【2024年度最新版】売上高から見た人材業界地図

今年も人材業界各社の通期決算がほぼ出揃いました。昨年に引き続き、各社の売上高・営業利益から人材業界をまとめたレポートをお送りします。

昨年度はこちら。

【2023年度最新版】売上高から見た人材業界地図

昨年の人材業界は、コロナ禍の影響が根強く残っていた飲食業や製造業でも求人数が回復するなど、人材需要が活発化した1年でした。それから1年が経ち、Indeed PLUSの登場やスポットワークの急成長が見られた2024年度は各社どのような業績となったのでしょうか。ぜひご覧ください！

総合サービス企業

リクルートホールディングスは、高齢化などに伴う求人件数の減少から米国では減収となったものの、グローバルでの売上高は過去最高を記録した昨年とほぼ同水準となりました。求職者と企業クライアント間の需給の乖離が引き続き緩和し、 特に米国において労働市場の平準化が進んだものの、Indeedを含むHRテクノロジー事業は米国で前年比13.9％減、米国以外では3％増に留まりました。

一方マッチング&ソリューション事業と人材派遣事業は増収となりました。マッチング&ソリューション事業においては、「SUUMO」「じゃらん」「HOT PEPPER Beauty」など販促のすべての領域で増収。人材派遣事業では、欧州、米国および豪州では減収となったものの、日本では人材派遣需要が増加したことで稼働人数が増加し、前年比9.9％の増収となりました。

パーソルホールディングスでは、売上高・営業利益ともに堅調に拡大しました。BPO領域はコロナ関連業務の終了による影響で前年比5.4％減となったものの、それ以外の領域ではすべて増収。中でも「doda」をはじめとする人材紹介サービスや転職メディアを運営する「Career SBU」においては前年比 +22.8%と大幅に増収しました。人材需要が堅調であることや、キャリアアドバイザーが前年比23.3％増加したことなどが影響しています。その他、人材派遣事業の「Staffing SBU」では派遣スタッフの増加や請求単価の上昇により、前年比5.7％の増収となりました。

パソナグループは、コロナ特需の減少に伴い人材派遣やBPO、介護分野でマイナス影響を受け、売上高は前年比4.3％減となりました。営業利益は、海外人材サービスなど成長分野での人員強化や先行投資等で人件費が増加したことから、前期比52.7％減少しています。また連結子会社の株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却したことで純利益は前期比1472.1％増加。売却による資金は中長期的な企業価値の向上を目的に、新規事業や設備、成長分野への投資に使っていくと発表しています。

また外資系企業では、主に欧米での厳しい市場感を受けながらも一部企業で増収・増益が発生しました。アデコは市場シェアを拡大させ、売上高は前年比105％増、営業利益は前年比119％と力強い成長を見せました。

求人メディア・紹介企業

求人メディアでは、堅調な人材需要により多くの企業が増収増益となりました。

ディップは大谷翔平選手をブランドアンバサダーへ起用したことにより、「バイトル」や「はたらこねっと」への訪問数・応募数が10～20％増加。他にも10月に「スポットバイトル」をリリースしてスポットワーク市場へと参入し、また5月には生成AIを活用したアルバイトマッチングサービス「dip AIエージェント」をリリースするなど、新規事業への投資を続けながら業績予想と前年比を上回る売上高・営業利益を維持しています。

アフターコロナで外出が増えたことやインバウンド需要が増加したことに伴い、飲食業界の人材採用ニーズもさらに高まりつつあります。飲食業界に特化した人材サービスを展開するクックビズでは、営業利益がコロナ禍前の2019年11月期を超え過去最高となりました。

アフターコロナのポジティブな影響は、飲食業以外でも見られました。2024年3月に上場した観光業特化の人材サービスを展開するダイブは、旺盛な人材需要を追い風に売上高・営業利益・経常利益ともに過去最高を更新しています。

今年は他にも、一部領域に特化した企業の新規上場が複数行われました。3月に上場したジンジブは高卒採用領域に特化したサービスを展開しており、売上高は前期比37.3％増、営業利益は約3.7倍と高成長を見せています。9月に上場したROXXはエッセンシャルワーク領域に特化したサービスを展開しており、売上高は前年比で67.5％増加、営業損益も22.4ポイント減の大幅改善を実現しています。

また7月にはスポットワーク業界をけん引するタイミーが上場しました。アクティブアカウント数の増加を背景として、売上高は前年比260％、営業利益は前年比1,604％と大幅な成長を見せています。

人材紹介では、JACリクルートメントが前年度に続き売上高・営業利益ともに過去最高値を更新しています。人材の流動化が進むことで転職市場が拡大するなか、コンサルタントの増員やコスト削減を進めたことが影響しました。またエグゼクティブ領域の実績は前年比22％増と高成長を見せており、ハイクラス人材の需要が拡大していることが伺えます。

派遣企業

派遣業界では、各市場の景気動向による影響が強く見られました。技術者派遣を手がけるUTグループは昨年度に過去最高売上高を更新していましたが、今年度は半導体・エレクトロニクス関連等の需要停滞が継続したことにより減収。また事務派遣の市場では、エスプールが新型コロナに関連したコールセンター業務の終了により減収減益での着地となりました。

一方ワールドホールディングスは、複数事業を持つ強みを活かし景気変動に柔軟に対応することで増収増益、過去最高業績を更新しています。またヒューマンクリエイションホールディングスはデジタル化やDX需要を背景に、3期連続で増収・増益、過去最高業績も連続更新しました。

医療・介護領域では、ソラストが賃上げによる人件費の増加などを背景に前年比87％の営業利益で着地しました。一方、「医師の働き方改革」に対応するための事務作業人材や、高齢化を背景とした介護人材の需要が増加したことで売上高は前年比3.1％増加しています。

また、2023年8月にコンフィデンスとインターワークスが合併しコンフィデンス・インターワークスとなりました。これまでクリエイティブ人材の派遣サービスに強みを持っていたコンフィデンスでしたが、インターワークスとの合併により今後は受託・人材紹介・メディアの領域へと事業を拡大させていきます。

まとめ

人材業界の2024年は、人手不足が深刻化し人材需要が堅調なことを背景に多くの企業で増収増益となりました。観光業やエッセンシャルワーク、高卒採用など各領域に特化した企業の上場も多く見られ、今後ますます人材マッチングが活発化していくことが予想されます。

またタイミーが上場し、大手各社がそれぞれ新サービスを発表するなど、今年はスポットワーク市場が飛躍的に成長した年でもありました。2025年は、スポットワークが浸透することによる、アルバイトや派遣市場への影響が顕著となっていくかもしれません。

それだけでなく、Indeed PLUSの登場や生成AIを活用したサービスの台頭、リクルートの体制変更発表など激動の年となった2024年。それを受け2025年はどんな人材業界地図となるのか、引き続き注目していきます！