労働者派遣法とは?3年ルールなど改正の歴史や違反例を解説

1986年に施行された労働者派遣法は、これまで幾度も改正を繰り返してきました。特に2012年以降、市場ニーズの変化に伴い大幅な改正が行われ、さまざまな措置や規制が設けられています。人材派遣業界に従事している方の中には、「労働者派遣法とはどのような法律なのか」「違反したらどうなるのか」といった疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。今回は、派遣法の基礎知識やこれまでの改正の歴史から最新の2021年4月の改正までの流れを、実際にあった違反例とあわせて分かりやすく解説していきます。

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目次

労働者派遣法とは?

派遣労働者の労働環境を安全に保つための法律が「労働者派遣法」です。まずは、労働者派遣法の概要について紹介します。

労働者派遣法は、派遣労働者の権利を守るための法律

労働者派遣法(以下、派遣法)とは、正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」といい、1985年に制定され、翌年7月から施行されました。制定後、幾度もの改正を経て、現在は派遣労働者の権利を守ることを目的とした法律となっていますが、制定当初は「ビジネスとして派遣労働を可能にする」という意味合いをもつものでした。

現在の派遣法は、3年ルールや日雇い派遣の原則禁止、同一労働同一賃金など「派遣労働者の就業条件を整備する」内容が多く盛り込まれており、その構成はおおよそ次の通りです。

・派遣業務の範囲
・派遣事業の許可について
・派遣契約に定める事項
・派遣期間の定め
・派遣元および派遣先において講ずべき措置
・個人情報の管理
・労基法等ほかの労働法との関連適用とその特例
・雑則、罰則  

(参考:厚生労働省「労働者派遣事業に係る法令・指針・疑義応答集・関連情報等」

労働者派遣法制定の背景

そもそもどのような経緯で派遣法が誕生したのでしょうか。人材派遣という雇用形態の歴史は意外に古くからあり、その原型は江戸時代にまでさかのぼります。

江戸時代から戦前まで、派遣労働は「人貸し」「組請負」と呼ばれ、雇用関係や責任の所在が不明確なまま、労働者は劣悪な労働環境や賃金の搾取といった不当な扱いを受けていました。こうした問題を受け、戦後1947年に公布された「職業安定法第44条」により、人材派遣は原則禁止となります

しかし人材派遣の禁止以降、類似の仕組みである「業務請負」という雇用形態が普及。1970年代には、「社内の人材不足を外部の人材で補う」という業務請負のスタイルが日本企業においても定着していきました。

そのようななか、経済のグローバル化や技術の進歩が進み、ますます多種多様な人材活用のニーズが生まれることとなります。このような課題に対し、臨時的・一次的に労働力を調整する仕組みとして機能すべく制定されたのが「労働者派遣法」です。

派遣法の制定により、それまで法律で認可されていなかった「人材派遣」をビジネスとして行うことが可能となったのです。

人材派遣労働の仕組みと雇用形態

ここで、派遣法をより理解するために「労働派遣の仕組み」を整理しておきましょう。派遣労働とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で雇用契約を結び、派遣元は労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣するものです。

労働者に賃金を支払う会社と実際に働く職場が異なるという、複雑な労働形態であることが大きな特徴と言えます。

(参考:厚生労働省「さまざまな雇用形態」

現在の派遣労働者の雇用形態は、「登録型派遣」「常用型派遣」があります。加えて、就職・採用の手段となる「紹介予定派遣」も2000年以降認められています。

登録型派遣

登録型派遣は、人材派遣会社に登録をした労働者(求職者)が、ニーズに合致した派遣先企業が見つかった場合に、派遣元である派遣会社と「契約」を結び、就業先に派遣される仕組みの雇用形態です。定めた期間のみ就業し、派遣期間が終わると派遣会社との契約も終了します。一般的に「派遣労働」といえば、このケースを指す場合が多いでしょう。

常用型派遣

常用型派遣とは、派遣元の派遣会社と期限の定めのない無期雇用契約を結ぶ雇用形態のことで「無期雇用派遣」と呼ばれることもあります。派遣期間が終了しても、派遣会社と派遣労働者の雇用関係は継続するため、安定した雇用形態であるといえます。また、2015年の法改正により設けられた「3年ルール」の制限(詳しくは後述)を受けずに、同じ職場で就業を継続できることが特徴です。

紹介予定派遣

紹介予定派遣は、派遣先企業が派遣労働者を正社員として直接雇用することを前提とした雇用形態です。ただし、派遣先企業は直接雇用を義務付けられているわけではありません。派遣労働者も雇用を拒むことができます。

派遣先企業は、派遣期間中に派遣労働者の能力が適正かどうかを考慮して直接雇用の可否を決定でき、派遣先企業と派遣労働者双方の合意が得られた場合にのみ、直接雇用が締結されます。

労働者派遣法改正の歴史

先述したように、派遣法は制定後、数多くの法改正が行われてきました。制定当初は派遣可能な業種が26業務に拡大されるなど規制緩和の流れでしたが、近年は派遣労働者の保護を目的としたさまざまな措置や規制が設けられています。法改正の大まかな流れと改正点を詳しく見ていきましょう。

1985年
労働者派遣法を制定(1986年7月に施行)
派遣対象は13業務
1996年派遣対象を26業務に拡大
(バブル崩壊以後に人材派遣に対する企業からの需要が拡大)
1999年更なる規制緩和で、対象業務が原則自由
禁止業務だけが定められるネガティブ方式を採用
2000年紹介予定派遣を解禁
2003~2006年製造業務への派遣を解禁
医療関係業務への派遣を一部解禁
事業開始時の事務を簡素化
派遣期間制限を延長(原則3年、一部業務に関しては制限を撤廃)
2007年最長1年だった製造業務への派遣期間が最長3年に
2012年<規制強化>現行名称に法律名を変更
日雇い派遣の原則禁止
グループ派遣の規制マージン率などの情報公開義務化
待遇改善の強化 など
2015年労働者派遣事業を「許可制」に一本化
派遣期間を原則一律上限3年に(3年ルール)など
2020年待遇差解消のため「同一労働・同一賃金」がスタート
2021年<施行規則の改正>
派遣労働者への説明義務の強化
労働者派遣契書のデジタル記録の許可
派遣先企業における派遣労働者からの苦情処理義務の強化 など

【2012年法改正】人材派遣をめぐる違法行為が顕在化。派遣労働者保護を目的に規制強化

2012年10月1日に施行された労働者派遣法改正法において、法律の名称が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に改称されました。

派遣法はこれまで規制緩和の流れで拡大してきましたが、ここで規制強化がかかります。2008年のリーマンショックの影響から「派遣切り」や「雇い止め」、「二重派遣」や「偽装請負」など人材派遣をめぐる違法行為が横行しはじめたためです。

これにより、派遣法は「日雇い派遣の禁止」や「待遇への配慮」など、主に派遣労働者の権利保護を目的とした改正が行われました。具体的な法改正のポイントは次のとおりです。

30日以内の日雇い派遣の禁止

日雇い派遣労働者の雇用の不安定さが問題視されたことを受けて、「30日以内の日雇い派遣」は原則禁止となりました。ただし、以下の条件を満たす場合に限り例外的に30日以内の日雇い派遣が可能です。

・ソフトウェア開発や機械設計、事務用機器操作、受付、通訳・翻訳・速記などの専門的な技術や技能が要求される業務
・上記以外の業務であっても、不安定雇用につながらない条件を満たす人を派遣する場合(60歳以上の人、雇用保険の適用を受けない学生、副業として日雇派遣に従事する人、配偶者など主たる生計者でない人、など)

グループ企業内での派遣規制

グループ企業内に人材派遣会社をもつ場合、グループ企業への派遣は、その派遣会社における派遣割合の8割以下にしなければならないという規制がつくられました。これは企業が人件費の削減のために派遣会社を設立して、派遣労働者を正社員の代替えに利用する事例が見受けられるようになったためです。

マージン率の公開

派遣料金と派遣労働者の賃金の差額を「マージン率」と言います。派遣元である派遣会社は、書類やインターネットを通じて「マージン率」を情報公開することが義務となりました。本改正により、労働者や派遣先企業はより適切に派遣会社を選択できるようになったのです。

現在、以下の項目について公開が必要とされています。

・マージン率
・派遣労働者/派遣先企業の数
・派遣労働者の賃金の平均
・労働者派遣の料金の平均
・教育訓練に関する事項

待遇の説明を義務化

あわせて派遣労働者を保護する観点から、派遣元である派遣会社は派遣予定の派遣労働者に対して労働契約の締結前に「待遇に関する事項」などを説明することが義務化されました。派遣会社は以下の待遇に関する事項について、派遣労働者に説明する必要があります。

・雇用された場合に見込まれる賃金の額
・派遣会社の事業運営について
・契約に基づいた待遇について
・派遣の概要や仕組みについて

待遇への配慮

派遣会社は、派遣労働者の賃金を決定する際、以下の待遇について配慮する必要があります。

・派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準
・派遣労働者の職務内容、能力、意欲、成果、経験など

賃金だけでなく、教育訓練や福利厚生の実施についても配慮が求められます。

無期雇用へ転換する機会の提供

派遣会社は、派遣労働者の希望に応じて、無期雇用へ転換する機会を設ける努力義務が課せられました。雇用期間が1年以上の有期雇用の派遣労働者が対象となります。以下のいずれかの措置を取ることが努力義務とされました。

・無期雇用へ転換する機会の提供
・派遣先での直接雇用の推進(正社員や契約社員として直接雇用されることを前提とした紹介予定派遣の対象とすること)
・無期雇用へ転換を推進するための教育訓練の実施

離職後1年以内の再就業を禁止

派遣会社は、離職後1年を経過していない労働者を、元の勤務先へ派遣労働者として派遣してはいけないこととなりました。派遣先企業も、先の条件で派遣労働者を受け入れてはいけません。

直接雇用の労働者を派遣労働者に置き換えることで、労働条件の切り下げが行われないようにすることが目的の改正です。

例えば、正社員としてA社に勤務していた労働者が離職後1年以内に派遣会社と契約を結び、元の勤務先であるA社に派遣労働者として就業することはできません。

制限を受ける派遣先企業は法人単位で、同じ企業の異なる営業所も同ルールが適用されます。ただし、60歳以上の定年退職した労働者は例外です。

派遣先都合による契約解除時の措置を義務化

派遣先企業の都合による契約の中途解除となった場合、派遣会社は以下の措置を取ることを義務付けられました。

・派遣労働者の新たな就業機会の確保
・休業手当などの支払いに要する費用の負担

派遣会社は派遣労働者との契約時に、これらの措置について明記する必要があります。

(参考:厚生労働省「労働者派遣法が改正されました」

【2015年法改正】派遣法3年ルールを制定。派遣労働者の権利を再度見直し

2015年の派遣法改正では、派遣事業の完全許可制や、3年ルールの制定、雇用安定措置やキャリアアップ措置などの改正が実施されました。派遣労働者にとって有益な情報や権利などが盛り込まれています。主なポイントは次の4つです。

労働者派遣事業を許可制へ一本化

これまで許可制と届出制に分かれていた労働者派遣事業が一本化され、すべて許可制になりました。これにより、届出制とされていた無期雇用の派遣労働者のみを扱う「特定労働者派遣事業」は廃止されることとなりました。経過措置として、2018年9月29日までは国に届出をすることで特定派遣事業を継続できましたが、それ以降は特定派遣事業が認められなくなっています。

派遣期間の上限を3年に統一(3年ルール)

これまでの「26業務」への労働者派遣には期間制限を設けない仕組みが見直され、全ての業務において、「事業所単位」及び「個人単位」という2種類の派遣期間の制限が適用されることとなりました。

この法改正は、労働者派遣事業があくまでも「常用雇用の代替え」であり、臨時的な労働力を調整するためのものである、という考えに基づいたものです。同ルールは本改正の施行日である2015年10月1日以後に締結・更新される労働者派遣契約からが対象となっており、それぞれの期間制限の内容は次の通りです。

●事業所単位の期間制限

派遣先の同一の事業所に対して派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則として3年が限度となります。3年の派遣可能期間の起算日は、施行日以後、最初に新たな期間制限の対象となる労働者派遣を行った日です。それ以降、3年までの間に派遣労働者が交替したり、ほかの労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めたりした場合でも、派遣可能期間の起算日は「変わらない」点に注意しましょう。

ただし、定められた期間内に過半数労働組合などに対し、意見聴取の手続きを得ることで、派遣期間を延長できます。1回の意見聴取で、3年間の延長が可能です。

●個人単位の期間制限

派遣可能期間が延長された場合においても、同一の派遣労働者について、派遣先の事業所における同一の組織単位(担当課や担当グループなど)に派遣できる期間は、3年が限度となります。

ただし、担当課やグループを替えることができれば、引き続き同一の派遣先での派遣が可能です。たとえば、営業課で3年働いた後、同じ会社の経理課に異動することで再び最長3年間働くことができます。

なお、次のような場合は例外として期間制限がかかりません。

・派遣会社で無期雇用されている派遣労働者を派遣する場合
・ 60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
・ 有期プロジェクト業務に派遣する場合
・ 日数限定業務に派遣する場合
・ 産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

雇用安定措置の義務化

派遣労働者の雇用の安定を図るために、派遣会社には雇用安定措置を講じることが義務付けられました。派遣労働者は、同じ職場に継続して3年派遣される見込みとなった場合に、派遣会社から次のような雇用安定措置を受けることが可能です。

・派遣先企業への直接雇用の依頼
・新規派遣先の紹介(ただし、派遣労働者の住所や経験、スキルなどを含めて妥当な派遣先であること)
・派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用
・紹介予定派遣や職業紹介など、その他教育訓練を含む雇用の安定を図るための措置

ただし、派遣期間が1年以上3年未満見込みの派遣労働者については、努力義務となっています。

また、「派遣元で無期雇用されている派遣労働者」や「60歳以上の派遣労働者」などは、雇用安定措置の対象外です。

キャリア形成支援措置の実施

派遣労働者の教育訓練の実施計画や相談窓口の設置など、キャリアアップに関する措置も派遣会社に義務付けられました。具体的には、計画的な教育訓練を有給あるいは無償で行ったり、キャリアコンサルティングの相談窓口を設置し、担当者を配置したりすることが必要となりました。

これは、派遣労働者が正規雇用の労働者と同程度のキャリア形成の機会を得られるようにするための措置です。派遣労働者のキャリア形成支援が義務付けられたのは、本改正が初めてのことです。

【2018年問題】派遣法改正「3年ルール」による雇い止め懸念

2018年問題とは、2015年の派遣法改正で定められた「3年ルール」による影響が2018年に出始めることから取り沙汰された問題です。

3年ルールの制定により、今まで派遣期間に制限のなかった「専門26業務」にあたる派遣労働者にも雇用期間の上限が設けられ、大量の雇い止め(期間満了時に有期雇用契約を更新しないこと)が起こる可能性が出てきたのです。

さらに、有期雇用契約者を対象とした2012年の労働契約法改正も影響し、2018年には派遣労働者のみならず「多くの有期雇用労働者が雇い止めされるのでは」と懸念される事態となりました

2019年に行われた厚生労働省の調査によると、3年ルールの期限を迎え雇用安定措置が必要となる派遣労働者の約22%が派遣先企業で直接雇用(有期・無期)へ転換、約20%が派遣会社で無期雇用へ転換されています。その一方で、派遣会社からの提案と希望が合わずに離職したり、雇い止めされたりした人もいるのが現状です。

(参考:厚生労働省「雇用安定措置について」)

(参考:厚生労働省・都道府県労働局「平成27年労働者派遣法改正法の概要」

【2020年法改正】待遇格差解消のため「同一労働同一賃金」へ

2018年に成立した働き方改革関連法により、派遣法でも派遣労働者と正社員との間の不合理な待遇格差を解消するために法改正が行われました。これが、同一労働同一賃金の実現です。同改正は2020年4月1日に大企業を対象として施行されたのち、翌年の2021年4月には中小企業も対象となりました。

同一労働同一賃金への対応として、派遣労働者の賃金の決まり方は「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の選択制に変わりました。

待遇の決定方法
詳細
派遣先均等均衡方式・派遣労働者の業務が派遣先企業の社員と同様の場合、派遣先企業と同じ待遇とする方式。派遣先企業は派遣労働者の待遇に関する情報を派遣会社に提供が義務付けられている
労使協定方式派遣労働者と派遣会社と労使協定を締結し、一定要件を満たす待遇にする方式。同じ内容の業務を行う派遣元社員の基準賃金を定め、それをもとに派遣労働者の賃金を決定する

厚生労働省より、不合理な待遇差の考え方を示し、どのような待遇差が不合理かそうでないかを明記した指針「同一労働同一賃金ガイドライン」が発行されています。

(参考: 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」)

【2021年1月施行規則の改正】

2021年には、1月と4月の2度にわたり改正が行われています。この派遣法改正は法改正ではなく施行規則の改正(省令)です。まずは、1月の改正を4つ見ていきましょう。

派遣労働者への説明義務の強化

派遣会社は派遣労働者に対して雇用契約時に、教育訓練とキャリアコンサルティングの実施内容(希望者のみ)について説明することが義務付けられました。これまで努力義務として派遣労働者に説明が求められていましたが、この改正により説明が義務化されました。これは、派遣労働者の雇用の安定やキャリア形成の推進を目的としています。

労働者派遣契書のデジタル記録の許可

これまで書面での作成が義務付けられていた労働者派遣契約について、電磁的記録(デジタル・Web記録)での作成も認められるようになりました。これはe-文書法の改正によるもので、今回の施行規則改正により、契約更新の度に書面で行っていた契約がデジタル記録で締結できるようになったのです。

派遣先企業における派遣労働者からの苦情処理義務の強化

派遣先企業への苦情処理の義務化は以前より義務付けられていましたが、苦情の多くは派遣元である派遣会社に寄せられることが大半でした。そのため、この改正では派遣先企業の立ち位置を強調し、派遣労働者の苦情に対して「誠実かつ主体的に対応すること」という内容が派遣先指針に明記されました。寄せられた苦情は「派遣先管理台帳」に記載する必要があります。

日雇派遣の契約解除時の措置

日雇派遣において、派遣先企業の都合により契約解除がなされた場合、派遣会社は派遣労働者に対して、適切な雇用管理として新たな派遣先企業を見つける必要があります。もし、派遣会社が新たに派遣先を紹介できない場合は、日雇派遣であっても休業扱いとし、労働基準法などに基づいた休業手当等を支払う責任を果たす必要があります

【2021年4月施行規則の改正】

つづいて、4月の施行規則の改正について紹介します。

派遣労働者の希望聴取を義務化

派遣会社は派遣労働者に対して雇用の安定措置に関する希望内容を聴取することが義務化されました。その聴取結果は「派遣元管理台帳」に記録しなければなりません。主な雇用の安定措置には、以下が挙げられます。

・派遣先企業での直接雇用
・派遣元企業での無期雇用
・新たな派遣先企業の紹介
・紹介予定派遣等その他の雇用安定措置 など

インターネットでの情報提供を義務化

情報提供が義務付けられている全ての情報について、常時インターネットでの情報提供が義務化されました。関係者や派遣労働者に幅広く周知させることを目的に、インターネットで常時公開する必要があります。義務づけられている情報は、以下に紹介します。

・派遣労働者の数
・派遣先の社数
・マージン率
・派遣労働者の賃金の平均額
・派遣料金の平均額
・労使協定を締結しているか否かの別等
・派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項

(参照:厚生労働省「マージン率等の情報提供について」)

なお、2022年以降に関しては、現在、派遣法の法改正は予定されていません。

労働者派遣法に違反したらどうなる?

労働者派遣法によりさまざまな規制が設けられていますが、違反した場合はどうなるのでしょうか。ここでは、具体的な違反例も合わせて紹介します。

労働者派遣法に違反すると行政処分が下される場合も

派遣法上で義務付けられている法令に従わない場合、まず派遣法第48条に基づいて助言や指導が行われます。それでも改善されなかったり必要な措置を講じず、なおも一定の法違反をしていたりする場合、行政処分が下されます。これまで、主に以下のような処分が下されています。

・業務改善命令
・事業停止命令
・事業廃止命令
・許可の取り消し

派遣法は、これまで何度も法改正を繰り返しているため、故意でなくても違反してしまう可能性もあります。厳しい罰則を受けないためにも、これまでの法改正をきちんと理解しておく必要があるでしょう。

労働者派遣法の違反例

ここでは、実際に処分が下されたことのある違反例を紹介します。

<違反例1>不法就労

派遣会社は、外国人労働者を抱えることが多い業種です。外国人労働者の不法就労により罰則が科せられ、派遣事業の許可が取り消された違反事例があります。外国人の派遣労働者を雇用する場合、一定のルールが設けられており、雇用する前には在留カードの原本の提示を受けることが必要です。就労制限がないことを確認した上で雇用することが求められます。

入国管理局ホームページでは、在留カードの番号の有効性がHP上で確認できます。偽造カードでないかどうかの確認も取れるので活用するとよいでしょう。万が一違反して許可の取消しを受けてしまうと、取消しの日から起算して5年間は派遣事業の許可を受けることはできません。

<違反例2>二重派遣

Web制作やシステム開発を請け負うIT企業において、出向と称して労働者を「二重派遣」したことで処分を下された違反事例もあります。二重派遣とは、派遣先企業が更に違う会社に派遣労働者を再派遣することを指し、派遣法第24条の2で禁止されています。派遣先企業が中間業者となり、派遣労働者の不当な賃金の低下や待遇の悪化を招くおそれのあることが禁止の理由です。

さらに二重派遣は、職業安定法の第44条でも禁止されています。また、派遣先企業が再派遣により利益も得ていた場合、労働基準法の第6条が規制する「中間搾取の排除」に該当し、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金刑が科せられます。

労働者派遣法を正しく理解しよう

労働者派遣法の基礎知識や改正の歴史、違反例などを紹介しました。派遣法はこれまで何度も法改正が行われており、年々企業に求められることが増えてきています。違反を犯さないためにも、最新の情報を把握し正しい知識を持つことが必要です。不要なトラブルを避けるためにも、派遣法についてしっかり理解し、適切な運用を心掛けましょう。