片田舎・離島…だからこそ人が集まる!採用の弱みを強みに変える「おてつたび」の引力

株式会社おてつたび
PR広報
園田 稚彩 氏
そのだ・ちさ/1995年、千葉県松戸市生まれ。昭和女子大学を卒業後、テレビ番組制作会社に入社し、バラエティ番組の制作に携わる。2021年に株式会社おてつたびに転職し、広報PRを担当。

旅人に活路を見いだせ 地方活性×ワーホリ特集

地方の人材不足を解決する方法として、旅をしながら仕事をする「ワーキングホリデー」の活用に注目が集まっている。田舎での暮らしに興味がある人や経験・スキルを活かせる場所を探している人は少なくないが、いきなりの転職・移住は勇気がいるものだ。ワーキングホリデーなら観光しながら仕事や土地を知れるだけでなく、旅人ならではの形で貢献できるという。

今回はそんな地方活性×国内ワーホリの取り組みについて特集する。

旅行サイトを見るような感覚で、働きに行く先を探す……そんな一風変わった求人サイトがあるのをご存じだろうか。株式会社おてつたびは、「お手伝い」と「旅」をキーワードに地方の人手不足を解消する事業を行っている。今回は同社の広報PR担当・園田氏に、「おてつたび」の持つ引力について伺った。

働くことを旅のきっかけとして、地域の魅力を知ってほしい

「おてつたび」は人手不足で困っている地域の事業者と、旅をしながら働きたい人を繋ぐ、人材マッチングサイトだ。直接雇用、かつ最長2か月未満の案件のみ掲載可能で、今話題のスポットワークサービスに近い形となっている。

サービス名は「お手伝い」と「旅」を掛け合わせて「おてつたび」。このユニークなサービスが生まれたきっかけは、創業者である永岡氏が上京した時に感じた違和感にあったという。

「代表の永岡は三重県の尾鷲市出身なんですが、大学進学で上京した際に、尾鷲出身ですと言っても周りの人にあまり伝わらなかったそうです。景色が綺麗だし漁業や林業も盛んで、自分にとってはとても魅力的な地域なのに、東京の人に知られてないことに永岡は違和感を覚えました。

その後ベンチャー企業に就職し、日本各地に出張に行った際に、尾鷲と同じく知名度は高くないけれど魅力的な地域が日本にはたくさんあるんだと気づいたんですね。そのような地域に足を運んでもらい、好きになってもらうにはどうしたらいいんだろうと考えたことが、おてつたびの出発点になっています。

永岡はそれから半年かけて1人で全国を巡り、行く先々の方から『永岡さんちょっと手伝ってよ』とお声がけをいただいて、旅館や農家のお手伝いをしていきました。そのとき、お手伝い(お仕事)を一緒にすることで、地域の人と繋がれるし地域の魅力が理解できるんだと気がついて、お手伝いに可能性を見出したんです。

そこで永岡は、首都圏に住む旅人側にも『なぜ観光名所以外に旅行に行こうと思わないのか』といったアンケートをとりました。そこで浮かび上がったハードルは主に2つありました。

1つが金銭的なハードル。観光名所でない地域は交通の便がよくないことも多く、電車が通っていない、LCCが飛んでいないなど金銭的な負担が高くなりがちな点がネックになっていました。

もう1つは、心理的ハードルです。観光地として何があるのか分からないところに行こうとは思わない、行きたくないわけではないけど行くきっかけ・目的がないということですね。

地域は人手不足で困っている。そして旅人側は、知らない地域に行ってみたいけれど、お金がかかるし、きっかけがない。この2つの課題を組み合わせてできたのがおてつたびなんです。『人手不足の手助け』を新しい旅の目的にすることで、今まで知らなかった地域に足を運ぶきっかけを作り、その場所でお金が稼げるので旅費をリーズナブルにできるわけですね。

働くことをコンテンツとして、首都圏など他のエリアから人が来る。それが地域を知ってもらう機会にもなるし、一定期間働きながら暮らすことで愛着が生まれたり、地域経済の活性化にも繋がったりしていくという考え方でサービスを運営しています。移住をゴールとして置いてはいないんですが、関係人口の入口の部分、地域の接点をたくさん生み出すきっかけを作っていく土台の部分を担っています」

不利な条件を逆手に取る、おてつたび独自の訴求力

旅行者に「その地で働く」という動機を与える発想は非常に斬新だが、実際採用する上でどんな効果があるのだろうか。

「おてつたびはどんな地域の求人でも、全国から応募が集まるというのが強みです。通常、離島や行きづらい場所はどうしても条件面で不利になってしまいますし、島などではそもそも島の人口が少なく求人を出しても応募が来ないことも多々あります。しかしおてつたびでは、島などのロケーションは逆にすごく魅力的で、旅行してみたい場所として映るんですよね。そのため離島や奥地であっても十分に応募が集まります」

その強みを生かすべく、サイトの仕組みにも訪ねてみたいと思わせる工夫が散りばめられている。

「おてつたびは相互レビュー式で、参加者にも事業者にも評価がつくようになっています。事業者のレビューはサイト上で見られるようになっているんですが、過去の参加者がこんな仕事をしましたとか、ここに行きましたとか、旅先の魅力を詳細に書いてくれるんです。それを見た人が『こんな体験ができるなら行ってみたい』と思って参加し、またレビューを書き……と魅力のストックができるようになっています。

人手不足を解消したいと考えたとき、やっぱり地方ほど条件での勝負が難しくなってくると思うんですよね。時給や福利厚生ももちろん大事なんですが、地方の企業こそそれだけではない魅力で戦っていく必要があると思っているので、その魅力を最大限伝えられるような求人サイトを目指しています

実際の求人詳細ページ

確かにおてつたびを開くと、旅行サイトさながらに綺麗な風景の写真や笑顔で働く人々の写真が目に飛び込んでくる。各求人の詳細を見てみても、募集企業の支配人が顔出ししていたり、募集の背景が丁寧に書かれていたりと、どんな人たちが働いている場所なのかがイメージしやすい。

「おてつたびに興味を持ってくださる方は、働いてお金を稼ぎたいという方だけではなく、地域の魅力を知りたい、人と出会いたいと思っている人も多いです。そういう方のニーズに応えられるよう、『利尻島のここがおすすめ!』みたいな欄を設けたり、『温泉地特集』などを組んだりと工夫をしています。

また、募集の背景もすごく大事にしていまして。リリース当初にはなかった項目なんですが、人手不足で困っていますというメッセージが、意外と『役に立ちたい』とか『自分も何か力になれるかも』みたいな気持ちを喚起して、ポジティブに働くこともあるんです。そのため当社の社員がヒアリングを行いながら、人となりがわかるような文章を一緒に作っています」

求人票作成においては、不慣れな事業者でも魅力を伝えられるよう、おてつたびの地域サポートメンバーが丁寧に伴走をしている。その甲斐もあり、採用成果もしっかり出ているという。

「お手伝いっていうワードを使っているので、参加者がちゃんと働いてくれるのか疑問に思われる方も多いんですが、受け入れ後のアンケートでは84%の事業者さんが人手不足を解消できたと回答してくださっています。また、実際に利用した事業者の97.8%が次も利用したいと言ってくださっているなど、非常に嬉しい声をいただいています」

おてつたび参加者の交通費は自己負担。ただお金を稼ぎたいだけなら生活圏内で探す方が簡単だ。そのため、自分のスキルを活かしたり経験を深めたりすることに関心がある、働くことに対してポジティブな人が集まりやすいという点も、おてつたびの利用満足度に寄与していそうだ。

単なる労使関係ではなく、人と人とのぬくもりを大事にしたい

出典元:おてつたび

「お手伝い」という言葉を使っているが、実際に行うのはいわゆるしっかりとした「仕事」だ。ではなぜ、そのワードチョイスなのだろうか?

「家族の温もり感というか、知り合いのお手伝いみたいな心の距離感で地域の人と接してほしいという思いがあって、この言葉を選んでいます。募集した人と一緒に働く人は、あくまでも対等な人と人の関係であってほしい。そのため事業者さん向けのマニュアルでも、参加者のことは名前で呼ぶようにお願いしています。

おてつたびに参加した方の声を聞くと、土地や仕事との出会いはもちろん、人との出会いで得るものがあったと言ってくださる方が多くいます。その場所を気に入って移住した人もいますし、何回も同じ場所で働いたり、旅館を気に入ってお客さんとして泊りに行ったりしてる人もいますね。

先日訪問した高野山の旅館では、以前おてつたびで来た方がその旅館のPR動画を作ってくれていると仰っていました。動画を見せていただいたんですが、そのクオリティがまたすごいんですよ。今ではPR動画の編集担当として、しっかり仕事として依頼する関係になっているそうです。さらにはその話をしているそばで働いていた方も、実は元おてつたび参加者で、今は移住して社員になっていて……なんて話になって。私たちを繋いでくれてありがとうございますと、光栄なお言葉を頂きました」

お手伝いを通してその土地や人を好きになって、好きだからこそ何か役に立ちたいと次の行動を起こしていく。ただ一度働くだけの関係ではなく、長期にわたって続く関係性をおてつたびは生み出しているようだ。

旅人が訪れ、働き、つながりが生まれる…その可能性を知ってほしい

そんなおてつたびの今後の目標を訪ねると、園田氏は「もっともっと受け入れ先を増やしていきたい」と語った。

「当社のサービスはまだまだ人材マッチングサービスとしては知られていないので、人手不足で困っている事業者さんに向けて、旅人に働いてもらうという人材確保の方法があることを発信していきたいです。地域外の方が働きに来ることによって、自分たちの仕事を知ってもらえたり、地域のファンになってもらえたりする可能性をより理解してもらえたら嬉しいなと思っています。全国には約1,700の市区町村がありますので、そのすべてに1か所ずつお手伝い先があるような世界が作っていけたらいいですね。

旅人側についてもこれからさらに多くの方にこのサービスを知ってもらって、日本のあまり知られてない地域に行ったり、知っている地域に深入りしてみたりすることを、旅の、そして働き方の当たり前の選択肢にできたら嬉しいです。社会人としてリモートで働きつつ、午前中だけ収穫作業を手伝うとか、そんな形でスポット的に支え合うことも可能なんじゃないかなと考えています」

旅しながら働くことを、より柔軟かつ一般的にしていきたいと意気込む。一方で、旅人を人材確保に活用するためには、事業者側の意識の変化も必要不可欠だ。

事業者の皆さんからは、『短期間だけ働いてすぐに帰ってしまうのでは?』というお声をよくいただきます。『長期で働いてほしいから、社員にならないなら難しい』というご意見もあり、そのお気持ちはよく分かります。ただ、待っているだけで理想の人材が自然に集まるかというと、現実的にはなかなか難しいこともあるのではないでしょうか。

『おてつたび』を通じて実際に働いてもらい、関係性を築いた上で、『もう少し一緒に働いてみない?』と声をかけることも可能です。もちろん参加者の同意は必要ですが、転職活動中でキャリアに悩んでいる方も多く、そういった方々との出会いが双方にとって良いご縁となり、結果的に長期就業につながるケースもあります。2025年3月現在はキャンペーン中のため、おてつたび側への報告さえしていただければ、そのまま長期採用していただいても紹介料は一切いただいておりません。実際に長期採用につなげている事業者さんもいらっしゃいます。

『長期採用でなければ意味がない』と切り捨てるのではなく、人とのつながりを広げる一つの方法として、ぜひ『おてつたび』を活用していただければと思います。