株式会社ワンキャリア
執行役員
小川 勇輔 氏
おがわ・ゆうすけ/2015年に新卒で株式会社リクルートライフスタイル(現在株式会社リクルートに統合)に入社。広告・店舗向け決済サービスなどの営業経験を経て2017年2月に株式会社ワンキャリアへ参画。2021年、執行役員に就任。
今年も新卒採用の選考が解禁され、本格的な採用活動が始まった。コロナ禍が鳴りを潜め、求人倍率も回復してきた25卒採用はいったいどんな市場になっているのか。データと取材の両面から解剖していく。
今回は株式会社ワンキャリアの小川氏にここ数年で変化した新卒採用のあり方と、それに伴って進化しているワンキャリアの提供価値について話を伺った。
用途に応じて変化するワンキャリアのサービス
コロナ禍の落ち着きとともに、就活イベントは対面での開催が復活してきている。オンラインを中心に学生生活を過ごしてきた25卒学生は、オンラインと対面をどう使い分けているのか伺った。
「オンライン説明会は就活の前半、対面の説明会は就活の後半、といった使い分けが好まれているように思います。オンライン説明会は学生が『どこの企業を受けようかな』と考える初期フェーズに、企業の情報収集を浅く広く行うために使われています。そして対面の説明会は、学生が『どこの企業に入ろうかな』と考える終期フェーズに、企業の情報収集を狭く深く行うために使われているようです。他にも、インターンシップや最終面接、同期になるかもしれない学生同士の交流の場は対面を希望するケースが多いですね」
コロナ禍中から人気があったオンライン説明会だが、以前に比べて学生の参加姿勢に変化が起きているという。
「採用担当の方から、顔出し参加のオンライン説明会は学生参加率が下がってしまうというお話を聞きます。学生側の意向として、採用担当が一方的に説明をするだけなら、(参加はしたいけれど)顔出しで参加することには抵抗がある、という方もいるようです。またオンライン座談会内に質問コーナーがある場合、『質問をしないと自分の評価が下がるのではないか?』とプレッシャーに感じてしまう学生も多く、参加率が下がる要因の1つになっていると考えられます。
このような傾向に対して企業側も、学生がオンライン説明会にもっと気軽に参加できるようにするための取り組みを実施しています。例えばある企業では、社内文化について聞きたい人、事業について聞きたい人など質問トピックごとに部屋を分け、学生は部屋を自由に選んで参加できる形式にしているそうです」
ワンキャリアでも2020年からオンライン説明会を実施している。同説明会では学生がもっと気軽に参加できるコンテンツにするため、アップデートを重ねているという。
「YouTubeを活用した『ONE CAREER LIVE』のサービス開始が2020年のコロナ禍初年度で、当時は企業や学生へサービスを通じてどのような価値提供ができるかを模索する期間でした。まず1社独占インタビュー形式の番組が生まれ、それから3社合同説明会やミニ合同説明会などの多様な番組フォーマットが2〜3年で出来上がっていきました。
すると次第に、このフォーマットではなかなか伝えきれないような各業界の個別ニーズも生まれてきます。例えば、 自動車業界全体を盛り上げるべく、業界団体である自動車工業会様主催で複数社合同のオンラインイベントを当社にて開催しました。ほかにも2021年には、DeNA様とコラボし『ONE CAREER FOCUS LIVE』というアルムナイ(卒業生)にフォーカスしたライブ配信イベントを開催しています。当社ではこのように、各業界の個別ニーズに合わせたサービス提供や開発を続けているんです」
ワンキャリアはクライアントの目的に合わせたオンラインコンテンツの最適化を進めると同時に、リアルイベントの強化も進めてきた。就活の早期化が顕著になり、インターンで得た学生情報を採用に利用できるようになった現在、特にインターンでの魅力付けは重要だ。
「企業側の動向を見ると、インターンシップ経由の採用に注力する傾向は強まっていると感じます。ONE CAREER上でも、『早期選考』や『ここで得た情報を選考に活用します』といった情報を明記する企業が増えている印象です。
学生側も選考直結かどうかはある程度意識しているようです。いまや複数社のインターンに参加する学生も珍しくないわけですが、その優先順位を決める要素の一つといったイメージですね。学生がどこの企業インターンに参加するか迷った際に、ONE CAREERで過去に参加した人のクチコミ内容を見て、『選考直結だった』と明記されていたので参加するというパターンも多々あるようです」
就活の最初から最後までを支えるワンキャリア
学生がインターンや選考情報を探すとき、もはや無くてはならないデータとも言えるONE CAREERのクチコミ。2023年卒の就活生における「ONE CAREER」利用率は60%を突破し、学生から多くの支持を得ている(2023年12月末時点)。一方でサービスがリリースされた当初は、なかなか企業側からの賛同が得られなかった時期もあったという。
「以前はサービス自体に対して厳しいご意見をいただいたり、ありのままを書かれていることに困惑されたりもしていました。しかしそれも年月を経て変わり、今ではほとんどマイナスな意見はなくなりました。これには近年、グルメサイトや通販サイトでクチコミが浸透し、人々の重要な情報源になっていることが大きく影響しています。社会の流れの中で『クチコミサイト』という存在の捉え方が変化し、ONE CAREERの存在意義についても理解していただけたのだと考えています」
最近では学生が書いたクチコミを次の採用活動に活用する企業も増えているそうだ。
「最近は学生が書いたクチコミの内容を受け止めて、今後どのように採用活動を改善していこうかとポジティブに考える企業が増えてきたと感じています。企業向け採用クラウド「ONE CAREER CLOUD」では学生が投稿した他社のクチコミを閲覧することができますが、利用企業様には、競合企業のクチコミを閲覧して比較を行い、自社がどのような立ち位置なのか確認する手段としてお役立ていただいています。
例えば内定辞退に悩むA社が、どうも学生が競合のB社に流れているようだと目星をつけます。そこで自社とB社のクチコミ内容を確認すると、A社は事業の魅力は伝わっているが、B社は事業以外に社内の魅力もしっかり伝わっている事実が分かりました。このようにクチコミを活用し、次回の採用活動で学生に対しどのように社内の魅力を伝えるかの方針を立てることもあるようです。
また採用担当者は、選考中の学生や内定者から面接に対するフィードバックをもらう機会があまりありません。学生側からすると、自身の評価に反映されてしまうのではないかとの懸念から、本音のフィードバックがしにくい状況だからです。そこでクチコミサイトを利用し、より良い面接にアップデートしている採用担当者も増えています」
学生側にも企業側にもリアルな情報を届け、ONE CAREERはもはや就活クチコミの代名詞ともなっている。しかし、同社の強みはクチコミだけではないと小川氏は語る。
「ONE CAREERはクチコミとエントリー、そして選考対策という3つの側面を持っています。ONE CAREERで企業のクチコミを見てどこにエントリーするかを決め、エントリー企業のESや選考体験談、過去の面接の質問などを確認。そして選考の準備まで、全てONE CAREER上で行う。学生に就職活動の全期間を通して長く使ってもらえている点が、他にない強みだと自負しています。ありがたいことに先輩が後輩へ『ONE CAREERに登録しておくといいよ』とおすすめしてくれることも多く、こうしたクチコミが広がったことで今も多くの学生に利用いただき、サービスとして成長を続けられています」
ワンキャリアはこれからの時代にどんなサービス提供をしていくのか
ワンキャリアは変化の激しい時代の中でも、様々なサービスを提供し新たな取り組みを行っている。これからも価値のあるサービスを提供し続けていきたいと小川氏は話す。
「現在、大きく3つの指針を掲げています。1つ目は学生の個別属性やエリア・職種などの希望に合わせたきめ細かい情報提供です。例えば2023年にエンジニア志望の学生に向けて『ONE CAREER for Engineer』、2024年3月には『ONE CAREER for外資』をリリースしました。また2024年2月には、双方向性のある情報提供を行い企業と学生の最適なマッチングを実現するために、『ワンキャリア新卒紹介』をリリースしています。
2つ目はAI活用です。当社の強みは圧倒的なデータ量ですので、そのデータをAI活用し学生の属性に合う企業をマッチングしていきます。AIを通して企業や学生の顧客体験を向上させていきたいと考えています。
3つ目はオフラインイベントです。コロナ禍で大きく成長した動画事業も継続しつつオフラインに立ち返り、企業や学生にオフラインの価値提供をしていきたいですね。例えばオフラインの新たな価値提供として、2024年3月に『私服推奨』の合同説明会を行いました。いまだ就活といえばスーツという、画一的な状態が続いています。しかし弊社は、学生が着慣れた私服で参加し肩の力を抜いた状態で企業とカジュアルに話すことが、より良い相互理解に繋がるのではと考え、今回新たな施策として実施しました」
HRog編集部が実際に参加したレポートはコチラ
「コロナ禍や新卒インターンルールの改正などもあり、採用市場では様々な変化が目まぐるしく起きています。そのため、前年のやり方を踏襲していくだけではなかなかうまくいかない部分も多いのではないでしょうか。学生や競合企業の最新情報や動向、マーケットの情報収集にアンテナを張り、今年は何が最適なのかを考えていくことが採用成功に繋がるでしょう。ワンキャリアのサービスはそんな企業に対しても多くの情報提供のお手伝いができますので、ぜひご活用ください」