【ネオキャリアの組織変革#02】マーケ×営業力で商談化率にコミットする ネオキャリアのマーケ部隊が持つ強みとは

株式会社ネオキャリア
経営企画本部 副本部長/マーケティング部 部長
中村 陽太郎 氏
なかむら・ようたろう/2012年に新卒でネオキャリアに入社し、新卒採用コンサルティング部にて4年間法人営業を経験した後、部署異動しHRテックサービスのマーケチームの立ち上げに参画、ToBマーケ施策を幅広く実施。その後、2017年9月に同社が買収したUnistyle株式会社に出向し代表取締役に就任、就活支援サイトunistyleの自然流入からの会員登録数を買収時から300%以上成長させることに成功。2021年10月よりネオキャリアの全社マーケティング部 部長に就任。

成長し続けるネオキャリアの組織変革

2000年に中途採用支援・広告代理事業で設立された株式会社ネオキャリア。現在ではHR Techサービスやメディアなど事業領域を拡大し、企業として大きな成長を遂げている。いち代理店のネオキャリアが業界をけん引する企業となるまで、どのような革新の歴史があったのか。組織変革の裏側に迫る。

もとはアウトバウンドのみで営業を行ってきたネオキャリア。アウトバウンド一色の文化からインバウンドへの切り替えは困難を伴ったが、その一方で営業に強い企業だからこそできたマーケティング施策があったという。

今回はマーケティング部部長である中村氏に、ネオキャリアのマーケティング部が持つ強みと、その根底に流れる企業文化について話を伺った。

「インバウンドとアウトバウンドのハイブリッド」見つけたネオキャリアならではの強み

もともとはHRテックサービスのブランディングとリード獲得を目的として、ネオキャリアのマーケティングが始まった。マーケティングに関する知見を持っていない状態で、始めはありとあらゆる施策を試して経験値を積んでいったという。短期施策としてはリスティング広告やFacebook広告、アフィリエイト、中期施策ではメルマガ、長期施策ではメディア運営やSEOなどに着手し、自社に最適なチャネルを探った。

「その中で弊社に向いていると感じたのが展示会です。展示会は基本的にお客様がブースに来るのを待つスタイルの企業が多いと思うのですが、当時はブース外への移動も比較的自由だったこともあり、我々は歩いている人にひたすらお声がけをして、商談まで持ち込むストロングスタイルを展開していました。ブースも装飾を少なくし展示費用を最小限に抑えつつ、営業が動きやすく、かつお客様をお連れした際にそのまま商談に持ち込みやすい設計にした結果、ただ待っている他の企業よりも多くの名刺を獲得できました」

展示会は費用対効果が合わず離脱する企業も多い中で、ネオキャリアでは効果の出ている経路の一つだ。初めて出展した6年前から現在まで、6年間継続して続けている施策だという。

「また、テレアポが認知に繋がっているとも感じています。というのも、お問い合わせ下さった企業に幣社をどこで知ったのかと尋ねたら、『以前お電話をいただきました』という回答が非常に多かったんです。もともとアウトバウンドが強い企業ですし、インバウンドマーケティング施策を進める中でも同時並行でテレアポを行っていたことで認知が高まりました」

上手くいかなかったマーケティング施策もあったが、その中で「インバウンドとアウトバウンドのハイブリッド」にネオキャリア独自の強みを見出した。そして、マーケティング部単体ではなく営業部との連携を軸に施策を展開することでその強みを強化していったのだ。

営業マインドが流れているから受注までコミットできる

立ち上げ時のマーケティングチームは、各部署の営業担当とWeb広告会社から抜擢されたメンバーで組成されていた。営業担当をアサインしたことが、マーケティングの効果を上げることに繋がったという。

中村氏たちは、はじめはただリードを集めることに注力していたが 、やがてリード獲得後の商談率、受注率まで注目しなければいけないことに気づいた。この施策はリードを大量に取れるけれど商談化率が低い、こっちは商談化率が高いけれど運用コストも高いなど、それぞれ一長一短がある中でどのように最適化するか検討していった。

「弊社のマーケティング部は営業経験者が多いので、自然と営業部目線でマーケティングのことも考えています。売上に繋がらない施策は意味がないと思っているので、『営業部や事業部にちゃんと寄り添ったマーケティングをしよう』とは常に意識していますね。事業目標や営業部が追っている数字から逆算してマーケティング施策を考えるためにも営業部との連携を強化しています。

例えば弊社では『この経路から来たリードは5分以内に架電する』と決めてなるべくアプローチを早くしたり、リード獲得経路ごとに営業トークを変えたりする取り組みを行っています。獲得経路に合わせた最適なアプローチを考えることで、マーケティング部からも商談化率や受注率の向上に寄与できていると思っています」

企業によっては、マーケティング部門と営業部門がきっぱりと分離していることも多いが、ネオキャリアでは双方が細かく連動している。チーム内で施策を完結させるのではなく、営業チームも巻き込んで施策を設計することが重要だ。

一方で、メンバー全員が営業担当から未経験でマーケティングを始めたため、最初はデータの取り方から効果検証のやり方、施策の作り方まで「全てが浅かった」という。失敗と内省を繰り返す中で少しずつ軌道修正していけた理由について、中村氏は次のように振り返る。

「営業組織では毎日進捗報告をして、常に数字を見るという文化が一般的にあると思うのですが、同じことをマーケティング部でもしていたことが良かったのだと思います。他社の場合、『施策を始めてから1週間は様子を見てみよう』となることが多いと思いますが、ネオキャリアのマーケティング部では日次でも計画を立てて進捗をチェックしていました。1日でも遅れてはいけないという方針があったため、必然的に思考回数が増えて素早く改善できたのではないでしょうか。

また、その目標をちゃんと達成したか、達成できなかったのはなぜなのか、逆に目標を超えたのならなぜ成功したのかという要因分析をきっちり行っていたこともあり、PDCAを回し続けることができました」

「成長し続ける」を企業理念に掲げるネオキャリアでは、常に改善行動をおこない、掲げた目標に向けてやりきる文化が浸透している。マーケティング施策が拡大し営業の手法が変わっても、根底に流れるマインドは変わっていないようだ。

これから目指すネオキャリアの姿 積み上げてきたものを活かすブランド作り

最後に、ネオキャリアのマーケティングにおける今後の展望を伺った。

「今後の大きなテーマとして、サービスの改善・進化にマーケティング部から介入していきたいと思っています。今までのネオキャリアのマーケティングは、主に『良質なリード獲得をいかに増やすか』に注力してきました。でも、世の中には『良いサービスは勝手に売れる』という原理があると思うんですね。

というのも、私が以前ネオキャリアがM&AをしたUnistyle株式会社という子会社に出向し代表を務めていたとき、当時の創業社長に『目先の売上なんて追うな。unistyleを使ってくれているユーザー(就活生)に価値あるコンテンツを提供し続ければ売り上げは後からついてくる』と日々口酸っぱく言われていたんです。『目の前のお客様に良質な価値提供する』ことを何よりも優先したことで『後から売上がついてくる』ことを実感できたという経験があり、ユーザーファーストの重要性を学ぶことができました。

実際にunistyleでは年間の売上・会員登録者数を買収時から2倍以上に増やすなど、大きく企業を成長させられました。この経験から今のネオキャリアを見ると、まだまだ『お客様への価値提供』を高められる余地があると感じます。マーケティングチーム主導で各サービスを本質的に改善・進化させることができれば、おのずと集客施策にも跳ね返ってきて、問い合わせが増えたりもっとお客さんに喜ばれたりという良い循環を生み出せると考えています」

「採用のことはとりあえずネオキャリアに相談」を目指す

マーケティングからサービスのクオリティの向上を図っていくために、具体的にはどのような施策を考えているのだろうか。

「人材業界・人材サービスは、ビジネスモデルの差別化が難しいと考えます。故にお客様からすると各サービスの特徴や違いがわからず、結局は営業との商談で良し悪しを判断する、それこそ営業ドリブンな側面が強いと思っています。そこで今取り組んでいることの一例が、求人広告代理店そのもののブランディングです。

今までノーブランドで展開していた求人広告代理店の事業ですが、領域共通(新卒・中途・アルバイト)のブランドを掲げていこうと考えています。『採用で迷ったらとりあえずネオキャリア』と最初に思い浮かべてもらえるブランドを作りたい。新卒でも中途でも非常に多くのサービスがあってどれを選べばいいか分からない、そんな採用に悩みを抱えるお客様から第一想起されるような存在になるためのブランディング施策を複数実行していく予定です」

事業を横断する大規模なブランド構築を掲げる一方で、変えてはいけないものもあると感じている。中村氏がunistyleの拡大を行っていた際、unistyleに感じている価値や、もっと伸ばしてほしい点などについてユーザーインタビューを行う機会があった。その中で、昔からのユーザーはブランドが変わることに対する不安も抱えていることを知ったという。

「体制が変わったからといって、元々のサービスの良さがなくなるのは絶対にダメだなとその時に思いました。これは今後のネオキャリアにも言えることです。

私が考えるネオキャリアの『変えてはいけない価値』は、お客様目線であること。お客様から『自社の採用にちゃんと寄り添ってくれる営業』だと言っていただくこともありました。ただ商材を提案するだけではなく、ちゃんとニーズを深堀りし、一緒に並走して課題を解決する。そんな寄り添う姿勢も変えずにいきたいですね。

現在弊社ではインバウンドマーケティングの強化に取り組んでいますが、このイメージは今後インバウンドマーケティングが主流になったとしても変えてはいけない価値だなと思います」

また、インバウンドマーケティングを成功させながらも、アウトバウンドにも引き続き力を入れていく両輪の営業体制がネオキャリアの強みの源泉だ。他社には真似できない独自性を確立することで、ネオキャリアはさらなる躍進を狙う。