英語ができると本当に稼げるの? 英語と年収の関係を分析してみた(アルバイト編)

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今回の記事は、公認会計士 眞山 徳人氏により寄稿いただきました。
眞山氏は公認会計士として各種コンサルティング業務を行う傍ら、書籍やコラム等を通じ、会計やビジネスの世界を分かりやすく紐解いて解説することを信条とした活動をされています。
眞山氏の著書、「江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本」では、難解な会計の世界を分かりやすく解説しています。

英語ができると、本当に稼げるのか?
前回の「英語と年収の関係を分析してみた(正社員編)」では、求人情報を分析することで英語の能力と年収の関係を、ざっくばらんに分析してみました。
おかげさまで非常に反響も大きく、日本人の英語への関心(そしてその裏返しとしてのコンプレックスのようなものもあるのかも)の高さに驚かされました。

前回に続き、今回は、アルバイトの求人情報を用いて、英語の能力と「仕事」の関係を分析してみたいと思います。

分析の準備(前回のおさらい)

アルバイトと正社員とで、英語の重要性がどう違うのかを明確に把握するため、まずは正社員と全く同じやり方でデータ分析をしています。おさらいしたいポイントは3つ(詳しくは前回の記事をお読みください)。

・ゴーリストの求人情報データベースを活用
・求人情報を職種ごとに分類
・動機づけ要因として「給料の上昇率」、衛生要因として「英語求人の割合」を指標に採用

なお、正社員編に登場した19職種のうち、「公務員/団体職員」と「農林水産関連」はアルバイトの求人がないため、今回分析対象になったのは以下の17職種です。

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そして、動機づけ要因と衛生要因の組み合わせで、英語と年収の関係を4つのゾーンに分ける、というのも前回と全く同じです。

・英語が重要ゾーン ⇒ 英語学習にお金をかける価値がある職種
・英語で差別化ゾーン ⇒ 英語をオトクに学んで賢く差別化したい職種
・微妙ゾーン ⇒ 英語を学ぶなら低コストにこだわるべき職種
・骨折りゾーン ⇒ 英語を学んでも稼ぎには影響のない職種

さて、実際にアルバイト求人を分析したら、正社員とはちょっと異なる結果になりました。

衛生要因がほとんどないため、「重要ゾーン」は該当なし!

前回と同様、職種ごとに、2つの評価軸を計算してみた結果をプロットしたのが図です。
1つ1つの点が「職種」をあらわしていて、縦軸が「英語求人と非英語求人の年俸の違い」、横軸が「英語求人が求人全体に占める割合」を表します。

図に記載したとおり、上に行けば行くほど動機づけ要因が高い、つまり「英語が出来れば稼げる」職種であることを、右に行けば行くほど衛生要因が高い、つまり「英語が重要な」職種であることを示しています。

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(正社員のグラフはコチラ)

何よりも大きな特徴は、「英語が重要ゾーン」がないこと。アルバイト求人の場合、そもそも英語が必要となる求人自体が非常に少ないため、衛生要因が大きくならないのです。
そして、その反動として「骨折りゾーン」が多いのも特徴的です。
アルバイトで働いている限りでは、せいぜい「英語で差別化」ゾーンの職種で多少年収に差が生じる程度、というのが、現在の日本の事情だということができます。

今後のキャリアを考えるなら、クロス分析で考えよう

だからといって、例えば骨折りゾーンのアルバイトをしている学生が「じゃあ、俺は英語やらねーわ」と決断してしまうのは、さすがに早計だ・・・ということは、もう読者の皆さんもお気づきだろうと思います。


正社員の場合、職場との相性さえよければずっとその仕事を続けることも選択肢のひとつに上がってくるわけですが、アルバイトはそうではないことがほとんどです。
学生のうちのアルバイトであれば、アルバイトを続けるのは当然卒業まで・・・のはず。何らかの事情で卒業後もアルバイトを続けざるを得なかった人も、できるだけ早めに目処をつけて、正社員になることを志向するのが一般的なキャリアの描き方だと思います。

というわけで、「今はバイト・・・でもいずれ正社員」というキャリアを念頭に置いたとき、職種と英語の関係を整理するため、「クロス分析」という手法を用いてみます。


次の図は、ある職種が正社員・アルバイトそれぞれにおいてどのゾーンに該当したかをマトリックスで表現したものです。アルバイトには「重要」ゾーンがないので、このような3×4マスの図になります。

こうやってタテヨコに整理してみると、アルバイトでは「骨折りゾーン」でも、そのまま正社員になると「差別化ゾーン」に格上げになったりするような職種が少なくないことが分かります。

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アルバイトで働いている人が、今後の長期的なキャリアを念頭においた場合、それぞれの職種と英語の関係は、これらの3つのゾーンに分かれると思っておきましょう。

ゾーン① 後で痛い目にあうゾーン ⇒ 今は関係なくても、英語はしっかり学びましょう

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正社員編で「重要ゾーン」に位置づけられる職種でアルバイトをしていて、そのまま同じ職種で正社員になりたい人は、たとえ今のアルバイトの待遇が「骨折りゾーン」であったとしても、しっかり英語を勉強しておいたほうが身のためです。
どんなにアルバイトでスキルを磨いても「今まで頑張ってくれたのは分かるけど、英語ができないんじゃね・・・」といわれてしまう可能性があります。


英会話スクールなどに通うことも検討する必要はありますが、せっかくこのゾーンで働いているのであれば、少しでも英語を使う仕事を手伝わせてもらうことで、業界固有のボキャブラリーや言い回しに触れてしまうのもひとつの手だと思います。

ゾーン② やって損はないゾーン ⇒ 英語をオトクに学んで賢く差別化したい職種

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アルバイトのときもそれほど英語は必要でなく、そのまま正社員になったとしても、せいぜい「差別化」どまり・・・そんなゾーンがここです。このゾーンに居る人にとっては、英語はあまり熱心に学ぶ必要のあるものではありません。もし学ぶとしても、できるだけお金のかからない方法を選ぶ、というのは正社員の「差別化」「微妙」ゾーンと考え方が似ています。


ただ、長期的なキャリアパスを考えるとき、これらの職種でも、数年後には英語が重要性を増していくことは考えられますので、いざというときに苦手意識を持ってしまわないために、少しずつ英語に取り組んでおいたほうが良いのかもしれません。

ゾーン③ ジョブチェンジも念頭ゾーン ⇒ 英語力を活かしたければ別の職種を選ぼう

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中には、「アルバイト時代のほうが英語使ってたかも・・・」という職種も存在するようです。
アルバイトとして接客していた頃は外国人への応対が必要だったが、正社員になり、本社で仕事をするようになったらまわりは日本人しか居ない・・・というようなケースですね。


こういうケースでは、アルバイト時代に培った英語のスキルが、持ち腐れになってしまう可能性が無きにしも非ず。せっかく身に着けた英語のスキルを活かしたいと思うのであれば、正社員を目指して「重要ゾーン」の職種への転向にトライしてみるのも、良いかもしれません。
ちなみに、学生向けのアルバイトが比較的多いのもこのゾーンにある職種の特徴です。

長期的なキャリアを考えるなら、英語も長期的に学ぼう

正社員の方が今から英語を学ぼうとすると、どうしても時間が限られてしまうことが多いもの。
そこで、前回の記事では英語の学び方として、「どのレベルを目指すかを明確にする」ことと、「そのためにどれくらいお金をかけるのかを考える」ことを提案しました。

いっぽう、アルバイトの方が長期的なキャリアを見据えて英語を学ぶ場合には、比較的じっくりと、計画的に取り組むことができるということがいえると思います。

英語に限らず、語学にはこんな特徴があります。


・体系的に身に着けるのには、それなりに時間がかかる

・せっかく身に着けても、使わずにいるとだんだん忘れていってしまう

アルバイトをやっている間はそれほど英語を必要としない、という場合、あせって短期留学をして一時的に会話力を底上げしても、結果として、就職する頃にはすっかり英語の感覚が衰えていたり・・・ということにならないように、コツコツと学習を進めていくのがコツではないか、というのが個人的な意見です。


また、アルバイトの収入は相対的に正社員よりも低いのが普通ですから、お金のかかる方法を最初から選ぶのではなく、前回紹介したインターネットのプログラムやNPO団体への参加を通じて、お金をかけずに、その代わり、継続して学べるような方法を選ぶのが最適でしょう。

少し話はそれますが、最近のアルバイトの方は、「外国人と一緒に働く」と言う経験がずいぶん多くなっているようです。日本で働いている外国人は日本語を一生懸命に勉強していてとても上手な人がおおいのですが、そういった勉強熱心な外国人の多くは英語も堪能なことが多かったりします。


グローバル化の時代を迎え、英語がますます重要なツールになっていく中で、今一緒にあるバイトをしている日本人と外国人の「長期的なキャリア」を考えたとき、こと英語力に関しては日本人は大きく水をあけられているのが現状ではないかと思います。

前回、今回の分析ではあくまで国内の求人情報を分析に用いましたが、海の向こうではもっと大きな「動機づけ要因」が待っています。それと同時に、あたかも黒船のように「衛生要因」が海外から迫ってきているのだ・・・ということを、今アルバイトを頑張っている学生さんにはぜひ理解して欲しいと、老婆心ながら思う次第です。

眞山氏の前回の記事はコチラ→もし最低賃金が1,000円になったら、牛丼は一杯いくらになるのか?

英語ができると本当に稼げるの? 英語と年収の関係を分析してみた(正社員編)

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(HRog編集部)