企業の魅力を課題解決力で可視化する。SBIグループとの連携で目指すアスタミューゼ社の「地方創生」とは?

2019年9月、SBIグループとの提携発表メディア会見にて撮影(向かって左から、SBIネオファイナンシャルサービシーズ株式会社 アライアンス推進本部 部長 藤本悟智人氏、同社 アライアンス推進本部 本部長 吉木直道氏、アスタミューゼ株式会社 執行役員 事業推進本部 本部長 嶋崎真太郎氏、同社取締役 白木陽次氏)

2019年9月を過ぎたあたりから、とある企業の提携が目立っている。その企業はアスタミューゼ株式会社だ。「知の流通」「知の活用」「知の民主化」をテーマにイノベーターを支援している企業である。

SBIグループとの提携発表があり、その2ヵ月後には山陰地方の島根銀行との提携を発表している。SBIグループと共に、日本全国の地域金融機関と連携し、地域の雇用を促進するプロジェクトだ。

同社のことを少し具体的に紹介すると、世界80カ国の新事業 / 新技術 / 新製品、投資情報データを各先端分野に精通した専門アナリストが分析し、「2025年の有望成長市場・未来を創る技術分野」や「挑戦すべき社会課題105」を独自に定義し、事業を展開している。

なかでも人材採用支援・キャリア支援事業では、独自の高度専門人材データベースを構築しているのが特徴だ。研究者・技術者が毎月100万人利用する技術情報メディアと、以前にもHRogで特集として取り上げた有望市場・職種に特化した400の転職支援サイトの2つから集客を行っている。

アスタミューゼ社が目指す人材採用のあるべき姿と、地方に注力する理由を執行役員の嶋崎氏に聞いた。

特許出願データから見える企業の課題解決力

アスタミューゼ社についておさらいしておきたい。アスタミューゼ社は世界中の課題解決につながるデータを収集し、編集している。

「特許は非常におもしろい」そう言って嶋崎氏は話し始めた。

「特許は出願する際に『この発明が解決しようとする課題』を記載しなければいけません。つまり『この技術がどんな課題を解決するのかが翻訳されている』と考えていただいても良いですね。技術を見ただけではどんなものか専門家にしかわからないこともありますが、それが翻訳されています。『特許の数=課題解決力』とシンプルに発想すると、2000年以降で多くの課題解決力が全国各地で生み出されています」

「東名阪の大都市で、特許出願数が多いのは企業数から見ても理解できます。それよりも、各地域で課題解決力がゼロではないということが大きなポイントです。innovationは必ずしも大都市から起こっている訳ではありません。各地域で発明が生み出されている実績を見てもそうですし、あのGAFAも昔は中小企業でした」

 「ただ、地方企業の現状は採用難で苦しんでいる。それを解決したい」。嶋崎氏の言葉に熱がこもる。

既存の採用市場の構造では、料金や多くのフィーを支払うことによって求職者の目に触れる企業が決まる。

「この構造では地方都市の企業は大都市の企業には勝てませんし、中小企業は大企業には勝てません。そこで、課題解決力のある企業に注目を集め、地域や都市、企業規模に関係のない出会いを生み出そうと採用プラットフォーム『SCOPE』を2018年12月に立ち上げました。また2019年09月『SCOPE地方創生』をローンチしました」

地方企業が採用できない。この現状を打破するための取り組みは更に広がっていく。

SBIグループとの連携プロジェクトで実現させたい地方創生とは?

アスタミューゼ社は2019年9月SBIネオファイナンシャルサービシーズ株式会社と事業連携し、更に11月には島根銀行との提携を発表している。SBIグループと共に、日本全国の地域金融機関と連携し、地域の雇用を促進するプロジェクトである。

「SBIグループとの連携では、地域金融機関の協力を得て、地域企業の課題解決力をアスタミューゼ独自のロジックで可視化し、その企業の事業やサービス、技術力が『どんな未来を創れるのか。どんな未来を創るために挑戦をしているのか』という観点で出会いを創ることで、人材の流動性を高めたいと思っています」

アスタミューゼ社が独自に考える地方創生のポイントは3つあると嶋崎氏は言う。

地方創生のポイント

(1)  地域企業の課題解決力を可視化し、PRするブランド開発支援で認知度向上
(2)  その企業で働くことで得られる社会貢献性を伝えるスカウトメッセージの配信で雇用力を強化
(3)  地域企業と大都市企業のビジネスマッチング支援で事業創造を推進

その背景にはアスタミューゼ社に集まる求職者の声がある。

「登録してくれる専門人材に転職理由アンケートを取った所、大手の人材会社とは少し異なる回答が出てきました。『 転職を考えた(決めた)理由 』に『今の職場に夢がない』が『給与が上がらない』を超え、初めて1位となりました。2位には『やりがいを感じられない』がランクインしています」

IT市場の拡大により、エンジニア不足が続く中、エンジニアの給与水準は年々上がり、売り手市場が続いている。一方で、転職条件の優先順位が徐々に変わりつつある。

「企業側が採用活動の方針や手法を見直す大きな変革期が到来していることが浮き彫りになりました」と嶋崎氏は続ける。

優秀な人材、特に専門職やエンジニアなどの高度な業務を行う人材のモチベーションを維持するためには、「自主性を重んじた職場環境(自律性)」、「自己の成長を実感できる仕事(マスタリー/熟達)」、「適切な目標設定(目的)」の三要素が必要と言われている。
(参考文献:『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク著 大前研一訳)

「それらを満たすためには、企業に共感できるビジョンや経営理念があるかどうかが重要であり、高い給与や役職の提示だけでは優秀な人材の採用は難しく、離職を防ぐこともできません。今後人材を確保していくためには事業の即戦力となる30代、40代に向けてだけでなく、すべての従業員に対して企業理念の浸透を図る必要があるといえます」

「今回特に顕著な意識の変化として、転職先に求めるものに社会貢献性が給与の次にあげられており、現代社会における社会課題意識の高まりが分かります」

社会課題の解決は思っている以上に身近にある

「正しくクライアントやマーケットと向き合っている会社は必ず何らかの社会課題解決に寄与しているはずだ」と嶋崎氏は言う。

中には「うちは社会課題を解決するなんて大きなことはやっていないよ」という企業もあるだろう。嶋崎氏の観点ではそういった企業は自社の価値に気付いていないだけである。革命的なことをやろうということではなく、「企業のあるべき姿をただ可視化しただけ」というニュアンスが近いようだ。

 「登録してくれる人材においても『社会課題のどれをやりたいのか?』『どんな未来を作りたいのか?』ということにはたどり着いていない場合が多いです。その点をうまく導くために『あなたの実現したい未来ってこういうことですか』とか『あなたの挑戦したいマーケットってこういうところですか?』などの問いかけから一定の答えが出せるロジックを作りました。

それは新しい機能としてローンチ予定です。そうすれば登録者の『自分のスキルはどのように社会貢献できるのか?』を可視化することができます」

求職者にとって自身のスキルが社会や未来に役立つことを理解したうえで選んだ仕事は「仕事のやりがい」も感じられそうだ。

「採用面接の際、応募者の熱量で最終意思決定する企業が多くいらっしゃいます。お互いにどういう未来を作りたいのかを持っているのか持っていないのかはマッチングするうえで非常に大事なポイントです。

将来的には、文系や理系、一般総合職や専門職、技術職という概念もなくなるのではないのでしょうか。その時の判断基準は『未来を作ろうという人とそうじゃない人』になっているかもしれません。そういうスキル軸、職種軸、学問軸じゃなくて、時間軸で未来に目を向けている人――そんな分け方が主流になっていると思います」

嶋崎 真太郎 氏
しまざき・しんたろう
/アスタミューゼ株式会社 執行役員 事業推進本部 本部長
株式会社リクルートで、企画営業を経験。数々の営業表彰を受賞し、全国TOP11の営業にも選ばれる。その後、Web系ベンチャー・人材系ベンチャーの役員とし、事業企画、営業企画、人事・採用企画の経験を経て、2017年に同社アスタミューゼへ参画。

専門技術・研究職人材のダイレクトリクルーティングサービス「SCOPE」「SCOPE地方創生」の企画立ち上げや、社内イノベーター人材を可視化し、新規事業創造を加速させる「Discover Innovators Program」のプロジェクト責任者を務める。

嶋崎氏登壇のイベント

テーマ:案内営業からの卒業、売りこまない営業で売れる営業を目指す
開催日:12月10日(水)19:00~21:30[満席]、12月18日(水)19:00~21:30[追加開催]

対象 :人材業界で営業職に従事されている方(企業担当の方)
参加費:無料
URL :https://hrog.net/news/event/80967/

(HRog編集部)