデータの活用を広めるためにも開発された「AUTOHUNT」だが、実際に採用担当者はどのように活用しているのだろうか。

「WEB上に分散している人や企業の情報を収集・統合することで、さまざまな情報から人材を横断して検索できます。『人探しの検索エンジン』と言えるでしょう。現在の保有データ数は約340万人ほどで、大手転職サイトよりも多くのデータベースを保有しています。

また、企業についてもIR情報などから属性や業績情報を収集しています。『大手企業で人事を担当している人材が欲しい』『スタートアップ企業で経験をした人材が欲しい』といった、企業を軸にした検索も可能です。

そのほか、採用業務を効率化する管理・自動化システムも搭載しています。たとえば、求人に合った候補者とのマッチングや、候補者に対するスカウトメッセージの送付などを自動で行えます。業務のフェーズに合わせて細かく自動化することで、採用担当者の負担を軽減できるんですね」

さらに、人材の検索以外にも企業の採用戦略に合わせて、採用イベントの集客や採用マーケティング、採用広報などにも活用できるという。

「採用広報の観点だと、より多くの候補者に自社の情報を伝えるために広告を出す企業も多いですよね。しかし当社のサービスでは、『この人にこのメッセージを送りたい』というような、一人ひとりに対してアプローチ方法を最適化できます。 選考への参加を求めず、今後を見据えて候補者とつながりを作っておくといった使い方もできるんですね。

また、正社員採用だけでなく副業や業務委託などの人材にもアプローチできるため、人事担当者の状況や自社の採用戦略に合わせて使用いただいてます」

SaaSの提供で採用を支援する同社。しかし、一番の強みはこれまでに培ってきたノウハウやAIモデルをベースに、企業のニーズに合わせて様々なソリューションを提供できることだと佐藤氏は続ける。

「たとえば、ソーシャルリクルーティングを社外に委託するには費用もかかるため、自社のリソースで実施したいといったニーズがあります。そういった企業には、ソーシャルリクルーティングを自社だけで行えるように、コンサルティングによる支援なども行っています。

さらに、当社は元々AIに特化した開発に強みを持っているので、『採用業務の自動化』や『AIマッチングモデルの構築』といった個社別の開発支援も行っています」

各企業の採用競争力を高めるために

「日本でも、どんどんオープンデータを採用に活用していってほしい」と語る佐藤氏。採用競争が激化する時代で生き残るためには、中長期的な視点を持つことが重要だという。

「よりよい採用を行うために、まずは長期的な視点を持って採用を設計することの重要性を理解してほしいと感じます。人事担当者は忙しいので、採用に関してはどうしても目の前の数字を追いがちです。しかし、採用競争で生き残るためにも、今の施策だけでなく新しい施策を取り入れるなどの視点を持つことが重要でしょう」

今後は終身雇用の制度が衰退していき、雇用の流動性が高まると予想される。それによって採用手法も変化し、ソーシャルリクルーティングなどの手法も浸透していくだろう。激しい変化の中で、XAION DATAは企業の採用競争力を高めるために支援を続ける。

「各企業が自社の採用力を高められるようになれば、結果として海外と比べた日本全体の採用競争力も高めていけると考えます。エージェント頼みの採用ではなく、自社で攻めの採用が行えるような支援の仕組みを作っていきたいですね。

また海外での経験から、日本人は控えめで自己肯定感の低い人が多いように感じています。候補者の方にも自身の価値をしっかりと認知し、自信を持って発信できるよう支援していきたいです。

私たちは『AI × DATAで世界中の価値を最大化する』をミッションに掲げています。個人の価値や企業の価値を最大化できる世の中を作れるよう、今後も支援を広げていきたいです」