知識ゼロからの高度外国人紹介事業・派遣事業の作り方【セミナーレポート前編・2022年9月13日開催】

人材会社にとって求職者の確保がますます困難な状況となる今、外国人材の活用が注目されている。2022年9月13日に開催された「知識ゼロからの高度外国人紹介事業・派遣事業の作り方」では、外国人材雇用のスペシャリストたちが登壇し、これからの日本における外国人材の紹介・派遣事業の意義とポイントを語った。

前編となる本記事では、経済産業省の中山氏とグローバルパワー代表の竹内氏による講演の様子をお伝えする。

イントロダクション:日本社会における高度外国人材活躍推進の意義

ゲストスピーカー
経済産業省 貿易経済協力局 技術・人材協力課

課長補佐(総括担当)
中山 保宏 氏
なかやま・やすひろ/1996年に通商産業省(現、経済産業省)に入省、2020年11月に今の技術・人材協力課に着任し、日本国内における高度外国人材の活躍推進や海外における産業人材育成などを担当

不確実な時代を乗り切るため、高度外国人材活用を推進する

歴史を振り返ると、古い時代には中国から農作物や漢字を、16世紀以降はヨーロッパから銃や医学などを取り入れてきたように、日本は古来より海外からさまざまなものを取り入れながら発展をしてきました。

特に20世紀以降、日本は積極的に欧米の制度や技術を導入し、めざましい発展を遂げました。「外国に追いつけ、追い越せ」という動きが成功モデルとして一定数成果を上げていた時代です。

しかし20世紀末ごろから、グローバル化やデジタル化などの急激な外部環境の変化により、この成功モデルが機能しなくなってきました。今までにないスピードで世の中が変わる不確実な時代だからこそ、自ら課題を発見し、進むべき道を見つけていく力が求められています。

不確実な時代を乗り切る組織に必要な要素は以下と言われています。

アジリティ(機敏性)

目まぐるしい環境変化に即応するための、経営や組織運営のあり方における機敏性

ダイバーシティ(多様性)

性別や年齢、国籍、文化、価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を活用することで新たな価値を創造・提供する成長戦略

インクルージョン(包摂性)

従業員がお互いを認め合いながら一体化を目指していく組織のあり方

レジリエンス(強靭性)

災害などの不測の事態が起きた際の復旧力(組織)
不測の事態に対応し、課題を解決する能力(個人)

そして先の見通せない現代において、日本人とは異なるバックグラウンドや高度な技能・知識を持った高度外国人材は日本企業におけるキープレイヤーになると考えています。

外国人材活用の意義と日本企業の外国人材活用状況の現状

日本企業で高度外国人材が活躍するメリットは大きく分けて3つあると考えています。

商機拡大・ビジネスの多様化

海外営業の強化や新販路の拡大、インバウンドビジネスの拡大など

イノベーションの創発

ダイバーシティの向上やグローバル視点の獲得などによる新しいサービスやビジネスモデルの開発

組織の活性化

社内競争の激化による個人の能力の向上

上記のようなメリットを享受することで、日本経済全体も活性化していくと考えています。政府も高度外国人材は日本経済の成長を担うキープレーヤーと位置付けており、高度外国人材を受け入れるための環境整備などを積極的に進めています。

一方で、高度外国人材へ日本で働く魅力をまだまだ伝えきれていない点が課題です。「高度外国人材を誘致・維持する魅力度ランキング」では、日本は25位に甘んじています。

このような状況になっている要因には、給与水準の低さ、高度外国人材の受け皿となる企業の少なさ、言語コミュニケーションの壁、労働環境やビジネスマナーに慣れるハードルの高さなど、さまざまなものがあります。

上記の状況を改善するには、日本国内の方々に高度外国人材を雇用する意義をきちんと伝えることも必要になってくるでしょう。だからこそ日本企業と高度外国人材をつなぐ橋渡し的な存在として、人材会社の皆さんが果たす役割はとても大きいと思います。

最後に、日本社会における高度人材活躍の意義を、「和魂洋才」という言葉に込めてお伝えしたいと思います。「和魂洋才」は日本人が伝統的な精神を忘れずに、ヨーロッバの文化を学んで巧みに調和させていく様を熟語にしたものですが、今後はヨーロッパに限らずさまざまな国・地域に目を向けていく必要があります。

単に人手不足を解消するための外国人材活用ではなく、「和」=日本の心を理解していただける外国人材を戦略的に活用することが、日本社会全体を盛り上げるためには非常に重要になるでしょう。

第一部:高度外国人材 紹介・派遣事業の作り方

メインスピーカー
株式会社グローバルパワー

代表
竹内 幸一 氏
たけうち・こういち/大手人材会社フルキャストの社内ベンチャーから外国人の留学生採用支援事業部を設立。その後同事業のMBOを経て、2010年12月に株式会社グローバルパワーの代表取締役に就任。2022年4月には高度外国人転職サイトNINJAを商品化。わずか3カ月で約100社が利用する人材ポータルに成長させる。同サイトは人材事業経験がないインターンでも、月に3件の成約実績がでるなど、生産性の面でも高い顧客評価を得られている。

高度外国人材 紹介・派遣事業を作る5つのポイント

高度外国人材の人材紹介・人材派遣事業を立ち上げる際のポイントは5つあります。

ポイント①在留資格の理解

日本に住んでいる外国人材は、日本に来た際に在留資格を取得します。在留資格には29の種類があり、種類によって在留期間や国内でできる活動は異なります。

在留資格は、就労可否のタイプによって大きく4つに分かれます。

  • 就労が認められている在留資格(技術・人文知識・国際業務の在留資格など)
  • 身分・地位に基づく在留資格(日本人の配偶者など)
  • 就労が認められない在留資格(留学生など)
  • 就労の可否は指定される活動による在留資格(ワーキングホリデーなど)

在留資格によって就労の可否が決まっているため、在留資格の種類を理解しておく必要があります。この中でも高度外国人材が取得していることが多い技術・人文知識・国際業務(技人国)はぜひ覚えていただきたい在留資格です。

ポイント②求人ヒアリング・求人票の作成

企業から求人内容をヒアリングし、求人票を作成します。外国人材向けの求人票で記載したい項目は下記になります。

必要な日本語能力レベル

ビジネスレベルの高度な日本語能力が必要な会社もあれば、そこまで日本語能力が高くなくても構わないという会社もあると思います。外国人材用の求人票を作成する際は、仕事をするにあたって必要な日本語能力のレベル感を確認しましょう。

業務時間中の日本語使用割合

外国人材の募集の際に「日本語も英語も話せる人材がほしい」という要件が出ることもあります。しかし「9割は日本語でコミュニケーションをして、たまに英語も話す機会がある」と「日本語と英語の使用割合は半々程度」では、求められる日本語の習熟度は異なってきます。そのため募集の際に明確にしておきたい項目です。

業務内容の詳細

母国語ではない言語で求人票を読み込んでもらう必要があるため、「経理」「事務」など曖昧な言葉では業務内容を把握できないことがあります。また特定の業界用語に慣れておらず、業務の理解が難しいこともあるでしょう。だからこそ詳細な業務内容を記載する必要があります。

外国人の従業員数

自社でもうすでに活躍している外国人材がいる会社は、より求職者が集まりやすい傾向があります。そのため外国人材の従業員が何名いるのか、またその割合を求人票に落とし込むようにしましょう。

年収モデル

外国人材は日本人と比較して、明確な評価やキャリアの将来性を求めることが多いです。年収モデルをきちんと提示し、長期的なキャリアを示してあげることで外国人材にとって安心感のある求人票になります。

ポイント③求人募集

求人募集をする際には外国人材に特化した求人メディアを活用すると思いますが、外国人材向け求人メディアの中でもそれぞれに特徴があります。

  • NINJA:日本在住・日本語能力の高い中途人材が集まっている
  • Daijob・キャリアクロス:バイリンガル人材が多い。日本人のバイリンガル人材も
  • Gaijin Pot:日本語能力はそこまで高くないネイティブスピーカーが多い
  • YOLO JAPAN:ブルーカラーやアルバイトの求人が豊富

求人募集で重要なのはスカウトの文面です。外国人材にとって遠回りで分かりにくい言い回しは敬遠されがちです。ビジネスでよく使われる婉曲表現は避けて、はっきりとコンパクトな文章のスカウトを打ちましょう。

ポイント④データ管理の徹底

日本に住む外国人材は在留カードを持っています。外国人材を面接する際は、必ず在留カードを持っているのか確認しましょう。

また派遣事業の場合、就業後も在留カードのデータ管理は必須です。管理するべき項目は「在留資格」「在留期限」「国籍」「日本語能力」「話せる言語」などです。クライアントから「この言語が話せる人材を派遣してほしい」という要望に対してすぐにアクションができるように、日本人以上にデータを管理しましょう。

ポイント⑤なんでも相談・信頼できる行政書士

就労ビザや在留資格を発行する際には、行政書士との連携は必須です。しかしこれらの手続きに慣れていない行政書士に依頼してしまうと、就労までに時間がかかってしまいます。

よい行政書士を選ぶポイントは、外国人の就労ビザを取得した実績がある方を選ぶこと。どれくらいの人数を経験されているかを確認しましょう。

(鈴木智華)