【#06】新卒採用における有効戦略!「リクルーター制度」の活用方法とは

成長し続けるミドルベンチャーを支える人事部の挑戦

2019年創業から20期目を迎えたインターネット企業、株式会社インタースペース。アフィリエイトサービス「アクセストレード」を主力事業に2006年9月東証マザーズに上場を果たす。その後、順調に右肩上がりに成長を続け、毎年過去最高売上を更新し続けている。今回HRog編集部では、成長し続けるミドルベンチャーの人事部にスポットを当てた。

関 春菜 氏
株式会社インタースペース 人事部 新卒採用担当

せき・はるな/前職では15~30人規模のスポーツイベント会社に新卒入社し、社内唯一の管理部門専任メンバーとして人事、総務、経理、広報を担当。2017年にインタースペースに中途入社し新卒採用を担い採用に付随するリクルーター制度の見直しやインターンの企画などを実施。その他若手の教育研修プロジェクトや女性活躍促進プロジェクトにも参画中。

超売り手市場と言われている採用市場において、どうやって「自社と価値観がマッチする学生」を採用するかは各社の重要な企業課題だ。この課題を解決するためのひとつの施策としてインタースペースが行っている「リクルーター制度」について、関春菜氏に話を聞いた。

新卒採用だからこそできること

「新卒採用の特徴は『活動期間の長さ』だと感じています。今の新卒一括採用では、学生は大体同じタイミングで動きだし、そこから内定式がある10月1日まで様々な企業の情報収集をし、どこに入社をするのか時間をかけて意思決定します。

今後採用の形は変わるかもしれませんが、大学の体制が変わらない限り、時間をかけて就職活動をする動きはあまり変わらないのではないでしょうか」

活動期間が長いことが特徴の新卒採用においては、自社の価値観と学生のキャリア観をすり合わせるコミュニケーションをおこなうことが大切だと関氏は話す。

「学生は『働く』ことに関して、理解度がほぼ0の状態から就職活動を行います。そのため仕事に対する情報の吸収力が高いです。実際に、就職活動中の学生はキャリア観や視座の変化、基礎社会人スキルやマインドの成長など、多くの変化が見受けられます。3ヶ月ぶりにお会いしたら別人のようになっていたという学生も珍しくありません」

「そんな中、私たちは二つのことを大切にし、自社の価値観と学生の価値観すり合わせていくことを実現しようとしています。

一つはキャリア観や価値観を醸成した100%の状態で採用選考に向き合ってもらうこと、もう一つは次の採用選考に進んでもらうために当社の理解を深めることです」

この2つを効果的に行うためにインタースペースが運用しているのが「リクルーター制度」だ。

リクルーター制度とは

インタースペースにおけるリクルーター制度とは、人事部ではない現場社員に採用活動に長期的に参加してもらい、良き相談役となってもらう制度だという。

「リクルーターの選出方法は人事だけではなく、社長を含めた経営層、現場マネージャーからの推薦と本人希望を基に決定しています。選出のポイントとして、学生に自らの考えや経験を語れるかどうかを見ています。

また通常業務とは別に採用にコミットしてもらうため、時間確保を踏まえると現場と本人の深い理解が必須となります。

そのため新卒採用チームがどういうスケジュールでどんな人物をどうやって採用していくのかは事前に伝え、かつ最終結果の共有も各事業部に必ず行っています」

また、インタースペースでは全社で10~20名ほどに厳選したメンバーをリクルーターとして集めている。

「リクルーターに求めるレベルを高く設定しているため、かならず採用が本格スタートする前に『リクルーター合宿』を実施しています。合宿内でノウハウの共有や進捗情報の共有をするには、これくらいの人数がベストだと考えています」

リクルーターが届けられる価値とは?

なぜインタースペースはリクルーター制度に力を入れているのだろうか。

就活生の『働き方』に関する意識調査アンケートによると、就活生の多くが社内の雰囲気や成長できる環境を軸に就職活動をしています。そして、雰囲気を含めた環境を体現しているのは人事を含めた社員すべてだと考えています。

実際に入社してから近い距離で働くのは私達人事ではなく配属先の社員なので、一緒に働く人からの話が一番説得力があるのではないでしょうか」

「また、採用担当と現場社員で決定的に違うことは選考者かどうかです。いくら採用担当がフォローすると伝えても、結局のところ選考者でもあるので学生側からするとすべてを話せるようで話せない相手になってしまう恐れがあります。

そこでリクルーターが学生にしっかりとつくことで、学生の味方になれるのではないかと思っています」

時にはリクルーターから「この学生は今こんなことを考えているから、次の選考は一回期間をあけよう」という提案や「今学生がやりたいと思っていることが揺れているから、もう少し学生と一緒に整理したい」など、選考を進めていくうえで学生に寄り添った意見があがってくることもあるようだ。

「このようなコミュニケーションを人事とリクルーターで取る理由は、インタースペースが『採用する』だけをミッションとしているのではなく、学生や組織のWin-Winの関係を実現できるようにしたいと考えているためです。

これが結果的に学生への魅力付けにも繋がっています。入社前から一緒に選考過程の合否を喜び、ざっくばらんになんでも話せる先輩が社内にいると認識してもらうことが何よりも強い魅力付けなのではないでしょうか」

現場社員に任せることで生まれる効果

とはいえリクルーター活動は現場社員にとって決して小さい負担ではない。リクルーターを担ってくれている社員に対しては、インタースペースは下記のフォローをおこなっている。

①全社表彰式で一番活躍したリクルーターを表彰
②毎月の活動結果を上長に報告
③リクルーターをチーム単位に分け定期的に活動の振り返り

関氏が特に注力しているのが、②の「上長への報告」だ。

「もともとリクルーター活動は各上長陣には見えない形で動いておりました。そのため自部署のメンバーがどんな活躍をしてどれだけ活動にコミットしたのか、また何をインプットしたのかが認識できていない状況でした。

活動報告を月単位でするようになってから、各リクルーターの採用活動と実業務の連動性が見えてくるようになりました」

「たとえば、リクルーター面談では学生が何を思っているのかを見極め、相手の視点に立った伝え方をすることが重要です。

活動をはじめたメンバーを上長が見て、そのような相手目線に立って伝えるというスキルがあがっている、人を巻き込む姿勢がより顕著にみえるようになったなど、嬉しいコメントを上長陣からもいただくようになりました」

一見、採用と普段の業務はまったくの別物に見えるが、実業務の上長にフィードバックをすることでリクルーター活動が社員のスキルアップに繋がることが可視化される。だからこそ現場からの理解と協力を得ることができるのだ。

「新卒採用はこれからかたちも変わり、より激化していくことが予想されます。だからこそ自社独自の強みを明確化し、打ち出していくことがこれからは必須になるのではないでしょうか。

インタースペースでは、強みとして理念を体現する『人』に焦点を当ててこのリクルーター制度を実施しています。少しでも新卒採用担当の方に当社の取り組みが参考になれば幸いです」

(HRog編集部)