【25卒特集 #03】ジンジブが高卒就活を変える! 高校生にあらたな選択肢を

株式会社ジンジブ
取締役
星野 圭美 氏
ほしの・たまみ/新卒で採用支援コンサル会社に入社し、中小ベンチャー企業を中心に新卒採用戦略立案から実施までをサポート。大阪支社立ち上げを経て
採用プロデュース事業部部長に就任。その後、2014年2月に株式会社ジンジブへ入社し人材紹介事業部(中途)、
ドラフト(高卒採用支援)事業部立ち上げに従事。現在、取締役としてキャリア教育開発部、カスタマーサポート部の管掌と、高卒者の第二新卒の転職・リスキリングを支援する「ジョブドラフトNext」立ち上げに従事している。

25卒特集

今年も新卒採用の選考が解禁され、本格的な採用活動が始まった。コロナ禍が鳴りを潜め、求人倍率も回復してきた25卒採用はいったいどんな市場になっているのか。データと取材の両面から解剖していく。

今回は高卒就活サービスのパイオニアである株式会社ジンジブの星野氏にインタビュー。高卒採用の特徴や最新トレンドに加え、同社が提供する「ジョブドラフトNavi」「ジョブドラフトFes」を通した高校生の支援について伺う。

「学校斡旋」「採用スケジュール」「1人1社制」…独自のルールや慣習が続く高卒採用

高卒採用では、先生経由で就職先を提案される「学校斡旋」が主流となっており、実に97%の高校生が学校経由で就職先を決めている。就職情報サイトや就活イベントが豊富な大学生と違い、高校生が就職先を探す手段は極めて限られているのが現状だ。まずは、高卒採用の特徴的なルールや慣習について星野氏に話を伺った。

「高卒採用には、『学校斡旋』 『採用スケジュール』 『1人1社制』の3つの特徴的な仕組みがあります。高卒採用をしたい企業はハローワークの高卒採用専門サイトに求人を掲載するのが一般的です。しかしこのサイトは学校の先生しかログインできない仕組みになっており、高校生は閲覧ができません。そのため先生が人材紹介のエージェント的な役割を担い、企業と生徒の仲介をしています。この学校斡旋形式は、高卒採用特有の仕組みと言えます」

出典元:株式会社ジンジブ

「高卒採用スケジュールも全国で統一されています。基本的に3年生の7月1日に求人票が、その後9月に選考が解禁されます。また、選考解禁の9月の時点では基本的に1人1社しか選考が受けられない『1人1社制』ルールが存在するのも特徴です。ルールの詳細は都道府県によって異なりますが、2社目を受けられるのは10月以降と定められているケースがほとんどです。

なぜ『1人1社制』ルールがいまだに続いているのか。大前提として高校生を守るため、学業に影響が出ないようにするためという理由があります。それに加えて、長く高卒採用を続けている地元企業との結びつきの強さや、窓口となる先生の負担軽減も関係していると言われています」

しかし近年、この高卒採用の特徴的な慣習制度について改良検討や見直しの動きが出始めているという。

「2020年の高等学校就職問題検討会議では、『採用活動のスケジュール』や『1人1社制』を見直した方がいいのではないかと、制度改良に向けた議論がなされました。実際、『1人1社制』についてはすでにルールが変更され、一定期日後に複数応募を可能とする地域が全国に広がっています。2024年4月時点では秋田県、沖縄県、和歌山県、大阪府、茨城県の5府県で就活開始時から複数応募が可能となっています。とはいえ都道府県ごとに採用に関する課題はそれぞれ異なり、あえて1人1社制を選んでいる自治体もあるため三者三様なのが現状です」

学校斡旋の動きは変わらずとも、近年ではネットやSNSの普及で高校生が気軽に企業の情報収集が可能となり、高校生が自分たちで情報収集をする自己開拓の動きが活発になってきたという。

「今の高校生はデジタルネイティブですので、自分で調べて得た情報を参考にする高校生が増えました。昔は進路指導室に行って先生に聞かないと何もわからない状態でしたから、情報収集のしやすさは格段に変わりましたね。先生から工場系の求人紹介をされた高校生が、自分で企業についてや仕事について調べていくうちに『営業職に挑戦してみたい』と感じ、先生と相談して実際に営業職に就職したケースもあります。しかし、自分で応募したい企業を見つけ、求人媒体から応募したりアプローチしたりする方法はまだ一般的ではありません」

ジンジブが企業と高校生をつなぐ。「ジョブドラフト」で高卒採用を支援

こうした現状を背景として、ジンジブは高卒就活採用支援サービス「ジョブドラフト」を提供している。2023年度は2,200社以上の高卒採用を支援してきたノウハウをもとに、企業と高校生の両者に向けて高卒採用を多面的にサポートしている。

「就職情報サイト・アプリ『ジョブドラフトNavi』は、ハローワークなどの文字だけの求人票とは違った観点で情報を得てもらえるように工夫したサ―ビスを提供しています。高校生にしっかりと企業の魅力が伝わるように、写真や動画を駆使したサイトやデザインにしています」

さらに同社は、高校生が企業と対面で直接話を聞ける合同企業説明会「ジョブドフトFes」や、企業の仕事体験ができる体験型イベント「おしごとフェア」を各地で開催している。

「大学生の新卒採用と違い、企業と高校生をつなぐイベントはあまり多くありません。そこで『ジョブドラフトFes』や『おしごとフェア』では、高校生が企業の人と直接会って相互理解を深め、実際の仕事について学べる機会を提供しています。高校生に少しでも就活に対して楽しい気持ちを持ってもらえるようなワクワクする体験を届けたいと思い、随時改善を加えながら2024年度は全国15都府県で開催します。

当社が2023年卒の高卒社会人に向けて実施したアンケートによると、高校生が採用内定までに参加した職場見学は平均1、2社という結果でした。しかし当社のイベントでは、高校生1人あたり平均4社前後の企業ブースを訪れています。1日で多くの企業から話を聞ける当社のイベントは、就活の視野を広げるよい機会になっているのではないでしょうか。

実際に、高校生がイベントでそれまで知らなかった企業と出会い、担当者と直接話せた体験がその後の職場見学や応募に繋がったという例もあります。また高校の先生方からは、『企業から生徒に直接説明してもらうと、先生経由で説明するよりも企業理解を深められてより有意義だ』といった声をいただくことがあり、その際にはやはりイベントを開催してよかったと思いますね」

イベントに参加した高校生や企業からは「直接話せたことがプラスになった」などのポジティブな感想が寄せられており、中には開催日すべてに申し込む企業もいるそうだ。

「やはり紙やネットでは絶対に味わえない、リアルな体験に勝るものはないと感じていただけてるのではないでしょうか。イベントには生徒と一緒に先生も来場されるので、先生との接点ができるのも企業にとってのメリットです。高校就活では毎年同じ先生が進路指導担当をされているケースが多いため、仮に今年採用できなかったとしても、先生との関係を築いておくことで来年の採用に繋がる可能性があるためです。その分企業側の気合も入っていると感じます。

最近開催されたイベントでは、ブースの装飾に力を入れる企業や、ブース内を企業説明や質疑応答、仕事体験コーナーなど各カテゴリで区切り、アプローチを工夫している企業もでてきました。こういった取り組みは高校生から見てもとても楽しいですよね。『こんな仕事あったんだ』『全然興味持ってなかったけど、とにかく人が良さそうだから気になるな』など、先生からもらう情報や求人票からは伝わらない色々な観点から企業を見てもらいたいです」

早期離職防止に向け、企業と高校生双方の支援を展開

採用は入社して終わりではなく、その後の定着・活躍までセットで考える必要がある。高卒採用における1年目の早期離職率は大卒者よりも高く、大きな課題とされている。

出典元:株式会社ジンジブ

「企業のゴールは人材の採用ではなく、定着して自社で活躍してもらうことです。ミスマッチを解消し早期離職をなくすためには、入社前の段階でいかに企業理解、職業理解を浸透させるかが大事だと考えています。そのため最近では、企業説明会や就職体験イベントに出展したり、内定後のフォローアップを実施したりしてギャップを埋める取り組みを行う企業が増えています。当社の実施しているイベントでも、ただブース内で座って話を聞いてもらうだけでなく、職業体験に近い活動をして実際の仕事や職場のイメージを持ってもらえるような工夫をしています」

ジンジブでは、他にもミスマッチ解消に向けて高校生のキャリア教育コンテンツ「ジョブドラフトCareer」や、高校新卒専門の定着支援サービス「ROOKIE’S CLUB(ルーキーズクラブ)」を提供し、企業と高校生双方への支援に取り組んでいる。

「『ジョブドラフトCareer』では、当社のキャリア教育開発部が高校に出向いてキャリア教育の授業を実施しています。就職についてだけでなく、社会人になることについても考えていただくきっかけ作りとして、第三者である当社だからこそできる支援に取り組んでいます。

『ROOKIE’S CLUB(ルーキーズクラブ)』は、高卒で入社した新入社員の早期離職を防ぐため入社後1年間のフォローアップを行う、定着・育成研修を展開しています。新入社員に特化した研修体制を作るのが難しい企業に対し、複数社による合同研修という形でサポートしています」

高卒採用の可能性をもっと広げたい

星野氏はジンジブのこれからの展望について、「幅広いサービスで高卒採用を支援していきたい」と語る。

「既存サービスの拡充は大前提としてありますが、今後は新規事業の『ジョブドラフトNext』により注力していきたいと考えています。『ジョブドラフトNext』は、高卒の第二新卒者や既卒者を対象に、キャリアチェンジ・キャリアアップを支援するための転職支援サービスです。現状、高卒者向けの転職サービスがほとんど存在せず、ミスマッチなどで早期離職した方が再就職する際に正社員としてキャリアを積むのが難しいという課題があります。今後は新卒採用支援に加え、一度離職した方や進路が決まらず卒業された方の選択肢も広げたいと考えています。

また高卒採用の可能性を広げるためには、やはり企業の協力が不可欠です。近年、人手不足の深刻化を受けて新たに高卒採用を行う企業が徐々に増加しています。高卒採用を初めて行う場合、特徴的な高卒ルールの理解が必要な上に、学校と生徒にどうアプローチすればよいのかイメージしづらいという難しさがあります。そこで当社の持つ知見や成功事例を提供し、人材不足に悩む企業と高卒人材をうまくマッチングさせることで、社会課題の解決と高校就活の選択肢の拡充を目指したいですね。

高卒採用が加速すれば、人材業界全体の活性化にもつながると考えています。従来の慣習にとらわれることなく、高卒採用の今後の可能性を広げていきたいです」