知識ゼロからの高度外国人紹介事業・派遣事業の作り方【セミナーレポート後編・2022年9月13日開催】

人材会社にとって求職者の確保がますます困難な状況となっている今、外国人材の活用が注目されている。2022年9月13日に開催された「知識ゼロからの高度外国人紹介事業・派遣事業の作り方」では、外国人材雇用のスペシャリストたちが登壇し、これからの日本における外国人材の紹介・派遣事業の意義とポイントを語った。

後編となる本記事では、行政書士の長岡氏の講演と登壇者3名による外国人材事業にまつわるQ&Aの様子をお伝えする。

第二部:入管法・在留資格関連手続きの入口

メインスピーカー
行政書士明るい法律事務所

代表 申請取次・特定行政書士
長岡 由剛 氏
ながおか・よしたけ/就労ビザ、結婚・離婚ビザ、その他あらゆるビザ手続き・入管手続きへ対応、国籍に関する手続き(帰化・国籍取得の届出)、東京入国管理局長届出済申請取次など、年間1,500件以上の外国人に関する法律相談・手続きを対応。外国人雇用協議会HR部会副部会長、EDAS理事、行政書士稲門会事務局長、Japan Immigration Lawyer Association 理事、その他、特定行政書士として、外国人政策関連団体の理事や多くの会社の企業顧問、外国人支援団体の顧問。

安定した事業運営のために入管法の知識が重要

外国人材向けの紹介事業や派遣事業様へ「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法)に関する研修を行うには、通常12時間ほどかかります。今回は時間も限られているので、在留資格関連手続きを学ぶ入り口として「なぜ、外国人材向けの紹介・派遣事業者は入管法を学ばなければいけないのか」についてお伝えしたいと思います。

一言で言いますと「外国人を扱うからこそ、日本人向けの事業とは根本的に異なる法的リスクがあるから」というのが入管法を学ばなければならない理由になります。

日本で暮らしている外国籍の人は必ず在留資格を取得しています。在留資格の意義は、「なぜ日本に来ているのか」という根拠を明らかにすることです。「在留資格」がないにもかかわらず日本にいるのは「不法滞在」となります。

外国人雇用に関わる人が注意しないといけないのが、在留資格の種類に基づく就労可否の判断です。在留資格は29種類あり、種類によって就労制限の有無や必要な手続きが異なってきます。

そして在留資格上は就労させてはいけない人を就労させてしまった場合、雇用主は「不法就労助長罪」という罪に問われてしまうのです。またこの不法就労助長罪は、本来就労させてはいけない外国人材を斡旋した紹介事業者にも適用されます。

不法就労助長罪は、企業を取り巻く法律の中でも非常に厳しい法律です。例えば労働基準関連法の場合、「時間外労働をさせているにも関わらず残業代を適切に支払っていない」などの問題がある企業には「是正勧告書」や「指導票」といった書面が交付されます。

「もしかしたら法律を知らないまま事業が運営されてしまっていたのかもしれない」という観点から、指導というワンクッションを挟むのです。法律に違反したからといってすぐに送検されるわけではありません。

しかし、入管法は「知らなかった」としても処罰を免れることはできません。違反してしまった場合、指導というワンクッションなしで即送検されることになります。そして入管法に違反した労働者派遣事業者・職業紹介事業者は、ペナルティとして事業許認可事業者が取り消されることもあります。法律を守らなかったことで事業が即停止するという経営リスクを孕んでいるのです。

だからこそ、外国人に関する職業紹介・派遣事業を継続するためには、しっかりとした法的知識を持たなければいけません。

経営リスクが大きいからこそ、いざというときは法律のプロに相談を

外国人材を雇用する会社や、外国人材向けの人材紹介・人材派遣事業者にとって、入管法は非常に厳しい法律であることをお伝えしました。そのため、外国人材に関わる企業は外国人材の在留資格をきちんと理解し、データを管理する事務フローを構築するのが重要です。

例えば留学生の在留カードには「就労不可」と書いてありますが、これだけを見て判断してはいけません。在留カードの裏面に「「許可:原則28時間以内・風俗営業等の従事を除く」という資格外活動許可のスタンプがあれば、制約の範囲内で働くことが可能なのです。こういった在留資格に関する情報一つひとつを理解した上で、適切に雇用・管理する必要があります。

また気をつけてほしいのが、在留カードの偽造です。「在留データの適切な管理方法」の中には、在留カードが偽造されたものかどうかを調査することも含まれています。本来するべきはずの調査を怠り、偽造在留カードを持った外国人材を働かせてしまった場合も法律違反になってしまいます。

入管法は複雑な法律であり、他にも気をつけるべき点がさまざまあります。事業停止という経営リスクを回避するためにも、外国人材向けの人材紹介・人材派遣事業者の方には研修で入管法や在留資格に関する知識をしっかり学んでいただいた上で、信頼できる行政書士や弁護士に頼ってほしいと思います。

第三部:外国人材事業の本音。成長させるための方法とは

モデレーター
ポーターズ株式会社

代表
西森 康二 氏
にしもり・こうじ/設立以来、一貫して人材ビジネスに特化したクラウドソリューションを国内・海外に向けて開発・運用し、人材紹介会社向け業務管理システム「プロ・エージェント」および、クラウド型マッチングシステム『PORTERS(旧HRビジネスクラウド)』は、海外10カ国を含む人材紹介・派遣会社を中心に2,000社以上の導入実績を誇る。

株式会社グローバルパワー
代表
竹内 幸一 氏
たけうち・こういち/大手人材会社フルキャストの社内ベンチャーから外国人の留学生採用支援事業部を設立。その後同事業のMBOを経て、2010年12月に株式会社グローバルパワーの代表取締役に就任。2022年4月には高度外国人転職サイトNINJAを商品化。わずか3カ月で約100社が利用する人材ポータルに成長させる。同サイトは人材事業経験がないインターンでも、月に3件の成約実績がでるなど、生産性の面でも高い顧客評価を得られている。

メインスピーカー
行政書士明るい法律事務所

代表 申請取次・特定行政書士
長岡 由剛 氏

判断が難しい在留資格、どう対応する?

西森:お話をお伺いする前に、そもそも高度外国人材の定義についてお伺いしたいと思います。どんな在留資格の方が高度外国人材の対象になるのでしょうか?

長岡:そもそも高度外国人材とは特定の在留資格の人を指す法的な言葉ではなく、人材紹介事業者が使い始めた総称のようなものです。一般的には、大学等の卒業を要件とする技人国や高度専門職といった在留資格の人が高度外国人材に当たります。また日本の在住歴が長い日本人配偶者や永住者も高度外国人材に含まれますね。

西森:ありがとうございます。お客様から求人票をもらう際には、その仕事に対してどんな在留資格が当てはまるかを理解してから打ち合わせに臨んだ方が良いでしょうか。

竹内:やはり事前に把握していた方が安心だと思います。しかしホワイトカラーの求人の場合、ほとんどが技人国で対応できる場合が多いです。また、事業を運営する中で仕事と在留資格の組み合わせのパターンが徐々に見えてくるので、そんなに心配する必要はないと思っています。

長岡:なかなか判断が難しいという場合には、私のような行政書士に依頼をするのも一つの手です。実際に、過去には内定前面接に同席して在留資格上採用しても問題がないか確認したこともあります。

西森:内定前面接面談の同席をいただけるのはすごく心強いですね。

竹内:とはいえ、ある程度は自社内でも判断できるようになった方が良いのは確かです。そのためにも在留カードのデータをきちんと取得・管理して、各求人の仕事内容と照らし合わせができる仕組みを構築するのは必須ですね。

また、信頼できる行政書士さんと関係性を作り、いざというときに相談できるようにしましょう。

今後も拡大し続ける外国人材マーケット

西森:次に、外国人材マーケットについてお伺いしたいと思います。現在の外国人材を募集している求人の年収帯や外国人材の紹介料率は、日本人と比較してどんな違いがあるのでしょうか?

竹内:NINJAに掲載している求人の約7割が年収帯300万円〜500万円と、日本人向けに流通している求人と大きく変わりません。また紹介料率も、弊社では35%に設定しています。

人材派遣においても、高い日本語レベルを求めない限りは派遣スタッフの時給相場は2,200円前後。日本人の派遣スタッフの場合とそこまで大きく変わらない印象なのではないでしょうか。

現在は同一価値労働同一賃金の考え方も定着しつつあるため、外国人材と日本人材の賃金差はありませんね。

西森:2021年には、172万人の外国人労働者が日本で働いているという調査結果があります。人材派遣のスタッフ数が169万人であることを考えると人材マーケットにおける海外人材の存在感は増していますが、今後はどうなっていくと考えていますか?

竹内:現在外国人材の人数は増加トレンドにあり、2030年までには350万人が日本で働くと言われています。一方で、日本が掲げている2030年のGDP目標を達成するためには、外国人労働者が419万人必要だという試算もあります。日本企業の人材不足を解消するためには、外国人材にとって魅力的な環境を用意することが肝要です。

長岡:人材マーケットの規模は現在約8兆円です。そのうち約半数が人材派遣、15%前後が人材紹介と求人メディアと言われています。そしてそのうち、外国人材を取り扱うマーケットは約2%。およそ1,600億円くらいが外国人材のマーケットとなります。

そして今後外国人材不足が加速する見込みなのが、ブルーカラーの職種です。採用要件の日本語レベルを下げたり、外国人材が働きやすい環境を整えたりなど、より多くの外国人材を受け入れられる企業をどれだけ増やせるかが今後の課題です。

西森:ありがとうございます。最後に、高度外国人材にとって日本を魅力的な就業先にするために、人材紹介や人材派遣がチャレンジすべきこととは何でしょうか?

竹内:外国人材の強みやバックグラウンドを理解していただいた上で、外国人材を受け入れる求人を増やしていくことだと思います。求人が増えることで、外国人材の選択肢が広がっていくからです。働き先を増やせれば、将来の働き手となる留学生の数も増えるでしょう。

長岡:「日本人が採用できないから、代替手段として外国人材を採用する」というニーズではなく、新しい才能やスキルを取り入れてビジネス拡大のきっかけを作るという背景を持った採用を増やすことです。外国人材を受け入れることで新たな価値創造を行えるというメリットが周知されれば、外国人材を受け入れる体制作りに力を入れる会社が増えてくると思います。