【人材業界入門#03】コロナ不況に立ち向かえ!三嶋氏に聞くこれからの新人営業の立ち振る舞い方

株式会社moovy
代表取締役社長
三嶋 弘哉 氏
みしま・ひろや/新卒で株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職エージェントのコンサルタントとして、大小300社の中途採用支援及び約8,000名のキャリアカウンセリングを経験。その後、経営企画マネージャーや転職エージェント事業の営業統括部長、新規事業責任者を歴任。2020年4月より株式会社moovyを創業。

新人営業はこれを見よ!新卒のための人材業界入門特集

4月になり、今年も多くの新卒社員が新たに人材業界で働くことになります。業界知識や採用ノウハウなどキャッチアップすることが多く、不安に感じている方も多いのではないでしょうか?本特集ではこの春人材系企業に勤めることになった新卒の方向けに、おさえるべき知識やノウハウをご紹介します。

いま、人材業界が大きく揺れている。新型コロナウィルスの影響を受け、業態によっては営業をストップしたり縮小したりしている。そういった企業はもちろん採用どころではない。大手でも新卒採用の縮小などのニュースが目立つ。人材業界のこの先を不安に思う方も多いのではないだろうか。

景気が大きく変動するいま、新人営業はどういう心境でいまを捉え成果を上げていけばいいのか。人材業界でリーマンショックを乗り越えてきた経験を持ち、現在も様々な企業において採用支援・事業支援を行う三嶋弘哉氏(@mishi_hiro)に話を聞いた。

※インタビュー時は十分な距離をとる、換気を徹底するなど新型コロナウイルス感染防止に留意しながら取材・撮影をおこなった。

景気のいい業界を目利きする

「景気が悪いと言ってもすべての業界が悪いわけではない」と三嶋氏は話し始めた。確かに全ての求人がストップしたわけではなく、業界によってコロナの影響に偏りはある。

「この状況でも採用数を伸ばしている企業はあります。可処分時間が家の中で過ごすことが増えているため、業界的にはゲーム、動画メディア、ECサイト、それからテレワークを支援するIT企業が採用を継続しています」

「一方、これまで好調だったB2BのSaaS企業でも、一部採用ペンディングが始まっています。プロダクトが顧客にとって絶対必要な『Must Have』ではなく、あると嬉しい『Nice to Have』なSaaS企業はサービス解約が増えてきていると聞きます。また、加えてコロナの感染が多かったヨーロッパに本社を置く、外資系ソフトベンダーの採用も止まっています」

「そして、最も厳しいのは旅行・飲食をはじめとして外国人のインバウンドをターゲットに事業展開している業態です。国境を超えての行き来が少なくなった事でその影響を大きく受けています」

一概に景気が悪いということではなく、どの産業の景気が良くて、どの産業の景気が悪いか、常にアンテナを常に持ち続けることが大切だ。

「人材業界の営業であれば求職者の動向も捉えておきましょう。リーマンショックの時では株価の下落、業績の悪化へとつながっていき、市場に転職者として出て来たのはだいたい半年後でした。今までの登録者層にいなかったハイクラスの方の登録が増え、それを当時業績のよかったソーシャルゲーム業界とECサイト運営会社、医療系メディア運営会社が中心となってそのようなハイクラスの求職者の方を採用したので、その後それらの業界は大きく成長しました」

企業側だけを見るのではなく、求職者の動向も見ておこう。

お客様の経営にインパクトを与える仕事をする

「会社の構造として売上計画が崩れるとコスト計画も崩れていきます。イチ担当者が決めれないことを上層部がドンドン決めていき、取引を残す・残さないかを決める上層部に近いところで、どれだけ経営にインパクトを与える仕事ができているか問われているタイミングだと思います」

自分のやってきた仕事が試される時だ。どのような仕事の進め方をすれば生き残り、どのような仕事の進め方をしてしまうと契約を打ち切られてしまうのだろうか。

「景気が悪くなると、自分軸で賢いだけでも売れないし、熱意だけでも売れません。オーダーを右から左に運んでいくだけでも売れません。お客様軸でどういう課題があって、何をどう組み合わせれば解決できるのかを率直に考えることが必要です。まさにそこが営業としての腕の見せ所で、数ではなく質が重要です」

率直にお客様の方を見て仕事ができているだろうか。お客様の声にはじまり、お客様満足度やNPSときちんと向き合えているだろうか。ただやみくもにテレアポをして、商談数だけを追うだけになっていないだろうか。今一度確認してみたいところだ。

個人も試される、組織も試される

「こういう時代だからこそ、例えばテレビ会議ツールのような新しいツールの導入が進んだり、新しい営業の仕方に取り組んたりします。ツールの活用の仕方や資料の作り込み方ひとつとっても、営業一人ひとりが持っているノウハウがあります。その個人が作ったノウハウをきちんと組織全体のノウハウに展開できるかどうかが重要です」

一方で営業として自分のノウハウを共有することは、相対的に個人の価値が下がってしまうことにもなる。

「まさに自身のノウハウが組織に共有されることはライバルを増やすことにつながります。 個人を取るのかチームを取るのか、組織の文化が試されます。人が増え、組織が大きくなればなるほど、個人同士でもノウハウの共有は少なくなりますし、チーム間での共有は少なくなります。さらに事業部間での情報共有はしづらくなる三重構造があります」

組織に環境を用意してもらうだけでなく、個人として組織に働きかけていくことが強い組織、成長企業の条件になりそうだ。

悪い噂は拡散される、一次情報を集めよう

採用動向に詳しい三嶋氏だが、普段はどのように情報収集しているのだろうか。

「HRogをはじめメディアは一通りチェックしていますが、メディアではいろんな情報が錯綜しています。人間心理としてネガティブな情報は拡散されやすい傾向にあります。先日Twitterで人材業界の株価推移をまとめましたが、たくさんの方に拡散いただきました。これだから人材業界は怖いとか足を洗っておいてよかったとの書き込みも見受けられましたが、業績とはそこまで相関していなかったりします。また、先日とあるメディアの取材では、前提条件として話されることが多く、メディアとしてセンセーショナルに書きたい意向が伺えました」

同じ物事に対してもメディアによってアクセントの付け方が変わってくる。ではその物事の本質はどのように見分ければいいのだろうか。

「当事者の人に話を聞くと一番濃い情報が得られます。インターネットでアクセスできる情報もありますが、調べていても分からないこともあり、なんとなく触りしかわからないこともあります。生っぽい情報が一番勉強になり、お客様にも求められている情報だと思います。友人に聞くこともそうですが、ビジネスマッチングアプリ『yenta(イェンタ)』もよく活用させてもらっています。会いたい人ってこんなに簡単に会えるんだというのが初めて使った時の感想です」

「障壁になるのが会いたいと思える感覚を持てるかどうかと、会ってもらえるかどうかです。自分の周囲を見渡しても意外とフットワークが重たい人が多いなと思います。何人か会ってみればその壁は超えられるとして、後者の会ってもらえるかどうかについては自分自身を開示し、発信していく必要があります。僕自身もTwitterでの発信を始め、そこからこのようにメディアに出る機会を頂けたりしています」

自分自身が何者なのかを発信し、情報を提供することで得られる情報やつながりがあるのだ。自分自身を正しくマーケティングいき、一次情報を得ることが顧客へ提供する価値になる。

「コンプライアンスや炎上には気を付けましょうね」と締めくくってくれた三嶋氏、ありがとうございました。