【大激震の21採用#06】「インターンシップガイド」長谷川氏に聞く最新インターンシップ事情

株式会社futurelabo
長谷川 公哉 氏

はせがわ・きみや/大学卒業後、広告ベンチャー企業の立ち上げに参画。その後、現株式会社リクルートにて様々な法人営業を経験し、担当エリアからの売上を直近10年で最高まで増加させた。現在、株式会社futurelaboにてマネージャーとして、大手法人営業・法人向けマーケティング・カスタマーサクセスなどを統括。

大激震・新卒採用マーケット 2021卒動向を徹底分析

新卒一括採用の見直しやリクナビ内定辞退率販売問題など、20卒では新卒採用のあり方が改めて問われました。また21卒はコロナウイルスの影響もあり、各社が感染拡大防止のためにイベント中止などの対応を迫られています。本特集ではそんな変化の真っ只中にある21卒の採用市場を徹底的に分析します。

今回は全国のインターンシップ求人情報を掲載する「インターンシップガイド」運営会社の株式会社futurelabo・長谷川氏にインタビューをおこなった。学生と早期から接触する手段としてすでに一般的なものになりつつあるインターンシップについて、その現状と課題をうかがった。

※インタビューはリモート取材で行った。写真は株式会社futurelabo提供。

満足度が低いインターンシップは学生に筒抜け

インターンシップは大きく分けて1カ月以上の就業を前提として実務に取り組む「長期インターンシップ」と、就活生を対象にした「1day・短期インターンシップ」に分かれる。

長谷川氏によると、上記の二つのインターンシップは全く別の性質・目的を持っているため、混同しないように注意する必要があるという。

「長期のインターンシップの参加者は大学1、2年生が中心で、参加する理由も『将来のキャリアを考えるにあたり、アルバイトでは体験できないホワイトカラーの業務を学生のうちに体験してみたい』というものが多いです」

「一方で短期インターンシップは就職活動を控えた大学3年生が、人事やリクルーターと接触し選考を有利に進めるための就職活動の一環として参加しています。このように一言で『インターンシップ』といっても、その中身や目的はインターンシップ実施期間の長さによって異なってくるので、混同しないように注意する必要があります」

それを踏まえて、ここ数年でインターンシップの需要はどのように変化しているのだろうか。

「『インターンシップガイド』に登録する学生の年次を見てみると、就職活動を控えた大学3年生の登録者の数ももちろん増えてきていますが、ここ数年は大学1、2年生のうちから登録している学生が増えてきています。中には高校3年生のうちから登録している学生もおり、早い時期から自分のキャリアに対する関心度が相当上がってきていることがうかがえます」

インターンシップガイド登録学生の属性(インターンシップガイドHPより)

一方で企業側の動きはどうなっているだろうか。

「1day・短期インターンシップは、ここ2~3年で取り組む企業が増えてきています。株式会社ディスコの調査によるとインターンシップを『実施した』と回答した企業は77.1%。新卒採用をおこなうほとんどの企業がインターンシップに取り組み始めていると言えるくらい一般的なものとなってきています。」

「また1day・短期インターンシップのトレンドでいうと、新卒採用に投資できるリソースのあるメガベンチャーを中心に、インターンシップを数種類企画・運営する企業が出てきています。1day・2day・3day・7dayなど日程のバリエーションと、就業体験・ワークショップ・先輩との座談会・ランチ懇親会・ハッカソン・新規事業立案など内容のバリエーションを持たせて、自社への興味度合いに合わせてインターンシップを選べるようにしている企業が目立ちました」

「具体的にはテーマを持たせた新規事業の開発や社長との少人数でのご飯会、営業部長の一日かばん持ちなどのインターンシップを開催している企業がありました。接触できる学生の属性を多様化させるために、ひとつのプログラムの複数回おこなうのではなく、複数のインターンシップを企画し様々な経路を作っていますね」

しかし採用にそこまでリソースを割くことができない中小企業は、インターンシップの名を冠していてもその実態はただの企業説明会となっている企業が少なくないという。

「今は学生の目も肥えていて、クチコミやインターンシップの企画内容をきちんと確認してから応募するかどうかを決めるので、学生の満足度が低いインターンシップをやっている企業はすぐに分かってしまいます。そのため弊社でも、はじめてインターンシップに取り組む企業様に対しては、まずは他社がどのようにインターンシップを企画するのか調べたうえで、最低限のコンテンツは準備してほしいとお伝えしています」

先日リクナビ・マイナビが「1dayインターンシップ」の取り扱いを停止したことで話題になったように、単なる企業説明会や会社見学会となってしまっているような1dayインターンシップへの風当たりは様々な側面で強くなっている。自社のインターンシップを通して学生に何を提供できるのか、各社あらためて考える必要がありそうだ。

事業に貢献する学生と長期インターンが抱える3つの課題

次に長期インターンシップの動向について話をうかがった。そもそも企業が長期インターンシップに取り組む理由は何なのだろうか。

「企業が長期インターンシップに取り組む理由は大きく分けて2つあります。一つは単なるアルバイトではなく成長意欲の高い学生をインターン生として採用することで、会社の戦力になってもらいたいパターン。これは業務量が多く余剰人員の少ない中小企業に多いです。そしてもう一つは、大企業がCSR(企業の社会的責任)の一環として学生にキャリア教育の場を提供するためというパターンです」

「インターンシップに興味がある学生は早い段階からキャリアについて高い関心を持っており、成長意欲が高いことが多いです。そのためきちんと教育し戦力化すれば、大きく事業に貢献してくれるポテンシャルを秘めています」

しかし長期インターンシップに取り組む企業は徐々に増えているものの、実際は運営がうまくいっていないところが多いようだ。

長期インターンシップの課題3つ

①学生への期待値が高すぎる
『週4勤務・コーディング経験あり』など、高スキル・好条件で働ける人材を求めてしまう

②学生に任せられる業務が少ない
セキュリティやスキル不足が壁となり業務を任せることができない

③教育コストを回収できない
半年~1年かけて育成した学生が卒業をきっかけに辞めてしまう

「育ててもいずれは去っていってしまう」という意味で、長期インターンシップは短期的には採用につなげるのが難しい施策だ。長期インターンシップ採用をおこなう際には、学生に成長できる環境を提供してインターンシップの満足度をあげる、そしてたとえ自社に新卒入社しなかったとしても社会人のメンターとして繋がりを持ち続けるなど、長期的な視点をもって設計することが肝要だ。

「長期インターンシップは、インターン生を教育することが前提になります。なのでインターン生に求めるものを明確にしたうえで、教育できるリソースが社内にあるか検討する必要があります。そして本当に取り組みたいという企業は、学生に求める条件の期待値を下げ、自社の教育体制を徹底してほしいと思います」

加えて新型コロナウイルスが流行する中、リモートワークで働いてもらうことを前提としてマネジメント・教育方法を模索する必要があるため、長期インターンシップで学生がパフォーマンスをあげるハードルはさらに上がりそうだ。

増加する短期インターンシップ、就業体験の向上が肝

上記の状況も踏まえて、「1day・短期インターンシップ」を成功させるためのポイントとは何なのだろうか。

1day・短期インターンシップに関しては「新型コロナウイルスの影響もあり今後どうなるかは不透明」と前置きしたうえで、「基本的には今後も参入する企業が増えることになるだろう」と続ける。

「競合となる各社採用企業が学生の満足度を上げるために様々なコンテンツを企画している状況です。その中でインターンシップで成果をあげるためには、まずは周りのコンテンツを見て、最低限のラインがどこにあるのか確認してほしいと思います。特にエンジニア・介護職など集めるのが難しい職種であったり、物流・飲食など人手の足りない業種であればあるほどコンテンツに積極的に力を入れて、どうやったら学生に選ばれるインターンシップになるのか知恵を絞る必要があるでしょう」

多くの企業にとって、インターンシップは学生と接触できる重要な機会だ。クチコミサイトが一般的なものとなり採用の透明化が進んでいる今、その機会を成果へ繋げるためにも、「現場社員との交流の時間をつくり仕事をイメージしやすくする」「学生一人ひとりに対してフィードバックをおこなう」など、学生と真摯に向き合って採用CXを向上させることに目を向けてみてはいかがだろうか。