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「求人の量から文脈の深さへ」AI提案に特化したマッチングサービス「PREVIO」が変えるHR市場の構造

株式会社OurStory
代表取締役 CEO
渡部 雄大氏
わたなべ・ゆうだい/東京大学卒業後、エムティーアイを経てリブセンスに参画。「就活会議」を立ち上げから事業譲渡まで完遂し、「転職会議」の事業責任者として事業再生を牽引。その後Beatrustに参画し、生成AIで人と情報をつなぐプロダクト開発に取り組むなど、COOとして経営全般を統括。採用市場の構造課題の解決を目指し、2025年6月に株式会社OurStoryを創業。パーソナルキャリアAI「PREVIO」を開発した。 

AIが求職者の経験・スキル・志向性を分析し、一人ひとりに最適な求人を提案するパーソナルキャリアAI「PREVIO(プレヴィオ)」。2026年5月12日にリリースされた本サービスは、求人検索や大量スカウトによる従来の転職活動とは異なり、「自分に合った企業との出会い」を起点とした新しい転職体験を提供する。

その背景には、企業側の論理が優先されやすい転職市場の構造的課題と、それに伴うミスマッチや採用コスト増大への問題意識があった。

今回は、「PREVIO」を運営する株式会社OurStory代表取締役CEO・渡部氏にインタビュー。開発の背景や既存サービスとの違い、AIと人間の役割分担、そして「パーソナルキャリアAI」が描く未来に迫る。

「求職者より企業が優先されやすい」転職市場の構造的課題とPREVIOが目指す変革

既存の転職サービスは、本当に求職者のために設計されているのだろうか? そんな疑問から、パーソナルキャリアAI「PREVIO」は生まれた。代表取締役の渡部氏は、現在の転職市場が抱える構造的な問題点を指摘する。

渡部氏「当社が2026年4月に独自に実施したアンケート調査では、転職市場への違和感が数字に表れています。転職経験者の89.0%が『明らかに的外れなスカウトを受けた経験がある』と答え、87.2%が『自力での求人検索に徒労感を覚えた』と回答。さらに応募・面接まで進んだ後でも、88.4%が『応募・面接後に求人情報とのギャップを感じた 』と回答しています」

転職活動で感じた課題割合
明らかに的外れなスカウトを受けた経験がある 89.0%
自力での求人検索に徒労感を覚えた 87.2%
応募・面接後に求人情報とのギャップを感じた 88.4%

「こうした課題は、サービス設計そのものの問題から生じています」と渡部氏は語る。

渡部氏「転職サイトは掲載課金、スカウトは配信通数による従量課金を主とするモデルです。つまり、本質的なマッチングを追求することが、必ずしも利益に直結しない仕組みなんですね。

人材を求める企業がお金を払うほど多くの求職者にリーチできる構造になっているため、結果として、サービス開発が企業側のニーズを軸に進みやすくなります。 収益構造と求職者の利益にずれが生じやすいんです。その結果、求職者側は膨大な情報の中から必要な情報にたどり着けず、最適なキャリア選択が難しい。採用企業側にも、採用コストの増大やミスマッチという問題が生じています」

この構造を変えることは可能なのか。渡部氏は「『技術進化』と『売り手市場の拡大』という2つの要素が揃った今だからこそ、この構造を変革できる」と語る。

渡部氏「これまではキーワードベースのマッチングしかできなかったのが、生成AIの進化によって、LLM(大規模言語モデル)による『コンテキスト(文脈)マッチング』が可能になりました。

求職者が『こういう働き方がしたい』『こんなやりがいを感じたい』といった想いを入力すれば、マッチする求人を高精度で出すことができます。求職者が自分で転職サイトに登録して検索するというこれまでの求人探しと比べ、圧倒的に楽になりました。

さらに売り手市場の拡大により、企業がお金をかけて大量にアプローチするだけでは優秀な人材は採れなくなりました。そして採用はゴールではなく、本当に自社にマッチした人材でなければ、入社後に十分なパフォーマンスを発揮できません。 企業側も採用のあり方を見直さざるを得ない状況になっていることが、構造の変化を強力に後押ししています」

「動けない52.8%」にキャリアの選択肢を日常的に提示する

「PREVIO」の大きな特徴のひとつは、いずれ転職したいと考えつつも、日々の忙しさから具体的な行動に移せていない「潜在層」へのアプローチだ。

渡部氏「実は『いずれ転職したい』と考えている求職者のうち、52.8%が過去1年間に何も行動を起こしていないんです。これは求職者個人の意識の問題ではなく、日常的にキャリアの選択肢に触れる手段がないという構造の問題です。現職にモヤモヤしつつも日々の忙しさから動けず、目の前の業務をこなしている。これこそが、日本の労働生産性の低さやキャリアの自律性の低さの一因だとも考えています。

以前勤めていた会社でメンバーのマネジメントをする中で痛感したのは、明確な目標があることの重要性です。『この仕事は自分のキャリアに役立つ』という意義付けができれば、日々の業務へのモチベーションは大きく変わります。求職者が定期的に自分の選択肢を把握することは、戦略的なキャリア形成に不可欠です。同時に、雇用する企業側にとっても大きなメリットがあります。 

『PREVIO』は登録するだけで、毎週求職者にマッチする求人を提示する仕組みです。さらにただ求人を紹介するだけではなく、経験・スキル・志向性との接点を踏まえ、マッチする理由を分かりやすく言語化しています。

求人との出会いを通して、求職者一人ひとりが自分の選択肢を定期的に見つめ直し、戦略的にキャリアを築くきっかけをつくりたいと考えています」

プロも納得する精度を追求。PREVIOが実現した3つの差別化

では、PREVIOは既存のサービスと何が違うのか。渡部氏は3つのポイントを挙げる。

渡部氏「1つ目は、AIマッチングの技術です。独自のアルゴリズムを開発し、特許も取得しています。

具体的には『スキル・経験』『希望条件』『志向性』という3つの軸でマッチングを行います。求人票を参照するだけでなく、ウェブ上のあらゆる情報も含め多角的に分析し、数万件の求人の中から最適な求人を提示する仕組みです。詳細な経験やキャリア志向などを深く理解することで、自分では想定していなかったキャリアと出会えるようになります。 

2つ目はサービス設計です。採用領域でのAI活用は、スカウト文面作成など既存のビジネスモデルの効率化が一般的です。『PREVIO』では、『自分にマッチした企業を瞬時に知る』という求職者にとっての本質的な価値提供を目指しています。

3つ目は、アルゴリズムの中立性の高さです。『PREVIO』は、手数料や掲載料といった情報をマッチングアルゴリズムから一切排除し、純粋に『求職者と求人の適合度』だけを追求しています。求人の表示順も、企業の支払い額ではなくマッチング精度だけで決まる。求職者の利益とアルゴリズムが完全に一致する設計です 」

「独自アルゴリズムの構築には非常に苦労した」と渡部氏は振り返る。

渡部氏「『精度が高い=紹介された求人の納得感が高い』と定義し、プロの転職エージェントが見ても納得できる精度に達するまで、試行錯誤を半年ほど繰り返してようやくリリースに漕ぎ着けました」

PREVIO 既存の転職サービス(転職サイト/スカウトサービス等) 
設計思想 求職者主体企業主体
マッチング基準 スキル・経験・希望条件・志向性を総合分析 職種・勤務地・年収など条件ベースが中心 
求人との出会い方 AIが厳選した求人を提案求人検索/スカウト受信
求職者の負荷 登録後AIが即時に提示検索・比較・応募先選定が必要
求人の提示方法 「なぜ合うのか」を言語化して提示 求人情報を掲載
アルゴリズムの考え方 求職者の経験・スキル・志向性との適合度を優先企業側施策の影響を受けやすい 

求人探しはAI、伴走は人間。役割分担が最適なマッチングにつながる

「PREVIO」はAIにすべてを委ねるのではなく、人とAIがそれぞれの強みを生かす形を模索している。 

渡部氏「『求人探し』という膨大な情報処理をAIが担い、その後の『選考サポート』は、企業との深いパイプを持つ人材紹介会社のエージェントの方々にお願いしています。AIと人がそれぞれの強みを発揮することで、求職者にとって最適なマッチングが実現すると考えています」

実は「PREVIO」には、一般的な転職サイトにある求人検索機能やスカウト受信機能がない。あえて機能を絞り込んだ背景を渡部氏はこう語る。

渡部氏「『求職者起点』という軸をぶらさないためです。求職者にとっての本質的な価値は、『自分にマッチした企業を瞬時に知れる』ことです。検索やスカウトは手段に過ぎず、最初からマッチした企業が見つけられるのならその方が絶対にいい。情報収集にかかる負荷を徹底的に減らす意図です。効率的に活動したい顕在層はもちろん、自分の市場価値を少し見てみたいという潜在層にとっても有効なアプローチだと思います。

機能の絞り込みは、企業側にもメリットが大きいです。1つ目は『ミスマッチが減る』こと。スキルや志向性がマッチした求人のみがユーザーに提示されるため、ターゲット外からの応募対応に追われることがなくなります。

2つ目は『採用コストの削減』です。大量のスカウトを打つための工数や人件費を大幅に削減し、少ない労力で希望の人材とマッチできます。特に、自社の魅力や求める人物像を言語化して情報発信している企業とは相性が良いと考えています。その情報がAIの判断材料になり、よりマッチングの精度が上がるためです」

リリースから約1ヶ月経ち、すでに手ごたえを感じているという。

渡部氏「ユーザーインタビューでは『既存のサービスより断然使いやすい』『求人探しが本当に楽になった』といった嬉しい声をいただいています。特にマッチング理由を言語化して提示する機能は、『なぜこの求人が自分に合うのかが腹落ちする』と好評です。

面白いのは、求職者本人も言語化できていなかった志向性を、AIが提案するケースが生まれている点です。これまでの経験や求人の判断結果をAIが読み解いて志向性を示し、それをもとに求人を提案する。自分で条件を指定する検索とも、企業起点のスカウトとも異なり、本人すら気づいていなかった選択肢との出会いが生まれています」

パーソナルキャリアAIで人材市場の構造そのものを変革する

今後の目標について、渡部氏は「『パーソナルキャリアAI』という新しいカテゴリーの確立を目指す」と語る。

渡部氏「『パーソナルキャリアAI』とは、AIが一人ひとりのスキルや経験、志向性を深く理解し、最適な企業との出会いを提案する新しい体験です。転職という『点』ではなく、キャリアという『線』で捉えながら、長期的な視点で最適なマッチングを実現していきたいと考えています。ゆくゆくは、転職市場におけるスタンダードとしての立ち位置を根付かせたいですね」

渡部氏は、HR市場が歴史的な転換点を迎えつつあると考えている。

渡部氏「1960年代の紙媒体、2000年代のWeb検索、2010年代のダイレクトリクルーティング。これに続く第4の波が、2020年代後半からの『AIによる求人提案』です。これは単なる予測ではありません。米国のIndeedでは、すでにスポンサー求人への応募のうち7割がAI推薦経由というデータ※もあり、『探す』から『提案される』へのシフトは、もう始まっています」

この変化は、企業側にも変革を迫る。

渡部氏「これまではコストをかけて大量にアプローチするのが主流でしたが、今後はより本質的な施策に注力することが求められます。AIが正しく理解できるよう、自社の魅力や求める人物像を解像度高く言語化し、発信していく必要があるんです。また言語化により、採用力強化だけでなく、社内の共通認識を醸成し、入社後の戦力化を円滑にする効果も期待できます。

これからの人材市場のキーワードは、『量よりも文脈の深さ』です。求職者の表面的な情報だけでなく、志向性や価値観といった質的なデータをどれだけ深く理解できるか。企業側も同様に、求人票の裏にあるカルチャーや働きがいといった文脈をどれだけ伝えられるか。この『文脈の深さ』こそが、競合との差別化ポイントになると確信しています」

渡部氏の目は、さらに未来へと向いている。

渡部氏「将来的な目標は、『自分のキャリアの選択肢が見えている状態』を日常にすることです。キャリアの選択肢が見えているからこそ、今の仕事にも意義を見出して日々邁進できる。転職という結論ありきではなく、 全ての働く人が自分らしいキャリアを主体的に切り拓いていける社会の実現に向け、挑戦していきます」

※出典:OpenAI「Indeed が AI を活用して求職活動を進化させる方法」

(執筆:川瀬ゆう)

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