【#04】組織力を高め、企業を成長させる階層化研修の設計方法とは?

成長し続けるミドルベンチャーを支える人事部の挑戦

2019年創業から20期目を迎えたインターネット企業、株式会社インタースペース。アフィリエイトサービス「アクセストレード」を主力事業に2006年9月東証マザーズに上場を果たす。その後、順調に右肩上がりに成長を続け、毎年過去最高売上を更新し続けている。今回HRog編集部では、成長し続けるミドルベンチャーの人事部にスポットを当てた。

小林 剛士 氏
株式会社インタースペース 人事部 部長
こばやし・たけし/ブライダル業界を経験後、大手ECモール運営企業で新規出店コンサルに従事。その後、知人の独立を補佐した後に当社にて中途採用担当として入社。制度の見直しや就業規則の整備、労務業務など人事全般に関わる業務を行う。現在は人事部の部長としてグループマネジメント及び階層別研修、組織改善等に携わっている。また社外活動として1000名を超える人事の勉強コミュニティの運営を行う。

各役職・部門の人に必要なスキルは異なる

現在400名以上の社員が在籍するインタースペース。数年前までは入社時に基本的な研修があるものの、それ以外教育の体制は現場ごとに任せていたのだという。

「今後も組織が成長していく中で、『今後組織力を高めていくためには、各役職・部門の人に必要なスキルを学ばせる機会をつくることが不可欠だ』と考え、2015年頃から階層別研修のスタートとなるマネージャー向け研修をスタートしました」と話してくれたのは同社人事部で部長を務めている小林剛士氏だ。

今回は各階層の研修内容をどのように設計し、ブラッシュアップしていったのか小林氏に話を聞いた。

インタースペースの階層別研修

「現在インタースペースでは階層別研修を実施しています。とはいえ、はじめからこのように研修内容が決まっていたわけではありません。階層別研修の導入は試行錯誤の連続でした」

各階層ごとの研修担当者が学ぶキャリア理論を統一

「階層別研修をスピーディーに実現するためには、自分一人だけで行おうとせず、人事部の各メンバーと分担して行うことを重要視しました。

400名を超える社員に対して、自分一人で行えることは時間的な制約もあり、限られた内容になってしまうので、各階層ごとに研修担当を配置し、研修の企画・実施を任せました」

しかし、各階層ごとに研修担当者が異なると、一人が研修を行う場合と比べ、各階層ごとで伝わるメッセージがバラバラになってしまう可能性がある。結果、全体の統一性が保たれなくなるのではないだろうか。

「そのような事態を防ぐために、複数の研修で用いるキャリア・人事理論を統一し、インタースペース全体として社員に伝えるメッセージが統一されるような工夫をしています。

例えば、キャリアに関して『計画された偶発性理論』という考え方を採用しています。マネージャーにはメンバーのキャリアにその理論に基づいた指導をするように、またメンバーに対してもそのようなキャリアの考え方をインストールできるように研修内容を企画しています」

求められる役割はサーベイで浮き彫りにする

では、次に各階層ごとに研修内容の企画・設計はどのようにして行っているのだろうか。

「ここではマネージャー層の研修内容を例にお伝えしたいと思います。マネージャー研修の内容を決定するためには、『マネージャーレベルに求められていて、かつ現在足りていない(今後開発していくべき)スキルは何か?』を明確にする必要がありました。

それを明確にするために、まずはマネージャーにとっての上長、部下、本人にアンケートを取りました」

インタースペースが行った各メンバーのアンケート

上司:マネージャーに求める役割・スキル、実際にその役割・スキルを果たせているかどうか
部下:自身から見てマネージャーが出来ていると思う役割・スキル
マネージャー本人:自己評価で出来ていると思う役割・スキル

「そのアンケートをもとに、当社のマネージャー陣が共通して持つ強みや共通して高めていく必要があるスキルを浮き彫りにさせた結果、『シチュエーショナルリーダーシップ理論』という内容でマネージャー向け研修の企画を決定していきました」

研修の成果はサーベイを軸に測定する

研修は一時的な学びになる一方でその後どれだけ行動が変化し、成果が出たのか検証がしづらい点もある。インタースペースではどのように考えているのだろうか。

「一度目の研修の後に行った事は『研修で学んだことでマネージャーの行動がどのくらい変わったのか』という研修後の効果測定を行う事でした。この結果を基に、次に必要な事が研修を行う事なのか何か別の方法なのかを考えたかったからです。具体的な測定の方法としては、研修実施後にマネージャーにとっての上長、部下、本人にアンケートを行い、『メンバーの状況に合わせて適切にリーダーシップのスタイルを変えることができているか?』などの研修の効果を把握していきます」

「そしてそのサーベイの結果と各マネージャーの状況を見て次年度のカリキュラム選定を行い、研修のPDCAを回していきました」

階層別研修の導入フロー
  1. 各階層ごとに研修担当者を配置する
  2. 各階層に求められる役割と今現状足りていない能力をサーベイ、カリキュラムを決定
  3. 研修の成果をサーベイで測定、カリキュラムのPDCAを回す

成長し続ける組織には人事部の組織力を高めていく仕掛けがあった。今回は研修にスポットをあてたが、次回は新卒採用における短期インターンシップの取り組みについて話を聞いていく。

(HRog編集部)