株式会社YOUTRUST
シニアマーケティングスペシャリスト
高橋 綾香 氏
たかはし・あやか/2014年に新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。クライアントに広告の企画・提案をするアカウントプランナーとして約9年間活動。その間に、営業局長として組織立ち上げ、最優秀ベストプレイヤー受賞などを経験。2023年4月、株式会社YOUTRUSTにマーケターとして参画し、現在はYOUTRUST全体のマーケティング活動を担当。
労働人口が減少し採用難易度が上がっている今、さまざまな手法を試しても採用できないという企業も多いだろう。求める人材を採用するためには転職潜在層へのアプローチが重要だ。しかし、企業が転職潜在層にアプローチする手段は少なく、転職潜在層のビジネスパーソンもまた、ウェブサイトや採用ページには書かれていない企業の雰囲気や実態を知ることは難しい。
こうした背景から、企業と潜在層が気軽に交流できる手段へのニーズが高まっている。株式会社YOUTRUSTは2023年10月15日、ゆるいキャリアイベント「ユートラエールガーデン」を開催。無料でお酒を飲めるキャリアアップイベントとは一体どんなものなのか。HRog編集部が実際に参加してみたレポートをお届けする。
ユートラエールガーデンってどんなイベント?
「ご縁が生まれる、ご円卓バー。」と銘打たれたユートラエールガーデンは、六本木ヒルズの大矢根プラザにて開催された。出展企業はスープストックトーキョーやプログリット、DMM.comなど計10社だ。人材を採用したい企業の他に転職に関わるサービスを提供する企業も集まり、リスキリングやお金の相談などができるようになっている。
来場者は受付でビールの引換券を受け取り、中央にある大型円卓型のブースを自由に見て回る。各ブースの壁には企業名とトークテーマが書かれており、知らない企業でも「面白そうなトークテーマだな」と思ったら気軽に話しかけにいける仕組みだ。引換券とキャリアSNS「YOUTRUST」のアカウントを交換することでビールをゲット、そこからはアルコールを片手に自由に会話が楽しめる。
トークテーマは「超ワクワクする暮らしについて話しましょう」「あなたの夢中になれることを教えてください」など多岐にわたり、また必ずしも転職に直結する内容に限らないものとなっている。そのため、今すぐの転職やキャリアアップは特に考えていない人でも気軽にブースを訪れられる気安さがあった。
こうした「ポップな設計」は細部にいたるまで徹底されている。例えばもらえるビールは色とりどりのラベルに包まれており、しかも企業ごとにデザインが違うこだわり仕様だ。
円卓の周辺にもいくつかのテーブルが設置されており、一息ついてビールをまったり飲んだり、プロにキャリアの相談をしたりできる。ライトに参加してもよし、しっかり話し込んでもよし。来場者が自分のペースでキャリアについて考えられるイベントとなっていた。
「ゆるい繋がり」を創出したい。イベント責任者の想い
このイベントはどのような経緯で開催されたのだろうか。マーケティングマネージャーで本ユートラエールガーデンの責任者も務めた高橋氏にインタビューを行った。
開催の背景には、求職者たちの「終身雇用に依存しない価値観」の広がりがあると高橋氏は語る。
「当社が2021年7月に実施したアンケート調査では、労働者の約6割が『転職を検討中』『良い案件があれば転職したい』と考えている、いわゆる転職潜在層であるとの結果が出ました。転職顕在層と合わせた『転職予備軍』は、約7割にのぼります。
しかし多くの転職潜在層がいるにも関わらず、コロナ禍の影響もあり20~30代の若年層の方が社外の人と出会うきっかけが少なくなっています。社外の人とのゆるい繫がりを求めているけれど、『どうやって繋がればいいのかわからない』『社外の人と出会うきっかけがない』と、キャリアや転職に対して一歩を踏み出せない人が多くいるのです」
こうした課題がある中、2023年1月に開催したイベント「ユートラ神社」がユートラエールガーデン開催のきっかけになった。
「ユートラ神社は、創立5周年を記念して実施したイベントです。神社をモチーフにしたキッチンカーに賽銭箱や本坪鈴などを携えて、コーヒーやオリジナルのどらやきなどを無料で提供しました。4日間で約1,000人もの方に参加していただき、『新しい出会いが増えた』との声を多く頂きました。この成果を踏まえ、次はさらに規模を拡大して『キャリアやビジネスの新たな出会い』を提供したいと考えユートラエールガーデンを企画しました」
ビアガーデン形式で気軽に参加できるイベントに
ユートラエールガーデンの特徴は、なんと言ってもビアガーデン形式であることだ。そこには転職・キャリアイベントの堅苦しいイメージを打破したいという狙いがあった。
高橋氏「転職潜在層の人にとって、カッチリとした転職・キャリアイベントは足を運びづらいものです。そこでビール片手にカジュアルに企業の人と話せるビアガーデンをコンセプトとし、『とりあえずビールを飲みたいから』『何となく面白そうだから』などの動機で気軽に来てもらえるように設計しました。さまざまな方との交流を通じて『この企業すごく面白いな』『こういう場所でチャレンジするのもアリかも』など、気付きを持ち帰っていただけていたら嬉しいです」
また企業と来場者の接点を最大化すべく、出展企業の選定や会場のデザインなどにも工夫を凝らしている。
高橋氏「就活や転職を考えるとき、有名な企業や名前を知っているサービスの企業を最初に考える方が多いと思います。しかし今回のイベントでは、それ以外の理由でも企業を選んで欲しいと考え、多種多様な業種の企業に出店していただきました。
ラベルやコースターのデザインに加え、提供しているビールの味も各社で異なっています。『トークテーマが面白いから』『ビールのラベルが可愛いから』など、参加者さんと企業が出会うきっかけづくりになればと思い、こだわりました」
ビールのラベル中央に描かれた人は応援団をイメージしており、来場者のキャリアを応援する意味合いを込めていると高橋氏は語る。応援のエールとお酒のエールをかけた、粋なデザインだ。
今後も「オフライン×オンライン」でつながる機会を創出したい
YOUTRUSTの新しい試みとして開催されたユートラエールガーデン。高橋氏は今後の展望について、「リアルな場の必要性」に言及しつつこう語った。
高橋氏「求職者と企業のマッチングにおいて、スキルや経歴はもちろん大事です。しかし、企業との相性はそれだけでは測りきれません。リアルなキャリアの悩みとして多く上がってくるのは、社風や人間関係などの問題です。ミスマッチを減らすためには、候補者と企業それぞれの『体温』を伝えていくことが大切だと考えています。体温が伝わる場として、今回のイベントのようなリアルな場が必要なのではないでしょうか。
ユートラエールガーデンはある意味で、当社の提供するキャリアSNS『YOUTRUST』がオンラインで担っている機能をオフラインに持ってきた企画でもあります。『リアル×オンライン』を意識し、SNSを起点にしつつオフラインでも繋がれるような場を定期的に提供していきたいですね。イベントを一緒に盛り上げたいという企業さまはぜひお声がけください!」
参加企業・来場者の反応は?
ユートラエールガーデンの参加企業と来場者にも感想を伺った。
「YOUTRUST上では転職意欲がある人との交流がメインですが、そうではない方とも話せるとても良い出会いの場となりました。人と人との交流が持てるのがオフラインイベントの良さだと実感しましたね。
また、私は人事担当でお客様と接することが少ないので、お客様や他の企業の方から『スープストック、好きです』『(提供したスープが)美味しかったです、温まりました』と直接お言葉を頂けて嬉しかったです。そうした方々に若手メンバーたちが自社の良さや仕事のやりがいなどを自分の言葉で伝えている姿も見られ、自社の将来を担う彼らにとっても良い機会だったのではと思います」
「今回参加を決めたのは、ビールを片手に自然体でキャリアについて語り合うというイベントコンセプトに、ワンキャリアが展開する転職サイト「ONE CAREER PLUS」のサービスコンセプト『すべてのキャリアをオープンに。』と通じる部分があると感じたからです。条件面や仕事内容などの情報をオープンにすることはもちろん大事だけれど、それだけではなくマインドやムードまでオープンにできる環境を作っていきたいね、と社内でも話していたところでした。
ビールをきっかけにみんなで話をして、会話の流れの中で自然にキャリアについてのコミュニケーションが発生するというのは、我々の理想とかなり近いと感じています。こうした雰囲気をスタートアップ企業同士で一緒にクリエーションしていくことが大事だと思ったのも、参加を決めた理由の一つでした。
実際、自社のブースにも『これからのキャリアに悩んでる』という方がふらっと相談に来てくださいました。ここから採用に繋がるかもしれないし、弊社のお客さまになるかもしれない。普段採用の面談も行っていますが、偶然ふらっと来て自然な流れで話ができることはまずないので、とても有意義な時間でした。
他の出店企業の方とも話しましたが、アライアンスの話が出るなど誰かと話す度にさまざまな機会が生まれています。あとは僕ら次第で、この機会をちゃんとビジネスに繋げられるかが大切ですね。
採用にしても営業にしても、スタートアップ企業はメンバー全員が当事者意識を持っていないとチャンスを掴めません。しかし、当事者意識は強制的に持たせられるものではないので、『みんなで一緒にやろうよ!』という雰囲気を醸成していく必要があります。
だからこそスタートアップ企業の方々には、こうしたオフラインイベントにみんなで参加することをおすすめします。一つになれるのがイベント参加の副産物でありメリットです。学生の頃、文化祭をやるとクラスみんなで仲良くなれたじゃないですか。大人も一緒ですよね」
仲氏「SNSでこのイベントを知り、知っている企業さんが出店していたので参加しました。オンライン上でうっすら知っているけれど話したことはない方とも、直接お話しできたのが良かったですね。
やはりオンライン上ではなかなか気軽に声をかけられないですし、人となりが分かりづらいため、仕事に繋がる機会はあまりないなと感じています。このイベントはビールという繋がりやすいネタがあることで、和やかな雰囲気の中、普段話す機会のない人とカジュアルに話せる点が魅力的ですし、実際楽しかったですね」
安心院氏「『ゆるく繋がる』がコンセプトのYOUTRUST、そのオフラインバージョンがこのイベントなのかなと感じました。この場で直接仕事に繋がらなくても、あとで何かあった時に思い出していただけるかもしれないし、『ゆるい繋がり』があることで相談できる相手ができて良いですよね。私たちフリーランスもそうですし、スタートアップ企業の方などは社内に同じ仕事をしている人がいないことも多いので、気軽に相談できる繋がりができるのはありがたいのではないかと思います」
まとめ
転職潜在層がキャリアの一歩を踏み出せるようにと開催されたユートラエールガーデン。本イベントには約500人が来場し、終始笑顔で溢れる大盛況に終わった。YOUTRUSTの今後の取り組みにも注目だ。