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【HRog決算解説まとめ】人材企業各社の2025年4~6月発表決算から見える人材業界の最新トレンドは?

HRogでは人材業界各社の決算を四半期に一度まとめる【HRog決算解説】を連載しています。この記事では人材業界各社の決算を横ぐしでまとめ、求人メディア・人材紹介・DR・派遣といった業態別で比較し、各社に共通するトピックについても解説していきます。人材業界全体の最新トレンドを把握するのにぜひお役立てください!

各業態の最新動向

求人メディア

リクルートのHRテクノロジー事業は、Indeed PLUSを通じて国内求人広告の収益構造をIndeedプラットフォームに統合し、新たなAIサービス「Career Scout」および「Talent Scout」を発表。データを活用したマッチング最適化を目指しています。

ディップの人材サービス事業は「スポットバイトル」への先行投資を強化し、既存メディアやDX商品とのセット販売を推進。パーソルのCareer SBUにおける求人メディアの売上(全体の21%で試算,出典)では、堅調な求人需要を背景に「doda」が増収を達成。将来成長に向けたマーケティング投資を強化していきます。

エン・ジャパンの国内求人サイト事業は、「エン転職」への広告宣伝費抑制が会社全体の成長減退につながった反省から、来期は「エン転職」への再投資を戦略の柱とし、成功報酬型導入などマネタイズの多様化を図る方針です。

クイックのリクルーティング事業は、掲載課金型から「Indeed」や「Indeed PLUS」などのアグリゲーション型サービスへの移行を成功させ、収益性改善と成長を実現。顧客へのトータル提案型営業を強化しています。

キャリアデザインセンターのメディア事業は、「女の転職type」が堅調な一方で、エンジニア・営業領域は苦戦。生成AIを活用した「AIキャリアアドバイザー ミライさん」を導入し、女性向けキャリア支援を強化しています。

ディップの人材紹介サービスは新卒採用人数の減少が響き、売上高が減少。キャリアデザインセンターの人材紹介事業(一般・ミドル領域)でも、エンジニア採用における基準厳格化の影響で売上・経常利益ともに減少しましたが、求職者登録の強化などで回復を図っています。

人材紹介・DR

パーソルのCareer SBUにおける人材紹介の売上(全体の71%で試算,出典)は、堅調な求人需要と業務効率の向上により売上・利益ともに増加。中長期の成長を見据えてマーケティング投資も強化しています。ビジョナルのHR Techセグメント(ビズリーチ)も、プロフェッショナル人材の採用ニーズの高まりと求職者の積極的な転職活動を背景に広告宣伝を拡大。その結果、導入企業・会員数の増加を伴って売上高・営業利益ともに大幅な伸長を記録しました。

クイックの人材サービス事業は、看護師・保育士といった安定したニーズに対応しつつ、「看護roo!」のブランド拡張を推進した結果、売上は増加。ただし、積極的なプロモーション費用の投下により、利益面では減少となりました。

ギークスは国内IT人材事業において、DXによる業務効率化や組織強化、広告費の見直しを通じて、ITフリーランスの稼働人月数を拡大。売上・利益ともに過去最高を更新しました。パソナのキャリアソリューション事業では、ハイキャリア人材の安定したニーズと再就職支援の拡大が寄与し、こちらも増収増益を実現しています。

エン・ジャパンは、国内人材紹介事業では期初に増員した「エンエージェント」の生産性課題から減収となったものの、「エンワールド・ジャパン」のハイキャリア需要とコンサルタントの生産性向上がカバーし、全体としては売上微増に着地しました。人財プラットフォーム事業では、広告宣伝費を積極投入して会員獲得を進め、旺盛なハイキャリア採用需要を背景に利用企業が増加。黒字化を果たすとともに売上を伸ばしています。

派遣・スポット

リクルートの日本国内における人材派遣事業は、派遣ニーズの拡大と稼働人数の増加が寄与し、売上収益が堅調に推移しました。パーソルのStaffing SBUも同様に、派遣就業者数の増加と平均請求単価の上昇が業績を押し上げ、人材紹介事業の好調も加わって売上・利益ともに増加しています。

パソナのエキスパートソリューション事業では、COVID-19関連の特需が一巡し、加えて営業日数の減少も響いたことで、売上・利益ともに前年を下回りました。

出典元:決算説明資料(p.30)

スポットワーク領域では、タイミーが引き続き高い成長を維持。物流・小売といった人手不足業界でアクティブアカウント数および流通総額の増加が続きました。加えて「フルタイミー」など新たな店舗運営モデルの導入や、現場の受け入れ負荷を軽減するためにタイミー社員を事業所のリーダー社員として派遣するプロジェクトなど、人手不足解消に向けた新たな取り組みも始まっています。

キャリアデザインセンターのIT派遣事業では、有期雇用における登録者と新規顧客の増加が稼働人数を押し上げ、注力施策である無期雇用でもエンジニアの中途採用強化や退職率の改善によって体制が強化されました。これらの施策が功を奏し、売上・利益ともに順調に推移しています。

人材業界各社に共通するトピック

組織再編・体制の変更

2025年は、人材業界各社が大幅な組織体制の見直しを進めた年となりました。経営トップの交代、事業の選択と集中、新たな体制による再スタートなど、それぞれが次なる成長を見据えた動きを加速させています。

出典元:決算説明資料(p.15)

リクルートは、日本国内の求人メディアを「Indeed PLUS」に統合し、人材紹介サービスもHRテクノロジー事業へと移管しました。「Simpligy Hiring」の理念のもと人材サービスを一体的に運営することで、「ボタン一つで仕事に就ける」世界の実現に向けて本格的に動き出しています。

パソナグループは、創業50周年という節目に、創業者の南部靖之氏が代表取締役を退任し、新体制への移行を決断しました。南部氏は、次の50年に向けて新体制のもとで新しいパソナグループを築いていってほしいとの思いから辞任を申し出たとされています。

一方エン・ジャパンでは、2008年より社長を務めてきた鈴木孝二氏が退任し、創業者の越智道勝氏が再び代表取締役社長(会長兼任)に就任します。変化の激しい事業環境において更なる企業価値向上を目指し、新たな体制による改革が必要と判断したためです。「エン株式会社」へと社名を変更するとともに、従来の「投資・既存」区分を廃して「エン転職」への投資を再強化する姿勢を明確に打ち出すなど、再成長に向けて大きく舵を切りました。

ディップは、営業体制を地域・企業規模別から業種別に切り替え、より専門的な提案力を強化。冨田社長自らが「スポットバイトル」や代理店領域の営業部門を率いるなど、スポットバイトルへの注力姿勢を明確にしています。ギークスも、ゲームやスポーツ領域を含む非IT事業から完全撤退し、IT人材領域に特化した事業ポートフォリオへと組織再編を行いました。

生成AIの活用

人材業界ではAIの導入・活用が本格化しています。社内での業務効率化にとどまらず、求人マッチングやキャリア支援など、事業の中核領域にAIのテクノロジーを取り入れる動きが広がっています。

出典元:決算説明資料(p.6)

ディップのAI戦略は社外向けと社内向けの二軸で進められ、社外向けには、仕事探しから求人掲載、退職・欠員フォローまで一貫して支援する「バイトルトーク」や「dip AI」の新機能を展開しています。社内向けには、全社プロジェクト「dip AI Force」を通じて業務効率化を推進し、通期目標の50万時間削減を達成しました。

パーソルホールディングスは、2025年4月に「グループAI・DX本部」を新設。グループ全体の生産性向上と横断的な連携を目的に、AIを軸にした事業変革を進めています。

リクルートの発表情報をもとに編集部が作成

リクルートが発表した、現在アメリカで開発・テスト中の「Career Scout」および「Talent Scout」が実装されれば、従来の仕事探し/採用フローは大きく変わる可能性があります。求職者は、キャリア相談から仕事探し、面接練習までのすべての工程をCareer Scoutで代替することが可能に。採用企業は、求人作成から1次面接対応までTalent Scoutが対応し、いずれはスカウト送付も自動化されていくことも予想されます。

まとめ

2025年4〜6月発表の決算からは、人材業界が大きな転換期にあることが明らかになりました。中でもリクルートは、求人広告と人材紹介を「Indeed PLUS」に統合し、AIエージェント「Career Scout」「Talent Scout」を発表。求職者・企業それぞれの選考プロセスを効率化・自動化する構想が進んでいます。これにより、従来人が担っていた業務がAIに代替される可能性が高まり、人材サービス事業者には、Indeedとの連携を含めた自社独自の価値を訴求することがさらに求められていくかもしれません。

業界全体でも、体制変更や経営陣の交代が相次ぎ、変化に対応するための再構築が進んでいます。エン・ジャパンとパソナでは、代表交代という再成長に向けた大幅な組織改革が行われました。

人手不足を背景に人材ニーズは引き続き高いものの、求職者の行動や採用手法は大きく変化しています。生成AIの活用や体制変更含め、こうした激動の時代に対応できるかどうかが、今後の人材企業の成長を左右する大きな分かれ目となっていくでしょう。

各社の決算解説では、本記事の内容を更に深掘りして解説しています。人材業界の最新動向を把握するために、是非合わせてお読みください!