経営統合でイチから人事部採用チーム立ち上げ。人事経験がキャリアにもたらすものとは?

タメニー株式会社
人事部 採用チームリーダー
高田 侑矢氏
たかだ・ゆうや/駒澤大学卒業。新卒で旧メイション(現タメニー)に入社。「2次会くん」にて累計400組の新郎新婦向け営業を経験。入社4か月で営業成績全国1位を獲得。同年の新人賞受賞。人事部に異動後は経営統合プロセスにおける採用業務の再設計を推進。新卒・中途横断でグループ全体の採用活動を担う。

日本のビジネス環境が変わり、終身雇用や年功序列などの制度が崩壊しつつある今、自分でキャリアプランを立てることがより重要になっている。しかし人事の中には「自分にどんなスキルが身についているのか分からない」「人事の経験・スキルが他職種でも役立つのか分からない」など、人事としてキャリアを積むことに不安を感じている人も多い。将来的に人事以外の職種を選んだとき、人事経験はどう役立つのか。

今回はタメニー株式会社の人事部採用チームリーダーである高田氏に、イチから人事部採用チームの立ち上げを行った経験とそこから得た視座について伺った。

営業から人事へ、決断のきっかけとは

高田氏は新卒で旧メイション(現タメニー)に入社し、営業として活躍していた。営業から人事部へ異動することになったきっかけは何だったのだろうか。

「学生時代から会社の文化を作っていくような仕事をしたいと考えていました。パートナーエージェントとメイションが統合し、タメニーとして初めての新卒採用を行うタイミングで、やりたいことを実現するまたとない機会だと思い手を上げました。

500人規模の上場企業になった今でも、タメニーは人材育成に『投資』の観点を持っています。私が人事に挑戦できたのも、社員ひとりひとりをしっかり見て成長を考え、投資的観点で若いうちからやりたいことを任せてくれる経営層のおかげでした」

人事未経験の状態で経験した経営統合

メイションは2020年10月に、株式会社パートナーエージェントと経営統合した。それを期にパートナーエージェントの人事部長・採用マネージャー・労務マネージャーが退職。メイションの人事部長も退職し、人事部に人事経験者が1人もいない状況になった。

未経験で人事部に飛び込んだ高田氏の仕事は、イチから人事部の採用チームを立ち上げることだった。採用に関してまったくの素人だったため、元リクルートゼクシィなび社長でタメニー取締役の貝瀬氏と毎週1対1での採用定例を行い、いろはを学んだ。

経営統合直後の採用、ぶつかった壁

社歴の長いメンバーやチームをまとめていた管理職クラスの一斉退職は予想以上に痛手だった。新しく人を採用するも、経営統合直後はイレギュラーな業務が発生していたこともあり、業務量の多さから辞めてしまうことが多かったという。

「通常時であれば離れていくことのなかったメンバーも多いと思います。おそらく、採用の段階で予想される業務の内容や大変さを正しく伝えることができれば避けられた離職もありました」

同時に、経営統合のタイミングは採用要件が変わるタイミングでもあった。経営統合に限らず、会社のフェーズが変化する時期には採用も見直す必要が出てくる。タメニーはこの機会に採用ターゲットを将来の幹部候補に変えた。

「この時に、弊社はある意味で採用弱者であることを正しく認識しました。トヨタ、メルカリ、サイバーエージェント、三菱商事などの名だたる大企業と比較して、タメニーは学生への訴求力が弱い。『待っていては見向きもされないであろう上位1%の優秀層』を採用するには、これまでとは別のアプローチをしなければならないと気付いたんです」

タメニーの「文化をつくる」採用を

そこで高田氏は、新卒採用の手法を変えることに決めた。

「タメニーの1期生は、タメニーの基盤となる文化をつくっていくメンバーになります。それを念頭に採用方針をゼロベースで見直した結果、価値観や方向性がしっかり一致する人を採用することがタメニーの新しい文化をつくるために重要だと考えました。そのため直接会って学生の思いを聞き、私たちもタメニーでできることや社内の雰囲気、社員や世の中に対する思いを伝え、認識のすり合わせを行っていきました」

この考えのもと、「量より質」かつ「コストをかけてでも妥協しない」採用を開始。事業や職種よりも理念・文化・人に共感してくれる人材を採ることにした。ナビサイトでの媒体採用よりもイベントでの対面採用を重視し、スカウト型の採用を積極的に行った。

結果として採用費は下がり、エントリー者の質と有効応募率が上がった。無駄な工数も減ったため、注力したい学生のフォローに手が回るようになったという。

「既存の手法を捨てて新しい会社に合ったアプローチに転換することで、これまで採用することのできなかった層にも弊社を選択に入れてもらえるようになりました。自分が見出した学生さんが入社を決意してくれた瞬間は、本当に嬉しかったです。採用して終わりではなく、そこからがスタート。人事として、入社後に責任を持って育てていかなければという意識も芽生えました」

人事の経験により会社の全体像を掴めた

高田氏は、現在は人事ではなくマーケティングを担当している。役割にこだわりはなく、自分が組織のために一番パフォーマンスを発揮できる場所で還元していきたいと語る彼は、人事部での経験をどう捉えているのか。

「人事・採用担当とはいえ、求職者の前に立って会社説明や面接をするのは全体業務の2割程度に過ぎません。基本的にはパソコンに向かって採用計画を立てたり、進捗を見たり、いろいろな取引先と連絡を取りながら物事を進めていく地道な仕事です。

しかし、それが自分が属している会社の成長にどのように繋がっているかというイメージを描けると、良い仕事になるんじゃないかなと思います。僕の場合は、経営統合という他の方がほとんど経験しないような経験をしたので特殊でしたね。

人事を経験して、会社の根源にある思いや自社の真に強い部分、会社全体の動きや流れなど全体像が把握できました。これを分かっていれば、他のポジションをやる上でも『今求められていること』『今やるべきこと』などに落とし込めるのではないでしょうか。これからは人事の知見と事業の知見、両方の目線をもって問題解決に貢献していきたいです」

タメニーの理念は「よりよい人生をつくる。」である。顧客のよりよい人生を作るためには、まず従業員が幸せな人生を歩めることが重要だ。人事とは従業員が生き生きと働ける文化をつくり、「よりよい」サービスが生まれる土壌をつくれる仕事だと、高田氏は考えている。