株式会社ディスコ
プロダクト企画第1本部 就活サービス企画部 部長 兼 イベント企画運営課 課長
孕石 大輔 氏
はらみいし・だいすけ/2001年にディスコへ入社、企業の採用アウトソーシングを代行するビジネスソリューションに配属。大手企業を中心に説明会運営、面接運営、採用事務局などのアウトソーシングサービスを提供。2013年に国内の合同企業説明会を企画・運営する現部署へ異動し、企業・学生に対して合同企業説明会における様々なサービスを提供。
今年も新卒採用の選考が解禁され、本格的な採用活動が始まった。コロナ禍が鳴りを潜め、求人倍率も回復してきた25卒採用はいったいどんな市場になっているのか。データと取材の両面から解剖していく。
今回は「キャリタス就活」を運営する株式会社ディスコの孕石氏に、合同説明会の最新状況について伺った。
オンライン説明会の参加者が減少、その理由は…?
コロナ禍をきっかけに、就活はしばらくオンライン中心へ移行していた。しかし現在では、オンライン合同説明会の参加者数が減ってきており、対面合同説明会が復活しているという。
「コロナ禍直後は採用企業も学生もオンラインのノウハウがなかったため、イベント主催企業が取りまとめて開催するオンライン合同説明会が人気でした。当時はオンラインしか参加手段がないこともあり、視聴数は多かったです。コロナ禍中期になると、採用企業が独自でオンライン説明会を開催し学生も自身で情報を探すことが可能となり、オンライン一色になりました。しかしコロナ禍が明け、制限がなくなってくるとオンライン合同説明会の視聴は減り、徐々にリアルな合同説明会が復活してきているのが現在の状況です。
一時期は合同説明会のイベント会場内で同時にオンライン説明会を行う『ハイブリッド形式』の企業もありましたが、今はもうほぼ見かけなくなりましたね。 同じ日に開催すると学生は対面ブースに集中し視聴者数が伸びないため、リアルとオンラインの親和性はないと結論付けられたようです。他にもオンデマンド配信という手法がありますが、これも学生の視聴率は伸び悩む傾向があります。オンデマンドにはいつでも見られるメリットがありますが、それゆえに見ないままで終わってしまうんです」
同社では「キャリタス就活Meet Up(ミートアップ)」という、オファーが届いた学生と企業の担当者のみで実施するオンラインイベントを開催しているが、そこでも同様の傾向が見られ始めているという。
「キャリタス就活Meet Upはコロナ禍中多くの学生に参加していただいていましたが、最近は一定のニーズはあるものの、3年ほど前と比べると学生の参加が少なくなっている印象を受けます。オンライン授業などに慣れた学生たちは、オンライン上で顔を出すことに抵抗があるようです。最近の学生の傾向として、よりライトに就活をしていきたいという思いが強くなっていると感じます」
企業と直接話せるリアル合同説明会の参加者数は回復傾向にある
オンラインに反して、対面での合同説明会の参加数は回復してきた。そしてコロナ禍前と比べると、参加する学生や企業の動きには変化が見られるようだ。
「コロナ禍と比べて、対面の合同説明会への出展企業数や来場者数は回復してきました。それでも、まだコロナ禍前と完全に同水準とまではいきません。コロナ禍前は出展企業が600社ほどで来場者は1万人規模でしたが、現在は出展企業数が約半分になり来場者数は3000〜4000人程度と、学生はオンラインと対面を使い分けていると思われます。
対面型に学生の参加人数が完全に戻っていない理由には別の要因もあります。その一つに、売り手市場が続いているため学生があまり焦りを感じていないことが挙げられます。企業側の需要が高いため、わざわざ合同説明会に行かなくてもいいと考える傾向があるようです」
加えて最近では、SNSやYouTubeなどネット上で企業や就活の情報収集が簡単にできる。では、合同説明会に参加している学生はどんな理由で参加しているのだろうか。
「学生の合同説明会参加の目的として、『特定企業の説明を聞きたい』『どんな企業があるのか見てみたい』などが多いです。そのほかに、会場に足を運ぶと学生は就活がスタートしたことをより強く認識しますので、就活に対するモチベーションを高めるために参加する学生もいるのではないでしょうか。簡単に情報収集ができるSNSやYouTubeは、つい流し見してしまい情報が頭に入ってきません。合同説明会に参加すると企業から直接話を聞けるので、聞いた情報をしっかりインプットして理解できるメリットもあります」
また同時に、企業側が合同説明会を利用する理由も変わりつつあると孕石氏は見解を示した。
「以前はどちらかというと、母集団を作るためにより多くの学生に会いたいというニーズが強かったです。しかしコロナ禍でオンライン採用が主流になり、学生との結びつきが薄くなってしまったことで、合同説明会を学生とのその場を共有するといった繋がりを求める企業が増えました。弊社の開催する合同説明会では『コミュニケーション特化型』『ダブルスピーカー型』など用途別の選べる5つのブースを用意しているのですが、コミュニケーション特化型ブースで企業側と少数の学生がじっくり会話している姿をよく見かけます。既に接点のある学生と積極的にコミュニケーションを取り、企業に対する志望度を高めようとする傾向が年々強くなってきていると感じます」
最近の就活生は受け身傾向?
コロナ禍が明けオンライン・対面の比率や用途が変わっていく中、就活に対する学生の姿勢にも変化が起きている。一人当たりのオンライン説明会の視聴数や企業エントリー数が、以前に比べ大幅に減ってきているのだ。
「以前はオンライン説明会を1社視聴するとついでに2、3社を視聴する学生が多かったのですが、最近の学生は自分の興味のある企業のみを視聴する傾向があります。これが企業のエントリー数が伸び悩んでいる要因の1つだと考えられます。以前は50〜60社のエントリーも珍しくありませんでしたが、最近では厳選した10〜20社にエントリーしている学生が多いようです。売り手市場が続いているとはいえ、企業を絞りすぎて学生の視野が狭くなってきているのではないかと少し不安を覚えます」
こうした消極的な姿勢は説明会などでも見られ、自分視点での働き方や社内の雰囲気に関しての質問が目立つという。
「特にリモートワークができるかどうか気にする学生は本当に増えました。業務内容だけでなく、福利厚生や待遇などに関する質問も多く見受けられます。どちらかというと自分の条件に当てはまる企業なのか確認している印象です。キャリタス就活Meet Upでも、『何か質問はありますか?』と問いかけをしても、なかなかすぐには質問が出てきません。そのため最近では、事前に『よくある質問集』を用意しておき、質問が集まるまでの時間を使って司会者から発信している企業もあります。以前はこのような場でも積極的に質問が飛び交っていたのですが、最近は他の学生の意見や発信者の発言を聞いてるだけの人が多い印象を受けます」
学生の視点に立ち、寄り添ったサービスを提供していく
こうした就活生の変化にも寄り添うため、キャリタスは合同説明会内でのコンテンツ充実に注力している。
「キャリタスは『学生に寄り添った就活を提供する』をコンセプトに掲げ、実際にイベント会場に来てくれた学生に『ためになった』と感じてもらうためのコンテンツを豊富に用意しています。例えば直近で開催したイベントでは、以下のような就活対策の特設ブースを設置しました」
1.面接トライアウト
グループ面接の体験ができる模擬面接を行い、弊社のエージェントがその場でフィードバックを行う。
2.ESガクチカフィードバック
エントリーシート内の『ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)』について、面談を通じてアドバイザーがアドバイスを行う。
3.グループワークラボ
経験により差がつきやすいグループワークの対策を提供する。
4.就活本番直結ノウハウ講座
インターンシップ・キャリアと就活両方で活用できる「エントリーシート」「自己分析」「業界研究」「就活スケジュール」など、テーマ別に開催される講座。
「また『出張キャリアセンター』というブースでは、大学のキャリアセンターの方に来ていただいて学生からの相談を受けています。最近は大学のキャリアセンターを全く使わない学生も多いので、大学にも頼れる人がいること、キャリアセンターは気軽に使えることを伝える広報の目的も兼ねており、好評です。
昔は面接練習もグループワーク対策も、学生が自分たちで積極的に行っていました。しかしコロナ禍で学生同士の交流の仕方も変化し、今は我々のような新卒サービス側がコンテンツを用意して学生の交流を促す流れになっています。いまや就職活動の初期段階で手厚いフォローをすることも合同説明会の役割になってきていると感じますし、弊社としてももっと学生の気持ちに寄り添っていきたいと思っています。
『学生に寄り添った商品やサービスを提供していく』というキャリタスのコンセプトは今までと変わりません。学生が何を望んでるのか、就活の役に立つことは何なのかを時代の変化に合わせて考え、最新の動向にアンテナを張り続けていくことが大事だと考えています」
今の学生に企業はどうアプローチすべきか
25卒に限らず、新卒市場はこれからも様変わりし続ける。近年では就活の早期化が加速度的に進んでおり、学生の就活期間は延びてきている。こうした変化に企業は対応していく必要があるだろう。
「従来の合同説明会の開催時期は大体3〜4月と決まっており、学生も合同説明会から就活をスタートさせていくスタイルが多かったです。しかし、今は学生によって就活開始のタイミングが異なり、合同説明会に参加する学生のニーズも多様化しているといえます。企業側の目的も、母集団獲得だったり応募者のつなぎ止めだったりとさまざまです。
弊社としても、こうした多様化するニーズにどう対応していくかが今後重要になると考えており、年間を通したイベントの開催や、時期に合わせたコンテンツの用意に取り組んでいます。
就活の早期化が加速している中、学生は『就活の終わりが見えないこと』に不安を感じています。就活準備を早く始めて、早く就活を終わらせたいと思っている学生は多いですが、実際には面接でうまくいかなかったり、活動途中で志望が変化したりして、結局、就活期間が延びてしまいがちです。また、早めに内定がもらえても、本当にこの企業でいいのか決めあぐねる学生も年々増えています。
最近は、内定承諾の期限を設けずに学生から企業に相談できる場を設ける企業が出てきています。採用担当者から『もっと色々な業界を見てみるのはどうか』などのアドバイスをすることもありますし、学生からの相談に柔軟に対応してくれる企業も増えました。『入社がゴール』ではなく、その後定着して長く活躍してもらいたいと思っているので、学生が納得して入社することがとても重要です。
採用が長期化・早期化する中で、採用施策だけでなく、インターンシップ期からの広報施策も欠かせなくなっています。弊社では、学生が参加したくなるような合同説明会や学生との繋がりを持たせるコンテンツをどんどん提供していきますので、新卒採用を行う方はぜひキャリタス就活フォーラムを利用していただきたいとおもいます」