株式会社グローバルパワー
(左)代表取締役
竹内 幸一 氏
たけうち・こういち/1998年外資系ワイン商社へ就職。2003年大手人材会社フルキャストへの転職を経て、2005年社内ベンチャーとして外国人の留学生採用支援事業部の設立に参画。2009年には事業部のMBOを経てグローバルパワー設立に参画し、 2010年12月より代表取締役に就任。
株式会社ゴーリスト
(中央)執行役員/グローバルHR事業統括
高梨 洋一 氏
たかなし・こういち/日本大学を卒業後、2003年株式会社リクルートキャリア入社。法人営業、営業企画、海外事業立ち上げなどを経て、2015年より株式会社ネオキャリアにてシンガポール法人の代表を務める。2020年よりゴーリストの執行役員就任。
株式会社フロッグ
(右)代表取締役 /HRog編集長
菊池 健生
きくち・たけお/2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、2017年ゴーリストへジョイン。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務め、2019年より取締役、2021年より株式会社フロッグ代表取締役に就任。
少子高齢化と人口減少が続いている日本。文部科学省のデータによると、大学進学者数は2040年には約50万人にまで減少すると予測されている。日本の学生が減り新卒採用が難しくなると予想される中で、今注目しておきたいのが外国人留学生の採用だ。
今回は2021年8月26日に開催されたウェビナー「一歩先をいく組織づくり、エンジニアに次ぐ外国人登用が進む職種とは?」より、コロナ禍が外国人留学生採用に与えた影響と今後の予想を抜粋してお伝えする。
本ウェビナーでは、株式会社グローバルパワーの竹内氏と株式会社ゴーリストの高梨氏、HRog編集長の菊池の3名がディスカッション。外国人学生を採用する際に大切な考え方について、外国人採用のプロに話を伺った。
コロナ禍により留学生が減少。4.5年後の採用にも影響が
厚生労働省によると、2020年10月末時点での外国人労働者数は172万人となり、過去最高を更新した。一方、新型コロナの影響で増加率は低下している。この影響は、今後の外国人採用にどう影響するのだろうか。
菊池「現在、日本の労働人口がどんどん減少しており、外国人雇用の検討を進める必要性も高まっています。本日は、外国人雇用における現状や、課題点などをお伺いできればと思います。現在の外国人の就業状況はいかがでしょうか」
高梨「まず市場から見ていくと、日本の総人口は現在1億2000人ほどであるのに対して、2065年には8800万人まで減少すると推計されています。また、総労働人口は2020年時点で約7400万人で、このうちの外国人労働者数は180万人となっています。日本の労働人口における2.3%ほどが外国人という状況です」
高梨「日本の人口は減少傾向の中で、在留の外国人者数はここ数年右肩上がりで推移しており、2019年末には293.3万人となりました。しかし2020年末はコロナの影響を受けたため、4.63万人減って288万人と8年ぶりに減少しました」
竹内「在留外国人の中でも、特に減少割合が大きいのが外国人留学生数です。文部科学省が発表した『外国人留学生在籍状況調査』の結果によると、コロナ禍の2020年5月1日現在の外国人留学生はおよそ27.9万人で、前年比10.4%減少しています」
菊池「外国人留学生の減少により、日本の外国人採用市場にはどのような影響があるのでしょうか」
高梨「在留資格の観点で見ると、日本に残った技能実習生が特定技能に切り替わったことで、在留資格者全体の減少はある程度抑えられました。専門的・技術的分野に該当する在留資格『技人国(技術・人文知識・国際業務)』は、コロナ禍の2020年でも1万人増加しています」
外国人が日本で技術者やオフィスワーカーとして働く場合に必要になる在留資格。主に以下のような業務が該当する。
技術:システムエンジニア、機械工学の技術者
人文知識:企画、営業、経理などの事務職
国際業務:語学教師、通訳・翻訳、デザイナー
竹内「技人国を取得するには、主に『留学の在留資格から切り替える』または『海外で技人国に認定されてから来日する』の2つの方法があります。
新型コロナの流行により海外からの来日は減ったので、2020年に技人国が増加したのは留学から技人国に切り替えた人が多かったことが要因だと言えるでしょう。一方、ここ1、2年で留学での外国人入国者数は激減しました。つまり、本来留学してのちのち技人国に切り替える予定だった外国人が入国できていない状況です。
この状況が、4、5年後には技人国人材の獲得を検討する企業に大きく影響してきます。留学生が減少し、技人国人材が減少することで、新型コロナが落ち着いたときには外国人材市場は売り手市場になると考えられます」
4、5年後に技人国人材獲得の競争率が上がることを踏まえると、外国人留学生の採用を考えている企業は今のうちに動き出す必要がありそうだ。
外国人留学生の魅力は目的に対する「コミット力」
菊池「数ある在留資格の中でも、『技術・人文知識・国際業務』は語学やスキルが高い『高度外国人材』が持つものです。今後の日本企業の発展に寄与する人材とされている技人国は、2015年から2020年の間に14.5万人と近年飛躍的に増加しています。外国人留学生は卒業後、技人国の在留資格に切り替える能力を持つなど非常に優秀ですよね。外国人留学生の魅力とはどのようなことにあるのでしょうか」
竹内「私が思う外国人の強みは、1つは結果にコミットするための努力ができることです。競争社会の中で育っているので、日々勝ち抜くことにチャレンジする姿勢が出来ています。来日している外国人で技人国が取得できるレベルの人たちは、特に努力家ですね。彼らの約束・目標に対する意欲は非常に高いです。また、もう1つは、主張力が強いこと。空気を読みがちな日本人と比較して、自分の意見を臆せず主張できるところが魅力です」
新卒採用の枠に囚われず、外国人の本質を見た採用を
菊池「そんな魅力的な外国人留学生ですが、受入企業はどのように採用に臨めばよいのでしょうか」
竹内「外国人労働者を採用したことがない企業の多くは、2つの課題を感じています。1つ目の課題は、受け入れ体制ができていないことです。受け入れに関してはやってみないとわからないことが多いので、どんどんチャレンジするしかありません。女性の社会進出への道筋も、けしてスムーズにはいきませんでした。トライアンドエラーを何回も繰り返して、女性が活躍できる社会・会社になってきました。これは外国人採用に対しても同じことが言えます。
もう1つの課題は、受入企業が求める日本語レベルが高すぎることです。多くの日本企業はN1以上の日本語レベルを求めていますが、普通の会社であればN2で十分な場合が多いです。求める日本語レベルを引き下げれば、採用の幅は大きく広がるのではないでしょうか」
高梨「採用の際、面接で日本語を比較することも多いですね。採用要件がしっかりしていて、コミットする力がほしいなど基準が明確であれば、そのような点にフォーカスして外国人材を採用しますが、どうしても今の日本企業は面接の受け答えが上手な人材を採用する傾向にあります。こうした企業に対してアドバイスはありますか?」
竹内「多くの企業が外国人採用で日本語力を重視しているのは仕方ないと思います。しかし、外国人採用にチャレンジし続けていくうちに、求める日本語レベルは必然的にどんどん下がっていくと思います。
また、高い日本語力が必要だと思っている企業に考えてもらいたいのは、採用後の日本語力の伸びしろです。来日して1年の方の低い日本語力は今後の成長が期待できますが、長い間日本に住んでいているけれども日本語のレベルが低い方は成長に懸念が生じますよね。日本語レベルの伸びしろを考えながら採用するのが良いのではないでしょうか」
菊池「新卒採用という『枠』についてはいかがでしょうか。外国籍の方が大学卒業して現地で働いたあとに来日する場合、中途採用に該当するのか、新卒採用になるのかという点はどう捉えればいいですか?」
竹内「新卒とは日本企業が設けたルールです。その枠に外国人を含めるかどうかは企業の判断によるもので、無理に入れる必要性もないのではないかと思っています。新卒枠に入れることで、新卒ルールに則った人材しか採用できていないケースも多いのではないでしょうか。例えば、採用選考の中で日本語でのディスカッションを行ったり、実務で必要以上の日本語力を求めたりすることで、採用できない人材がいるのは惜しいですね。
このような観点で考えると、新卒採用で見るポイントを変えていくことで自然に外国人の採用も増えると思います。今の自社にとって本当に必要なものは何か。日本語スキルなのか、または結果に全力でコミットする姿勢なのか。そう考えてみると、全力でコミットする姿勢の方が重要だ、という企業の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。新卒採用に関しては、枠にとらわれず、採用基準を大幅に見直していくことが重要なポイントになると思います」