話題のnoteから学ぶ、数値で採用ツールを選ぶ方法 鍵は「選定基準の明確化」

株式会社FanReC
代表取締役
濱⽥ 悠佑 氏
はまだ・ゆうすけ/インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)にて、IT、EMC領域のリクルーティングアドバイザーとして採用支援に従事。その後株式会社デジタルガレージにて採用ブランディング支援、コンサルティングに従事。ベンチャー企業2社の立ち上げを経て、2019年8月に株式会社FanReCを創業、代表取締役に就任。

採用を考えるとき、多くの人事が悩むのがサービス選びだ。求人サイト、エージェント、ダイレクトリクルーティングなど様々な採用手法があり、それぞれに多くのサービスが存在する。どのサービスを選べばいいのか、今使っているサービスが本当に最善なのか分からないとき、どう検証すればよいのだろうか。

今回は株式会社FanReC代表取締役の濱⽥氏が公開している記事『【数値大公開】エンジニア採用で一番効果が高いダイレクトリクルーティング サービスは「○○」だった。』をもとに、リクルーティングサービスの効果検証の仕方と、選ぶ際に大切なポイントについて紹介する。

なぜその媒体を使いたいのか?選定基準が曖昧な企業が多い

エンジニアの採用支援を行っている濱田氏いわく、クライアントからの最も多い質問は「エンジニア採用で一番効果が高いリクルーティングサービス(媒体)はどれか?」だという。その質問の背景を探ると、クライアント自身のサービスの選定基準が曖昧で「とりあえず一番良さそうなもの」を選択していると分かる。

たとえ同じサービスを利用しても業種、企業ブランド、求める要件、採用したいポジション、業務内容、年収、かけられるコスト、運用できるリソースなどによって効果には差が出る。そのためリクルーティングサービスを選ぶには「採用対象である候補者の登録数や、その媒体がどのくらいの機能・スペックを持つのか」よりも、「そのサービスの導入で何を解決したいのか」を考えることの方が重要だ。しかしこれが出来ておらず、サービス選びに失敗する企業が非常に多いという。

ではどうすれば自社にとって一番いいサービスを見つけられるのか。重要なのは「選定基準として何に注目するべきか」である。

選定基準は「費用対効果」か「工数対効果」か

企業が新しいリクルーティングサービスを利用する経緯として、「人材紹介サービス経由での採用が多く、採用コストが嵩んでいるので削減したい」「有効応募者を増やしたい」「求人広告経由で採用ができなくなってきた」など様々な課題が挙げられる。

しかし濱田氏によると、その課題は最終的に「お金をかけても採用できない」という採用コストの問題か、「採用のための人的工数をカットしたい」「もっと効率的に採用したい」という採用効率の問題のいずれかに帰着するという。

目的が「採用コストの削減」ならば、「費用対効果」を基準にサービスを選ぶべきだろう。

例えば、実際にサービスを利用し、サービス経由の内定決定数を計測する。そうすることで「1名あたりの採用コスト=サービス費用÷決定数」で「1名あたりの採用コスト」が算出できる。これはサービスの費用対効果を示している。

一方「採用効率のアップ」が目的ならば、「工数対効果」を基準にサービスを選ぶべきだ。

例えばダイレクトリクルーティングの場合、「採用にかかった工数」とは「スカウトの配信数」と言い換えられる。配信数とサービス経由の内定決定数が分かれば、「1名決定に必要なスカウト数=配信数÷決定数」で「1名決定に必要なスカウト数」が算出できる。これはサービスの工数対効果を示す。

自社が求めるのは「費用対効果」なのか「工数対効果」なのか、利用目的を明らかにして選定基準を決めることがサービス選びの第一歩だ。

4つの項目で工数対効果・費用対効果を測れ

判断基準を明確にしたら、実際に運用してデータをとり効果を測ってみる。費用対効果や工数対効果を測るために注目すべきポイントは4つある。「返信率」「応募率」「内定率」「決定率」だ。

測定ポイント①「返信率」

1つめのポイントはスカウト配信に対する「返信率」の高さだ。

「返信率」は、配信のための時間工数に対してどれくらいの応募があるのかを示す。「返信率」が高いほど、少ない労力で応募を得られるということだ。「返信率」は「返信率=返信数÷配信数」で求められる。母集団形成に課題を抱えている企業はここに注目してみるといい。

測定ポイント②「応募率」

2つ目のポイントは「応募率」だ。

面談から応募にいたる割合を示す「面談~応募率」、またはスカウト配信から応募にいたる割合を示す「配信~応募率」の高さを測る。応募率を求める式は「面談~応募率=応募数÷面談数」、「配信~応募率=応募数÷配信数」だ。

「応募率」は、そのサービス利用者に転職顕在層がどれくらいいるのかを示す。応募率が低い場合、そのサービスの利用者には転職潜在層が多い可能性がある。

転職顕在層・転職潜在層とは

転職顕在層とは、今すぐ転職したいと考えている人のこと。一方転職潜在層とは、明確な転職時期を設定せず、良い求人や会社があれば転職したいと考えている人のことを指す。

工数対効果の高いサービスを求めている企業の場合は、転職顕在層の多い、つまり応募率が高いサービスを利用した方が採用効率が良いといえる。

測定ポイント③「内定数」

3つ目のポイントは「内定数」だ。

「内定数」は、選考をしてみて自社の採用要件にかなった人の数といえる。つまり、自社の求める要件を満たす人材がそのサービスにいるかどうかを示す。応募者は集められているもののなかなか自社にマッチする人材が少ないと感じる企業は「内定数」をチェックしてみよう。

測定ポイント④「決定数」

4つ目のポイントは「決定数」だ。「決定数」は、内定を出した人のうち最終的に自社を選んだ人数であり、そのサービスを利用する競合に自社が勝てるかどうかを示す。内定辞退の多さに悩んでいる企業は「決定数」に注目だ。

いくら「返信率」や「応募率」が高くても内定・決定が出なければ意味がないため、「内定率」「決定率」は4つの中でも重要な項目だ。

4つのダイレクトリクルーティングサービスを効果検証・比較してみた

ここまで、リクルーティングサービスを選ぶ際に注目すべき4つの項目について紹介した。ここからは、具体例としてダイレクトリクルーティングの選び方を見てみよう。

濱田氏は自身で「ビズリーチ」「Green」「HackerBase Jobs」「doda Recruiters」の4つのダイレクトリクルーティングサービスを実際に運用し、効果の比較を行った。その結果を紹介していく。

今回の検証で設定した採用フローとKPIの関係は以下の通りだ。

「返信率」での比較

まずは「返信率」を比較する。今回使用するスカウトメールと求人票は全て同じ内容で、2019年9月〜2020年3月までの期間に満遍なく配信した。実際に使った文章は以下の記事で見ることができる。

「なぜ応募率が2.8倍跳ね上がったのか?」採用広報観点でエンジニア採用向けのスカウトメールで響いている部分を科学してみた。

結果は以下の通り。

【数値大公開】エンジニア採用で一番効果が高いダイレクトリクルーティング サービスは「○○」だった。より

「返信率」での比較では、Greenの 「会いたい送信」が61.1%と他に大きな差をつけた。

「応募率」での比較

次に「応募率」で比較する。今回は「面談した人のうち応募してきた人の数(面談~応募率)」と「スカウトメールを配信した人のうち応募してきた人の数(配信~応募率)」の2種類を算出した。

結果は以下の通り。

【数値大公開】エンジニア採用で一番効果が高いダイレクトリクルーティング サービスは「○○」だった。より

「面談~応募率」での比較では94.1%のGreen、「配信~応募率」では2.7%のビズリーチがそれぞれトップとなった。

「内定数」「決定数」での比較

最後に「内定数」と「決定数」をまとめて比較した。結果は以下の通り。

数値大公開】エンジニア採用で一番効果が高いダイレクトリクルーティング サービスは「○○」だった。より

「内定数」と「決定数」での比較では、内定数3名・決定数2名のdoda Recruitersがもっとも高いスコアを出した。

「返信率」ではGreen、「応募率」ではGreenとビズリーチ、「内定数」「決定数」ではdoda Recruitersが好成績の結果となった。項目によって強いサービスは変わってくることがよくわかる。元のnoteでは工数対効果・費用対効果も含め4媒体の比較結果についてより詳しく紹介しているので、気になる方は参照してほしい。

大切なのは「自社に合うかどうか」、自社での運用をシュミレートするべき

濵田氏による「ビズリーチ」「Green」「HackerBase Jobs」「doda Recruiters」の比較結果を紹介してきたが、サービスを選ぶうえでもっとも大切なのはやはり「自社に合うサービスかどうか」だ。同じサービスでも運用の仕方によって結果は変わる。過去の採用データを参照しながら、自社で運用した場合のシュミレートをして選ぶことが大切だ。

濱田氏は続編の『【数値大公開】続!!エンジニア採用で一番効果が高いダイレクトリクルーティングサービスシリーズ|「Green」のイメージが変わった!編』にて、運用の仕方で比較結果が大きく変わった事例についても詳しく語っている。ぜひこちらも合わせて参考にしてほしい。

世間的な評価だけを鵜吞みにせず、自社なりの判断基準に照らして比較をする。それぞれの企業に合ったサービスを選びうまく運用できれば、きっと高い効果が望めるだろう。