日雇い派遣は原則禁止。禁止理由や例外となる条件について解説

労働派遣法では、日雇い派遣が原則禁止となっています。日雇い派遣とは、1日から数日単位で仕事をするという働き方のこと。2012年10月に派遣法が改正され、派遣社員の雇用の安定を図る目的から禁止となりました。しかし、条件をクリアすることで日雇い派遣が可能となる例外もあります。今回は日雇い派遣の概要や歴史、例外となる条件などについて、わかりやすく解説していきます。

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日雇い派遣とは?単発バイトとの違い

日雇い派遣とは、短期間だけ仕事をする働き方のこと

日雇い派遣とは、派遣元会社に登録している人が、1日から数日という短期間だけ派遣先で就業する働き方のこと。特定の日だけ働くという特徴から、「スポット」などと呼ぶこともあります。

厚生労働省が定める労働者派遣法第34条の4においては、日雇労働者の定義を「日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者」と定めています。つまり、雇用期間が30日以内の労働契約となる働き方が「日雇い派遣」です。

また、「社会通念上妥当」とされている労働時間は、週20時間以上とされています。このため、労働時間が週20時間未満と極端に短い場合も、日雇い派遣の対象とみなされることを知っておきましょう。

日雇い派遣と単発バイトの違いは?単発バイトは禁止されていない

派遣法の改正で原則禁止とされたのは、あくまでも日雇い派遣です。直接雇用による日雇い就労は禁止されていない点も理解しておきたいポイントです。単発バイトやアルバイトなどは、日雇い派遣と同じような仕事内容であっても、合法となります。

【日雇い派遣と日雇い(単発)バイトの違いは雇用主】

・日雇い派遣の雇用主・・・派遣元会社
・単発バイトの雇用主・・・就業先

日雇い派遣に違反したらどうなる?

日雇い派遣の禁止に違反した場合、派遣元または派遣先の会社が罰せられます。派遣法第48条に基づいて助言指導が行われたあと、業務改善命令事業停止命令など、行政処分が下されることもあります。

ただし、派遣労働者が経歴を詐称するなど嘘の申告をしていた場合は、派遣会社が派遣労働者に対して解雇や契約解除といった処分を下すこととなるでしょう。

労働者派遣法の違反に関する事例や罰則について詳しく知りたい方はこちら

日雇い派遣が原則禁止となった理由

派遣法の歴史をさかのぼると、かつて日雇派遣に係る規制はありませんでした。しかし、2008年に起きたリーマンショックによる不況をきっかけに、「派遣切り」が増加。短期的な仕事で働いている人は雇用が不安定だという課題が浮き彫りとなり、社会問題となりました。

国は、派遣元・派遣先がともに働きやすい環境を提供していない(管理責任を果たしていない場合が多い)として、改善を促すために日雇い派遣を原則禁止としたのです。

日雇い派遣禁止の例外

ここまで紹介したように、日雇い派遣は法律で原則的に禁止されています。しかし、国が指定する条件を満たせば、例外的に日雇い派遣として働くことが認められます。ここでは、日雇い派遣が可能な条件について見ていきましょう。

日雇い派遣禁止の例外となる業務

日雇い派遣禁止の例外、つまり30日以内の日雇い派遣ができる仕事として、19種類の業務があります。

上記に挙げた業務は、日雇い派遣が常態としてあり、かつ、労働者保護の観点から問題のない業務であるとして、例外と認められています。

そのほか例外となる条件

そのほかの業務で、日雇い派遣の例外が認められるのは、以下の条件に当てはまる場合です。生活のためにやむをえず日雇い派遣を選ぶことが少ない等という観点から、下記の条件に当てはまる方は日雇い労働が認められています。

《条件1》60歳以上の者

1つ目の条件として、満60歳以上の方が日雇い派遣禁止の例外に当てはまります。高齢者の雇用確保の観点から例外として定められました。数え年ではなく、満年齢が適用されるため、60歳の誕生日を迎えていることが条件となります。

《条件2》雇用保険の適用を受けない学生

2つ目の条件として、雇用保険の適用を受けない学生があげられます。学生とは、昼間は学校にいき、夜や休みの日にアルバイトをする「昼間学生」のことを指します。昼間学生は学業が本業であるため、生活のために日雇い派遣の仕事をするわけではないことから、例外として認められています。

ただし、通信教育を受けている学生や大学の夜間学部の課程の人など、日中に働くことが可能な場合は昼間学生に含まれず、日雇い派遣で働くことはできません。ほかにも、定時制高校や夜間の高校で勉強している学生、休学している人なども対象外となります。

また、昼間学生であっても就職先が内定した後に内定先で働いている場も日雇い派遣で働くことは禁止となるので注意しましょう。

《条件3》生業収入が500万円以上の、副業として従事する者

3つ目の条件に、本業の生業収入が額面で500万円以上ある人が、副業として働く場合も例外に当てはまります。生業収入とは、複数の収入源があった場合、最も大きな収入を得ている収入源のことであり、収入が安定している方が日雇い派遣で働くことは問題ないとされています。

<例>
会社員としての年収が額面で600万円あり、副業で100万円得ている場合、本業の生業収入は500万円を超えているため、日雇い派遣で働くことができます

《条件4》世帯収入が500万円以上の、主たる生計者以外の者

4つ目となる条件として、税金や保険が引かれる前で世帯年収が500万円以上ある家庭において、「主たる生計者」と言われるその世帯で一番収入の多い人(世帯年収のうち50%以上の収入を担っている人)以外であれば、日雇い派遣で働くことが可能です。

ただし、500万円はかけ持ちによる合算であってはならない点に注意しましょう。

<例>
夫の収入が600万で妻が専業主婦の場合、世帯年収は600万円を超えているため、日雇い派遣として働いてもOKです。

日雇い派遣の現状

厚生労働省が発表した資料によると、日雇い派遣が原則禁止となって以降、日雇い派遣労働者数は大幅に減少していることが分かります。

このほか、2018年時点において日雇い労働者の属性は、「主たる生計者でない者」が最も多く、日雇い労働者全体の43%を占めているということです。日雇い派遣が最も多い業務は「添乗(33.3%)」、そのあとに「受付・案内(27.4%)」「事務用機器操作(14%)」がつづき、この3業務で全体の約75%となっています。

(参考:厚生労働省『日雇い派遣の原則禁止について』)

派遣営業担当者が、日雇い派遣について知っておくべきポイントを紹介

派遣労働者が自分が日雇い派遣の例外に当てはまるかどうかを派遣元会社に相談してくることも少なくありません。そこで派遣営業の担当者向けに、日雇い派遣について押さえておくべきポイントを紹介します。

副業の場合は勤務先の就業規則を確認

企業の中には、副業を禁止している場合があります。そこで、副業として日雇い派遣を希望する方がいる場合は、まず、主となる勤務先の就業規則を確認することが大切です。許可されている場合も、本業に支障があったり、同業他社であったりする場合には認められないケースもあるので注意が必要です。

また、主となる勤務先の企業から給与をもらっている場合、副業の収入が年間20万円を超えると、確定申告をしなければいけない点も覚えておくとよいでしょう。

日雇い派遣の例外に当てはまるかどうかを確認

派遣労働者が日雇い派遣で働きたい場合、派遣営業担当者は日雇い派遣の例外に当てはまるかどうかを十分確認することが重要です。前述した例外の条件の確認とあわせて、派遣労働者に源泉徴収票などの所得証明書や在学証明書といった、収入などを示す書類の提出をおねがいしましょう。

万が一、派遣労働者が虚偽の申請をした場合、派遣元会社側は指導や改善命令のペナルティを受ける可能性があります。未然に防ぐためにも担当者は公的書類と申請内容に差異がないかをしっかりと確認することが必要です。

労働者派遣法に違反しないためにも正しく理解しよう

日雇い派遣は原則禁止されていますが、例外があり、条件を満たす場合は日雇いで働くことができます。もしも法律に違反した場合は派遣元会社がペナルティを受ける可能性もあるため、派遣労働者に対して適切な対応をとることが重要です。派遣営業を行う担当者は、日雇い派遣のルールについて正しい知識を身につけ、理解を深めましょう。

(参考:厚生労働省『日雇い派遣の原則禁止について』)