【HRog10周年】「ユーザーファースト」を貫く ディップがつくる“これからの仕事探し”

ディップ株式会社
執行役員 メディアサービスオフィサー メディア事業本部長
井上 剛恒 氏
いのうえ・たかつね/2006年新卒でディップ入社。派遣会社・人材サービス会社を主な顧客とするHR領域で採用コンサルタントとして従事、管理職を経て2017年に最年少で執行役員に就任。現在は全国1,600名を超える従業員が採用支援を行う組織のマネジメントを担うとともに「バイトル」等の求人情報サービス事業の責任者を務める。

HRog10周年特集

2023年11月6日、「HRog」は10周年を迎えます。「人材業界の一歩先を照らすメディア」として、anのサービス終了やIndeedの登場、コロナショックなど10年間人材業界の動向を追い続けてきたHRog。これからの10年はいったいどんな時代になるのでしょうか?今回はメディア・紹介・派遣・HRTechなど各領域の注目企業や人材業界の有識者にインタビュー。この10年間が業界や自社にとってどんな10年だったか、そしてこれからの10年間で何を成し遂げたいか伺います。

今回はディップ株式会社の井上氏に、同社の直近10年間と今後注力していくことについてお話を伺いました。

常にユーザーのことを考え、時代の最先端を走ってきた

ディップは、家庭におけるインターネットの普及率がまだ低かった2000年に派遣向け求人サイト「はたらこねっと」を、その後2002年に「バイトル」を提供開始し、今から10年前の2013年には東証一部に上場しました。創業当初から常に『ユーザーファースト』を掲げ、時代に先駆けてインターネットのサービスに取り組んでいたことが、この10年間の成長にも繋がっていると井上氏は語ります。

「当社では2010年から、動画で職場の様子を見られるサービスを展開していました。当時はまだ携帯電話で動画を見る文化がありませんでしたが、『これはユーザーにとって素晴らしいサービスだ。ユーザーが喜ぶことで、企業側も自社に合った求職者と出会える機会が増える』とメンバー全員が信じて、強い情熱でお客様に伝え続けました。ただ機能を説明するだけでなく、ユーザーやお客様に対して丁寧に向き合う姿勢があったからお客様の心を動かせたのだと思います。

2013年には『レイズ・ザ・サラリーキャンペーン』を展開しました。アベノミクスにより正社員の給与アップが進められる中、有期雇用労働者はなかなかその恩恵を受けられていない状況がありました。そこでディップからお客様に時給の引き上げを嘆願し、有期雇用者の待遇向上に取り組んだのです。その結果、5万8,000件の求人で時給アップを実現し、平均時給は3.4%上がりました。

2021年12月からも『ディップ インセンティブ プロジェクト』として、求職者に代わって当社からお客様に給与アップなどの施策を提案しています。『待遇の向上は自社で長く働いてくれる良い人材の採用にもつながる』として、企業の7割がこの取り組みを好評価してくださっていますね。実際にバイトルなど当社の運営する求人サービスで1年以内に時給アップした求人件数は55万件以上になります」 

同社では時給アップの交渉の他にも、営業担当自身が企業へ訪問して動画の撮影・編集をしたり、就業後のミスマッチをなくす「しごと体験・職場見学」の機能を一社一社に説明して回ったりしているといいます。

「求人企業側の手離れを良くして、求人にかかる手間を省くのが業界全体の潮流となっている中、当社が企業一社あたりにかける労力は他社と比較してもかなり多いと思います。それでもユーザーの人生をより良いものにするために必要な努力だと信じて取り組み続けた結果、当社の営業一人当たりの生産性は高い成長を遂げています。ユーザーが喜ぶことで、求人企業にも喜んでいただけるんです。『ユーザーファースト』を追求するスタイルは、当社の強みとしてこれからも貫いていきます」

雇用創出の可能性を広げる“これからの仕事探し”を

井上氏に次なる「ユーザーファースト」の取り組みを尋ねてみました。

「2030年の日本では約650万人もの労働力人口が不足すると言われておりますが、そのとき一番危機的な状況に陥るのは中小企業です。当社では2019年より、中小企業の定型業務を自動化するサービス『コボットシリーズ』を展開しております。

飲食店の現場などに導入していただき採用に関わる業務の負担を減らすことで、生産性の向上や工数の減少を実現。メインの仕事に注力できるようになった、といったお声もいただいています。これからもDXを推進して企業の生産性を高め、人にしかできない仕事に集中する時間を増やし、一人ひとりが価値ある仕事に取り組める環境づくりをしていきます。

そして労働力不足を解決するには、DXの他にも、求職者や企業が持っている『働くことに対するバイアス』を取り払うことが大切です。たとえば現在、人手不足に悩む職種と人気が集中しすぎる職種の二極化が進んでいます。また働く人は、年齢や性別、国籍などを理由に採用を見送られてしまうことがあり、当社はこうしたバイアスを取り除きたいと考えています。

当社が行った調査によると、『年齢にこだわらない求人』を集めたサービスに対して約7割の方が好感を抱いており、特に若年層からの関心が高いことが分かりました。多様な方が活躍できる職場をつくることは、人手不足の解消にも大きく貢献するでしょう」

引用元:ディップ株式会社

同社では2023年2月から、「バイトル」などの求人サービス上で、企業側が応募時の年齢入力を任意に設定できるようにしました。実際に年齢を任意とする求人件数は増加を続けており、9月時点で40万件、開始した2023年2月と比較して約2.8倍になっています。

さらに井上氏は、今後は「これまでの形にとらわれず、雇用創出の可能性を大きく広げる“これからの仕事探し”を実現したい」と述べました。

「当社では4月から『AIエージェント事業』の開発を開始しました。大量の求人情報から検索するこれまでの仕事探しから、対話しながら最適な仕事に出会える方法へと進化し、採用率を大幅に高めることを目指しています。社内でもAIを活用した生産性向上のため、全社横断のプロジェクトチーム発足やプロンプトデータベースの公開などを行いました。私たち自身もより生産性や商談の質を高め、ユーザーと企業に役立つサービスを展開していきたいです。今後もユーザーファーストを大切に、社会全体の労働力不足解消へ貢献していきます」


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