初心者向け・人材業界の補助金入門 HRTechやDXには使えるの?

株式会社btobee
代表取締役
中村 研士郎 氏
なかむら・けんしろう/学生時代、アルバイトで中小企業の補助金申請支援業務に従事。大学卒業後は製造原価管理システムや大手企業のEC開発に関与する。2019年11月、それまでの経験と知識を活かして独立、株式会社btobeeを創業する。補助金業界の問題解決を目指し、事業を推進している。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて多くの企業がダメージを受ける中、「持続化給付金」が一躍話題になった。これをきっかけに補助金や助成金の存在を知った方も多いのではないだろうか。

補助金は、経済産業省が毎年が補正予算を組み、新事業に挑戦するためのシステム開発や設備導入への初期投資を補填してくれるものだ。返納義務はなく、最大で6000万円の補助が受けられるなど利用するメリットは大きい。しかし、注目が集まる一方で申請が難しそうだと諦めてしまう人や、一度自分で補助金を申請してみて不合格だったために諦める人も多いという。

今回は、補助金申請サポート事業を行う株式会社btobeeの代表取締役である中村氏に話を伺った。新しい事業に挑戦したいと思いつつ、資金不足で断念する企業に歯がゆさを感じてきたという中村氏。初心者でもわかる補助金の概要と、審査に合格するためのポイントを聞いた。

今補助金を使わないのはもったいない

中村氏いわく、今こそ補助金申請のチャンスだという。なぜ今なのか、その理由を尋ねた。

「まず、今は『一般枠』の他に『コロナ特別枠』が設けられています。コロナ特別枠とは、これまで対面で提供していたサービスを非対面で提供できるようにするなど、コロナ禍にマッチした内容が申請できる枠組みです。現在はまずコロナ特別枠の審査を行い、その後に通常枠の審査を行っています。コロナ特別枠で落ちた企業には通常枠でも審査が受けられるダブルチャンスがありますし、全体の9割くらいはコロナ特別枠で受かっている状況ですので非常に有利です。

また、新型コロナウイルスの感染拡大によって組まれた補助金額が非常に大きいです。例えば事業再構築は1年間で1兆円以上の予算が組まれています。補助金は国が決めた限りある予算を企業で取り合うことになるので、今は非常にチャンスが広がっている状況だと思います。せっかく事業の立ち上げや開発を行うのであれば、使わないのはもったいないです」

補助金にはどんなものがある?簡単に紹介!

まず、補助金にはどんな種類があるのか中村氏に聞いた。

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

「新型コロナウイルス感染拡大前から続いている補助金で、中小企業のシステム開発や設備導入の初期投資にかかる費用の2/3を100万~1000万円まで補助します。

ポイントとなるのは、申請条件として『その施策によってサービスの付加価値額が年率3%以上向上すること』が挙げられることです。3年~5年で事業計画を組み、3年なら9%、5年なら15%向上させる計画を立てる必要があります」

人材業界でも採択事例は多く、例えば株式会社moovyでは、採用動画プラットフォーム「moovy」の人材紹介エージェント向け機能開発で採択を受けている。

事業再構築補助金

「新型コロナウイルスの流行を受けて新設された補助金で、中小企業の事業・業種転換、新分野展開、業態転換などにかかる費用の2/3を100万~6000万円まで補助するものです。

ポイントは、『新型コロナウィルスの影響で売上が低下している企業』が対象となる点にあります。売り上げがコロナ禍の影響を受けずに伸びている企業は受給できないので注意が必要です。

また、申請内容が事業再編成の枠組みに当てはまることも必須条件となります。事業再構築とは、メインの業種・事業の転換することや新たな市場に進出すること、製造方法や提供方法の変更など。これまでの事業と同じ市場であったり、既にサービスのβ版をリリースしていたりすると審査に通らない可能性があります」

人材業界においては、求人数が大きく減少したアルバイト系・外国人向けの人材サービスを提供している企業などが対象になりやすいだろう。実際に、外国人向け人材紹介会社がオンライン完結型のマッチングプラットフォーム構築で採択を受けた例などがある。

小規模事業者持続化補助金

「こちらは小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みにかかる費用の2/3を50万円まで補助するものです」

「小規模事業者の定義に当てはまっていれば、設備投資やシステム開発だけでなく、チラシやウェブサイトの作成、リスティング広告の掲載、店舗の改装などにも利用できます。他の補助金と併用できるため、ものづくり補助金を利用してシステム開発を行い、小規模事業者持続化補助金を利用してそのシステムを展示会に出展するなどの使い方も可能です」

「どの給付金も、対象となる事業内容や金額などにそれぞれ特徴があります。自社が利用できそうな補助金はどれか、細かい条件などが知りたい方はお気軽にご相談ください」

補助金申請で注意すべき点とは?審査項目へのアピールが重要!

補助金とはどんなものなのか、おおまかに理解したところで、「思ったより簡単そうだ」と感じた方もいるかもしれない。ここからは補助金申請で注意すべき点について、中村氏に話を聞いた。

売上の向上に繋がれば既存サービスの機能追加にも使える

「前提として、どの補助金も経済の活性化を目的として設けられています。したがって、申請する上では『このシステム開発をすることによって、会社の売上が直接的に伸びていく要因になりうる』と分かることが非常に大切です。

例えば申請内容が『社内で人員の管理をするためのシステム開発』だと、売上への貢献が見えにくいため難しいです。たとえ管理システムを作ることで人材を増やせるようになり、営業が増えて間接的に売上が伸びるというシナリオだとしても、システムが売上に直結するわけではないので補助金の申請は難しくなってしまいます」

では、どんな内容であれば申請しやすいのだろうか。実は、全く新しいサービスを作る必要はないという。

「よく『もう完成しているサービスはダメですか?』という相談を受けます。補助金の対象はこれから作り始めるシステムですので、結論としては既に作ってあるサービスは対象になりません。一方で、全く新しいサービスを作らなければいけないという訳でもないんです。

例えばサービスをスマホアプリ化して、追加機能でマネタイズできる経路を増やすというストーリーであれば申請が可能です。既存サービスに補助金は利用できませんが、そのサービスの機能追加には申請できる可能性があります」

審査項目に対し分かりやすい説明を心掛ける

では実際に申請書を書く際、どのようなことに気をつければよいのだろうか。例えばものづくり補助金では、以下の要素を記載した事業計画書を作成しなければならない。

①補助事業の具体的取り組み内容
・事業の現状
・課題と解決策
・実施体制、スケジュール

②将来の展望
・市場
・事業効果

③会社全体の事業計画
・5カ年の事業計画
・積算根拠

この記載をもとに「補助対象事業としての適格性」「技術面」「事業化面」「政策面」を審査する。審査項目を理解したうえで事業計画書を作成し、適切にアピールできれば、審査に通る確率は上がると中村氏はいう。

「ポイントは『ストーリー性を持たせること』です。これまで行ってきた事業の強みや課題について説明し、今回申請する事業によってその強みをどう生かせるのか、どう課題を解決できるのかなどを記述しましょう。ただやりたいことを記述するだけではなく、これまでの事業と今挑戦しようとしていること、今後目指す未来が一つのストーリーとして繋がるように記述することで、より納得感が生まれるでしょう」

事業計画書の書き方については、中小企業庁が運営する中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」において書き方のポイントや申請事例がくわしく紹介されているので参考にしてみてはいかがだろうか。

ノウハウや工数に不安があれば、コンサルタントへの委託も有効

また、自社の取り組みをどう記載すればいいのか自分では分からないと悩む経営者もいるだろう。そのような場合には外部パートナーに補助金申請を依頼することも有効だ。

「専門家は受かるノウハウを持っていますし、申請の手間を最大限切り出すことが可能です。もちろんコンサル費用はかかってしまうものの、知識のない状態から申請書を作成する手間を考えると、支払う金額以上のメリットを得られるはずです。

例えば弊社では、システム開発費での補助金獲得に強みを持っています。私が過去にシステム開発会社のエンジニアを経験しており、システムについての専門的な話について分かりやすく説明できる知見を持っているためです。実際、ものづくり補助金では申請全体での合格率が30~40%と言われる中で、弊社は90%の合格率となっています。

このように各コンサルタントならではの強みなどもありますので、もし自分での申請は難しいということならば、うまく外部パートナーを頼って補助金を利用してもらえればと思います」

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